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人事評価制度のメリット・デメリット|デメリットの解決策・人事評価制度の失敗例についても解説

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

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ベンチャー企業やスタートアップ企業においては、組織力を高めていくためにバックオフィスのオペレーションを最適にしたり、より多くの優秀な人材を集め、企業への定着率を高めるために人事評価制度を整えていくことが重要です。

ここまで人事評価制度について多くのメリットについて解説してきましたが、デメリットも存在します。人事評価制度は、適切な方法で運用していくことで、組織力向上に大きく貢献できる非常に重要な制度です。

本記事では、人事評価制度を導入するにあたり、押さえておくべきメリットとデメリットを中心にデメリットの解決策や失敗例ついて解説していきます。


人事評価・評価制度については、こちらの記事もご参照ください。
評価制度とは?評価制度の目的・種類・制度の導入時に考えるべきポイントを解説
人事評価とは?人事評価の目的・導入方法・注意点について解説
人事評価シートの記載方法|人事評価シートの目的と職種別評価項目を徹底解説
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人事評価制度のメリット

人事評価制度を運用することで、会社に様々なメリットを与えます。まず、人事評価制度における6つのメリットを確認していきましょう。
・企業理念と方向性の浸透
・処遇基準の確定
・モチベーション向上
・人材育成とサポート
・スキル管理
・コミュニケーションの促進

企業理念と方向性の浸透

1つ目のメリットは、会社の理念や方向性を従業員に対して明確に示すことができる点です。

日々の業務において会社の理念や方向性を意識することは難しいですが、人事評価における基準や指標を会社の理念や方針に即して設定することで、従業員が会社の理念に沿った行動や考えに自然と近づいていくことができます。

このように、人事評価制度を実施することで会社の理念や方向性を従業員に浸透させることが期待できます。

処遇基準の確定

2つ目のメリットとして、従業員の処遇を決定するにあたって、公正な評価を行うことができることが挙げられます。

等級や給与は、従業員にとって非常に重要なポイントであるため、公正に評価をする必要があります。人事評価において、従業員本人だけでなく上司が客観的に評価することで、従業員の成果や能力、会社への貢献度が明らかとなり、従業員の処遇決定における明確な根拠とすることができます。

等級制度・報酬制度・賃金制度については次の記事もご参照ください。
等級制度とは?3種類の等級制度と作成方法・導入事例について解説
報酬制度とは?役割・種類・制度設計の手順・導入時の注意点・事例について詳しく解説
賃金制度とは?年功給・職能給・成果主義賃金制度について詳しく解説

モチベーション向上

3つ目のメリットは、従業員のモチベーション向上に繋がることです。従業員にわかりやすく明確な評価基準を設定することで、評価に対する従業員の納得感が高まり、明確な基準で上司から自身の努力や成果が評価されることで、従業員のモチベーション向上に繋がります。

特に、人事評価が昇給や賞与など、報酬に直結する制度となっている場合、人事評価制度が従業員のモチベーション向上により繋がりやすいものとなります。

人事評価制度自体については、次の記事もご参照ください。
人事評価とは?人事評価の目的・導入方法・注意点について解説
評価制度とは?評価制度の目的・種類・制度の導入時に考えるべきポイントを解説

人材育成とサポート

4つ目のメリットは、人材の育成とサポートを行うことができる点です。人事評価をすることで、会社が求める人材像に対して、自身がどうであるかを客観的に明らかにすることができ、課題点があった場合は上司の適切なサポートやアドバイス、また会社から研修や自己啓発を促していくことで、従業員の育成やスキルアップに繋げていくことができます。

また、人事評価をもとに適材適所な人材配置を実施することができ、従業員の更なる育成にもつながってきます。

スキル管理

5つ目のメリットは、従業員のスキルを管理することができる点です。人事評価の中で、最新の人材データを回収することで、従業員のスキルを管理することができます。従業員の能力やスキルを見極め、最適な人材配置ができることで、人的資源を最大限に活用していくことが可能となります。

