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Google社におけるOKRの運用|Google流のOKR運用のポイントを丁寧に解説!

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

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Google社も導入しているOKRとは、Objective and Key Result(目標と主要な結果)の略称でGoogle社やインテル社をはじめ、多くのグローバル企業の目標設定と管理に活用されています。OKRでは、達成すべき野心的な目標(Objectives)を設定し、目標を達成するための主要な成果(Key Results)を設定することで、主要な成果をあげれば目標も達成できる状態へ設定します。

本記事では、Google社の事例を挙げながら、運用のコツを詳しく解説します。


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Google社のOKR導入の歴史

Google社の社内でOKRが普及した背景に、ベンチャーキャピタリストのジョン・ドーア氏がOKRを紹介をしたことがあります。ジョン・ドーア氏が、インテル社でエンジニアとして働いていた時にインテル社の3人目の社員であるアンディ・グローヴを通じてOKRという考え方を知ることになりました。

当時のインテル社が直面していた「社員が優先度の高い業務に集中するにはどうすればよいか」という課題に対して、OKRを導入することで社員の目指すべき方向性を示し、課題解決にむけて進むことができました。

このインテル社での成功を元に、ジョン・ドーア氏は1999年にGoogle社の創業者であるラリー・ペイジ氏とセルゲイ・ブリン氏にOKRを紹介し、Google社は2000年代初めにOKRを導入しました。

Google流のOKR運用ポイント

Google流のOKR運用のポイントを3つご紹介していきますが、注意しておきたい点は、企業によって状況が異なるため、Google社のやり方が全ての企業に当てはまるとは限らないということです。OKRの導入が自社に適合するか確認しながらGoogle流の運用のポイントをご参照ください。
・全社員を巻き込むウィンセッション
・ストレッチゴールの設定
・OKRのスコアリング

全社員を巻き込むウィンセッション

1つ目の運用ポイントは、ウィンセッションの実施です。ウィンセッションとは通常、1週間の終わりに開催され、社員の進捗をお互いに確認して褒め合う会を指します。

Google社ほどの大企業では、社員全員を同じ目標に向かわせることは容易な事ではありません。しかし、Google社では毎週木曜日にウィンセッションを行うことで、組織内で統一感を持った取り組みを実現しました。

Google社はこのセッションをTGIFミーティングと呼び、世界中の社員が参加できるよう実施しました。

ウィンセッションでは社長だけでなく幹部がプレゼンテーションを行い、参加者は即座に質問することができます。気兼ねなく意見を言い合える場が社内の風通しを良くし、全社員が同じ方向に進んで働く空気感が醸成されます

ウィンセッションを行う中で大事なことは、どんなに小さな進捗でも発表し、他の社員はその進捗を褒めることです。例えばエンジニアなら開発中のコード、営業なら成約に至った案件を進捗として紹介します。

ウィンセッションを行うことで、次の効果も期待できます
・自身のチームや部署以外の社員全体のタスクの進捗状況を確認することができる
・想定したスケジュール通りに進まなかった社員を励まし、モチベーションを維持する

ストレッチゴールの設定

2つ目の運用ポイントは、ストレッチゴールの設定です。この手法はGoogle社のOKR運用を成功に導いた1つの方法であり、自分ができると思う設定値より高い目標を掲げることです。

リンクトイン・ヤフー・ホットスタジオなどの企業の再設計と製品の販売を手がけてきたウォドキー氏は、達成できる可能性が50%程の自信度の目標が丁度良い目標であると著書「OKR」の中で紹介しています。

なお、OKRにおける自信度とは目標に対する自信を測る自己申告指標で、自分が完全に達成できる目標を10とし、実現が不可能である目標は、自信度が0と表されます。

自信度10の目標は「確実に達成できる目標」となり、目標としては低すぎるため、従業員の成長には繋がらないことから、Google社では「サンドバッグ」と呼ばれ、OKRにおいては望ましいものではありません。

高い目標は、優秀な従業員をひきつけ、チームのモチベーションを高めます。また、目標を達成できなかったとしても、それぞれの仕事の成果を最大限まで高める可能性がありますが、自信度が0の目標では実現が不可能なので、従業員のモチベーションは上がらないことも起こりえます。

OKRにおける目標の難易度については、「実現は難しいが達成できそうな目標」を設定することが最適となります。条件に合う目標を設定するために、ウォドキー氏は自信度5の目標を設定することを著書の中で強調しています。OKRの達成率の目安を把握して、適切な目標を設定するようにしましょう

Google社はKey Resultsの設定において、ストレッチゴールを巧みに使いました。達成が難しい一方で不可能ではないと思える目標を掲げ、個人のパフォーマンスを最大化し、達成すれば組織に有益かつ社員自身やチームの大きな成長につながるように仕組みを整えたのです。

