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成果評価とは?能力評価・情意評価との違いやメリット・デメリット・注意点を徹底解説
執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)
『資金調達の手引き』
調達ノウハウを徹底解説
資金調達を進めたい経営者の方の
よくある疑問を解決します!
従業員の成果を評価する評価手法が「成果評価」です。企業の中でも年功序列制度が崩れつつある今、「自分の会社にも成果評価を導入したい」と考えている経営者の方も多いのではないでしょうか?
成果評価は従業員の成果を報酬に反映させる方法ですので、確かに業績に最も直結する評価方法だということができます。
しかし長期的な企業の成長を阻害したり、チーム全体の力が弱くなるなどのデメリットもあるので、導入する際には注意点も理解して慎重に進めなければなりません。
成果評価のメリット・デメリット、具体的な導入の手順などについて詳しく解説していきます。
改めて評価制度について学び直してから評価項目の見直しを検討したい方は、以下の記事で詳しく解説しておりますのでこちらをご覧ください。
⇒評価制度とは?評価制度の目的・種類・制度の導入時に考えるべきポイントを解説
⇒人事評価とは?人事評価の目的・導入方法・注意点について解説
⇒人事評価シートの記載方法|人事評価シートの目的と職種別評価項目を徹底解説
⇒人事評価制度の作り方|評価を作る際の注意点や成功例についても解説
⇒人事評価の際の目標設定とは?目標設定のメリット・SMARTの法則を解説
⇒人事評価コンサルタント|メリット・デメリット・選ぶ際のポイントについて解説
⇒人事評価面談|面談の目的・進め方・ポイントについて解説
⇒人事評価制度のメリット・デメリット|デメリットの解決策・人事評価制度の失敗例についても解説
⇒人事評価の成功事例10選!人事評価項目の種類・人事評価制度の成功事例を幅広くご紹介!
目次
成果評価とは
成果評価とは、その名の通り、従業員の仕事の成果について評価を行う方法です。成果評価は、具体的な数値や定量的なデータに基づいて行われることが多く、目標達成度や成果物の品質などを評価することが一般的です
成果評価と他の評価方法との違い
成果評価の他に従業員を評価する方法として能力評価と情意評価という方法があります。これらの評価方法を上手に組み合わせることで、従業員を総合的に判断することができますし、また、評価の配分によって会社の目指す方向に従業員と共に進み、育てることができます。
成果評価と能力評価・情意評価の違いについて詳しく解説していきます。
成果評価と能力評価の違い
能力評価とは、評価が始まる期間の前から従業員が本来的に保有している職務遂行能力のことです。
営業であればコミュニケーション能力、事務であれば資格の取得状況などが能力評価の基準に該当します。従業員本来の能力が評価対象になるので、評価期間内の成果を評価する成果評価とは大きく異なります。
従業員の適性を評価できるというメリットはありますが、従業員の努力などが反映されないので、従業員のモチベーションが低下してしまうリスクがあります。
成果評価と情意評価の違い
情意評価とは仕事に対する姿勢や意欲などを評価する方法です。
上司や部下や同僚などとのコミュニケーションをしっかり取れているかなどが評価の対象となり、成果は評価の対象とはなりません。チーム内のコミュニケーションやチーム力向上に対してはメリットがあるものの、成果が評価されないので短期的には会社の成長には繋がりません。
また、評価の基準は上司が部下に対して「やる気があるかどうか」という点を評価するので、どうしても評価に上司の主観が入ってしまいます。
数字が客観的に判断できる成果評価と比較して、情意評価は数値的な評価ができないので、部下が不満を持つ可能性があります。
成果評価のメリット
成果評価には次の3つのメリットがあります。
・仕事の成果が報酬に反映されやすい
・社員のモチベーション向上につながる
・職務・業務を通じた人材の育成が可能に
短期的には会社の業績の向上に繋がりやすいですし、従業員のモチベーション向上にも大きく寄与するでしょう。成果評価の3つのメリットについて詳しく解説していきます。
仕事の成果が報酬に反映されやすい
成果評価は、仕事の成果が報酬に反映されやすいという特徴があります。従業員は仕事で成果を出せば高い報酬を獲得できるので、成果を追求して仕事に励む傾向があります。
会社全体としても利益を出しやすいので、従業員に報酬というインセンティブを与えることによって、短期間で大きな利益を出すことが可能です。
成果に直結する評価体系ですので、会社の業績に最も直結する評価ができるという点がメリットです。
インセンティブについては、次の記事もご参照ください。
⇒インセンティブプランとは?種類とメリット・導入時の注意点を解説
⇒【上場企業必見】M&A先で有効な業績連動型報酬とは?子会社向け株式インセンティブプラン4類型を分かりやすく解説!
