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経理部門が人手不足に陥る原因|経理部門における人材不足に伴う問題と解決策について解説

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

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近年、日本では高齢化社会が進行し大きな問題となっています。そんな中、多くの企業では従業員の人手不足に悩んでいます。営業部門などの直接部門だけでなく、経理部門や会計部門のような間接部門においても人手不足が問題となっていることが現状です。

そこで本記事では、経理部門の人手が不足する原因を詳しく解説し、人手不足に陥らないための対策をご紹介します。企業の人事担当者や経理部門の担当者は、ぜひ参考にしてください。


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経理職の現状

経理職は、会社を変えたとしても業務内容が大きく変わらない業務の1つです。たとえば、簿記をベースに業務が成り立っていたり、年間スケジュールがほぼ決まっているためプライベートでの予定が立てやすいことが特徴です。そのため、経理職は人気のある職種とされてきました。しかし、経理職の現状は深刻です。多くの企業では、経理部門での人材不足に悩まされています。

多くの企業で経理部門の人材が不足している原因の1つには、バブル崩壊後に続いた不景気が影響しています。さらに2008年に起きたリーマンショックが追い打ちをかけ、世界的な不況に陥ってしまいました。そのような状況において、商品開発・サービスの提供のための仕組みを構築・運営したり、営業活動を通して売上を作るなど企業に直接的な利益をもたらす部門と違い経理部門を含む間接部門の人材は、削減されていく傾向にあります。

また、近年の傾向として新卒採用の人数が減少しており、経理部門に配属されるケースが少なくなっています。さらに、AIの発達によってもたらされる負の要素も影響しているでしょう。AIの発達によって「経理職の仕事がなくなってしまうのではないか」と懸念を持つ人も多いです。そのため、将来に不安を感じ、経理職に就こうとしない人もいる現状もあります。

このような経理職の現状によって、近年日本の多くの企業では、経理の人手不足が大きな問題となっているのです。

経理部門における人材不足に伴う問題とは

経理部門の人手が不足するとどのような問題が起きるのでしょうか。ここでは、経理部門における人材不足に伴う4つの問題を取り上げます。
・業務パフォーマンスの低下
・不正に目が届かなくなる・業務ミスの発生
・社内の労働環境の悪化
・従業員が離職する可能性の増加

業務パフォーマンスの低下

経理部門の人材が不足すると起こり得る問題の1つに「業務パフォーマンスの低下」があります。このことは、現在勤務している経理担当者にかかる負担が重くなるためです。

たとえば、月次決算などの時期は人手が必要です。人手が不足すると、企業の業績に関わる資料作成などに遅延が起こり、経営判断のための材料が用意できず、ここにも遅れが生じます。他の部門の従業員や経営陣が経理業務を助けることも可能ですが、そうなると本来のコア業務が圧迫され業務パフォーマンスが低下することになりかねません。

また、人手不足に陥ると、従業員1人当たりにかかる業務負荷が増すため、業務に余裕がなくなり、新しい人材を育成することが難しくなります。新しい人材は、いつまで経っても経理業務においてスキルアップできず、企業全体の業務パフォーマンスを低下させる結果になります。

経理職のスキルアップについては、こちらの記事もご参照ください。
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不正に目が届かなくなる・業務ミスの発生

経理部門の人材が不足すると、経理担当者1人当たりにかかる負担が増加し、不正に目が届かなくなったり、業務ミスが発生したりします

主な経理業務は、企業の金銭の流れを把握し管理することです。経理部門の人手が不足すると、企業の金銭の流れを把握できなくなる可能性があります。そうなると、企業にとっては大きな負担となるでしょう。また、会計書類などの業務ミスなどが起こると脱税を疑われたりする恐れがあり、企業自体の信頼を失う原因となります

社内の労働環境の悪化

「社内の労働環境の悪化」も経理部門の人手不足で起こり得る問題の1つです。企業によっては、1人の経理担当者が大量の業務を行っており、経理業務の繁忙期など休日はもちろん休憩さえ取ることが難しい場合があります

労働環境の悪化は、他の問題も引き起こす恐れがあります。たとえば、労働環境が悪化すると業務ミスも起こりやすくなることでしょう。従業員に集中力や注意力の低下をもたらし、業務ミスを誘発します。

