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コーポレートガバナンス(企業統治)とは?目的・強化方法・歴史的背景について解説!
執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)
コーポレートガバナンス・コードの基本のキ
~概要と基本原則を解説~
コーポレートガバナンス・コードの「基本的な概要」と「基本原則」にフォーカスして紹介
企業の不祥事が明らかになり、社長や責任者が記者会見で今後不祥事が起こらないようにするために「コーポレートガバナンスを強化していく」と言うシーンを見ることがあります。
コーポレートガバナンスは、戦後の日本や昭和時代のビジネスシーンでは聞かない言葉でしたが、日本で粉飾決算など企業の不祥事が多く起きたことをきっかけに上場企業で導入されるようになりました。
平成を経て、令和の時代に入っても、企業の不祥事は消えることはなく、上場企業の粉飾決算だけでなく株式非公開企業におけるコンプライアンス違反や労働基準法違反など、ニュースでまだまだ見かけます。
これから上場を目指すベンチャー企業やスタートアップ企業も内部統制の構築や社内規則の制定などコーポレートガバナンスに関わる社内体制を強化していく必要があります。
本記事では、コーポレートガバナンスについて歴史的背景と似ている用語、目的、強化する方法について解説していきます。
コーポレートガバナンスについては、こちらの記事もご参照ください。
目次
コーポレートガバナンスとは
コーポレートガバナンスは、企業の組織での不正や不祥事を防ぐために、企業経営を監視する仕組みのことで、企業統治とも呼ばれます。
会社は経営者のものではなく資本を投下する株主のものであるという考え方のもと、株式会社は株主やステークホルダー(従業員や債権者など)の利益を最大化しなければなりません。
そのため、会社は社外取締役や社外監査役など社外の管理者によって経営リスクとなる事案が発生しないように監視を行い不祥事により株主やステークホルダーの利益を損なわないようにすることや、企業価値を長期的に向上させていく必要があります。
会社の経営監視がうまくいっている状態のことを「コーポレートガバナンスが保たれている」、「コーポレートガバナンスが効いている」と表現されたりします。
コーポレートガバナンスが求められるようになった歴史的背景
コーポレートガバナンスという言葉は1980年代にアメリカで誕生しました。経営者は株主の利益を最大化するために企業の運営を行うものであるという考え方のもと、アメリカで1980年代に経営者が株主の利益を最大化するために企業の運営を行っているかを監視する仕組みが誕生しました。この監視の仕組みのことをコーポレートガバナンスと呼ぶようになりました。
日本でコーポレートガバナンスが注目されるようになったのは1990年代です。1990年代に、日本で「粉飾決算・偽装表示・違法労働」を中心とした企業の不祥事や経営悪化が多数発生したことをきっかけに、取締役を監査役が監視する従来型の仕組みに加えて、「委員会設置会社」というアメリカ型の統治体制が新たに導入されました。
さらに、2015年3月にコーポレートガバナンスが効果的に実行されるための主要な原則が示された、コーポレートガバナンス・コードの原案が金融庁から公表されました。これにより、上場企業はコーポレートガバナンス・コードに従って対応を実施しているか、実施していない場合には実施していない理由を説明する報告書を作成しなければならなくなりました。
コーポレートガバナンス・コードについては、次の記事もご参照ください。
⇒コーポレートガバナンス・コードとは?概要・特徴・制定された背景について解説
⇒コーポレートガバナンス・コードの5つの基本原則|特徴・制定の背景・適用範囲と拘束力について解説
⇒【2021年改訂】コーポレートガバナンス・コードの実務対応と開示事例
⇒プリンシプルベース・アプローチ|ルール・ベース・アプローチとの比較・背景・意義について解説
⇒コンプライ・オア・エクスプレイン|コンプライアンスへの対応・意義・必要性について解説
コーポレートガバナンスと似た言葉
ビジネスにおける専門用語は難しく、一般的な企業においてコーポレートガバナンスも日常的に使われる言葉ではありません。企業の不祥事が起きた際に、記者会見で社長や責任者が「コーポレートガバナンスが欠如していた」「今後は、コーポレートガバナンスを強化していく」という発言をする場面をニュース番組などで見かけることがあります。
ここでは、コーポレートガバナンスと似ている用語として以下の3つを取り上げて解説していきます。
・内部統制
・コンプライアンス
・CSR
コーポレートガバナンスと内部統制
内部統制は企業の不祥事を防ぐために、企業組織内の全従業員が遵守するべきルールのことです。
コーポレートガバナンスは社外の人間が経営を監視する仕組みであることに対して、内部統制は社内の統治ルールであるという点に違いがあります。
また、内部統制は会社法と金融商品取引法によって定められています。上場会社や委員会設置会社は内部統制を整備しなければなりません。ここにおいてもコーポレートガバナンスと内部統制の間で違いがあります。
一方で、コーポレートガバナンスと内部統制のどちらも、企業の不祥事を未然に防ぎ、企業の経営の透明性を担保するという目的は共通しています。
内部統制については、次の記事もご参照ください。
⇒IPOに内部統制が必要な理由とは?構築する目的・要素も解説!
