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人事評価の際の目標設定とは?目標設定のメリット・SMARTの法則を解説

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

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少人数で始めたベンチャー企業やスタートアップ企業の中には、事業に関わる業務が中心でバックオフィスや人事制度の設計が不十分な企業もあるでしょう。

資金調達や事業拡大によって、これから上場を目指して組織を大きくしていく企業は人事や総務の体制を確立することで安定した経営をすることが可能となります。その土台を作って行くためにも人事評価は重要です。また、効果的な人事評価のために目標設定が重要になります。

本記事では人事評価で目標設定が必要な理由とメリット、そして目標設定のフレームワークSMART、目標を立てる手順、そして代表的な目標設定方法である、OKR、MBO、KPIなどをお伝えします。さらに目標設定の注意点にも触れ、目標設定を成功させるための留意点などもご紹介します。

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人事評価の際の目標設定とは

会社で従業員の給料や昇給は、その人たちの実績に応じて決める必要があります。その基準となるのが人事評価です。人事評価は公平で、かつ従業員たちの納得できるものであることが大切です

なぜ人事評価の際の目標設定が重要か

人事評価により従業員を査定し給与や昇給、賞与などの決定、さらに人事異動を行います。このように人事評価は従業員の待遇の根拠となりますが、人事評価で重要なのが目標設定です。ここでは人事評価において目標設定が重要である理由をお伝えします。

人事評価の判断基準

人事評価では、従業員を評価する基準として予め目標を設定しておきます。目標の達成度合により人事評価の判断基準とするためです。人事評価の判断基準は客観的なものであり、評価者の主観が入らないようにしなければなりません

もし人事評価の判断基準に評価者の主観が入ると、評価者が変わるたびに従業員の評価が変わり、その人が正しく評価されなくなります。また、評価者の主観による「好き嫌い」により従業員の評価が変わると、会社内のモチベーションの低下につながります。

人事評価は従業員を公平に評価するため、客観的な基準であれば評価者が変わっても、その人を正しく評価できます。客観的な評価基準として目標を設定しておけば、タスクの出来具合により評価することとなり、従業員にも納得のいく評価が可能です

評価基準については、こちらの記事もご参照ください。
人事制度における評価基準の作り方とは?評価基準の種類・目的・必要性・注意点について解説

適切な人材配置

会社の人事では人材育成と従業員の能力や状況に合わせて人材を配置し、事業を行います。会社の業績はさまざまな要素に左右されますが、人材配置によっても業績に影響を及ぼすことがあるため適切な人材配置が必要です。

そもそも人材配置では従業員の持つ能力や資質を加味し、タスクをどの程度達成できるか、正しく評価されていなければなりません。適材適所、というようにその人に適した職場や担当業務を割り当てていかないと効率よくタスクを進めるのは難しくなるでしょう。

適材適所を進めるには、タスクを達成するのに求められる能力を満たした人材を会社の中から選ばなければなりません。そのためにも人事評価に目標をもたせ、目標を達成する能力に応じて適切に人材を配置すると適切な人材配置に繋がります。

従業員と企業の関係性の強化

企業では従業員が離れていかないように関係性を維持していることが大切です。人事評価が曖昧であると、給与や昇給、そして賞与などの処遇に従業員が不満を持つことが多く、それが理由で職場の雰囲気も悪くなりがちです。

そこで従業員が企業の処遇に不満を持たないようにするために、人事評価の目標を従業員に伝えておくことが大切です。人事評価はあくまで目標を達成したかによることを従業員に十分説明し納得してもらう必要があります。

従業員に人事評価の目標が大切であることを納得してもらえば、従業員にも不満が出ず、職場の雰囲気の維持に繋がります。そうすれば従業員と企業の関係性も強化され、会社から離れていく従業員の減少に繋がります。

人事評価の際に目標設定をするメリット

人事評価の目標が重要であることを先にお伝えしました。人事評価の基準を明確にするために目標設定をすると、従業員は人事評価が透明であることを理解できるのがメリットです

さらに評価者も評価の基準がタスクの目標であるため主観が入りにくく、評価者により評価の結果の散在を防げるのがメリットになります。

目標設定のフレームワーク「SMART」とは

人事評価の目標設定を効果的に設定するフレームワークに「SMART」と言われるものがあります。「SMART」とは5つの英単語の頭文字を集めたものであり「Specific(明確性)」「Measurable(計量性)」「Achievable(達成可能性)」「Relevant(関連性)」「Time-bound(期限)」などから成り立っています。

Specific(明確性)

目標が曖昧であると従業員は何を目標にタスクをこなすか判断に迷います。目標が曖昧なままタスクをするとミスが発生し、大きなトラブルに発展するかもしれません。また、従業員の生産性が低下し、タスクの遂行能力が高まらない結果となります。

このような場合は、曖昧である人事評価の目的にSpecific(明確性)を持つように修正する必要があります。まず、目標は具体的でなければなりません。人により解釈が異ならないように明確に言語化することが大切です。

