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評価制度とは?評価制度の目的・種類・制度の導入時に考えるべきポイントを解説
執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)
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企業が組織として成長していくためには、優秀な人材の確保は欠かせません。優秀な人材を集めるためには、社内の人事制度が働く従業員にとって納得いくものである必要があります。
人事制度は、等級制度・報酬制度・評価制度から構成されていますが、企業があるべき方向性に向かうためには、この人事制度が整備されていなければなりません。
そこで本記事では、人事制度の中の「評価制度」について、目的・種類・導入する際に考えるべきポイントについて解説していきます。
目次
評価制度とは
評価制度とは、従業員の能力や企業への貢献度などの評価を行う人事制度のことをいいます。この評価基準は、企業ごとに異なる基準が定められており、1年に1回・半年に1回・四半期に1回のように定期的に実施されます。
人事制度は、評価制度と等級制度、報酬制度で構成されています。等級制度は、企業内部で等級(グレード)を決めて、等級に合わせて必要な役割を割り当てる制度のことです。また、報酬制度は等級を基準に従業員の給与・賞与を決める制度のことをいいます。
これら評価制度・等級制度・報酬制度が相互に作用することで給与が上昇します。例えば、仕事の業績で高い評価を受けた時に、従業員の等級や給与・賞与が上がります。
人事制度について、こちらの記事もご参照ください。
⇒人事制度とは?人事制度の目的・設計・歴史・新しい人事制度について徹底解説!
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⇒評価制度とは?評価制度の目的・種類・制度の導入時に考えるべきポイントを解説
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評価制度の目的
人事制度において、評価制度を定める目的には大きく分けて次の4つがあります。
・処遇の決め方
・配置の考え方
・人材の育成
・業績の向上
それぞれについて説明していきます。
処遇の決め方
企業は、人事評価の内容をもとに従業員の給与・賞与を決めます。従業員が企業に与えた貢献の度合いや果たした役割によって、評価がなされ、その処遇が決められます。
この処遇および報酬の決め方には、従業員が納得することも重要です。その根拠として、人事評価が重要な役割を担っています。
配置の考え方
それなりの規模があり、事業部や部署など機能別に組織的な構造を持つ企業において、人事評価は配置を考えるときの判断材料になります。
企業は、企業価値を高め、利益・業績を上げるために従業員ごとの適正や能力を踏まえ、適切な人材配置を行います。その人材配置の根拠として、人事評価が機能します。従業員の得意・不得意や強み、弱みなどを把握し、それぞれが能力を十分に発揮するために適した配置を行いましょう。
人材の育成
従業員が、何を基準に評価されているのかを理解することで自発的に動いたり、企業が成長するために何をすべきなのかを意識しながら働くようになります。この評価制度の基準が、明瞭であれば従業員はそれに合わせて成長することが期待されます。
評価される従業員の能力や仕事での成果と企業が期待する従業員の能力と仕事での成果が、評価制度を通して合致していくことで企業は成長していきます。四半期、半年、1年などの期間をもって目標や活動を振り返ることで効果的な人材育成が可能となるでしょう。
業績の向上
評価制度をもとに人材が育ち、適切に配置され、納得のいく処遇がなされることで組織として企業の生産性が向上することが期待されます。そのためには、人事制度・評価制度が企業の経営方針や経営理念などと合致している必要があります。
企業のあるべき姿から、企業が求める従業員の人物像を明らかにし、経営目標を評価基準・評価項目に落とし込んでいくことで適切な評価制度の運用が期待されます。それによって、企業の業績は向上していくでしょう。
評価制度の作り方
評価制度は、「評価目的」「評価基準」「評価項目」「評価担当者」4つの項目について段階的に作成することが多いです。何のために評価し、何を基準にして、どの項目を評価し、誰が評価するのかを1つ1つ決めていきましょう。
人事評価制度の作り方や評価項目の詳細については、次の記事もご参照ください。
⇒人事評価制度の作り方|評価を作る際の注意点や成功例についても解説
⇒人事評価の項目とは?項目の種類や評価項目例・参考事例をご紹介!