社員のモチベーション向上につながる
成果評価は、仕事の成果に比例して報酬に直結する評価制度です。そのため従業員は多くの報酬獲得を目指して仕事に励む傾向があります。
仕事の成果がダイレクトに報酬や評価に直結するため、従業員のモチベーションが向上し、会社全体の生産性向上も期待できるでしょう。
従業員が高いモチベーションで働くことができ、成果が正当に評価される社風を確立できるのも成果評価のメリットです。
職務・業務を通じた人材の育成が可能に
仕事を通じて人材育成ができるのも成果評価のメリットです。成果評価の結果を確認することで、従業員は「自分の成果が目標からどの程度離れていたのか」一目瞭然で確認することができます。
そこから「どこが足りていないのか」「何を頑張ればいいのか」を客観的に把握することができるので、人材育成には非常に効果的です。
上司から主観的に「ここが足りていない」とか「不足している」などと言われても、評価が主観的であるため従業員の中には素直に受け入れられない人もいるでしょう。
しかし成果評価の場合には、結果が数値的に見えるので従業員も自分に不足している部分を知ることができます。このような観点から成果評価は人材育成にも有効に活用することができます。
成果評価のデメリット
短期的には従業員のモチベーション向上や企業の業績アップにつながる成果評価ですが、デメリットも非常に多いので十分注意しなければなりません。
・社員が評価される仕事と評価されない仕事を取捨選択するようになる
・チームワークが弱くなる
・部署ごとの不公平感が強くなる
・社員の考え方が中期的・長期的から短期的になり視野が狭まる可能性がある
・社員のストレスや不満が高まり離職率が高くなる
・社内で新しいチャレンジが生まれにくい
企業内部の制度が整った競争環境で、それを是とする企業文化でなければ、むしろ組織全体としての力は弱まってしまう可能性があることには十分に注意しなければなりません。
成果評価が抱える6つのデメリットについて詳しく見ていきましょう。
社員が評価される仕事とされない仕事を取捨選択するようになる
社員が評価される仕事と評価されない仕事を取捨選択するようになる可能性が高いという点は成果評価のデメリットです。
高い評価を得たい従業員は業務の中で最も高い評価を得られる業務ばかりするようになり、評価が得られない仕事を疎かにするリスクがあります。
また、営業職でもノルマに直結する商品やサービスばかり販売し、ノルマに寄与しない商品やサービスの販売はしない可能性もあります。このような成果ありきの営業の結果、顧客の不利益になる商品やサービスを販売してしまい、クレームなどにつながる可能性があります。
さらに、成果につながらない業務が疎かになった結果、業務が回らない可能性もあるでしょう。
成果を追求するあまり、従業員が仕事を取捨選択するようになるので、会社が円滑に回らなくなったり、顧客本意の事業活動ができない可能性があります。
チームワークが弱くなる
成果評価を導入すると、従業員は他の従業員と競争することになります。すると、他の従業員と協力して業務をこなすことができなくなるリスクがあります。
個人の成果を追求していった結果、チーム全体としての力が弱くなり、会社全体の競争力やチーム力が低下していく懸念があるのがデメリットです。
個人の成果を追求するあまりにスタンドプレーに陥ってしまうリスクがあるため、チームワークが弱くなり、結果として会社の収益力は落ちてしまう可能性があります。
部署ごとの不公平感が強くなる
成果評価を導入したことによって、部署ごとの不公平感が強くなるという点もデメリットです。成果評価の会社においては「評価されやすい部署」と「評価されにくい部署」に分かれます。
そのため、部署ごとに不公平感が生じ、評価されない部署ほど従業員のモチベーションが低下する可能性も否定できません。
部署によって評価の基準を変えるなどして、部署ごとの不公平感を解消し、どのような部署にいても従業員が高いモチベーションで働くことができる仕組みを構築することを心がけましょう。
社員の考え方が中期的・長期的から短期的になり視野が狭まる可能性がある
従業員の視野が短絡的になり、長期的な目線を失ってしまうリスクもあります。成果評価は一般的に1年間に1回または半年に1回の頻度で評価が行われます。
従業員も高い評価を得るためにどうしても短期間の評価を追ってしまうので、中長期的に会社を成長させるためにはどうすればよいのかという視点を失いがちです。