目標を言語化する方法として「5W1H」の利用があります。目標をいつ(When)、どこで(Where)、だれが(Who)、何を(When)、どのよう(How)にするかについて言葉で表現するとタスクに落とし込みやすく、誰にでもわかりやすい明確な目的になります

Measurable(計量性)

目標には、Measurable(計量性)が求められます。人事評価で達成できる目標は計量できるものでなければ正しい評価に繋がらないからです。目標が計量できないと人によって解釈が異なり、タスクの結果も予定していたものと異なってしまいます

例えば、「先日の外部向けイベントで取ったアンケートの集計を早めに終わらせる」という目標設定にすると、人によっては「15分で終わらせる」や「60分で終わらせる」と解釈してしまう可能性があります。その目標を課せられた複数の従業員が「15分で終わらせる」と解釈すればタスクの結果は目標どおりとなります。

しかし、「早めに終わらせる」を「60分で終わらせる」と解釈する従業員がいると、目標である「先日の外部向けイベントで取ったアンケートの集計を15分で」終わらせられず、他の従業員にも悪影響がでます。そのため目標は「15分で終わらせる」など計量できるものでなければなりません。

Achievable(達成可能性)

目標は達成できる範囲で設定しなければならず、そもそも達成できない目標を設定すると有効でない目標となってしまいます。目標は段階的に難易度を上げていくべきで、その順番どおりに人材を育成していく必要があります。

Achievable(達成可能性)とは、目標を簡単すぎず努力すれば達成できるレベルに設定することをいいます。目標に現実味がないと、従業員は最初から目標に取り組もうとしませんし、最悪な場合、職場での事故や離職に発展しかねません。

あまりにも不可能な目標ではなく、従業員のレベルに応じて、努力すれば達成できる目標を設定すると有効に機能します。人事評価の際は、必ず目標を伝えておき、努力した結果その目標を達成したのかを基準として見ておく必要があります。

Relevant(関連性)

目標を達成した際にどのようなメリットが従業員にあるのか、Relevant(関連性)を分かるようにしておきます。タスクの目標が曖昧でなく、明確に言語化されていれば従業員はその目標自体に取り組みやすくなります。そしてその目標を達成した際に何があるのかも必要です。

従業員が努力してタスクに取り組み目標を達成した際は、例えば基本給を3万円アップする、など報酬との関連性があると従業員はそのメリットを受けることができ、モチベーションを維持しやすくなります。

従業員が享受するメリットは、予算内で従業員に十分な利益であることが大切で、従業員にとって少なすぎると感じる利益では効果が薄らぐことになります。また、このメリットは従業員に対しても事前に周知しておく必要があります。

Time-bound(期限)

目標にはTime-bound(期限)が必要です。目標に期限がないと、いつまでに達成しなけらばならない、というイメージが湧かず先延ばしにする可能性があります。タスクを先延ばしにすると能力を発揮できずに時間だけが過ぎてしまうことでしょう。

タスクに期限を設けると、期限から逆算して目標に取り組めるため、例えば、目標の期限があと3日しかない状況があるとすると、3日間でやるべきことを整理し段取りなど自ら考えるようになります。そうすることで目標への段取りや計画性なども身につけることが可能です。

なお、目標の期限には短期と長期があります。短期目標は数日~数か月間で設定することが多く、日常業務やルーティン作業などが短期目標の対象です。長期目標は数ヶ月~数年に渡るものがあり、末端業務からリーダー職に成長するまでの目標を設定することもあります。

人事評価の際に目標を立てる手順

実際に目標を立てる際には順番があります。一つずつ段階を踏んで目標を立てていくと効率よく目標設定できます。ここではBASIC法とよばれる、以下の4つの手順についてお伝えします。
①目標に関する項目
②目標の達成基準の設定
③目標達成の期限の設定
④目標達成の計画

①目標に関する項目

目標には4つの項目があり「タスクで達成することは何か」を明確に言語化します。次に4つの項目を分かりやすい例を交えてご紹介します。
・レベルアップ
・問題の改善
・レベルの維持
・新しいことへの挑戦

レベルアップ

現状維持の目標では従業員の進歩がなく業務も衰退していく恐れがあります。そこで目標にはレベルアップの項目を明記します。例えば、今週は5つのタスクができたので、来週は7つのタスク達成を目標にする、などがあります。

問題の改善

問題を抱えていれば問題の改善を目標に取り入れます。例えば、今週は5つのタスクを達成できなかったので、来週は5つのタスクを必ず達成する目標を設定する、などがあります。

レベルの維持

目標のレベルが高いとレベルアップを図ることが難しくなることもあるため、一定のレベルを保つためレベルの維持を目標として設定します。例えば、今週は7つのタスクを達成できたが、現状を継続することが難しいため来週も7つのタスクの達成を目標にする、などがあります。