⇒評価項目の設定方法とは?設定時のポイントやサンプルまでご紹介!
⇒人事評価項目の具体的な例|評価項目の詳細及び営業・技術・事務・管理職の項目例を徹底解説!
⇒人事評価面談|面談の目的・進め方・ポイントについて解説
⇒人事評価制度のメリット・デメリット|デメリットの解決策・人事評価制度の失敗例についても解説
評価制度の種類
人事評価には、さまざまな評価基準・評価制度があります。業種や業態および企業の目的によって、適した制度を採用することで円滑な組織運営が期待されます。ここでは、次の9つの人事評価制度について解説していきます。
・MBO(目標管理制度)
・OKR
・コンピテンシー評価
・360度評価
・ミッショングレード制度
・バリュー評価
・ノーレイティング
・リアルタイムフィードバック
・ピアボーナス
MBO(目標管理制度)
MBO(目標管理制度)とは、個人やグループで設定した目標達成の状況で評価をする制度のことをいいます。MBOを利用して従業員それぞれが目標を設定し、管理することで、従業員の働き方に主体性や自主性が生まれ、目標達成をする中でモチベーションが向上することも期待できます。
目標達成のプロセスが管理の過程で可視化され、従業員は業務を振り返りやすくなります。評価者もフィードバックがしやすくなり、業務における従業員の成長も期待できるでしょう。
MBO(目標管理制度)については次の記事もご参照ください。
⇒MBO(目標管理制度)とは?具体例と作成時のポイント・OKRとの違いについて解説
⇒MBOの導入事例|運用のポイントや成功事例・失敗事例について解説
⇒MBO面談とは?面談の手順・注意すべき点・失敗例について解説
⇒MBOシートの効果的な書き方:MBOシートに記載する項目と職種ごとの目標設定を解説!
OKR
OKR(Objectives and Key Results)とは、「達成目標と主要な成果」を設定することで企業や従業員個人の目標と主要な成果を結びつけることで目標を管理する制度です。
企業の望む成果が事業部や部署の目標となり、事業部・部署の成果が個人の目標となることで企業の方向性と個人の方向性が一致することがOKRの特徴です。KPI管理は達成可能な数値目標を掲げて、100%の達成を目指しますが、OKRでは企業全体で高い目標を掲げて、60%から70%の主要な成果の達成を目指します。
企業の達成目標を高くすることで、個人の目標設定も高くなり、目標達成できないことが続いたりするとモチベーションが下がってしまうリスクもあります。また、達成目標が大きくなることで個人の負担が増大してしまうことも注意すべきでしょう。
OKRについては、こちらの記事もご参照ください。
⇒OKR(目標と主要な成果)とは?目標の設定方法・運用の際のポイントを丁寧に解説
⇒OKRを活用した人事評価のポイント|OKR評価を運用するコツも解説
⇒OKRシートおすすめテンプレート5選|メリットと記入例・導入時の注意点も解説
⇒OKRの導入事例10選|OKR導入の流れと実施に向けた注意点も合わせて解説
コンピテンシー評価
コンピテンシー評価は、業務を遂行する能力が高い従業員に共通する行動特性を基準に評価項目を定めて、従業員を評価する制度です。
業務のパフォーマンスにつながるスキル・知識・技術などの能力に付随する行動の分析から評価基準を明確に定めることができます。したがって、妥当性のある評価軸をもとに従業員を評価することができるので被評価者も納得感を持って評価を受けることができます。
また、自社のパフォーマンスと高いパフォーマンスに貢献した従業員の特徴をもとに評価を作成するので組織力を強化することにも役立ちます。
コンピテンシー評価については、こちらの記事もご参照ください。
⇒コンピテンシー評価とは | メリット・デメリットや導入時の注意点をご紹介!
