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経営企画部門の役割とは?基本的な業務・重要性・向いている方について解説
執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)
CFOになるには?キャリアパスも解説
経理/会計/財務/経営企画などの管理部門としてのキャリア
企業経営の中枢にある経営企画部門は、最も重要性の高い役職の1つです。経営企画職に求められる役割は、重要な意思決定のサポートや実行の支援、既存事業が安定するような配置と施策、新規事業のためのマーケティングなどがあります。
このように、経営企画部門での経験は抽象的で難易度が高く、事業拡大や新規事業の創造などに大いに役に立つので、この経験から経営コンサルタントやベンチャー企業・スタートアップ企業などのCFO(最高財務責任者)としてキャリアアップすることも期待できます。
この記事では、経営企画の役割やその重要性、経営企画に向いている方や必要な資格・スキルについて解説します。
企業の財務に関連する活動の責任者であるCFOについては、こちらの記事もご参照ください。
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目次
経営企画とは
経営企画とは、企業の経営を成長させ、それを維持する計画の立案・実行・管理をする役職・部門のことです。企業の活動内容や存続を左右する心臓部であり、経営の中枢に近い場所に位置した役割を担っています。中長期的な経営方針を企業の様々なデータから経営計画を立案し、会議を通じて経営陣に必要な情報を的確に提供したり、場合によっては経営陣と共に経営方針を決定することもあります。
経営企画部門は、企業全体の舵取りとも言える存在ですが、後述するとおり経営陣とは異なって従業員・各部署・各ステークホルダーとの円滑なコミュニケーションや調整などの役割もあり、重要性もさることながらプレッシャーも大きい部署の1つであると言えます。その役割から、現在の会社の状況のみならず、マーケットの分析や将来的な見通し、さらには地域社会や周辺企業との信頼関係を考慮する業務もあるなど、その内容は非常に多岐に渡ります。
コンプライアンスが遵守されているかどうかをチェックすることも経営企画の業務に含まれます。近年はコンプライアンス関連の社会的な評価が非常に重要になっています。経営企画はコンプライアンス遵守を管理する点でも大きな役割を担うなど、経営に関わるほぼすべての分野の知識や実務能力が求められる部門です。
似たような名前の部門として、「事業企画」が挙げられます。事業企画は、1つの事業に関する計画立案・実行・管理を行う部門です。事業の収益性に主眼を置いて部署間で活動するため、企業全体を横断的に管理・サポートする経営企画とは性質が異なります。
経営企画部門については、こちらの記事もご参照ください。
⇒経営企画部門とは?業務内容・部門の重要性・求められるスキル・能力について徹底解説
経営企画の重要性
このように経営企画の重要性は非常に大きいのですが、会社の規模によっては経営企画部門が設置されていないことも珍しくありません。それは重要性が低いという意味ではなく、他部門や経営者が兼任する場合があるからです。ここでは、経営企画の重要性を以下の2点から解説します。
・経営企画部門がある企業
・経営企画部門がない企業
経営企画部門がある企業
企業規模の大きい会社は、経営企画部門を社内に備えているのが一般的です。大企業など経営者が全てを管理できない場合、経営陣と従業員の隔たりは大きくなってしまいます。そこで経営企画部門がコミュニケーションや調整を図ることで、経営陣や各部署が専門的に扱う事業や業務を横断的にまとめ、関係者すべてに浸透させます。
総務部や人事部も似たような役割を担っていますが、経営企画部門は経営戦略の立案や事業計画の社内全体での旗振り役として責任を担っており、経営層に近い立ち位置で全体を調整します。
企業資源として人材リソースの最適な配分なども行いますが、人事的な目線ではなく経営的な目線で全体の人材配置を考えるのが特徴です。
経営企画部門がない企業
企業規模が小さい場合、経営企画部門が設立されないことは珍しくありません。社員数の少ない中小企業や起業したばかりのベンチャー・スタートアップ企業では個別に組織する必要性も高くなく、経営者や経理部門の担当者が兼任している場合が多く見られます。企業規模が小さければ、経営企画の立案は経営者とその周辺が自ら行い、それを社員と共有するのも難しくありません。
職種によっては、市場のリサーチや将来を見通した戦略などがそれほど求められないこともあり、特に全体の9割が中小企業と言われる日本では経営企画部門を持たない企業も多数存在します。
付け加えると、欧米では会計の専門家であるコントローラー(経理部長)と呼ばれる人たちが配置されており、会計管理業務とCFO(最高財務責任者)への報告を担うという制度があり、日本のような会計企画部はあまり見られないという特徴があります。
