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新株予約権の登記事項とは?登記が必要な理由と必要な書類を詳しく解説
執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)
『資本政策の手引き』
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新株予約権は、株式の交付を受けることができる権利です。この権利のありかを明確にするためには、登記が必要になります。
企業が新株予約権を発行する場合、割当日から2週間以内に新株予約権の発行を変更登記しなければなりません。ベンチャー企業やスタートアップ企業関係者の中で、新株予約権の発行に興味はあるけれども、実務について調べているうちに必要な手続きを忘れてしまったということは避けたいことです。
そこで本記事では、新株予約権の登記に関して必要な書類や登記申請に必要な記載事項などについて解説していきます。
新株予約権については、こちらの記事もご参照ください。
⇒新株予約権とは?種類・メリット・デメリットについて解説
⇒新株予約権付社債とは?会社と投資家双方のメリットと注意点を詳しく解説
⇒新株予約権原簿に記載する内容 | 原簿の役割や管理方法も詳しく解説
⇒新株予約権はなぜ純資産に区分されるのか?貸借対照表上の具体的な仕分方も解説
⇒新株予約権無償割当とは?特徴・決定事項・効力の発生・開示手順・株主割当増資との違いについて解説
目次
新株予約権とは
新株予約権とは、権利を行使することによって、新株予約権を発行した株式会社の株式を受けることができる権利です。
新株予約権は発行する際に登記簿への記載が必要になります。
また、発行後行使されるタイミングで、行使されたことによる変更を登記申請する必要があります。
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新株予約権を発行した際に登記が必要な理由
新株予約権は、行使されれば株式となる権利なので、その発行だけでも登記簿に記載する必要があります。登記とは、権利や義務を社会に向けて発表し、その権利・義務を保護した上で取引をスムーズにするための制度です。
株式会社が登記しなければならない事項は、商法、会社法、商業登記法において定められています。登記事項は以下のようにカテゴリー(区)分けされています。
区 | 内容 |
---|---|
商号区 | 会社名や法人番号、設立年月日など |
目的区 | 会社の目的。どの領域で事業を行っているか |
役員区 | 取締役や監査役の名前や就任日、就任、辞任、退任、重任などの記録 |
株式・資本区 | 発行済株式総数や資本金、単元株式数 |
会社状態区 | 取締役会設置会社に関する事項、監査役設置会社に関する事項 |
登記記録区 | 登記記録を起こした事由及び年月日 |
新株予約権の登記申請での記載事項
新株予約権の登記申請での記載事項は主に以下になります。
・新株予約権の名称
・新株予約権の数
・新株予約権の目的となる株式の種類及び数又はその数の算定方法
・新株予約権の行使に際して出資される財産の価額又はその算定方法
・新株予約権を行使することができる期間
・新株予約権の行使の条件
・会社が新株予約権を取得することができる事由及び取得の条件
・新株予約権の発行日
以下それぞれの項目について詳しく解説を行います。
株価の算定については、こちらの記事もご参照ください。
⇒非上場企業における株価算定方法とは?活用場面・方法・費用・流れについて徹底解説!
⇒【未上場企業】”株価算定”と”ストックオプションの行使価額”の関係を徹底解説
新株予約権の名称
新株予約権の名称は、下記のように「第○回新株予約権」などの表記とされることが多くなっています。
<記載例>
「新株予約権の名称」第〇回新株予約権
新株予約権の数
発行する新株予約権の数の記載を行います。
<記載例>
「新株予約権の数」〇〇〇個
新株予約権の目的となる株式の種類及び数又はその数の算定方法
新株予約権を行使した時に発行される株式の種類や数、発行される株式の数の算定方法の記載を行います。
新株予約権を発行している会社が、株式分割や株式併合等を行った際に新株予約権の目的となる株式の数も変更になります。その時に用いられる調整式についても記載を行います。
<新株予約権の数が100個で、1個当たりの目的となる株式の数が普通株式100株の場合の記載例>
「新株予約権の目的である株式の種類及び数又はその数の算定方法」
普通株式 30,000株
新株予約権の1個当たりの目的となる株式数は、当社普通株式100株とする。
(以下、調整式等の記載)
新株予約権の行使に際して出資される財産の価額又はその算定方法
新株予約権の行使に際して出資される財産の価額を表記します。
株式分割や株式併合等を行った際の1株当たりの払込金額の調整式や、会社が募集株式の発行を一定額以下で行ったとき等の1株当たりの払込金額の調整式の記載も行います。
<記載例>
「新株予約権の行使に際して出資される財産の価額又はその算定方法」
募集新株予約権の行使に際してする出資の目的は金銭とし、その価額は、新株予約権の行使に際して払込みをすべき1株当たりの金額金20,000円に付与株式数を乗じた金額とする。
(以下、調整式等の記載)
新株予約権を行使することができる期間