⇒コンピテンシー評価の具体的な記入例:シートの書き方、業種ごとのサンプルをご紹介!
360度評価
360度評価は、上司・同僚・部下など被評価者から見てさまざまな立場の人たちから多角的に評価される評価制度です。今までは、上司から部下の一方的な評価が多いものでしたが、部下や同僚などあらゆる角度から評価されるので公平かつ客観的な評価を得られる仕組みです。
360度評価は、公平な評価だけでなく人材育成やモチベーションアップなどの副次的な効果を目的に導入している企業が多く存在します。部下からの評価によって、被評価者が管理職として成長することも期待できます。
360度評価については、こちらの記事もご参照ください。
⇒360度評価とは?評価制度の特徴・メリット・デメリット・導入の際のポイントなどを解説
⇒360度評価の項目テンプレート|360度評価を設定するためのポイントとテンプレートをご紹介!
⇒360度評価が失敗してしまう原因とは?失敗する5つの原因と成功させるポイントを詳しく解説
⇒360度評価システム|評価システムを選択する際のポイントとおすすめの評価システムについて解説
ミッショングレード制度
ミッショングレード制度は、役職・キャリア・年齢に関係なく従業員に役割を割り当て、役割の大きさに合わせて等級を決める制度です。等級制度をもとにして、評価と報酬を決めるので従来の年功序列とは異なる制度になります。
役割における貢献度に応じて従業員を評価できるので、仕事の成果への寄与や業務改善が進むなどのメリットがあります。また、適切に役割の定義を作成しないと評価基準があいまいなものとなってしまい評価が難しくなる恐れがあります。
ミッショングレード制度については、こちらの記事もご参照ください。
⇒ミッショングレード制とは?他の制度との関係・制度の導入に必要な役割定義書の作成方法まで詳しく解説
バリュー評価
バリュー評価は、企業の経営方針や価値観に基づいて達成度を評価する制度です。バリュー評価では、仕事の成果や業績だけでなく、業務における過程や普段の行動も評価の対象となります。
注意すべき点として、企業の価値観や経営方針は、抽象的な表現であることが多いので、正確な評価に落とし込むことが難しいことがあります。企業の価値基準をもとに、評価に値する行動などを具体的に言語化しておく必要があるでしょう。
バリュー評価の導入において、評価基準と運用方針を明確に定めることで、従業員同士が連携しやすくなり、組織力が強化されることも期待できます。
バリュー評価については、こちらの記事もご参照ください。
⇒バリュー評価とは?評価制度の仕組みや特徴・メリットや注意点・導入事例まで解説
ノーレイティング
ノーレイティングは、人事評価における従業員のランク付けをしない評価制度になります。評価者と被評価者が1対1でミーティングをして、目標に対する達成度のフィードバックを行います。
テレワークの推進など近年の目まぐるしい労働環境・経済状況の変化にスピード感をもって柔軟に対応できるようになるなどのメリットがあります。
運用上での注意点として、評価者・被評価者の時間的な負担が増えてしまうこと、評価者側がフィードバックをするためのスキルを習得する必要があることなどがあります。
ノーレイティングについては、こちらの記事もご参照ください。
⇒ノーレイティングとは?メリット・デメリット・評価制度を成功させるポイントを解説
リアルタイムフィードバック
リアルタイムフィードバックは、2週間・1ヶ月に1回のように高い頻度で被評価者と評価者でミーティングを行い、目標と達成度や業務の振り返りなどのフィードバックを行います。
短期間で適切な目標を立て、その業務内容を短期で評価できるメリットがあります。長期の業務内容では適切な振り返り、フィードバックが行えない場合に有効です。個人の成長が組織全体の成長につながるような事業を行っている企業の評価制度として適しているでしょう。
注意点として、ミーティングの頻度や時間が被評価者と評価者の負担となってしまい、他の業務などを圧迫することがないようにすべきでしょう。
ピアボーナス
ピアボーナスは、従業員同士で評価をして、お互いに報酬を送り合うことができる評価制度です。社内のチャットツールやスマートフォンのアプリを利用することで、評価をしたい相手に対してメッセージを添えてポイントを送ることができます。
評価だけでなくメッセージで感謝を伝えることもできるので、社内でのコミュニケーションが活性化されることも期待できます。また、ピアボーナスで送られたポイントは、月毎など一定の期間の中で金銭や商品と交換することができます。
ピアボーナスを導入する際の注意点として、仕組み自体の導入に対して他の評価制度よりもコストがかかる点が挙げられます。
ピアボーナスについては、こちらの記事もご参照ください。
⇒ピアボーナスとは?導入のメリットやデメリット、具体的なツールを徹底解説!