コミュニケーションの促進

最後のメリットは、コミュニケーションが活発化する点です。人事評価制度を運用するにあたって、フィードバック面談や1on1面談などが実施されるため、上司とのコミュニケーションが活発化されます

人事評価を実施する際、上司は部下に対して常に関心を持つ必要があります。これにより、同じ部署内での人間関係が構築され、業務上の意思疎通も促進されるでしょう。

人事評価面談については、次の記事もご参照ください。
人事評価面談|面談の目的・進め方・ポイントについて解説

人事評価制度のデメリット

人事評価制度を運用することで、メリットだけでなくデメリットも生じます。効果的に人事評価制度を運用していくためにも、デメリットについてもしっかりと把握しておきましょう。
・制度運用にかかる労力
・評価者に求められるスキル
・モチベーション低下に繋がるリスク
・人材育成方針の画一化

制度運用にかかる労力

人事評価制度を実際に運用していくためには、かなりの労力を必要とします。まず、制度を設計するにあたり、何のために人事評価制度を導入するのか、評価基準は何か、どのように人事評価を反映させるのか、など詳細に決めておく必要があります。

また、実際の導入時は、従業員に制度内容について説明会を実施するだけでなく、評価者にあたる上司を対象として研修を行う必要があります。そして、運用の段階では、評価シートの作成と配布、その後の進捗管理、評価後のシート回収、評価結果のデータ管理など、多くの業務が発生します。

加えて、目標設定や上司の評価業務、評価結果を部下に伝える面談の実施など、人事担当者だけでなく、従業員本人においても負担が増えることが予想されます。

従業員の人数によっては、評価結果を記録し管理していく点についても、大きな負担となる場合があります。人事評価制度を運用するにあたり、会社全体でどのような業務が必要となるか、あらかじめ見極めておきましょう。

人事評価の制度設計については、次の記事もご参照ください。
人事評価制度の作り方|評価を作る際の注意点や成功例についても解説
人事制度における評価基準の作り方とは?評価基準の種類・目的・必要性・注意点について解説

評価者に求められるスキル

上司である従業員が部下である従業員を評価することで序列をつくってしまうことになるので、従業員が納得できないような評価をしてしまうと、従業員の不満や退職の原因にも繋がってきます。

そのため、評価者には公正に正しく評価するスキルが必要となります。具体的には、適切な目標を設定する、目標達成に向けマネジメントする、公正に評価をする、効果的な評価面談を実施する、などです。評価者に必要とされるスキルについて、きちんと確認するようにしましょう

モチベーション低下に繋がるリスク

従業員にとって評価制度が適切でないと感じたときや、評価結果に納得できない場合は、モチベーションを低下させる要因の1つとなる可能性があります。

特に、自己評価よりも上司からの評価が低かった場合について、従業員から不満が生じることがあります。また、相対評価を実施している場合、高い評価を得ることができる従業員は限られてきます。自分では目標を達成していたと感じているのに、上司から評価されていない、と感じる場面が発生することもありますので対策が必要となってきます。

相対評価については次の記事もご参照ください。
相対評価とは?メリット・デメリット・評価制度の活用事例について解説

人材育成方針の画一化

厳格な評価制度を採用すると、処遇のために自社に固執する人材を生み出す原因になります。能力が均一化され、個々の得意分野が発揮されずに抑制されることもあり、組織の活性化が妨げられます

現在、環境の変化が著しく、新たな事業や方向転換が求められる場合があります。そうした場合に、内部で適切な人材を確保できない可能性が生じます。

デメリットの解決策

人事評価制度におけるデメリットを確認しましたが、それぞれの課題に対してどのように対策していくか具体的な手段を紹介していきます。
・システムの導入
・評価者研修
・適切なフィードバックとフォローアップ
・タレントマネジメントの導入

システムの導入

人事評価制度を活用していくにあたり、評価シートの配布、回収、日々の管理、記録の収集など、人事担当者の負担が増え、人的なコストが高くなりますが、人事評価システムを導入することで、この点を軽減することができます。

効果的に人事評価制度を運用していくためには、どのようなポイントが効率化できるか検討し、対応が可能な部分については効率化を進めたうえで、長期的な継続を念頭において体制を構築していく必要があります。

