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監査委員会とは?指名委員会等設置会社に置かれる監査委員会の目的・役割・権限について解説
執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)
役員報酬の相場レポート
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日本企業のガバナンス機能の強化は、アメリカのコーポレートガバナンスの発展と共に進化してしてきました。その中でも、企業の不正や会計の粉飾などを防ぐことを目的に、外部から社外取締役を招いて、経営の透明性を強化する潮流が見られます。
具体的な政策として2014年に改正された会社法の中で、指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社という制度が導入されるようになりました。
上場企業の中には、これからガバナンス機能を強化していくために指名委員会等設置会社や監査等委員会設置会社への移行を検討している所もあるかもしれません。
この記事では、経営者・役員・ガバナンス関係の担当者の方に向けて指名委員会等設置会社の取締役会の中に設置されている監査委員会について目的・役割・権限について解説します。
監査役会・監査委員会・監査等委員会の違い
名前が非常に似ていますが、どれも業務執行に関する適法性を監督するという役割は共通しています。従来は、監査役会が取締役会の業務執行の監督を行っていましたが、2014年の会社法改正によって指名委員会等設置会社に監査委員会が置かれ、監査等委員会設置会社に監査等委員会が置かれるようになりました。
内容 | 設置 | |
---|---|---|
監査役会 | 取締役の職務の執行を監査する監査役全員で構成される機関 | 監査役会設置会社 |
監査委員会 | 執行役・取締役の職務の監査 | 指名委員会等設置会社 |
監査等委員会 | 取締役の職務の執行の監査 | 監査等委員会設置会社 |
監査委員会とは
監査委員会とは、指名委員会等設置会社の取締役会の中に設置されている指名委員会、報酬委員会に並ぶ3つの委員会の1つです。監査委員会は、業務執行を担う取締役・執行役の業務内容の適法性と妥当性を監査する役割を果たします。
ここでは、監査委員会に関する以下の3つのポイントを解説します。
・監査委員会設置の目的
・監査委員会設置の役割
・監査委員会設置の権限
監査委員会の目的
指名委員会等設置会社に置かれる監査委員会の目的は、取締役・執行役を含む役員の職務執行を監査・監督することにあります。特に、社外取締役によって外部から組織の監査・監督をすることで経営の透明性を高める狙いもあります。
海外では、外部から社外取締役を招き、企業の不正や会計の粉飾を防ぐために業務の執行状況を監査・監督することでガバナンスの強化を図っており、監査委員会並びに指名委員会・報酬委員会を含む指名委員会等設置会社への移行をする日本企業は、海外企業や投資家から評価を得ることも目的としています。
監査委員会の役割
指名委員会等設置会社に置かれる監査委員会の役割は、取締役・執行役の職務執行に関する監査・監督および報告、会計監査人の選任・解任に関する議案の作成など経営に影響を与えるものが中心になります。
監査委員会において、監査委員は3人以上の取締役から構成されなければなりませんが、この過半数は社外取締役である必要があります。社外から取締役を招くことで、独立した視点から監査・監督機能が高まることが期待されます。
監査委員会の権限
監査委員会は、取締役と執行役の業務内容の監査をする役割を担っています。この業務を遂行するにあたって監査委員会は、会社法で定められている権限を行使することができます。特に緊急性が高い時は、それぞれの監査委員が単独で権限を行使する場面もあります。
ここでは、組織としての監査委員会と個人としての各監査委員それぞれの有する権限について解説していきます。
・監査委員会が行使する権限
・監査委員会が選定する監査委員が行使する権限
・各監査委員が単独で行使することができる権限
監査委員会が行使する権限
権限 | 内容 | |
---|---|---|
計算書類および事業報告ならびにそれらの付属明細書の監査、監査報告の作成 | ・監査委員会は、事業年度ごとに計算書類および事業報告ならびにそれらの付属明細書を監査し(会社法436条2項)、監査報告を作成しなければならない(会社法404条2項1号) ・監査委員会の監査報告は、監査委員会の決議によって形成されるが(会社法412条1項)、各監査委員は、その監査報告の内容が自己の意見と異なるときは、監査報告に自己の意見を付記することができる(会社法施行規則131条1項後段、会社計算規則129条1項後段) |
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会計監査人の選解任等に関する議案の内容の決定 | ・監査委員会は、株主総会における会計監査人選任、解任および不再任の議案の内容を決定する権限を有する(会社法404条2項2号) ・会計監査人に職務怠慢、非行または心身故障があった場合には、監査委員全員の同意により、監査委員会が会計監査人を解任することができる(会社法340条1項・会社法340条2項・会社法340条6項) ・会計監査人が欠けた場合には、監査委員会が一時会計監査人を選任しなければならない(会社法346条4項・会社法340条8項) |