新しいことへの挑戦

今まで経験したことのないタスクに挑戦することを目標として設定します。例えば、今まで一担当者であったがグループリーダーの業務を目標とする、などがあります。

②目標の達成基準の設定

人事評価の目標は、どれ位の量をこなせれば達成できるのか、その基準を明確にしなければなりません。そのため、目標には必ず数値を入れて明確にする必要があります

しかし、数値化できるのは数量や重さ、長さなど具体的に測れるものですが、それができないものに、状態のタスクがあります。例えば、リーダーとして部下をまとめるタスク、などがあります。

また、スケジュールの基準もあります。いつまでに何をする、という区切った期間内のタスクのことで、例えば今年度中に中小企業診断士の資格を取得する、などがあります。

③目標達成の期限の設定

目標を達成するためには必ずいつまでにタスクを達成するのか、その期限を設定します。期限の設定する際は、目標にかかる期間が具体的であることが大切でタスクごとに状況に応じて設定していきます

目標設定の期限には、例えば、このタスクは1件につき15分以内で達成する、また1時間以内に4つのタスクを達成する、1日5時間で20のタスクを完了する、さらに1週間で80のタスクを達成するなど積み上げ式で設定してもよいでしょう。

いずれにしても目標設定には期限を設定しておき、いつまでに達成するのか曖昧なままタスクを延長できないようにしておくことが大切です。

④目標達成の計画

目標に関する項目の決定、目標の達成基準の明確化、そして目標の期限を設定した次のステップとして、目標達成の計画があります。目標を達成するには、具体的にどのような行動をすべきか計画を立てます。

目標達成の項目や基準などを現場レベルまで掘り下げて、実際の行動や必要になる手段などを検討する必要があります。目標達成の計画では人事評価の目標を達成するにはどのようなアクションを起こすかを具体化していきます。

人事評価における代表的な目標設定法

人事評価の目標設定方法として代表的なOKR、MBO、KPIなどの3つをここでは解説します。

OKR

OKRとは、Objectives and Key Results(達成目標と主要な結果)の頭文字3文字の略語をいいます。この目標設定法はアメリカのインテル社により考案されたもので、同国のIT企業であるGoogleやFacebookでも採用されて話題となっている手法です。

この手法では、頭文字のとおり、企業の全体で達成目標と主要な結果を設定します。続いて企業の全体からチームの目標、さらに個人の目標に細分化していきます。達成目標は細分化されますが企業の全体と個人の向かう先が同じであるため、迅速な目標達成が可能です。

OKRについては、こちらの記事もご参照ください。
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MBO

MBOとは、Management by Objectives(目標による管理)の頭文字3文字の略語をいいます。MBOはドラッカーにより提案されました。OKRは全社の目標管理制度ですがMBOはリーダーと部下間で利用される手法です。

MBOでは人事評価による報酬の決定を目的としており、個人が目標を設定しリーダーが進捗をチェックしていきます。日本の企業で一般的に取り入れられており、リーダーの押し付けでなく、個人とリーダーとのコミニュケーションを通じて目標管理を行うのが特徴です。

MBO(目標管理制度)については次の記事もご参照ください。
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MBOの導入事例|運用のポイントや成功事例・失敗事例について解説
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KPI

KPIとは、Key Performance Indicator(重要業績評価指標)の頭文字3文字の略語をいいます。KPIでは設定した目標の達成度を数値として表現するため、数字による進捗管理が可能です。

KPIでは目標が数値化されており、例えば財務指標や営業の件数目標などがKPIにあたります。個人やチームでの目標が客観的に判断できるため、問題のあるプロセスの発見が容易で、業務改善に取り組みやすくなるのが特徴です

人事評価の際の目標設定における注意点

目標設定では、努力する、増加するなどの曖昧な設定をすると、人事評価が正しく行われず評価者により異なる結果となります。その結果、従業員のモチベーションが下がり、業績の悪化にも繋がりかねません。目標設定の際は、どうすれば評価に繋がるのかを明確にし、目標を共有しなければなりません

人事評価の際の目標設定を成功させるには

目標設定の手法や注意点などをお伝えしましたが、目標設定を成功させるには、会社にストックしてある企業ノウハウをフルに活用することが大切です。そうすれば自社に合った、より次元の高い目標設定が可能になります。

また、目標設定が本来の目的から外れてしまい、思うような結果を得ることが出来ないことも起こりえます。その際は、現状の目標設定が本来の目的から外れていないかリーダーや実務経験者に相談する、また、結果を出している従業員から助言を得てみるとよいでしょう。

まとめ

ここでは人事評価の目標設定について、その重要性やメリット、フレームワークとしてのSMARTと目標を立てる手順、さらに代表的な目標設定方法として、OKR、MBO、KPIなどをご紹介しました。

また、人事評価の目標は曖昧でなく具体的で共有できるように設定には注意が必要です。さらに目標設定の最終目標である、成功させるための留意点などもお伝えしました。これらの内容をふまえた上で、効果的な人事評価の目標を設定してみてください。


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この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。