経理部門・経理部長・CFOについては、こちらの記事もご参照ください。
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経営企画の基本的な業務
まず予算策定が挙げられます。経営企画の最も重要かつ影響力の大きい業務の1つで、会社を左右すると言っても過言ではありません。
当然のことながら、策定した予算は経営陣や株主の承認を経て有効になります。しかし、すべての部署の次年度の予算を決め、マーケットの変化や新しいニーズも見据えた成長していく内容で、かつ現在の財務状況で無理のない範囲で必要分を割り振るという非常に大きな責任の伴う業務です。
企画立案も重要な業務です。会社や各部署の事業内容を決める企画を立案し、経営陣の決定を経て実行していきます。自社の持つリソースに応じた規模のみならず、マーケットにニーズや潜在力のある分野の創造・開発など、会社が安定して成長するための企画を生み出します。
事業を立ち上げた後は、その実行・管理も行います。状況に応じてリソースや必要な投資も変化していくため、業績評価も行いながら事業継続・成長を目指します。
さらに、企業として社会的な責任も果たすため、コーポレート・ガバナンスのチェックにも携わります。コンプライアンスの遵守や人材の多様性、サステナビリティに関する取り組みを公開することもこれに含まれます。すべての利害関係者を指すステークホルダーとの交渉や調整も経営企画の業務です。
経営陣と従業員の調整・金融機関との交渉はもちろんのこと、行政機関や周辺企業・各種団体とのすり合わせなども企業規模によっては行う場合があり、企業が活動を続けていく上で不可欠な業務全般を扱うことも珍しくありません。
コーポレート・ガバナンスについては、次の記事もご参照ください。
⇒【2021年改訂】コーポレートガバナンス・コードの実務対応と開示事例
経営企画の役割
経営企画部門に求められる役割として、以下のものがあります。
・マーケティング業務
・資料の作成と戦略策定
・既存事業の安定化
・部署間の調整と労務環境の改善
・意思決定の実行を支える裏方
それぞれについて説明していきます。
マーケティング業務
経営企画の役割の中で一際重要なのは、マーケティング業務や戦略策定です。企業への利益貢献となり、その進路や業績を大きく左右するからです。市場の分析や将来的・潜在的なニーズ、ライバル企業の動向を調査するなど多くの業務が含まれ、事業計画の立案に必要な情報を集めるだけでも時間と労力を要します。
資料の作成と戦略策定
集めた情報を基に経営陣に役立つ資料を作成し、会議や修正を経て最終的に現場へ適用する戦略プランを策定します。これには既存の事業を適正に評価することも、赤字や成長の見込めない事業からの撤退を決めることも含まれます。そこでは経営課題を明確にすることで問題を炙り出し、解決に至るプロセスを素早く適切に実行する業務も行います。
経営企画は会社の心臓と言われることもある傍ら、会議の日程調整や資料作成に時間を取られる立場でもあります。特に開示する資料を作成する場合は、細かい数字を扱う緻密な作業が続きます。
既存事業の安定化
企業規模や風土によっては、経営陣が新事業や成長戦略に集中できるよう既存事業の安定化を任せられる場合もあるでしょう。現在会社が持つ事業やリソースの運営を滞りなく続けていくことで、経営陣はさらに先を見据えた経営戦略の策定に取り組めるようになります。
部署間の調整と労務環境の改善
経営陣と各部署との調整や労務環境の改善も経営企画部門の業務の範囲に入ることがあります。経営陣はコスト削減と全体の利益を追求するのが当然ですが、各部署や従業員は賃上げ・労働環境改善・評価の獲得などを目指しており、意見の食い違いなどは日常的に発生します。
そのような人と人との間に入る調整も役割も1つで、双方に納得感が出るよう難しい調整を任されることもあります。1つ1つの役割の重要性も大きいため、企業によっては残業や休日出勤を多々こなしながら業務に取り組むケースも珍しくありません。
意思決定の実行を支える裏方
華やかな出世コースでありながら、経営陣の意思決定や実行を支える裏方のような役割を担うのが経営企画部門の実情です。しかし、そういった役割や責任の重さと引き換えに大きなやりがいを感じられる仕事でもあります。
企画や経営方針の周知のため社内で表に立つことも多く、自然と影響力や知名度は上がっていきます。社外の人と関わることも多くなるため、幅広い立場や職種の人と多く知り合い、人脈も自ずと広がっていくでしょう。経営陣からの信頼を得るにつれて重要な業務が増えると、会社の中枢にいるという実感を感じられます。
経営企画部門で働くのに向いている方
経営に関する幅広い知識と分析能力は、経営企画職を続けていく上で必要になります。普段から幅広い知識を学ぶのが好きな方や、新しい分野にチャレンジすることを楽しめる方は経営企画に向いていると言えるでしょう。