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会計監査人の報酬等の決定の同意 | ・取締役が会計監査人の報酬等を定める場合には、監査委員会の同意を得る必要がある(会社法399条1項・会社法399条4項) | |
執行役・取締役に対する監査委員会への出席要請 | ・監査委員会は、執行役・取締役に対して、監査委員会への出席および監査委員会が求めた事項についての説明を要請することができ、執行役・取締役にはこれに応じる義務がある(会社法411条3項) | |
会計監査人からの報告受領 | ・会計監査人は、その職務を行うに際して執行役・取締役の職務の執行に関し不正の行為または法令もしくは定款に違反する重大な事実があることを発見したときは、遅滞なく監査委員会に報告する必要がある(会社法397条1項・会社法397条5項) |
監査委員会が選定する監査委員が行使する権限
権限 | 内容 | |
---|---|---|
業務財産調査権・子会社調査権 | ・監査委員会が選定する監査委員は、執行役、取締役および支配人その他の使用人に対し、いつでも、その職務の執行に関する事項の報告を求めることができ、また、会社の業務および財産の状況の調査をすることができる(会社法405条1項) ・監査委員会が選定する監査委員は、職務遂行に必要がある場合には、子会社に対しても報告の徴収や調査を行うことができる(会社法405条2項) ・選定された委員による権限行使は、監査委員会の意思決定に従って行うことが想定されており、監査委員会の決議があるときは、これに従わなければならない(会社法405条4項) |
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訴訟における会社の代表権限 | ・会社と執行役・取締役(元執行役・取締役含む。)との間の訴訟については、原則として、監査委員会が選定する監査委員が会社を代表する権限を有します(会社法408条1項2号) ・会社が株式交換等完全子会社の旧株主による責任追及訴訟または最終完全親会社等の株主による特定責任追及訴訟の対象となり得る訴訟を提起する場合等についても、同様に監査委員会が選定する監査委員が会社を代表する権限を有する(会社法408条3項・会社法408条4項) |
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会計監査人に対する報告請求権 | ・監査委員会が選定した監査委員は、その職務を行うために必要があるときは、会計監査人に対し、その監査に関する報告を求めることができる(会社法397条2項・会社法397条5項) | |
会計監査人の解任の報告等 | ・会計監査人に職務怠慢、非行または心身故障があった場合には、監査委員全員の同意により、監査委員会が会計監査人を解任することができる(会社法340条1項・会社法340条2項・会社法340条6項) ・かかる解任を行った場合には、監査委員会が選定した監査委員が、その旨および解任の理由を解任後最初に招集される株主総会で報告する必要がある(会社法340条3項・会社法340条6項) |
各監査委員が単独で行使することができる権限
権限 | 内容 | |
---|---|---|
取締役会への報告義務 | 監査委員は、執行役・取締役が不正の行為をし、もしくはそのおそれがあると認めるとき、または法令もしくは定款に違反する事実もしくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を取締役会に報告しなければならない(会社法406条) | |
執行役・取締役の違法行為の差止請求権 | 執行役・取締役の行為に法令・定款違反またはそのおそれがあり、その行為によって会社に著しい損害が生じるおそれがあるときには、監査委員はその執行役・取締役に対し行為の差止めを求めることができる(会社法407条1項) | |
執行役からの報告受領権限 | 執行役は、会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を発見した場合にはただちに監査委員に報告する義務があります(会社法419条1項) | |
株主等からの提訴請求を受ける権限等 | ・取締役が会社に対して訴えを提起する場合の訴状の送達先は監査委員とされる(会社法408条2項) ・株主代表訴訟等の提訴請求の受領等を受ける権限は各監査委員が有するとされる(会社法408条5項) |
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職務の執行に関する費用の償還請求等 | 監査委員は、監査委員会の職務執行に関して、支出した費用の償還等を請求することができる(会社法404条4項) |
まとめ
本記事では、指名委員会等設置会社の取締役会の中に設置されている監査委員会について目的・役割・権限について解説してきました。
この記事が、経営者・役員・企業のガバナンスに関係する担当者の方のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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この記事を書いた人
共同創業者&代表取締役CEO 茅原 淳一(かやはら じゅんいち)
慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。