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人材アセスメントとは?注目される背景・適切な測定手法・課題と解決ポイントについて詳細に解説

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

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人材アセスメントとは、第三者が客観的に人材のスキルや適性などを分析・評価することを指します。評価結果は採用や人員配置の判断材料として活用され、多くの企業が導入を検討または実施しています。

現在、終身雇用制度の崩壊により雇用の流動性が高まり、人材不足による採用競争が激化しています。その背景から、組織は人員配置の適正化をますます重視する必要があります。

本記事では、効果的な人材アセスメントの活用についてポイントや導入の手順を解説します。経営者や人事担当者の方が人材の育成や配置、活用方法に悩んでいる際に、参考となる情報を提供します。


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人材アセスメントとは

人材アセスメントは、人材の特性を客観的に評価するためにさまざまな調査手法を用いることです。適性検査、ヒアリング、アセスメント診断などを通じて、受検者の行動や言動、態度を観察し、普段は見えづらい特徴や能力を客観的に評価します。

従来の評価方法との大きな違いは、「客観性」です。従来の方法では上司の主観が入りやすく、上司との相性や評価者のバラつきなど公正に評価することが難しいという課題がありました。しかし、人材アセスメントでは評価者がいないため、外部要因の影響を受けることなく公正な評価が可能です。適性検査やアセスメント研修、診断ツールの活用により、データに基づく客観的な評価が行えます。

この公正な評価を通じて社員は公平に評価され、得られたデータを活用して適切な人材配置を行うことで企業の業績向上につながります。

人材アセスメントが注目されている背景

日本で人材アセスメントが注目を集めている要因には、以下の3つが挙げられます。
・終身雇用から成果主義への移行
・人材不足によるマネジメントの重要性の向上
・リモートワーク・テレワークによって適切な人事評価が困難

それぞれについて解説していきます。

終身雇用から成果主義への移行

従来の日本の雇用慣行では、一度採用された企業には長期間に渡り勤務する年功序列型の人事制度が一般的でした。また、ジョブローテーションによりキャリア開発を行ったり在籍期間やキャリアの長さでマネジメントポジションに登用される仕組みが主流でした。

しかし、近年、働き方の多様化やキャリアの魅力を追求する転職が増加し、グローバル化の進展によって成果主義に基づくジョブ型雇用を取り入れる企業も現れるようになりました。在籍年数だけでなく、より実績を出せる人材を重要なポジションに登用していくことが、国際競争に勝つために必要な時代へと移行しています。

また、終身雇用制度の枠組みを超えて、転職によるキャリアの成長が実現できる現代になった昨今では、社員の個々の能力を最大限に活用する人材配置の重要性も増しています。さらに、適切ではない業務に従事することで不満が溜まり離職する可能性もあるとされています。

成果主義の歴史が浅い日本では、人材の能力を数値化するシステムを持たない企業が多く存在し、人材アセスメントの需要が高まっていると言えます

人材不足によるマネジメントの重要性の向上

少子高齢化による労働人口の減少で、日本の労働市場における人材不足が深刻化しています。

競争が激しい「売り手市場」で企業は採用活動に注力し、優秀な人材を獲得しようと競っています。入社した人材を長期的に企業に定着させるためには、定期的なマネジメントが重要です。特に中小企業は少人数での高い業績を求める傾向があります。そのため、社員個々人の長所と短所を理解し、個別のマネジメントを行う必要があります。

また、中核となる人材の離職は企業にとって大きな経済的損失となる危険性も孕んでいます。人材の流出を防ぐためには、社員がやりがいを感じられる働きやすい環境や待遇を整備する必要があります

リモートワーク・テレワークによって適切な人事評価が困難

新型コロナウイルスのパンデミックに伴う感染拡大により、リモートワーク・テレワークが世界的に急速に広まりました。それに伴い近年は部下の就業状況が以前よりも見えづらくなり、適切な評価が困難になっているという話もあります。

リモートワークが導入される前は、毎日顔を合わせて部下の仕事ぶりを確認できた企業でも、リモートワークになると日常の業務やメンタルの状態といった総合的な部下の状況を把握する難しさが増しています。

特にリモートワークが導入されて以降に入社した社員については、対面でのコミュニケーションを制限していた企業も多く、上司が部下の特性や強みを正確に把握することが難しいとも言われています。

それゆえ、リモートワークによる評価の難しさを克服するために、人材アセスメントが注目を集めています。従来の上司による評価方法では、日常のコミュニケーションが評価に大きな影響を与える傾向があります。

人材アセスメントを通じて客観的に人材を評価することで、部下の日常の業務が見えにくくても公正な評価が可能となります。

主な人材アセスメント指標

客観的評価の指標とは、主観的な意見や感情に左右されず、客観的なデータや観察に基づいて評価を行うための基準や尺度です。

具体的な例として、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が、IT技術者やITを活用する企業に必要なタスクやスキルなどを包括的に定義した「iコンピテンシ・ディクショナリ」や厚生労働省が公表している業種別や職種別の職業能力評価基準があります。