経営企画は、財務や経理の知識だけでは行えません。法律や税金関連・マーケティングや市場の動向・世界情勢の最新情報なども取り入れている必要があります。世の中の情報や変化に対して鋭くアンテナを張り巡らしている方は適任です。物事を客観的かつ論理的に判断していく必要があるため、常にアンテナを張り巡らせて情報をキャッチすれば、それらを新事業の構想や新しいビジネスモデルの組み立てに役立てられるでしょう。
精神的なタフさとコミュニケーション能力も重要です。先ほど取り上げたように、経営陣と各部署や従業員との間に入って調整したり、プレゼンテーションする機会も多い経営企画では、自らの考えを的確に伝え、相手の話を正確に理解することが求められます。コミュニケーション能力の高い方や問題解決を考えるのが好きな方にとっては、経営企画の業務では、その能力を活かす機会が多いはずです。
経営企画部門で働くのに必要な資格・スキル
上記でも触れた点ですが、情報収集力や分析力は経営企画にとって不可欠です。将来的な事業戦略を立案する必要があるため、自社の財務状況だけでなく市場の傾向や潜在的なニーズを理解するスキルが必要になります。新しい事業を立ち上げる場合、経営陣や投資家の納得が得られなければ承認されないため、事業の収益力を裏付ける情報分析が欠かせません。
もちろん、会計や財務に関する幅広い知識も必要です。会社の内外部の情報を分析するにあたっては、公表されている資料の数字を理解しなければ始まりません。
資格に関して言うならば、経営企画で必須の資格というのは存在しません。しかし、経営を深く理解する上で役立つ資格はいくつもあります。
例えば、国家資格である「中小企業診断士」は、中小企業の経営課題の分析やコンサルティングを行うスキルを証明する資格です。大企業が中小企業かに関わらず、健全に利益を生み出していく経営の本質は変わりません。中小企業診断士は経営課題を発見・解決するスキルを学ぶため、経営企画の業務に役立ってくれるでしょう。
日商簿記検定は、会計や監査における専門的なスキルを学ぶ点で役立つ資格です。3級は会計の基礎全般を網羅して学べる資格で、1級になれば大企業の決算を理解するスキルが身に着きます。
「公認会計士」も会計面から見て有用な資格の1つです。勉強時間は3,500〜4,000時間に登るとも言われる高難易度の資格ですが、予算と実績の比較や損益計算書・キャッシュフロー計算書など会計書類に関する専門的な知識を学びます。試験合格後にも2年以上の実務経験が必要になるなど非常に高いハードルがありますが、キャリアプランの1つとして目指したい資格でもあります。
経営企画の近くやスキルについてさらに詳細を知りたい方は、こちらの記事も参照してください。
⇒経営企画職に役に立つ資格|資格が有利に働く場面・おすすめの資格について解説
⇒経営企画部門とは?業務内容・部門の重要性・求められるスキル・能力について徹底解説
経営企画部門のキャリアパス
経営の中枢に近づく花形部門の経営企画は、経営者・CFO(最高財務責任者)・経営コンサルタントがキャリアパスとして挙げられます。
CFOは、経営企画をベースにした財務・財務の戦略立案・執行面を監督する責任者と言えます。CEO(最高経営責任者)の右腕として業務を統括する立場ですが、海外ではCFO出身者がCEOになるケースも多く、キャリアパスとして時々見られる経歴となります。
経営コンサルタントとして、独立や大手コンサルティングファームに転職するのもキャリアパスの1つです。経営陣の裏方ではなく、一緒に経営改善を行う立場になります。専門家として経験を積めば独立開業がキャリアパスとして見えてくる他に、より大きな企業へ転職する際にアピールポイントとして武器になるなど、キャリアをさらに発展させる上でも役立つでしょう。
経営企画部門・CFOのキャリアパスについてさらに詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。
⇒経営企画のキャリアの考え方|経営企画の業務とキャリアパス・必要なスキルを詳しく解説
⇒CFO転職の方法とは?CFO転職のメリットやキャリアパスも徹底解説!
まとめ
経営企画は、経営の中枢に関わりながらも分析や資料作成のスキルが求められ、さらに場合によっては社内外との交渉やすり合わせが求められるなど、広範囲に渡る対応能力を必要とする業務です。
大きな責任やプレッシャーがのしかかる立場ですが、地道に経験を積んでスキルを磨いてゆくならば、経営者や役員入りも目指せるキャリアパスともなります。
この記事が、経営企画の業務に携わり始めた方のお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また、管理部門の職種としてキャリアアップしたい方、さらにCFOとして経営参画も視野にいれている方は、プロの専門家に相談するのが一番です。
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この記事を書いた人
共同創業者&代表取締役CEO 茅原 淳一(かやはら じゅんいち)
慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。