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コラム
ピアボーナスとは?導入のメリットやデメリット、具体的なツールを徹底解説!
執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)
『資金調達の手引き』
調達ノウハウを徹底解説
資金調達を進めたい経営者の方の
よくある疑問を解決します!
働き方改革の推進に伴う雇用形態の多様化やIoTの発達など、私たち労働者を取り囲む環境は勢いを増して変化しております。
そのため、企業側には人材の流出を防ぐために労働者のエンゲージメントを高める組織文化の情勢が求められておりますが、そのような中ピアボーナスと呼ばれる人事評価制度が注目を集めています。
但し、ピアボーナスは近年ベンチャー企業中心に注目を集め徐々に浸透している制度であるため、制度について詳しく理解している方は多くないのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、
・ピアボーナスの制度概要について
・導入時のメリット/デメリットについて
・具体的なツールについて
の3点を中心にピアボーナスの概要について解説していきます。こちらの記事を読めば、ピアボーナスを知らなかったご担当者様も制度概要をご理解いただき、自社での導入を検討する際の選択肢として検討することが出来るでしょう。
尚、そもそもの評価制度について手始めに理解を深めたい方は以下の記事で詳しく解説しておりますのでこちらをご覧ください。
⇒評価制度とは?評価制度の目的・種類・制度の導入時に考えるべきポイントを解説
⇒人事評価とは?人事評価の目的・導入方法・注意点について解説
⇒人事評価シートの記載方法|人事評価シートの目的と職種別評価項目を徹底解説
⇒人事評価制度の作り方|評価を作る際の注意点や成功例についても解説
⇒人事評価の際の目標設定とは?目標設定のメリット・SMARTの法則を解説
⇒人事評価コンサルタント|メリット・デメリット・選ぶ際のポイントについて解説
⇒人事評価面談|面談の目的・進め方・ポイントについて解説
⇒人事評価制度のメリット・デメリット|デメリットの解決策・人事評価制度の失敗例についても解説
⇒人事評価の成功事例10選!人事評価項目の種類・人事評価制度の成功事例を幅広くご紹介!
目次
ピアボーナスとは?
英語で「仲間」を意味するPeer(ピア)と「成果給」「特別手当」を示すBonus(ボーナス)を組み合わせてできた言葉のピアボーナス。
近年、ベンチャー企業中心に制度の導入が進むピアボーナスの概要について、本項にて以下3観点から詳細解説していきます。
・ピアボーナスについて
・ピアボーナスの目的と効果について
・ピアボーナスが注目される背景について
ピアボーナスについて
ピアボーナス(別称:ピアボーナス制度、ポイント制賞与制度)とは、従業員同士が互いに仕事の成果や貢献度合いに対して、賞賛と併せて小額の報酬を送り合う仕組みを指します。
「報酬を送り合う」とはいえ実際のお金をやり取りするのではなく、アプリやシステム上で日々の感謝や評価のメッセージを添えてポイントを送り合う仕組みです。
この時実際に溜まったポイントは、会社の用意した商品・景品と交換することやインセンティブとして毎月の給与に加算されることで、各従業員に還元されます。
ピアボーナスの目的と効果について
一見、従業員の月に得られる給与が増えるだけのインセンティブに見えますが、従業員同士のコミュニケーション活性化や社内全体の業務へのモチベーション向上を期待出来る制度です。
毎月の給与や年に数回のボーナスに加え第3の給与としての側面を持つだけでなく、組織風土改革にも効果がある仕組みとして国内企業でもベンチャー企業中心に導入が進んでいます。
ピアボーナスが注目される背景について
日本で本制度が広がる背景には、近年より話題に上がる働き方改革があります。
この改革では、
・少子高齢化に伴う生産年齢(15~64歳)人口の減少
・副業やフリーランスなどの働き方の多様化
という課題の解決が根底になるのは既知の事実でしょう。
上記問題に伴い労働力の確保が困難になっている昨今、従業員一人ひとりの生産性向上を目的に初速企業へのエンゲージメント(貢献意欲)を醸成することが重要になっています。
企業の持続的な成長には欠かせない、エンゲージメントの高い人材を増やすことを目的として、近年組織風土の改善に効果のあるピアボーナスが注目を集めるようになりました。
ピアボーナス導入のメリットとは?
