COLUMN
コラム
財務部長の仕事とは?仕事の内容・待遇・求められるスキルや能力について解説
執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)
CFOになるには?キャリアパスも解説
経理/会計/財務/経営企画などの管理部門としてのキャリア
経理・財務などバックオフィスに関わる業務に携わる方・今後のご自身のキャリアについて検討している方の中には、財務部長やCFOなどを考えている人もいると思われます。
財務部長は、企業の経理や金銭を取り扱う仕事の中ではトップと言えるポジションであり、さらにベンチャー企業やスタートアップ企業においては財務部長からCFOなど財務面から企業の経営の意思決定に関わる職位も選択肢に入る可能性もあります。
本記事では財務部長の仕事・待遇・他の役職との違い・求められるスキルや能力・CFOへのキャリアについて詳しく解説していきます。
企業の財務に関連する活動の責任者であるCFOについては、こちらの記事もご参照ください。
⇒CFO(最高財務責任者)とは?定義・意味から役割・仕事内容・なり方・キャリアパスまで徹底解説!
⇒CFOの平均年収はいくら?相場を詳しく解説!
⇒CFOのキャリアパスとは?転職方法・必要なスキル・経験を解説!
⇒CFOになるには?CFOになるためのキャリア・求人状況・評価ポイントについて解説
⇒CFOに役に立つ資格|CFO資格認定・FASS検定・公認会計士について解説
⇒公認会計士からCFOは目指せる?求められる役割とCFOに転職するメリットについて解説
⇒CFOを目指す人のための本|CFOの考え方・実務・キャリアなど網羅的に紹介
目次
財務部長の仕事
財務部長は企業の資金調達、資金運用などの財務面を担うだけでなく、予算管理や取引先などの与信管理を行うこともあります。財務部長の仕事内容は主に次の4つです。
・資金調達
・資産の運用
・与信管理
・予実管理
財務部長の4つの仕事について詳しく解説していきます。
資金調達
財務部長の大きな仕事の1つが資金調達です。企業経営には投資や運転のための資金が必要になります。自己資金がない限りは、その資金を外部から調達しなければならず、主な資金調達方法として次のようなものがあります。
・銀行融資
・社債の発行
・新株発行
・資産の売却
これらさまざまな資金調達方法のメリットとデメリットを比較して、経営陣とも調整の上、企業にとってベストな資金調達方法を選択して、実際の資金調達を実施します。
借入で資金調達をするのであれば銀行との交渉、新株発行や社債発行で資金調達するのであれば証券会社と打ち合わせを行うのも財務部長が直接担当しなければならないこともあります。
万が一、企業の財務面に問題があると企業価値は下がり、外部からの信頼を失っていきます。企業の信頼が失われることで、銀行や投資家からの評価も下がり、銀行からの融資や株式や社債の発行による資金調達も難しくなるでしょう。
資産の運用
財務部長の仕事のもう1つ大きなものが、資産運用です。企業には次のようなさまざまな資産があります。
・現金預金
・他社の株式
・不動産
預金を有価証券や株式投資などで運用したり、経営陣と相談して新たな部門や設備へ投資するのも1つの方法でしょう。
また、すでに株式運用や不動産投資をしているのであれば、株式や不動産の運用を管理したり運用先や運用方法の検討などを行うのも財務部長にとって重要な仕事です。
企業が使用していない建物や土地などの不動産を保有しているのであれば、賃貸や売却などによって不動産の有効利用を検討するのも財務部門の仕事です。
財務部長はこれらの資産運用状況すべてを把握して、投資内容が正しいものか、他に有用な方法はないかを検討して経営陣とも相談の上、資産運用を行っていきます。
資産運用の手段としてM&Aもあります。M&Aによって、自社の機能を強化したり、売上や開発力などにシナジーも期待できます。
与信管理
財務部門の中には取引先の与信管理を担っている場合もあります。与信管理とは、取引先の信用を調べて「取引を継続してもよいか」「月いくらまでの取引なら可能か」ということを審査して、企業に損失が生じないように取引先を管理するものです。
財務部長は取引先1社1社の与信状態を把握して、「企業の取引が安全に行われているか」「貸倒引当金はどの程度計上しなければならないか」の検討を行います。
また、経営陣と相談の上、取引先ごとの取引額を予算に合わせて調整していくのも財務部長が担当する場合もあります。その上で、財務部長は与信管理の進捗状況を確認し、経営者や役員に報告する役割も担っています。
予実管理
企業によっては予実管理も財務部長が行う場合があります。予実管理とは、予算と実績の管理という意味です。
具体的には、「予算に対してどの程度の売上があるか」「予算に対してどの程度の支出があるか」「作戦や例年と比較してどうか」を把握と分析を行い、実態を経営陣に報告するのが主な仕事です。
企業活動の中で資金のことを考えずに事業を続けていくと資金がショートしてしまう場合もあります。そのような事態に陥ることのないように、経営陣や営業部などは、財務部門が行った予実管理と分析に基づいて、営業目標や支出計画を再検討します。
企業が「予算通りに動いているか」「予算からどの程度不足しているか」を客観的に把握する部署として財務部門がその役割を担っている企業も多数存在します。
財務部長の待遇
財務部長は企業の財務部門のトップですので、企業によって違いはあるものの高額の年収を目指せる仕事です。さらに、財務部長から目指せるキャリアも多いので、さらなるキャリアアップを目指すためにも最適なポジションです。
財務部長の待遇などについて詳しく解説していきます。
財務部長の年収
財務部長の年収は企業によって異なります。厚生労働省の「令和2年賃金構造基本統計調査」によると、部長の平均年収は約930万円(月収:約60.2万円|年間賞与その他:206.5万円)です。
また、財務部長は企業の資金調達と運用を担う非常に重要なポジションですので、財務部長は他の部長よりも年収が高い傾向があり、1,000万円前後が期待できるのではないでしょうか?