従業員が離職する可能性の増加

社内環境の悪化は、経理の人手不足で起こり得る問題の1つですが、その問題に付随して「従業員が離職する可能性の増加」も問題になり得ます。

社内環境の悪化は、業務負担を促し、少ない従業員で膨大な業務をこなさなければなりません。そうなると、残業が当たり前となり、適切な休息を取れなくなる恐れがあるでしょう。その結果、従業員の疲弊が進行し、離職へとつながります。

経理部門が人手不足になる原因

ここまで経理部門の人手不足で起こり得る問題について概観してきましたが、そもそも経理部門が人手不足になる原因は何でしょうか。ここでは、経理部門が人手不足になる5つの原因をご紹介します。
・労働者人口の減少
・有効求人倍率の上昇
・専門的な知識とスキルを持つ人材の不足
・経理業務の複雑化
・テレワークの導入が困難

労働者人口の減少

経理部門が人手不足になる原因の1つに「労働者人口の減少」があげられます。労働人口の減少の主な原因の1つは「少子高齢化」です。生産年齢人口は、1990年にピークを迎え、その後減少が続いています。

たとえば、総務省統計局の「労働力調査」によると、1995年に8,716万人という労働者人口のピークを迎えましたが、その後減少を続けて、2015年では7,629万人と大きく減少しています。2021年の労働者人口は、前年の2020年の数字と比較しても約8万人減少しています。

また、2060年までには、2.5人に1人は高齢者となる見込みです。高齢者は労働者には含まれないので労働者人口はさらに減少していくことが予想されます。

参照:労働力調査(基本集計) 2023年(令和5年)6月分結果

有効求人倍率の上昇

「有効求人倍率の上昇」も経理部門の人手不足の原因の1つです。有効求人倍率とは、求職者1人当たりの求人数を示す指標のことです。

有効求人倍率が上昇すれば、求人者は就職先の選択肢が増えることになります。しかし、企業にとっては求人募集を出しても応募者が少なく、期待した人材を確保することが難しくなるという状況に陥ります。大手企業への求人募集は多くなる傾向にありますが、中小企業などにまで優秀な人材が回ってこないという状況も発生します。そうなると、経理部門のような間接部門への人材投資が後手に回り、人材不足という状況に陥ることが現状です。

専門的な知識とスキルを持つ人材の不足

経理業務は、簿記や会計のような経理に関連した専門的な知識が必要不可欠な業種です。そのため、採用活動において企業側が求める人材とマッチすることが難しいという現状もあります。

たとえば、経理職にはPCスキルや簿記、税法・税制・労働基準法に関する知識などが求められます。会計に関する法令はほぼ毎年改正されるため、定期的な知識のアップデートが必要です。幅広い知識と専門的な知識が必要な経理部門において、労働人口全体を分母として捉えると経理業務を行える人材自体が少ない傾向にあることも、経理部門の人手不足の原因の1つでしょう。

経理職のスキルアップについては、こちらの記事もご参照ください。
経理職におすすめのスキルアップ方法|専門性を高める資格・キャリアパスについて解説

経理業務の複雑化

「経理業務の複雑化」も経理部門が人手不足に陥る原因の1つです。会計法や税法などの法令は、毎年のように改正されています。そのため、経理業務は複雑化し、従業員は業務が嫌になり退職していく人も一定数いると言われています。

また、企業が提供するサービスはITの導入などで多様化し、経理業務をさらに複雑化してしまう場合もあります。たとえば、店舗や窓口へのIT導入により、「電子マネー」を筆頭に支払方法の選択肢が増えました。これによって現場のレジ処理や会計は簡易になりましたが、経理業務は以前よりも若干複雑化しています。さらに、繁忙期などの経理業務は過酷で、仕事疲れから離職したりする従業員もいることが現状です。

経理業務のIT化・繁忙期については、こちらの記事もご参照ください。
経理業務のDX化とは?経理業務にDX化が必要な理由・メリット・ツール・DX推進のポイントについて解説
経理業務の繁忙期はいつ?忙しい理由・残業が多い理由・経理業務の効率化について解説