ピアボーナスを導入することで得られる効果について前項にて簡単に触れましたが、本項ではより具体的に紐解いていきます。
・従業員が部署を超えて協力し合う
・社内の良いことが可視化される
・従業員エンゲージメントを高める
・優秀な人材を流出させない
以下にて順々に解説していきます。
メリット①:従業員が部署を超えて協力し合う
まず第一に挙げられるのは、所属部署を超えての従業員同士の協力関係を作ることができる点です。
そもそも従業員同士が互いに賞賛や承認を送り合う回数は、従業員同士がコミュニケーションを取った回数とイコールになります。
従業員同士で賞賛と報酬(ポイント)を送り合うことで、部署の垣根を超えた関係構築がスムーズに進むことになります。
メリット②:社内の良いことが可視化される
ピアボーナス下では、ポイントを送り合う際に業務上の感謝メッセージを添付する必要があります。
この仕組みにより、各従業員に対して報酬を贈る理由が可視化されるため、どのような良いことが行われたのかが社内全体に共有されることになります。
関係各所から良いと評価された人の取り組みが開示されることで、周囲の従業員も自身の行動の参考にしやすいため、良い行いが社内で蓄積されるようになり、結果的に社内の雰囲気をよりポジティブなものに変えていくことができるでしょう。
メリット③:従業員エンゲージメントを高める
本記事にて繰り返し触れていますが、ピアボーナスを導入することで従業員エンゲージメントを高めることができます。
一般的にエンゲージメントを高める手段としては昇格や昇給が挙げられますが、常に上げ続けることは企業体力的に持続性のある現実的な打ち手ではありません。
ピアボーナスを通して従業員同士が互いに賞賛・承認を送り合うことで、永続的な愛社精神の高まりを作ることができます。
メリット④:優秀な人材を流出させない
従来の人事評価制度では、売上や粗利目標の達成率といった定量的な成果や上司から見た仕事ぶりのみで評価されることが多く、数字で評価できない取り組みや直接的な会社の業績への貢献が見えにくい取り組みへの評価がされにくい傾向にありました。
上記のような定性評価が下されにくい評価制度のもとでは、上司と部下の間に評価内容に対する乖離が生まれ、従業員の満足度やモチベーション低下を招きかねません。
しかしピアボーナスを導入することで、
・顧客満足度を向上させるための取り組み
・業務効率の改善
などの定量化または表面化しにくい成果も評価されやすくなります。
従業員の取り組みにおいて、評価される項目が拡張される(評価内容に漏れが無くなる)ことで、従業員の満足度を高めることができ、離職率の低下ひいては優秀な人材の流出防止に寄与するでしょう。
ピアボーナス導入のデメリットとは?
ピアボーナス導入のメリットについて解説してきましたが、当然デメリットも存在します。
本項で取り上げるデメリットは以下2点です。
・仕組みを導入するためのコストがかかる
・従業員に評価を任せるため導入後の運用が必要
それでは以下にて順々に解説していきます。
デメリット①:仕組みを導入するためのコストがかかる
ピアボーナスを導入するにあたって当然必要になるのがツールです。
ツール導入により初期コストや月々の運用コストが発生する上に、従業員同士で報酬を送り合うために企業側は原資を用意しておく必要があります。
以上のように企業側が負担するコストが存在するため、導入後の効果については投資分に対して見合っているのかを評価する必要があります。
デメリット②:従業員に評価を任せるため導入後の運用が必要
2点目のデメリットは、導入後もピアボーナスが従業員同士で機能する様に運用する必要がかかる点です。
・一定の従業員にのみ賞賛と報酬が集中する
・周囲に目立たない縁の下で支えている従業員にスポットライトが当たらない
などのケースが十二分に考えられます。
他の人事評価制度についても当然言えることではありますが、ただ導入しただけでは当初の目的である従業員エンゲージメントの向上に寄与し、従業員当人たちも満足感のある制度になりません。
そのためピアボーナス(ツール)導入後も
・従業員の間でどのように制度が使われているか
・一定の従業員にのみ評価が依存していないか
・一部の従業員から制度に対して反感を買っていないか
を都度確認するようにしましょう。
ピアボーナス導入の注意点とは?
ピアボーナスを導入する際に注意すべき事は、ピアボーナスの導入自体をゴールにしないことです。
他の人事評価制度にも共通することではありますが、「ピアボーナスを導入すれば会社の業績が良くなる」ことはありません。
あくまで組織課題を解決する手段であり、
「なぜ導入する必要があるのか」
「会社のどんな課題を解決するのか」
の2点が非常に重要になってきます。
具体的には、
・サンクスカードにピアボーナスを組み合わせて、部署をまたぐ社員間のコミュニケーションを活性化したい
・社員の見えない頑張りに焦点を当てるために、互いに称賛を送り合うピアボーナスを取り入れたい
等、事前に導入目的を明確にした後にピアボーナスを設計・導入し、運用することが欠かせません。
この目標設計の部分が具体的に定められていない場合、ピアボーナスの導入は形骸化して工数のみがかかる制度になってしまうため、これまでの評価制度の効果や反省を踏まえたうえで導入を検討すると良いでしょう。
ピアボーナスツールの選び方とは?