ただし、企業によって財務部長の年収は大きく異なり、外資系や上場企業の部長クラスになると2,000万円を超える年収を受け取れることもあります。一方、中小企業の場合は財務部長クラスになっても、1,000万円に満たないケースも珍しくありません。
金額は企業によって異なるものの、財務部長や社内ではトップクラスの高い報酬を目指せるでしょう。
財務部長から目指せるキャリア
会社の資金調達という非常に重要な部分を担う財務部長は経営陣の中で最も重要なキャリアの1つです。この財務部長という役職から目指せるキャリアの中には、CFOや経営者といった役員クラスのキャリアもあります。
CFOとは「Chief Financial Officer」のことで、企業の財務戦略の立案、執行をおこなう責任者です。CFOは、経営者と同じ目線で財務戦略を練ります。
CFOについては次の記事にて詳細を解説しています、あわせてご参照ください。
⇒CFO(最高財務責任者)とは?定義・意味から役割・仕事内容・なり方・キャリアパスまで徹底解説!
また、財務部長から目指せるキャリアの中には、経営企画室長・内部監査室長、また経理部・財務部を含む管理部門全体を統べる管理本部長などが挙げられます。ただし、財務部長から他の部署の長になるケースはそれほど多くはなく、財務部長のキャリアアップはCFOや経営者など、より経営に近い部署で働くケースが多いでしょう。
財務部長とその他の役職の違い
財務部長に近い役職として
・経理部長
・CFO(最高財務責任者)
があります。
企業のお金関係の統括をするポジションという点では、これら2つの役職は同じですが、仕事の内容は大きく異なります。財務部長とCFOや経理部長との違いについて詳しく解説していきます。
財務部長と経理部長の違い
財務部は資金調達と運用を行うのが主な仕事で、経理部門は企業の入出金管理と会計処理です。
財務部門は資金調達や運用を行い主に貸借対照表に関係がありますが、経理部門は会計処理や売上の管理を行うので主に損益計算書に関係があります。
お金を扱うという点では同じですが、財務はストックの部分を担っているため、売上や支出管理とはあまり関係がありませんが、経理部門は売上や支出管理を担っており、全く別の職業だと言えるでしょう。
財務部も経理部のそれぞれに部長がいることが一般的です。部長として経営側の視点を持って、部署全体をマネジメントするという点で共通する箇所がありますが、部署として扱う業務内容に違いがあります。
財務部長とCFOの違い
財務部長とCFOは混同されることがよくあります。確かに資金調達や資産運用を行うという点で、財務部長とCFOは似ています。
しかし、財務部長は主に資金調達を行い、意思決定や戦略の立案などをそれほど主体的に行うわけではありません。
一方、CFOは資金調達だけでなく運用や、会社全体の成長のためにどのような投資が必要になるのか、など会社全体に対して経営的な目線で財務戦略を立案していくことが仕事です。
ただし、CFOを設置せずに財務部長がCFOと同じような役割を果たしている会社も存在するため、明確にどのような違いがあるのかということは言えません。
CFOが設置されている会社においては、財務部長の上位職としてCFOが存在しますが、CFOが設置されていない会社では、財務部門のトップは財務部長だと解釈しておけばよいでしょう。
財務部長に求められるスキルや能力
財務部長だけでなく、財務部門に関わる従業員に求められるスキルや能力として次の4つがあります。
・問題解決能力と分析的思考力
・財務戦略を計画する能力
特に、財務部長は分析や計画立案をする能力に加えて、会社を取り巻くあらゆる専門的な知識が必要です。
また、知識だけでなく実務経験があることも非常に重要です。財務部長に求められるスキルや能力について詳しく解説していきます。
問題解決能力と分析的思考力
資金の調達を担う財務部門においては「どこから資金を調達するのがベストか」という問いに対する回答が常に求められています。
また、企業の経営が悪化した際には「どこもお金を貸してくれないが、どのように資金を調達すべきか」という非常にハードルの高い問題を解決しなければならない場面も想定されます。
このように、財務部門は、「どのように資金調達するか」「必要な資金をどのように捻出するのか」という難問を解決することが非常に重要な仕事なので、問題解決能力は決定的に必要な能力だと言えます。
また、分析的な思考力も非常に重要な能力です。特に財務部長には企業の財務内容を分析して経営陣に報告する義務があります。
経営陣は財務部長からの報告をもとに、次の資金調達方法や投資プランの選定などを行うので、経営陣が正しい投資プランなどを策定できるかどうかは財務部門が正しい分析ができるかどうかにかかっていると言っても過言ではありません。