OKRのスコアリング

最後に3つ目の運用ポイントは、Key Results(成果指標)のスコアリングです。

OKRは仕事の実績を評価する制度ではないことに注意が必要です。社員1人1人が四半期にどのような目標に力を入れていたかを見える化し、会社への貢献や影響を明らかにする管理法です。目標に対する達成度を見える化するために、Googleはスコアリングを取り入れました。

Google社ではKey Resultsの達成度を「0〜1.0」の10段階の数字で表します。通常1つのObjective(目標)に対して3つのKey Results(成果指標)を設定し、それら3つの達成度の平均値がOKRの達成度となります。

ここで注意しておきたいことは、OKRが100%の達成度を目的としていないことです。OKRにおける最適な達成率は60から70%になるので、Google社の場合0.6〜0.7のスコアがつくことで十分な成果を上げていると判断することができます。

判定したスコアを基準に、0.6~0.7よりスコアが低い場合は更なる努力が必要と考えられ、スコアが高すぎる場合は設定した目標が低すぎるという判断をすることができます。Key Resultsをスコアリングすれば、目標が組織、個人に合ったものであるかを確認することができて、全体を見渡した目線でレビューしやすくなります。

Google社から学ぶOKR運用の流れ

OKRを導入するに当たり、組織の地盤を固め、準備をする必要があります。ここでは、OKR導入の流れを説明します。

組織のミッションの確認

OKR導入の前に、組織のミッションを確認します。Google社は「世界中の情報を整理し、世界中の人にアクセスできるようにする」というミッションを掲げて、「世界中の情報の整理と誰しもが情報にアクセスできる世界」の実現に向けてOKRを進めています。

Google社は、このミッションを達成するためのObjectives(目標)とKey Results(成果指標)を定めることで、Google社それぞれのチーム・部署で働く社員は自分たちの方向性を間違うことなく進むことができます。社員も今取り組んでいる業務により意義を感じながら働くことができます。

このように、ミッションが定まっているとObjectivesの設定が簡単になります。OKRを導入するなら全社ミーティングを開き、自社のミッションを再確認しましょう。

OKR導入の背景の明確化

なぜOKRを導入するのか、その背景を誰にでも分かるように明確にします。全員がしっかり理解することで、OKRはより効果的に運用することができ、社員の行動と成果に繋がっていきます。そのためにも、以下の点について、全社員が理解している状態を目指します。
・なぜOKRを導入するのか
・OKRによってどのような課題を解決したいか
・OKRはどのように機能するのか

全社員の理解を深めるため、まずはキックオフミーティングを開き、社員同士で十分に議論を深めます。ミーティングでは、社員の意見にも耳を傾けながら良いところは採用していきしょう。OKRは上司から部下に下されるトップダウンの形で実施されるものではなく、十分にコミュニケーションをとりつつ運用してください。

Google社では、20年以上もTGIFミーティングを実施しており、6万人もの社員の声を毎週聞いています。新しい試みに不安を感じる社員の意見にも向き合い、良いところ・悪いところを精査した上で取り入れるべきことを検討していきましょう。

組織のOKRの設定

OKRの導入において、組織のOKRを設定します。

Google社は組織全体のOKRとして、3個から5個のObjectives(目標)とそれぞれの目標に対して3個から5個ほどのKey Results(成果指標)を決めています。目標を設定する時に、以下4つのポイントに注意してください。

・具体的な目標であること
・客観的な目標であること
・達成すれば価値のある目標であること
・達成度が60~70%に位置するストレッチした目標であること

また、Key Resultsを設定する際には、以下2つのポイントを押さえてください。
・設定する目標が定量的な指標であること
・普通に達成できる目標ではないこと

Google社では、チームのリーダーのような重要な立場にいる社員だけでなく、あらゆる立場の従業員が組織のOKRを提案して決めます。また、全ての従業員に向けて設定したOKRは公開されます。

チームと個人のOKRの設定

組織のOKRの設定が完了したら、チームと個人のOKRを設定します。

組織のOKRを基準に各チームがそれぞれのOKRを決めて、チームのOKRを基準に社員1人1人がOKRを決めていきます。チームより下のレイヤーに位置するOKRは、その1階層上のレイヤーに位置するOKRの最低1つに拠り所になると良いでしょう。なお、組織のOKRと同様に、チームと社員それぞれのOKRも公開されるのが一般的な運用になります。

定期的なOKRの評価と振り返り

現在の進捗で当期の目標を達成できるか確認する必要があるため、短期間でフィードバックが行われ、PDCAサイクルを回していく必要があります。

Google社では1ヶ月半に1回OKRが有効的に運用されたか検証され、四半期に1度行われる全社ミーティングで組織のOKRの公開と評価がされます。

評価方法については、運用のポイントで先述した通り、Google社ではOKRは「0.0〜1.0」の10段階で評価されます。

また、OKRの振り返りにおけるポイントは、以下の3つです。
・目標に対する取り組みの内容は効果的だったか
・目標に対する取り組みの前後でどのように変わったか
・振り返りの内容が今後の仕事において活かしていけるか