⇒内部統制とは?会社法・金融商品取引法での定義や方針を徹底解説!
コーポレートガバナンスとコンプライアンス
コンプライアンスは会社が法律や社会倫理、企業倫理を守ることを指し、法令遵守とも呼ばれます。
企業が法令等に違反している状態であるということは、企業は不祥事を起こす可能性が非常に高い状態であるということです。
そのため、企業がコンプライアンス違反を犯さないため(すなわち、企業が法令や社会倫理、企業倫理に違反しないようにするため)に、コーポレートガバナンスを保つ(外部から経営を監視する)必要があります。
コーポレートガバナンスとCSR
CSRは、Corporate Social Responsibility(企業の社会的責任)の略であり、企業が事業を行う際に果たさなければならない社会的責任のことです。
CSRは国際標準化機構によって「ISO26000」という国際規格が定められており、ここで示されている以下の7つの原則に従って行動することが求められています。
(1)説明責任
(2)透明性
(3)倫理的な行動
(4)ステークホルダーの利害の尊重
(5)法の支配の尊重
(6)国際行動規範の尊重
(7)人権の尊重
コーポレートガバナンスを保つことは上記の透明性、ステークホルダーの利害の尊重という原則に従うことに繋がります。
コーポレートガバナンスの目的
コーポレートガバナンスの目的は大きく以下の3つが挙げられます。
・企業の不祥事を防止し企業経営の透明性をあげる
・中長期的な企業価値の向上
・株主やステークホルダーの権利や立場の尊重
以下で詳しく解説を行います。
企業の不祥事を防止し、企業経営の透明性を上げる
コーポレートガバナンスの目的は、企業が不祥事を起こすことを未然に防ぎ、企業経営の透明性を向上させることです。
コーポレートガバナンスは、経営戦略や財務状況、リスクマネジメントなどの情報を適切に管理し公開することや、企業の現状を正確に把握するといった役割があります。
社外取締役や社外監査役、委員会などを設置しコーポレートガバナンスの強化に取り組むことで、企業の不祥事を防止することができ、企業の抱える重要な経営戦略や財務状況、リスクマネジメントなどの情報を適切に管理、公開することで企業の経営の透明性が上がり、組織内での不正の防止に繋がります。
社外取締役・監査役については、こちらの記事もご参照ください。
⇒独立社外取締役とは?主要な役割・独立性の判断基準・選任要件・CGCとの関連性について徹底解説
⇒取締役会における監査役の役割とは?監査役の義務・取締役会の決議における監査役の関わりについて解説
中長期的に企業価値を向上させる
コーポレートガバナンスの目的には、中長期的に企業価値を向上させることがあります。
企業価値を向上させるためには、新規事業などの事業投資を行ったり、事業を行うための人材を確保する必要があります。
そこで、コーポレートガバナンスを強化することで、企業経営の透明性を高めることができ、その結果、新たに投資家や金融機関からの出資や融資を受けることができる可能性が高まります。そのため、コーポレートガバナンスを強化することにより、事業投資に充てるための資金調達を行いやすくなります。また、コーポレートガバナンスを強化し企業経営の透明性が高まることで、優秀な人材を確保しやすくなるという側面もあります。
さらに、コーポレートガバナンスを強化することにより企業の中長期的な成長の基盤ができるため、結果、企業の中長期的な成長に繋げることができます。
資金調達については、こちらの記事もご参照ください。
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株主やステークホルダーの権利や立場の尊重
コーポレートガバナンスの目的には、株主やステークホルダーの権利や立場を尊重することも挙げられます。
企業は株主やステークホルダーの権利や立場を尊重し、企業を成長、発展させることで生まれた利益を株主やステークホルダーに還元する義務があります。
そこで、企業がコーポレートガバナンスの強化を行うことで、企業経営の透明性が高まり企業における不正や情報漏洩のリスクを減らすことができます。