実際にピアボーナスの導入にあたって、「どのツールを使用するか」も1つの重要な要素になります。
そこで本項では、ピアボーナスツールを導入する際に気を付けるべきポイントを以下2点に分けてご紹介いたします。
・使いやすいUI/UX設計か
・コミュニケーション機能があるか
それでは順々に解説していきます。
条件①:使いやすいUI/UX設計か
ピアボーナスツールを選ぶ際には、使いやすさを重視しましょう。
SlackやChatWork等といった普段社員が使用しているビジネスチャットツールと連携することができれば、社員一人ひとりのピアボーナス制度の使いやすさは向上します。
その他、使い心地の良さも重要な要素になるでしょう。具体的には、賞賛の声をコメントとして残しやすいか、ポイントの付与は手軽に実施可能なのか、等が挙げられるでしょう。
以上より実際にツール導入を検討する際は、社員が運用しやすいツールかを念頭に情報収集すると良いでしょう。
条件②:コミュニケーション機能があるか
ピアボーナスツールの中には、相手にメッセージやコメントを共有することで社内コミュニケーションを高める機能を搭載しているツールも存在します。
一言二言の一見些細なやり取りに見受けられますが、リモートワークの活用が進みコミュニケーションが薄くなった環境下では、社員同士で盛り上がりを醸成することができます。
そのため、社員間で使用可能なコミュニケーションに関する機能の有無についても併せて確認しておきましょう。
ピアボーナスの導入事例とは?:メルカリ
本項では、日本でピアボーナスを普及させたUniposを導入した株式会社メルカリの事例をご紹介します。
同社は、ピアボーナス制度の導入により一体どのような組織課題の解決に繋げたのでしょうか。
前提:Uniposとは
Unipos(ユニポス)とは、Unipos株式会社(旧Fringe81株式会社)が運営するSaaSプロダクトで、ピアボーナスを通じて組織変革を促すサービスです。
SlackやChatWork等のビジネスチャットツールとの連携が可能で、
・社員同士で気軽にコミュニケーションを取れる
・「拍手ボタン」を通じて誰もが賞賛に賛同できる
点が特徴的なサービスです。
また、日本でピアボーナスを広めた先駆けとも呼べるサービスとして知られています。
導入前の課題
2018年に上場して急速に事業を拡大しているメルカリでは、拠点や部署の異なる社員同士のコミュニケーションが希薄化していることが課題でした。
実は同社では、ピアボーナスの導入以前から3か月に1回感謝の気持ちを込めてメッセージを送り合う「All for Oneカード」という独自の制度を導入していましたが、部署や拠点を超えてリアルタイムに感謝を贈り合いたいという意向からUniposを活用したピアボーナス制度に移行したそうです。
導入後の効果
同社のUnipos上では、1日約300件ものメルチップの送り合いが行われています。
拠点や部署を超えた社員同士のやり取りも活発的に行われ、メルチップのやり取りをきっかけに新たなコミュニケーションが生まれることもあるそうです。
特に、部署のマネージャーを中心としてメルチップの送り合いが活発化しているとのことで、現場で働く社員もその姿を見て送りやすいでしょう。
本項ではメルカリを取り上げて解説いたしましたが、その他の事例については以下記事にまとめていますので、ご興味のある方は是非ご覧ください。
⇒ピアボーナス制度の6つの失敗例|制度の導入事例と成功させるためのポイントも解説
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回はピアボーナスについて、制度概要から導入のメリット・デメリット、おすすめのツール等幅広くまとめてみました。
ピアボーナスは、従業員エンゲージメントの高い従業員を増やすことを目的に従業員同士で賞賛と報酬を送り合うスキームで、優秀な人材の定着ひいては持続的な企業成長を叶える制度です。
しかし、ピアボーナス導入にあたってツールのランニングコストがかかる上に、制度が意図した形で機能しているか定期的に確認が求められるなどの運用コストもかかるので、導入して終わりにならないように注意が必要です。
最後までお読みいただきありがとうございます!
人事制度について、こちらの記事もご参照ください。
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⇒人事制度と設計時の注意点|人事制度の種類と構築の流れについて解説
⇒人事考課制度の作り方|会社と社員へ与える影響と運用の注意点を解説
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⇒等級制度とは?3種類の等級制度と作成方法・導入事例について解説
⇒評価制度とは?評価制度の目的・種類・制度の導入時に考えるべきポイントを解説
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⇒ノーレイティングとは?メリット・デメリット・評価制度を成功させるポイントを解説
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この記事を書いた人
共同創業者&代表取締役CEO 茅原 淳一(かやはら じゅんいち)
慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。