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イグジットとは?イグジット(EXIT)の種類・成功と注意すべきポイントについて解説!
執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)
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資金調達を進めたい経営者の方の
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経営者がイグジット(EXIT)をする方法としてIPOとM&Aに加えて、MBO・EBO・LBOという5つの方法があります。
それぞれの共通点は、売り手側である経営者・創業者が企業の所有権・経営権を手放し、投資した資金を回収・利益を得ることです。
これから事業を始める方・事業の着地点を考える方の中には、「どのようなイグジットがあり、それぞれのメリット・デメリットを吟味した上で、今後の方向性を決めたい」と思っている方もいるでしょう。
本記事では、イグジット(EXIT)の種類とそれぞれのメリット・デメリットおよびイグジットを成功させるポイントと注意点について解説していきます。
イグジット(EXIT)について、こちらの記事もご参照ください。
⇒EXITにおけるIPOとM&Aについて|相違点・メリット・デメリットについて解説
目次
イグジット(EXIT)とは
イグジット(EXIT)とは、スタートアップ・ベンチャービジネスや企業再生などにおいて出資者である投資会社や創業者が株式を売却して、投資した資金を回収や利益を得ることをいいます。
イグジットには、企業を創業した後の利益の確定を出口と見立てた意味合いがあります。また、利益の回収を収穫と捉え、ハーベスティングとも言われています。
イグジットの種類
IPO
IPO(Initial Public Offering)とは、まだ上場していない企業が株式を証券取引所に上場させ、多くの投資家に対して株式公開することをいいます。株式が上場されることで、新株の公開だけでなく、上場前に株主の持つ株式が売却されます。
IPOのメリット
IPOのメリットは、企業の信用度が上がることや資金調達をしやすくなることなどがあります。株式が公開されることで、多くの投資家に株式を売却する機会を得るので多額の資金調達をすることもできます。
さらに、創業者が経営権を保有したまま株式の一部を売却できるので、完全に経営権を手放したくない方にも向いているイグジットと言えます。
IPOのメリットについては、こちらの記事もご参照ください。
⇒ベンチャー企業がIPOする意義はあるのか?上場のメリット・デメリット
⇒IPOのメリット・デメリットとは?企業・株主・従業員の観点で解説
IPOのデメリット
IPOの1番のデメリットは、上場までにある程度の企業規模が求められることと上場審査の厳しさにあります。
東京証券取引所の市場区分の中にあるグロース市場は、上場する条件は「株主数150人以上・流通株式数1000単位以上・流通株式時価総額5億円以上」となっています。この要件を満たすために、少なくとも上場の3年前から財務や社内体制を整理し、上場審査をパスしなければなりません。
IPOのデメリット・上場審査・グロース市場については、こちらの記事もご参照ください。
⇒ベンチャー企業がIPOする意義はあるのか?上場のメリット・デメリット
⇒IPOのメリット・デメリットとは?企業・株主・従業員の観点で解説
⇒上場審査とは?審査基準・審査の流れ・審査通過のポイントを徹底解説!
⇒グロース市場とは?市場区分の再編による変化を徹底解説!