その結果、株主やステークホルダーと良好な関係を築くことができます。
コーポレートガバナンス強化を行う方法
企業のコーポレートガバナンス強化を行う方法として、以下があります。
・内部統制を構築、整備する
・社外取締役・監査役を設置する
・社内規定を明確にする
・執行役員制度を導入する
・コーポレートガバナンスに関する周知を行う
以下でそれぞれの項目について詳しく解説を行っていきます。
内部統制を構築、整備する
コーポレートガバナンスと内部統制は企業の不祥事を未然に防ぎ、企業の経営の透明性を担保するという共通の目的があります。
そのため、組織内の内部統制の機能を整備することがコーポレートガバナンスの強化にも繋がります。
内部統制の機能を強化するためには、適切な社内の監視体制を整備する必要があります。それにより社内の不祥事や不正を未然に防ぐことができるようになり、結果としてコーポレートガバナンスの強化に繋がります。
内部統制については、次の記事もご参照ください。
⇒IPOに内部統制が必要な理由とは?構築する目的・要素も解説!
⇒内部統制とは?会社法・金融商品取引法での定義や方針を徹底解説!
社外取締役・監査役を設置する
コーポレートガバナンスを強化するためには、社外取締役や社外監査役を設置し、第三者の視点から経営陣が不祥事や不正を行わないように監視することが重要です。
社外取締役や社外監査役を設置する場合には、社外取締役や社外監査役のみが参加する委員会を設置します。この委員会では、社外取締役や社外監査役は株主やステークホルダーの代弁者としての役割を持ち、第三者の視点からの発言をすることが求められます。
社内規定を明確にする
組織のコーポレートガバナンスを強化するために、社内規定を明確にすることも重要です。社内規定が扱う範囲は、取締役会や監査役会に関する規定や情報管理に関する規定、従業員の労働条件に関わる就業規則や賃金・賞与に関する規定だけでなく、近年ではハラスメントや内部通報、テレワークに関する規定など広範囲に及びます。
全従業員が社内規定を理解することで、業務にあたる際や現場における意思決定の際に遵法意識の高い行動が期待されます。
社内規定に含まれる就業規則については、こちらの記事もご参照ください。
⇒就業規則の作成について|就業規則の作成手順と記載事項・作成時の注意点も解説
執行役員制度を導入する
コーポレートガバナンス強化を行うためには執行役員制度を導入することも効果的な方法です。
執行役員とは事業運営を行う従業員のトップの役職のことをいいます。経営の意思決定を行う取締役とは別に執行役員を選任し、経営の意思決定を行う者と実際に事業運営を行う者の役割を分離することで企業経営の透明度を高めることができ、コーポレートガバナンスの強化につながります。
コーポレートガバナンスに関する周知を行う
構築したコーポレートガバナンスに関する周知を株主やステークホルダー、従業員に行うこともコーポレートガバナンス強化につながります。
従業員に対しては行動規範や倫理憲章などの社内規定の周知を行うことで、業務執行や経営や現場の判断に関わる意思決定の判断基準を浸透させることができます。
株主やステークホルダーに対しては、社外取締役や社外監査役などによる経営監査を行っていることなど、構築したコーポレートガバナンスの仕組みの周知を行います。
このようにコーポレートガバナンスを理解している従業員のコンプライアンス意識が高まることで、企業の価値も中長期的に向上していくことが期待されます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
本記事ではコーポレートガバナンスの目的やコーポレートガバナンスを強化するための方法について解説を行ってきました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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この記事を書いた人
共同創業者&代表取締役CEO 茅原 淳一(かやはら じゅんいち)
慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。