⇒ピアボーナス制度の6つの失敗例|制度の導入事例と成功させるためのポイントも解説
評価制度を導入する際に考えるべきポイント
何の前触れもなく突然新しい評価制度を導入してしまうと、間違いなく社内は混乱します。評価制度を導入する際に考えるべきポイントを踏まえて、評価制度を検討することでより良い組織作りが期待できます。ここでは、以下の3点について解説していきます。
・自社の雰囲気に合うか
・評価制度を導入するメリットとデメリット
・評価制度導入のプロセスの確認
自社の雰囲気に合うか
流行りの評価制度が自社の雰囲気に合うかどうかなどは極めて重要です。製造業やクリエイティブな業種を比べるだけでも、雰囲気は大きく異なります。それを踏まえても、評価制度が組織に浸透するか、評価の仕方・され方が適切に運用されるかは慎重に考えるべきかもしれません。
長年、年功序列型の評価制度を運用していた組織で突然成果主義を基準にした評価制度を導入すると多くの従業員から反発を招いてしまう恐れがあります。
ある評価制度を導入した際に、どのようなことが起きるのかをシュミレーションしながら、従業員から出る不平・不満などを想定して、「そもそも評価制度を変えるのが適切なのか」という出発点から検討することも考えるべきポイントとなるでしょう。
評価制度を導入するメリットとデメリット
評価制度の導入には、メリットもデメリットもあります。先ほども触れましたが、メリットの多そうな新しい評価制度システムが自社の雰囲気に合わずに従業員が退職してしまうなどのデメリットが発生する可能性もあります。
評価基準や評価項目を変えることで生じるメリットやデメリットやミーティングやフィードバックに工数を割かれて負担が増えてしまうなど会社の現状に合わない可能性も考えられます。
評価制度を導入する前に、一度自社の評価制度の現状とあるべき制度について社内で検討して、メリットとデメリットを整理しておくとよいでしょう。
人事評価制度のメリットとデメリットについては、こちらの記事もご参照ください。
⇒人事評価制度のメリット・デメリット|デメリットの解決策・人事評価制度の失敗例についても解説
評価制度導入のプロセスの確認
評価制度を導入する時、評価と等級と報酬の連動を含んだ制度設計・従業員への評価制度の説明会の実施・評価者側の研修などのプロセスが必要になります。
制度設計や説明会、研修に割く時間がない時は、外部のコンサルタントに依頼することも選択肢に入れるとよいでしょう。スムーズな評価制度の導入のために、導入後の運用のプロセスや年間のスケジュールなど細かな点まで確認することも重要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
本記事では、人事制度の中の「評価制度」について、目的・種類・導入する際に考えるべきポイントについて解説してきました。
組織力を強化したいと考えているベンチャー企業・スタートアップ企業の経営者や役員、人事担当者の方の参考になれば幸いです。
スタートアップ・ベンチャーの経営をされている方にとって、事業に取り組みつつ資金調達や資本政策、IPO準備も進めることは困難ではないでしょうか。
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この記事を書いた人
共同創業者&代表取締役CEO 茅原 淳一(かやはら じゅんいち)
慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。