テレワークの導入が困難

コロナウィルスの蔓延に伴い、出社を制限する企業が増えて、多くの職種でテレワークが導入されました。しかし、現在も多くの企業で、経理職においてはテレワークの導入が困難だと言われています。そのため、経理職を希望する人材が減少し、経理部門の人手が不足する事態に陥っています。

経理職においてテレワーク導入が困難な理由として、ペーパーレス化が難しいことが挙げられます。経理職は、請求書や書類に印鑑が必要であることなどから、テレワーク導入が困難です。また、IT化やAI・DXといった技術の進歩によって、将来、経理職はAIに置き換えられるという認識が高まっています。そのため、経理職への人気が減少傾向にあり、経理における人材確保を難しくしています。

経理業務のテレワークについては、こちらの記事もご参照ください。
経理職でテレワークが難しい理由|経理にテレワークを導入するポイント・メリット・デメリットについて解説

経理の人材不足の解決策

社内の人手不足を放置しておくと、後にさまざまな問題を引き起こします。そのため、人材不足と判断したならば、迅速に対処する必要があるでしょう。ここでは、経理の人手不足の解決策を5つご紹介します。
・業務フローの改善
・業務のDX(デジタル)化
・人材の育成
・経理業務の委託
・業務のマニュアル化

業務フローの改善

経理部門の人手不足を解決するには、「業務フローの改善」が必要です。業務フローを見直すことで業務上の問題点を洗い出し、出てきた課題に対して適切な対応をすることができます

たとえば、業務が遅れている場合は、業務フローを見直すことで優先順位が定まり、業務効率化が促進されます。業務フロー改善の1つに「小口現金」の必要性の検討があります。現金残高と出納帳に記載された金額が合わない場合、その確認に手間がかかります。そうなると、経理業務の複雑化につながり、業務に支障をきたす恐れがあります。しかし、業務フローを改善することで、業務効率化が図られ業務をスムーズに運んでいくことが可能となるでしょう。

業務のDX(デジタル)化

経理の人材不足の解決策の1つに「経理業務のDX(デジタル)化」があります。経理業務にITツールを導入すれば、ルーティン化した業務をすべて自動化することも可能です。業務の自動化に成功すれば、経理担当者は今まで行っていた経理業務の時間を他の業務に割り当てることが可能です

たとえば、請求書の管理は手間のかかる作業です。請求書を内部処理するために印刷し、経営陣の承認を得て保管することが求められます。しかし、この請求書の管理においてクラウド会計システムなどを導入すると、請求書を電子データで管理することが可能になり、ペーパーレス化が促進され経理業務が簡素化されます。経理業務のDX(デジタル)化が進むと、業務効率化を図ることだけでなく、経理関連の秘匿性の高い情報・データを安全に保管することもできるため効果的です。

経理業務のIT化については、こちらの記事もご参照ください。
経理業務のDX化とは?経理業務にDX化が必要な理由・メリット・ツール・DX推進のポイントについて解説

人材の育成

現在、人材の採用の方法も多様化しているため自社の採用方法を見直すことも重要です。特に、即戦力となる人材が不足している状況で効果的な人事戦略は、「人材の育成」です。人材を育成することで、経理部門の人手不足を解決できるでしょう。

単に業務をこなせる人材が不足しているならば、外部から人材を採用することが一般的ですが、それができないならば自社で従業員を育成して即戦力として活躍してもらうことも選択肢の1つになります。そのためには、社内の人材育成の環境を整えなければなりません。経理業務においてスキルが十分でない既存の社員のスキルアップを支援することは、将来的な業務効率化につながります。

経理職の業務委託・スキルアップについては、こちらの記事もご参照ください。
経理業務の業務委託とは?委託できる仕事内容・向いている人・メリット・デメリットを解説
経理職におすすめのスキルアップ方法|専門性を高める資格・キャリアパスについて解説

経理業務の委託

経理部門における人手不足を解決するには「経理業務の委託」を考慮することも可能です。経理業務を委託するとは、社内で行っている経理業務の一部もしくはすべてを外部業者に委託することです。経理業務を外部に委託することで、自社の業務負荷を軽減できます。

経理業務を委託することで、社内で担当者の離職が起きたとしても、委託先の担当者が業務を継続し対応可能であるため、業務引継ぎに伴う影響を最小限に抑えることが可能です。専門業者に経理業務を委託することは、社内に不足しているプロ人材を外部から調達でき、人手不足の解決だけでなく、教育コストをかけずに質の高い業務を期待することができます。