新株予約権の行使期間についても以下のように記載を行います。
税制適格ストックオプションを発行するときは税制適格要件に適合するように行使期間を定める必要があります。
<記載例>
「新株予約権を行使することができる期間」
2022年7月1日から2025年6月30日まで
新株予約権の行使の条件
新株予約権を行使するときの条件を定めている場合はその内容の表記を行います。
「新株予約権の行使の条件」
この新株予約権は、行使の日の属する営業年度の直前の営業年度における当会社の税引前利益が1億円以上である場合に行使することができる。
新株予約権の行使の条件については、行使時にその会社の役員や従業員であることを条件としている場合が多く、そのほかには、一定の行使期間に応じて行使できる新株予約権の割合が指定されることもあります。
会社が新株予約権を取得することができる事由及び取得の条件
会社が新株予約権を取得することができる事由及び取得の条件についても表記を行います。
新株予約権を保有している役員や従業員が当該株式会社を退職した場合に、当該株式会社がその新株予約権を取得するという条件が定められてることが多くあります。
<記載例>
「会社が新株予約権を取得することができる事由及び取得の条件」
当会社は、当会社の新株予約権について当会社が別に定める日が到来したときに、取得することができる。
新株予約権の発行日
新株予約権を発行した日として割当日の記載を行います。細かくなりますが、新株予約権を有償で発行する場合、金銭の払込がある時、ない時のどちらでも割当日に申し込んだ者は新株予約権者になります。
<記載例>
「原因年月日」平成28年9月26日発行
新株予約権の行使時の変更登記申請
新株予約権は権利が行使された際には、変更登記申請を行わなければなりません。
一般に公開している登記情報が変わるため、新株予約権が行使された時には変更登記申請が必要です。新株予約権が行使された際に変更が生じる可能性がある事項は以下の通りです。
・新株予約権の数
・新株予約権の目的である株式の数
・新株予約権の全部を行使したときは、その旨
・資本金の額
・発行済株式総数
新株予約権の行使があった場合の登記申請期限
新株予約権の行使があった場合の登記申請期限は、新株予約権の行使日から原則2週間以内と会社法915条1項に定められています。
しかし、同月中に複数の新株予約権者から個別に権利行使がされることもあり、その都度登記申請をしなければならないとするのは実務上において非常に煩雑であるため、毎月末日までの行使分を一括で登記申請を行うことができるようになっています。
そして、毎月末日までの行使分を一括で登記申請を行う場合の登記申請期限は、当該末日から2週間以内と会社法915条3項1号で定められています。
したがって、新株予約権の行使があった場合、遅くとも行使があった月の末日から2週間以内に登記申請ができるよう書類を用意する必要があります。
新株予約権の行使の登記の必要書類
新株予約権の行使が行われた場合の登記申請の際には以下の書類を法務局に提出する必要があります。
・新株予約権発行時の株主総会議事録
・新株予約権発行時の取締役会議事録(募集事項の決定を取締役会に委任していた場合に必要)
・行使請求書
・株主リスト(法務局によっては不要の場合がある)
・資本金額の計上に関する証明書
・払込を証する書面
従業員が退職した場合も変更登記が必要
新株予約権者が有する新株予約権を行使することができなくなったときは、当該新株予約権は消滅すると会社法287条において定められています。
行使することができなくなったときとは、以下のいずれかに該当する場合を指します。
1.権利行使期間の満了
2.新株予約権の放棄
3.行使条件に該当しなくなった時
新株予約権の行使条件に「新株予約権の行使時まで、当会社の従業員であることを要する」と定めている場合には従業員が退職した場合には上記の3に該当するため、その従業員が保有していた新株予約権は消滅します。
そのため、従業員が保有していた分の新株予約権や交付予定であった株式数について、新株予約権変更登記申請を行わなければなりません。
この時、変更登記申請は退職日から2週間以内に行わなければいけません。原則は従業員が退職するごとに変更登記申請しなければならず、1件につき3万円の登録免許税を納付する必要があります。
また、従業員が退職した場合、業務の引継ぎ等でこの変更登記申請を忘れがちになりますので注意が必要です。万が一、変更登記申請を怠ってしまった場合、代表取締役が100万円以下の過料が発生してしまう可能性があるためご注意ください。
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まとめ
いかがだったでしょうか。
本記事では、新株予約権の登記が必要な理由や、登記申請の際の記載事項や必要書類等について解説をしました。
本記事が上場を目指しているスタートアップ・ベンチャー企業の経営者の方の参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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この記事を書いた人
共同創業者&代表取締役CEO 茅原 淳一(かやはら じゅんいち)
慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。