経験・スキル

IT技術者の職種においては、「iコンピテンシ・ディクショナリ」に基づいたタスクの定義に従って、業務スキルや業務遂行力などの明確な能力を評価します。

具体的には、「プロジェクトマネジメント → プロジェクト立ち上げ → プロジェクト企画書の作成」といったタスクを細分化し、能力レベルに応じて評価を行います。他の職種においては、職業能力評価基準が適用されます。

ポテンシャル

行動特性や資質・性格といった潜在能力に関しては、ストレス・資質アセスメントという個人特性分析ツールで評価することがあります。このツールは、資質因子や社会性因子といった性格や行動の要素を評価します。

具体的には、「持続性」「慎重性」といった資質因子や、「協調性」「責任感」といった社会性因子、さらには「達成欲求」「秩序欲求」といったモチベーション因子などを組み合わせて、職務適性を判断することができます。

人材アセスメントの適切な測定手法

人材アセスメントは、人材を多角的に評価するために有効な手法です。ただし、効果を最大化するためには適切な導入手順が重要です。以下の手順を順序立てて進めましょう。
1.目的の明確化
2.測定する項目の設定
3.最適な手法の選択
4.アセスメント結果を分析・人材特徴の把握
5.現状把握から課題解決に繋げる

1.目的の明確化

人材アセスメントの目的を明確にすることは、単に「部長層への昇格者を選考する」といった具体的な用途だけでなく、「何を実現したいのか」という点を明確にすることが重要です。

例えば、「高い成果を上げる管理者を特定し、同時に管理者として求められる役割を理解してもらい、職務への意識転換を促す機会を提供する」といった目的が考えられます。

2.測定する項目の設定

次に、測定する項目は、今回の目的に合致しているか・何を測定する必要があるかを考えましょう。性格や気質などの評価の開発が難しい項目を測定することは、能力開発の観点からは意味がありません。

例えば、採用段階で他の参照情報が限られている場合は、得意や不得意といった能力傾向、興味関心、価値観、性格、動機、キャリア志向などの潜在的な個人の資質を把握することが有益です。

項目を検討していく中で、「測定項目は多い方が良い」と考える方もいるかもしれませんが、過剰な項目設定は情報の判断を難しくします。再度目的を念頭に置き、必要な項目を選定することが重要です。

評価項目については、次の記事もご参照ください。
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3.最適な手法の選択

測定内容を考慮した上で、アセスメントの最適な手法を選択することが重要です。また、複数の測定手法を組み合わせて、相互に補完しながら活用することも効果的です。

例えば、管理職の適性を評価する場合、能力測定だけでなく、本人のキャリア志向を把握し、期待される役割を果たす意欲や能力があるかどうかも考慮すると良いでしょう。適切な手法の選択により、より多角的かつ総合的な評価が可能となります。

4.アセスメント結果を分析・人材特徴の把握

アセスメント結果は、昇進や昇格の判断に限らず、自社の事業戦略に合わせた強みや課題を明確にするためにも活用できます。アセスメント結果を属性ごとに分析することで、組織の特徴や個々の人材の特性を把握すことができます

アセスメント結果を受検者と共有する際には、フィードバックも同時に行いましょう。単に結果を伝えるだけでは、受検者が結果をどう受け止めるべきかが分からない場合もあります。

もし、従業員の自己啓発や能力開発を目的としているのであれば、アセスメント結果をもとにどのような具体的なアクションを取るかを検討し、サポートしていくことが重要です。

5.現状把握から課題解決に繋げる

アセスメント結果を通じて、組織の現状と目標とのギャップを把握し、全社や部門の課題設定に反映させます。同時に、アセスメント結果を本人にフィードバックし、気づきや能力開発の機会として活用します。

人事担当者の声を聞くと、活用目的や方法が十分に検討されずにサービスが選択されたり、アセスメントの結果がただ受け入れられるだけで活用されていないケースが見受けられます。アセスメントは手段に過ぎません。効果的に実施し、事業上の課題解決に活用する方法を重要視することが必要です。

人材アセスメントに関する課題一覧

人材アセスメントの活用における課題として、次の2点が挙げられます。
・昇進する人材を選別するポイント
・未来のリーダー候補者を選別・モチベーションを上げるポイント

これらの課題の解決ポイントをそれぞれまとめていきます。

昇進する人材を選別するポイント

このテーマにおける課題は「昇進する人材の選別」です。求める人材イメージに照らして、活躍可能性が高い人材を見極めることが重要なポイントとなります。その際のプロセスは以下となります。
・求める人材イメージの明確化
・人材の評価内容の妥当性の確認
・質の高いアセスメントを活用
・当事者視点で施策の検証