目標に対する取り組みの内容は効果的だったか

効果的な振り返りのために、社員の取組について、目標(Objectives)の達成に資するものであったか、目標の達成に向けた取り組みはどの程度の影響力を持っていたか、について確認します。

目標に対する取り組みの前後でどのように変わったか

目標達成への取り組みの前後で、どのように変わったかを確認することも重要です。取り組みの前よりも良くなった部分があれば、目標達成のために貢献できていると判断できます。

振り返りの内容が今後の仕事において活かしていけるか

効果的なOKRを習慣にしていくために、振り返りを行うだけではなく、振り返りをした内容が今後の仕事で活かせるかも振り返った内容を言語化することで深く意識しましょう。

定期的なOKRの更新

定期的にOKRを更新することも、OKRの運用において重要なことです。OKRを更新するべき理由は主に以下の2つに集約されます。

・達成不可能な目標を見直し、修正することができる
・追加のリソースを割り当てることで、重要な業務に集中することができる

自信度が低すぎる目標を立ててしまうと、60~70%まで達成できない場合もあります。このような場合は、達成不可能な目標は見直し、達成可能な目標を改めて設定することができるので、社員のモチベーションを高めることに寄与します。

また、 現在の取り組みでも達成が難しい目標でも、リソースを追加することで達成可能になる場合もあります。重要な業務を明確にして、必要なリソースを集中的に投入することができることもメリットになります

Google社ではチームごとにOKRを更新する頻度が異なっています。チームの状況に応じて、適切なタイミングでOKRを見直し、更新しましょう。

OKR運用のスケジュール

OKRのスケジュールについて。四半期単位と1週間単位での実施例を紹介します。

Google 社のスケジュール例

Google社の第1四半期は1~3月になりますが、各部署が年間の目標を立てる第1四半期に向けたブレインストーミングが行われます。そのため、11月の下旬には第1四半期の目標に向けたアイディア出しを始めることがあります。12月の後半には会社全体の目標が共有され、翌1月には従業員がOKRの作成と発表を始めます。これによって、1月から目標に向けた作業を始めることができるように準備が整えられます。

1週間単位のチェックインミーティングとウィンセッション

OKRの運用には、定期的なチェックインミーティングとウィンセッションの実施が重要です。Google社は木曜日にウィンセッションを行っていますが、一般的には週の始めにチェックインミーティングを行い、週の終わりにウィンセッションを行うことが多いです。

チェックインミーティングでは、やらなければならないこととやるべきことを確認し、OKRの進捗状況と自信度をチェックし、従業員同士で協力できる点がないか話し合います。一方、ウィンセッションでは、従業員同士が取り組みを褒め合い、発表できる取り組みを発表し、お互いに見せ合います

OKRの運用における失敗とその活かし方

OKRの運用については、自社に見合う運用方法が見つかるまで失敗がつきものです。そのため、OKRを効果的に運用していくには、失敗をどのように活かしていくかが重要となります。ここでは失敗の事例とその活かし方を見ていきます。

アクティブ・コネクターの失敗事例

外国人専門の人材紹介業を営むアクティブ・コネクター社が公開しているOKRの失敗事例を紹介します。
・市場と合わない目標
・仮説検証が不十分な目標
・達成の意識がない目標

市場と合わない目標

アクティブ・コネクター社では、市場の変化に十分に対応しきれず、初期に決めたOKRが市場と合わなくなったことで、機能しなくなってしまいました。市場の変化が激しい企業では、変化に対応できない場合もあります

仮説検証が不十分な目標

目標を設定する際には、表面上は達成可能に見える目標でも、それを裏付ける仮説やエビデンスが無い場合、OKRが正しく機能せずに失敗することがあります。そのため、OKRの目標を設定する前には、現状分析や仮説検証に時間をかけることが必要です

達成の意識がない目標

アクティブ・コネクター社では、OKRが「ある程度達成できたら良い」という考え方になってしまい、OKRが機能しなくなってしまいました。OKRを機能させるためには、社員を奮い立たせ、OKRに向けた意識を高めるための工夫が必要です

一般的に多くみられる失敗事例

その他、一般的に多く見られるOKRの失敗事例には以下のようなものがあります。
・目標がわくわくする表現や内容になっていない
・従業員が自分に関係することではないと感じている
・Key Resultsが多すぎ、現実的ではない
・振り返りが正しく行われておらず、達成状況を適切に評価できていない
・ウィンセッションで否定的な話し合いをしてしまう
・OKRが十分に習慣化されていない

上記の失敗事例を踏まえて、自社に見合うOKRを運用していくようにしましょう。

まとめ

今回、Google社におけるOKR導入の歴史や運用方法を紹介しましたが、OKRを実際に運用していくには、企業の規模や事業内容に合わせた運用方法を考える必要があります。

Google社の事例や失敗事例を参考としたうえで、試行錯誤を繰り返し、自社の文化とOKRを一体化させていきましょう。

本記事が、ベンチャー・スタートアップ企業の経営者・人事担当者の方のご参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。