営業職は短期のノルマをこなすために「半年間だけ契約してほしい」などと頭を下げることも多いですが、これでは長期的に会社の利益にはなりません。
成果評価の導入によって従業員が短期的に評価されることを最優先にして仕事をする可能性があるので、従業員の成果が会社の長期的な成長につながるものとするなど、一定の配慮をしなければなりません。
社員のストレスや不満が高まり離職率が高くなる
成果評価導入によって、社員のストレスや不満が高くなり、離職率が高くなる可能性もあります。成果評価は確かに従業員のモチベーションに繋がりますが、社員同士の競争が働くことによって人間関係がギクシャクしたり、ノルマが頭から離れなくなるリスクもあります。
結果的に従業員が心穏やかに働くことができなくなり、離職に繋がってしまうリスクがあります。過度な成果主義はモチベーションが向上する効果よりも、会社全体の生産性が低下してしまいかねません。
成果を評価するだけでなく情意評価などの配点も加味した人事評価制度とするなど、従業員が競争によって疲弊しないような制度設計を心がけましょう。
社内で新しいチャレンジが生まれにくい
成果評価を導入することによって社内で新たなチャレンジが生まれにくくなるという点もデメリットです。
成果評価は会社が与えられた目標をこなすことだけが従業員も目的になってしまうので、従業員から「新たなチャレンジをしよう」というような意思が働きにくくなるという点にも注意しなければなりません。
社内で新しいチャレンジが生まれにくいので、会社全体の雰囲気がマンネリ化して、同業他社との競争について行けなくなる可能性があるという点は成果評価のデメリットです。
「新たなチャレンジをどの程度したのか」という点も評価基準として設けておいた方がよいかもしれません。
成果評価を進める際の注意点
具体的に会社の中で成果評価の導入を進める際には必ず次の3つの点に注意してください。
・評価設定を業務ごとに細かく行う
・企業理念を明確にする
・部署・部門間で職務の分担を定めて、受け持ち範囲を明確にする
評価項目や企業理念や職務分担をしっかりと分けておかなければ企業の力はむしろ弱まってしまう可能性があります。成果評価を導入する際の3つの注意点について詳しく解説していきます。
評価設定を業務ごとに細かく行う
評価をどのような内容で行うのか、評価設定は業務ごとに細かく行いましょう。
例えば、評価設定が「営業ノルマの達成率」というだけであれば、営業職以外の人間は評価されずに不平等な人事評価だと感じてしまいます。
また、細かな努力が反映されるよう、評価設定は5段階評価とするなど、従業員の努力が報われて反映されるような評価項目を作成することも重要です。
全ての業務に携わる従業員が「自分の仕事が適正に評価された」と実感できるような評価項目をできる限り細かく作成することを心がけましょう。
5段階評価については、次の記事もご参照ください。
⇒5段階評価とは?評価のつけ方・評価作成のポイント・注意点を解説
企業理念を明確にする
成果評価導入と同時に企業理念もしっかりと明確に打ち出しましょう。成果評価が企業理念と異なるものであるのであれば、導入すべきではないためです。
「従業員が競争して切磋琢磨する会社」「年齢や勤続年数にかかわらず従業員の成果を公平に評価する会社」など、企業理念を明確にして、企業理念と人事評価制度に齟齬が生じないようにしましょう。
評価制度導入時に企業理念を改めて確認し、企業理念と成果評価が異なるのであれば、導入を見送ることも重要です。
「従業員の輪を大切にする」「年功序列を守りたい」このような会社に成果評価を導入することはふさわしくないため、導入を見送った方がよいでしょう。
部署・部門間で職務の分担を定めて、受け持ち範囲を明確にする
部署や部門でそれぞれどのような業務を担うのか、受け持ちの範囲を明確にすることも重要です。成果評価においては、成果につながらない仕事について従業員が疎かにしてしまう可能性が高いのが大きなリスクです。
「誰も受け持ちがいない」「誰も率先してやろうとしない」このような業務が生じないよう、どの部署や部門がどのような仕事を担当するのかの割り振りをしっかりと行っておきましょう。
この業務を行わないと、管理職が大変な思いをしたり、気が利く従業員が評価されない仕事を受け持ち不満をためて離職するようなケースも考えられます。空白になっている職務がないように、受け持ち範囲を明確に分担することも徹底してください。