財務部長は、この財務部門でまとめる報告内容に対して責任を持つ必要があります。そのために、財務部長には難題を解決する能力と、企業の財務状態を堅実的に分析できる能力の双方が求められます。
財務戦略を計画する能力
財務部門には企業の財務戦略を立案する能力が必要不可欠です。財務戦略とは、経営目標を達成するため、会社全体の財務に対して中期的・長期的な計画を立てる戦略のことです。
経営的な視点から「どの程度の収益を投資から稼ぎ出すべきなのか」ということを把握し、「そのためにどのような投資をしなければならないのか」「投資に必要なお金をどのように捻出するのか」を現実的に考えられるようにならなければなりません。
企業の財務部門のトップである財務部長は、企業の財務戦略を具体的かつ正確に立案する能力が必要不可欠です。
財務部長からCFOへのキャリアを考える
財務部長から目指せるキャリアパスの1つに、CFOが挙げられます。財務部長として、財務部門の仕事をするところから、企業によっては経営者の視点で企業価値を向上させるためにCFOの働き方を求められる場合もあるかもしれません。
財務部長からCFOへキャリアアップする際にやるべきことや、なぜCFOを目指すべきなのかについて解説します。
・CFOをキャリアとして選択する必要性
・現在の自分のスキルについての整理
・財務部長と自社に必要なCFOとの差分の認識
CFOをキャリアとして選択する必要性
まずは、なぜCFOへキャリアアップしなければならないのかをよく考えましょう。財務部長は企業の部長職の中でもトップクラスの役職です。キャリアアップを希望しなければ、そのままの役職で終わってしまう可能性があるため、キャリアアップをするのであれば理由をしっかりと説明できることが重要です。
さらにCFOへとキャリアアップする目的としては次のようなものがあるでしょう。
・より高い報酬を受け取るため
・経営的な視点で会社の財務を担うため
・CFOのポジションがない会社の財務部長は同じ会社に勤めてもこれ以上の昇進はないため
いずれにせよ、共通しているのは「財務のスキルや能力をより評価してくれて、より力を発揮できる立ち位置を目指すためです。
転職の際には必ず「CFOを目指す動機」について尋ねられますので、しっかりと説明できるようにしておきましょう。
現在の自分のスキルについての整理
次に、自分のスキルを整理しておきましょう。面談の際に得意分野や不得意分野は必ずと言っていいほど聞かれることが多い項目です。
CFOを含むキャリアアップのための転職活動の前には自分の得意分野と不得意分野を洗い出し、面談で理路整然と得意・不得意を説明できるように準備してください。
財務部長と自社に必要なCFOとの差分の認識
企業にとって、あるべきCFOの姿と財務部長としての現在の自分で、どの程度ギャップがあるのかも客観的に把握しましょう。求められるCFOとしての能力やスキルと、財務部長として培った経験や能力とは必ず差があるものです。
求められるものが不足していたとしても、それは他の部署で補ってもらえるものかもしれません。
反対に求められるもの以上に財務部長としての経験やスキルが上回っているのであれば転職先で重宝されるでしょう。
何が不足していて何が足りているのか、アピールポイントはどこかをしっかりと認識してCFOとしての転職活動をするようにしてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は、財務部長の仕事・待遇・他の役職との違い・求められるスキルや能力・CFOへのキャリアについて解説してきました。
本記事が、経理・財務などバックオフィスに関わる業務に携わる方・今後のご自身のキャリアについて検討している方のご参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また、管理部門の職種としてキャリアアップしたい方、さらにCFOとして経営参画も視野にいれている方は、プロの専門家に相談するのが一番です。
そこでSOICOでは、管理部門やCFOのキャリアについて詳しいプロによる、個別の無料相談会を実施しております。
・経理、会計、財務、経営企画、CFOなど、管理部門に詳しい転職のプロへキャリアを相談したい
・CFOとして自分が活躍できる具体的な企業/業種業界/役割/企業フェーズはどういったものか知りたい
・市場には出回っていないハイクラス求人を紹介してほしい
そんなお悩みを抱える方に、要望をしっかりヒアリングさせていただき、
適切な情報をお伝えさせていただきます。
ぜひ下のカレンダーから相談会の予約をしてみてくださいね!
この記事を書いた人
共同創業者&代表取締役CEO 茅原 淳一(かやはら じゅんいち)
慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。