経理業務の委託に関しては以下の記事もご覧ください。
経理業務の業務委託とは?委託できる仕事内容・向いている人・メリット・デメリットを解説

業務のマニュアル化

経理部門の人数が少ない会社では業務が俗人的になりやすいですが、経理業務をマニュアル化することも経理部門における人手不足の解決に効果的です。経理業務をマニュアル化しておけば、経理担当者が突然離職したとしても業務を他の従業員に引き継ぎやすくなります

マニュアル化するためには、経理業務において経験のあるベテラン社員のノウハウが必要です。ベテラン担当者が長年経験した経理業務で培ったノウハウをマニュアル化し、マニュアルをもとに従業員のトレーニングができれば、そのノウハウを一般化することが可能です

経理業務をマニュアル化したならば、常にバージョンを更新する必要もあります。また、誰が見ても理解できるマニュアルを心がけることも重要でしょう。そうすることで、経理部門が人手不足になったとしても、外部に委託したり、社内の他部門の人材に一時的に業務を任せるとしても品質を維持することができます。

経理業務のDX(デジタル)化

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経理業務のDX(デジタル)化は、経理部門の人手不足を解決するために効果的です。ここでは、実際に経理業務においてDX(デジタル)化を進めていくための4つのステップをご紹介します。
1. DX(デジタル)化の目的を明確にする
2. 情報収集する
3. 必要な機能のリストアップ
4. ITツールの選択

1. DX(デジタル)化の目的を明確にする

経理部門のDX(デジタル)化のために、まず「DX化の目的を明確にする」ことが重要です。DXツールの導入自体が目的になってしまうと、自社にとって不要なツールを導入してしまったり、コスト機能性能が不十分なものを導入してしまう危険があるため注意が必要です

たとえば、DX化の目的には、従業員の給与計算の簡素化や請求書の管理を短時間で行いたいということが挙げられます。そのために、給与計算システムや請求管理システムなどのITツールを導入できます。

DX化の導入の目的を明確にするには、自社の経理業務の現状と業務上の課題を明らかにし、DX化によってどのように業務が変化するのかを把握する必要があります。

2. 情報収集する

DX化を進めていくにあたり「情報収集する」ことは重要です。どのようなITツールがあり、どのような特徴があるのかを把握しましょう。数あるITツールの中から自社に合ったものを選択することは重要です

たとえば、ITツールには、以下の種類があります。
・インストール型
・クラウド型
・基幹システム連携型

近年、主流になっているITツールは「クラウド型」です。クラウド型は、コストやメンテナンスがかからないため手間がかかりません。そのため、中小企業やベンチャー企業、またスタートアップ企業などにおいても導入がしやすく、ITツールを提供する側の企業が法改正に合わせてアップデートを行っているので、即時に対応できるというメリットがあります。

3. 必要な機能のリストアップ

情報収集を行ったなら、次に行うことは「必要な機能のリストアップ」です。自社の経理業務に必要な機能をリストアップしましょう。

リストアップするときに注意すべきポイントは、「自社の経理業務の課題」と「ITツールでどのように解決されるのか」また「どれほどの業務効率化につながるのか」です。自社の経理業務に必要な機能を把握できていれば、不要なツールを導入するミスを避けられ、コストを最小限に抑えてDX化を促進していくことが可能です。

4. ITツールの選択

最後に、「ITツールの選択」を行います。自社の経理業務の条件を満たしたITツールを選択しましょう。ITツールの選択の際のポイントは、3〜5つ程度のITツールを選択し、ベンダーに見積ってもらうことです。そして、それぞれの見積書を比較してITツールを絞り込んでいきます。

実際に使用してみなければわからないツールもあります。そのため、無料トライアルなどのお試し期間で利用できるサービスがあればぜひ試してみましょう。

まとめ

この記事では、経理部門の人手が不足する原因を解説し、人手不足に陥らないための対策をご紹介してきました。

この記事が、皆様のお役に立てれば幸いです。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

また、管理部門の職種としてキャリアアップしたい方、さらにCFOとして経営参画も視野にいれている方は、プロの専門家に相談するのが一番です。

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この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。