評価者研修

人事評価制度を運用していくためには、評価者が正しい評価をつけることが必要不可欠です。そのため、評価者が人事評価制度をしっかりと理解し、公平な立場で従業員を評価できるよう研修を実施する必要があります。

研修の実施については、外部で開催されている評価者研修に参加したり、社内に講師を招き自社に合った研修を実施する方法があります。人事評価制度の運用において、重要な立場である経営層や管理職、人事担当者は評価者研修を受講しておくとよいでしょう。

適切なフィードバックとフォローアップ

人事評価による従業員のモチベーションの低下や不満を防ぐにあたり、フィードバック面談を実施することが効果的な対策となります。フィードバック面談では、従業員の自己評価を丁寧に聞き、評価結果の根拠を従業員に説明します。

また、来期に向けて取り組むべき課題や、今後さらに良い評価を得るためにはどうすべきかアドバイスをしていきます。従業員としっかりフィードバック面談をすることで、評価に対する従業員の納得度も向上し、結果として評価に対する不満の解消に繋がります

フィードバック面談を行ったうえで、スキルアップを目的とした研修やセミナーへの参加や従業員の適性を鑑みた異動の検討など、フォローアップも行うとより効果的です。

タレントマネジメントの導入

従業員一人ひとりの個性や得意を伸ばすためには、タレントマネジメントが効果的です。タレントマネジメントとは、従業員のもつ能力や才能、スキルや経験など、様々な情報をまとめて管理し、採用や育成、配置異動に活用し企業の成長に繋げていく人材のマネジメント方法です。

タレントマネジメントにおける評価では、相対評価とは異なり、個人のスキル向上に向けて、それぞれに適した項目や基準を設定するため、絶対評価が可能となります。そのため、多様な人材を育成していく方法として、タレントマネジメントは有効な手段の1つとなります。

絶対評価については、次の記事もご参照ください。
絶対評価とは?メリット・デメリット・注意点・事例について解説

人事評価制度の失敗例

人事評価制度を活用するにあたり、注意すべき点を踏まえ失敗例について確認していきましょう。
・曖昧な目的
・不明確な評価基準
・極端な成果主義
・評価者のスキル不足

曖昧な目的

メリット、デメリットを理解したうえで、何のために人事評価制度を導入するのか明確にしておく必要があります。従業員のスキルの把握なのか、従業員のモチベーション向上なのか、具体的な目的を確認しておきましょう。

達成したい目的に沿った人事評価制度を構築し、導入していくことで、効果的な人事評価制度の運用が可能となります。

不明確な評価基準

評価基準が曖昧なまま評価を行うと、どのような努力が評価されるのかが分からず、満足する人事評価を行うことが難しくなります。

このような状況では、従業員からの不満が生じやすくなります。評価基準を策定するには時間と労力が必要ですが、曖昧さを避け、明確な評価項目を設定することが重要です。

極端な成果主義

成果主義の評価が良くないということではなく、極端に成果主義に偏った人事評価を実施すると失敗する可能性があります。

結果のみに焦点を当てると、従業員が目標を低く設定したり、個人の成果のみを重視する従業員が増え、チームの成長を妨げる原因になることもあります。結果だけでなく、プロセスや成長の速さにも注目して評価することが重要です。

評価者のスキル不足

人事評価制度の中身は重要ですが、実際に評価を担当する上司の評価能力が不足していると、制度は効果的に機能しません。評価に個人的な感情を反映させてしまうと、正しい評価とは言えず、評価者の能力不足による失敗の原因の1つとなります

評価者が正しく評価することができるよう、会社が事前に評価者の適性を見極め、必要に応じて研修を実施する必要があります。

まとめ

ここでは、人事評価制度のメリット、デメリットを中心にお伝えしました。

人事評価制度は、従業員の成長ひいては会社の成長に大きく影響を与える制度です。ここで取り上げた内容を再度確認し、従業員が納得できる自社に合った評価制度を導入するようにしましょう。

本記事が、人事評価制度の導入を検討しているベンチャー・中小企業の人事を担当されている方の参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。