M&A
M&A(Mergers & Acquisitions)とは、企業の合併および企業買収のことをいいます。自分の企業を他社に株式や事業売却によってイグジットすることで、事業資金を回収することができます。株式譲渡や事業譲渡するケースもあり、バイアウトとも言われています。
M&Aのメリット
M&Aのメリットは、IPOよりも短い期間でのイグジットと赤字でも売却できるケースがあることにあります。
M&Aには審査などがないので、買い手と条件の折り合いがつけば企業の経営権や事業を売却できます。さらに、買い手側が事業の将来性などに価値を見出すことで企業を買収することもあり得るのでIPOに比べてメリットがあると考える方もいるでしょう。
M&Aのデメリット
M&Aのデメリットは、メリットの逆になりますが企業の買い手がいない場合もある点にあります。事業の買収を考えている側が、M&Aを考えている企業に魅力や将来性を感じないことには、そもそも売買契約が発生しません。
また、仮に企業の売買契約が進んだとしても、売り手側が思う希望の価格で売却できないことも考えられます。
MBO
MBO(Management Buyout)とは、経営陣が自社の株式を創業者・出資者から買収することをいいます。MBOは、投資ファンドからの出資や金融機関の融資によって資金調達することで、自社の株式を買収し、経営権を獲得していきます。
MBOのメリット
MBOのメリットは、企業の所有者と経営陣が同じになることにあります。これによって、経営における意思決定が迅速になったり、企業秘密が外部に漏れにくいなど企業を売ってイグジットする側として、買い手側にこのメリットを訴えることができます。
MBOのデメリット
MBOのデメリットは、経営陣が少数ゆえにトップダウンの意思決定による失敗のリスクなどがあります。また、経営陣が所有者と同じになることで、経営の監視機能が弱体化することも挙げられます。
さらに、親会社から離れてしまうことで売上や利益が減少してしまうというデメリットも起こり得ます。
EBO
EBO(Employee Buyout)とは、従業員が創業者・出資者の所有する株式を買収することをいいます。従業員が買い取った株式の割合によって、経営も任せることもできるので後継者に事業を継がせることが難しい企業であっても事業承継をすることができます。
EBOのメリット
EBOのメリットは、社内の事情を知っている従業員が株式・経営権を買収するために社風が大きく変わらないことにあります。したがって、今まで社内で貢献してくれていた他の従業員が離脱する可能性が下がるということも考えられます。
また、従業員が後継者として事業を引き継ぐので事業承継がスムーズに行われるというメリットもあります。
EBOのデメリット
EBOのデメリットは、従業員が個人として企業の買収を行うため多額の資金調達を必要とすることがあります。買収する企業の価格にもよりますが、個人の支払える金額を上回る場合は、金融機関から融資を受けることも視野に入れなければなりません。
また、従業員が経営者として企業を引き継ぐために、企業がそれ以上に成長しない可能性もあります。従業員としてのスキルと経営者としてのスキルは違うので、期待以上に企業が成長しないことも考えられます。
LBO
LBO(Leveraged Buyout)とは、融資によって資金調達をして、企業・事業を買収することをいいます。ある一定のキャッシュフローを創出している事業を融資を活用することで買収するので、買う側は少ない資金で企業・事業を買収することができます。
LBOのメリット
LBOのメリットは、通常よりも高い売却益を期待できることにあります。LBOの場合、既存の株主から株式を買い取ることになるので、通常の株価にプレミア価格を上乗せすることが多いです。これによって、売り手側は、通常よりも高い売却益を得る可能性が高くなります。
LBOのデメリット
LBOのデメリットは、売り手側の経営権がなくなってしまうことです。LBOでは、基本的には買い手側が100%株式を取得するので、買収された企業は新たな経営陣を送り込まれることが多く、経営権を失うことになります。
2段階イグジットとは
2段階イグジットとは、上場していない企業が最初にM&Aによって大企業の傘下に入り、その後IPOを目指すというイグジット手法です。
2段階イグジットでは、創業者は大企業の経営リソースを利用することで事業の成長・拡大を目的として、過半数の株式を売却します。その後、創業者は一定の株式を所有した状態で企業に残留し、親会社となる大企業とIPOを目指していきます。
2段階イグジットは、売り手側である創業者にとって、将来的にIPOを目指しており、上場を見据えた企業価値評価をされてM&Aをできるので、通常のイグジットよりも高い価格での売却可能性があります。
また、買い手側から考えると、売り手側がIPOによる利益が確定する前に企業を辞めてしまう可能性は非常に低く、信頼関係を構築することで大きな相乗効果を生み出す可能性があります。これによって、M&A後の事業に起こりうるリスクを回避しやすくなるというメリットがあります。
イグジットの現状(日本)