成果評価の進め方
成果評価は次の流れで進めていきます。
1.成果基準を統一して社内に周知徹底する
2.プロセスも評価する基準にする
3.フィードバックを行う
成果評価を導入する流れを詳しく見ていきましょう。
①成果基準を統一して社内に周知徹底する
成果基準を統一し、その基準の透明度を高めて社内に周知徹底することが重要です。
「上司が主観で決めているのではないか」「自分は頑張っても評価されない」などと考えられてしまったら、従業員は評価を得るために仕事に励まなくなってしまいます。
成果の基準は統一して、全従業員に周知を図り、従業員がいつでも基準を確認できる状態にしておきましょう。
評価基準については、次の記事もご参照ください。
⇒人事制度における評価基準の作り方とは?評価基準の種類・目的・必要性・注意点について解説
②プロセスも評価する基準にする
成果だけでなく、仕事のプロセスも評価する基準を作成しましょう。プロセスを評価せず、結果だけを評価するのであれば、従業員は失敗する可能性のある仕事を避けるようになってしまいます。
これでは新しいチャレンジやイノベーションが生まれず、仕事は常に無難なものばかりとなり、やがて会社は競争力を失ってしまうでしょう。
成果を評価すると同時に、プロセスも適切に評価することで、従業員が成果獲得を目指しながらチャレンジできる環境を整えていきましょう。
③フィードバックを行う
評価を行ったら必ずフィードバックを行ってください。前期よりもよかった点、なぜ目標に届かなかったのかを上司が部下に対してフィードバックすることによって来期は「目標を達成しよう」という気持ちになります。
また、具体的な数字に基づいて「不足している点」「至らない点」などを確認できるので、人材育成にもフィードバックは大きく寄与します。
評価したら終わりではなく、部下に対して必ずフィードバックを行うようにしてください。
まとめ
成果評価とは、評価期間内の成果を評価する人事制度です。
従業員のそもそもの業務遂行能力を評価する能力評価や、やる気や態度を評価する情意評価などとは大きく異なる評価基準です。成果評価は短期的な成果が従業員の評価や報酬へと直結するため、短期的に従業員のモチベーションを向上させ、会社の業績アップにも寄与する評価基準だと言えます。
しかし、従業員の競争が熾烈になりすぎると、会社の人間関係を壊し、むしろチーム全体としての競争力や生産性を削いでしまうリスクもあります。
成果評価導入の際には、個人の能力とチームの能力の双方がバランスよく引き出せるような人事制度を構築しましょう。
人事制度について、こちらの記事もご参照ください。
⇒人事制度とは?人事制度の目的・設計・歴史・新しい人事制度について徹底解説!
⇒人事制度と設計時の注意点|人事制度の種類と構築の流れについて解説
⇒人事考課制度の作り方|会社と社員へ与える影響と運用の注意点を解説
⇒人事制度設計コンサルティングとは?選び方・費用相場・おすすめ企業も紹介
⇒等級制度とは?3種類の等級制度と作成方法・導入事例について解説
⇒評価制度とは?評価制度の目的・種類・制度の導入時に考えるべきポイントを解説
⇒報酬制度とは?役割・種類・制度設計の手順・導入時の注意点・事例について詳しく解説
新しい人事制度については次の記事もご参照ください。
⇒【2023年最新】トレンドの人事制度|最新人事制度9選を徹底解説
⇒MBO(目標管理制度)とは?具体例と作成時のポイント・OKRとの違いについて解説
⇒OKR(目標と主要な成果)とは?目標の設定方法・運用の際のポイントを丁寧に解説
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⇒バリュー評価とは?評価制度の仕組みや特徴・メリットや注意点・導入事例まで解説
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⇒コンピテンシー評価とは | メリット・デメリットや導入時の注意点をご紹介!
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この記事を書いた人
共同創業者&代表取締役CEO 茅原 淳一(かやはら じゅんいち)
慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。