求める人材イメージの明確化

自社において、各役割で成果を上げるためにはどのような人材が必要なのか、つまり「求める人材イメージ」を明確にすることが重要です。

求める人材像は、人事制度との整合性を持つ必要があります。もし、役職および等級ごとの人材要件が定まっていない場合は、まずその設計を検討することが重要です。

人材の評価内容の妥当性の確認

成果を出す人材を選び出すためには、成果に関連する能力や特性を的確に評価することが重要です。しかし、成果と関連の弱い能力や特性を測定しても意味がありません。

また、適切な能力や特性であっても、アセスメントの手法では正確に測定ができない場合もあります。そのため、評価内容として測りたい能力や特性が、期待する役割と関連しているかどうか、またアセスメントによって正確に測定できるかどうかを確認することが重要です。

質の高いアセスメントを活用

質の高いアセスメントから得られる正しい結果を活用するためには、アセスメントの科学性やアセスメント担当者の能力が重要です。つまり、評価基準が明確かどうかや、専門のアセスメント担当者が訓練されているかなど、科学的な検証が行われたサービスを選ぶことが重要です。

また、表面的なアセスメントだとその場しのぎで高い評価になってしまう可能性もあるので、人材の能力や特性を深く理解するための構造があるかどうかも確認する必要があります。

当事者視点で施策の検証

アセスメントのプロセスを経ることで、アセスメントを受ける人が自己の気付きや学びを得ることができ、その結果に対する納得感も高まります。この納得感は、昇進制度全体における納得感にも影響を与えます。

人材アセスメントのプロセスは、単に結果を得ることだけでなく、アセスメント受検者が新たな役割へと意識変える機会としても有効に活用することが重要です。

未来のリーダー候補者を選別・モチベーションを上げるポイント

このテーマにおける課題は、「未来のリーダー候補者の選別・モチベーションを上げる」です。未来のリーダー候補者を段階的・多面的に見極め、モチベーションを上げることが重要なポイントとなります。その際のプロセスは以下となります。
・科学的に検証された「基準」で、リーダー候補者を選別
・段階を踏み、多様な角度からリーダー候補者を選別
・期待や現状の評価を伝え、リーダー候補者のモチベーションを上げる

科学的に検証された「基準」で、リーダー候補者を選別

科学的に検証された「基準」に基づいて、リーダー候補者を選別することは重要です。多くの企業では、現在の業績や活躍を基準にして、各部門や部署からの推薦によって次世代のリーダーを選出しています。

しかし、現在の活躍状況と将来の活躍可能性は必ずしも一致しない場合があります。そこで、適性検査やアセスメント研修など、科学的に検証された手法を使用して、「将来の活躍可能性」を測定することが有効です。この時、その後の実績との関連性が明確に実証されている手法を選択することが重要です。

段階を踏み、多様な角度からリーダー候補者を選別

次世代のリーダー候補者を選別する際には、複数の段階を踏んで様々な観点から人物を見極めることが有効です。一度にすべての側面を評価するのではなく、段階的なアプローチを取ることが重要です。

例えば、最初に現在の活躍状況を基準に候補者を一次選抜し、次にリーダーとしての適性を確認し、最後に将来必要な能力のポテンシャルを測定するというように、段階を分けて絞り込んでいくプロセスが良いでしょう。

期待や現状の評価を伝え、リーダー候補者のモチベーションを上げる

リーダー候補者を選定した後は、彼らのモチベーションを高めるために、期待や現状の評価を明確に伝える必要があります。

また、次世代リーダーに必要な知識やスキルを身につける機会を提供することも重要です。学びの機会を最大限に活用するためには、役割への期待を明確にし、学びと関連付けることが必要です。

一般的に、学びは本人がその必要性を感じたときや学びの目標が明らかな場合に効果が高まるとされています。そのため、次世代リーダーの育成プログラムでは、役割の全体像を伝えるプロセスや、アセスメント結果をもとに今後必要な能力の開発について人事や上司と合意するプロセスを策定することが重要です。

まとめ

働き方の多様化や人材不足の進展に伴い、従来の一律な評価ではなく、各従業員の適性やスキルを最大限に活かすことが、今後の人材マネジメントに求められています。

従業員の能力を最大限に引き出すための手段として、人材アセスメントの活用を検討することをおすすめします。それによって、個々の従業員の特性や適性を把握し、適切な役割や仕事の配置、育成プランの策定が可能になります。

有効な人材アセスメントの導入によって、組織全体のパフォーマンス向上や従業員の満足度向上につながるでしょう。

本記事が、ベンチャー・スタートアップ企業の経営者・人事担当者の方のご参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。