三菱総合研究所の調査(「平成30年度産業経済研究委託事業」に関する報告書)によると、2014年から2017年にかけて株式公開(IPO)の割合が58%〜76%であることが分かり、このことから日本におけるベンチャー企業のイグジットの手段の半分以上が株式公開であることが言えます。
同じく三菱総合研究所の調査によると、アメリカのベンチャー企業の90%程がイグジットの手段としてM&Aを選んでいるという特徴がまとめられています。
日本が抱えている社会問題の中に少子高齢化がありますが、この問題は日本における経営者の後継者不足にも影響を与えています。今までは、親族内での事業承継が多くありましたが、近年では事業承継に関係するM&Aが日本国内でも増加傾向にあるという特徴も見受けられます。
企業の後継者育成計画(サクセッションプラン)については、こちらの記事もご参照ください。
⇒サクセッションプランとは?効果的な戦略人事を行うためのプラン作成・メリット・デメリットを解説
イグジットを成功させるには
企業価値の向上
イグジットの成功には、イグジットの前に可能な限り企業価値を高めることが重要です。このように企業価値が高いままでイグジットすると、IPOをする時や株式を売却する時などに創業者・経営者に有利な条件でイグジットを進めることができます。それゆえに、イグジットによって多額の利益を得ることも可能になります。
企業の価値を高めるには、コスト管理をしっかりと行い、事業の収益性を高めることで利益体質な企業にすることに尽きます。競合他社にはない自社の強みを作り上げることもイグジットでは重要になります。
具体的な計画
イグジットを見据え企業の価値を高めるには、具体的な計画を立てることは必須です。行き当たりばったりで事業を進めてしまうとイグジット(EXIT=出口)は見えてきません。
ゴールから逆算し、どの時期に何をするかなど経営に関する決定事項をあらかじめ考えておく必要があります。もちろん、事業が予定通りに進まないこともあるので計画が狂ってしまうこともあり得ます。しかし、そのような場合も踏まえて具体的な計画やシュミレーションをすることで自社が理想のイグジットをし、成功像に近づけることができるでしょう。
複数の選択肢
イグジットを成功させるには、自社が取りうる選択肢を多く持つことも重要です。1つの選択肢をやり続け、一点突破することも時には必要かもしれません。しかし、経営環境や経済情勢などさまざまな事象が変わる中で、選択肢を変える必要があるかもしれません。
イグジットとして、IPOが難しくなった場合M&Aで事業売却をし、その利益で新事業を始めるなど柔軟な考え方で選択肢を増やすことがイグジットを成功させるのに欠かせません。
イグジットで注意すべきポイント
戦略の選び方
イグジットにあたって注意すべきポイントは、戦略の選び方です。経営権をどうするか、資金調達はどれくらいにするか、何に資本を投下するか、何をして何をしないか、など経営は意思決定の連続です。
経営者が望むイグジットを実行するには、戦略を慎重に考え、それに従った意思決定をすべきでしょう。
資金調達については、こちらの記事もご参照ください。
⇒資金調達の手段・方法には何がある?それぞれのメリット・デメリットも徹底解説!
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状況に応じたプランの検討
次に、注意すべきポイントは柔軟なプランの変更になります。イグジットの成功でも述べた、前もって具体的な計画を立てることが重要であることを踏まえて、その計画通りに事業が進まないこともあります。
そのような場合、柔軟にイグジットの方向を変更することも検討するべきでしょう。経営権を第三者に与えるか、従業員に与えるか、それとも上場まで組織力を強化していくか、状況によって変わることもあります。
創業当初、現在からイグジットまでの状況をシュミレーションし、今後のプランを検討しましょう。
タイミング
最後に注意すべきポイントはタイミングです。特に、M&Aでイグジットする場合はその時々によって企業の価値が変わってきます。現在の企業の価値が高くても、翌年には下がっているかもしれません。
また、IPOも3年前から準備していたにも関わらず世界的な不景気や疫病など自分たちではどうにもできない外部要因によってタイミングを逃してしまう可能性もあります。
そのような場合は、焦らずに改めてイグジットプランを検討し直し、IPOからM&Aに変更するなど複数の選択肢を用意した上で意思決定すべきでしょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
本記事では、これから事業を始める方・事業の着地点を考える方に向けて、イグジット(EXIT)の種類とそれぞれのメリット・デメリットおよびイグジットを成功させるポイントと注意点について解説をしました。
本記事が上場を目指しているスタートアップ・ベンチャー企業の経営者の方の参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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この記事を書いた人
共同創業者&代表取締役CEO 茅原 淳一(かやはら じゅんいち)
慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。