クリニック開業の流れ|開業までに準備すべきこと・重要なポイントについて解説

クリニック開業の流れ|開業までに準備すべきこと・重要なポイントについて解説

医師として今後のキャリアアップを考えた場合、勤務医ではなく独立して自分のクリニックを開業することもひとつの選択肢です。

この記事では、クリニックを開業する際に準備すべきことや開業前に知っておきたい大事なポイントを中心に解説していきます。

事業計画書についてまずは知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
事業計画書は必須!?記載すべき内容を項目別に解説

クリニックの開業までに準備しておくこと

クリニックの開業までに準備しておくことについて詳しく説明します。
・クリニックの経営理念・診療方針を決める
・開業までのスケジュールを立案
・事業計画の構想
・開業場所の調査
・開業資金の調達
・クリニックの設計と内装工事
・医療機器の選択や導入する準備
・税理士や会計士など独立開業に関わる専門家
・従業員の採用と教育
・ホームページ作成など広報・宣伝
・診療所開設届・開業届など行政等に提出

クリニックの経営理念・診療方針を決める

クリニックを開業する際には、自身のクリニックが目指すコンセプトを明確にすることが非常に重要です。

診療方針や提供する医療内容だけでなく、患者や地域にどのように貢献したいかを示すことは、クリニックの差別化や患者の信頼を築く上で重要な要素です。

自分本位な考えに陥らず、常に「患者さんのために何ができるか」を意識して経営理念を確立しましょう。

クリニックの目指す方向性や提供する価値を明確にすることで、患者に対するサービスや医療の質の向上に繋がります。

開業までのスケジュールを立案

クリニックを開業するには、一般の事業者とは異なり、事前に必要な手続きや準備が比較的多い点が特徴です。

具体的には、開業許可の申請や医療機関の登録、設備や医療器具の準備、医療スタッフの採用や研修などがあります。

これらの手続きや準備は、それぞれの項目ごとに異なる申請期限や手順がありますので、手続き内容と申請期限に十分配慮してスケジュールを立てていきましょう。

事業計画の構想

クリニックを運営する際には、診療内容やクリニックの規模に関する明確で具体的な事業計画を策定することが必要です。

診療科目や診療時間、医療スタッフの配置、設備や医療機器の導入など、細部にわたる計画が求められます

漠然とした見積もりや期限の設定は、将来の事業失敗の要因となります。

リスクを最小限に抑え、事業の持続可能性を高めるためには、細部まで考慮した具体的な数字や目標を設定し、それを達成するための具体的な戦略を立てることが重要です。

開業場所の調査

クリニックを含むあらゆるビジネスにおいて、開業地の選択は事業の将来に大きな影響を与える重要な要素です。

開業地は患者がアクセスしやすく、利便性の高い場所が望ましいです。目につく場所や交通の便の良い場所を優先的に選定することも大切です。

また、開業地の家賃は事業の固定経費の一部であり、長期間にわたって発生します。

そのため、事業規模に釣り合わない高額な賃貸契約を結ぶ場合は慎重に検討する必要があります。

開業資金の調達

立地条件を優先すると、自己資金を超過する可能性があります。その場合、金融機関などから資金を調達する必要が生じます。

また、後に医療機器の導入費用が控えていることも視野に入れ、ある程度の余裕をもった融資を受けることが賢明です。

4つの資金調達方法について、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
開業資金はいくら必要?4つの資金調達方法を解説

クリニックの設計と内装工事

店舗の賃貸借契約が終了した段階で、クリニックの内装工事に着手します。

しかし、どの程度の内装工事が許可されるかは、不動産の所有者や管理会社に事前確認しておく必要があります。

内装業者には、工事が開始された段階や途中で「中間金」を請求する場合もありますので、内装工事に関連する資金を事前に確保しておくことが重要です。

工事が進行するにつれて支払いが必要となる場合もあるため、十分な資金を用意しておくことが不可欠です。

医療機器の選択や導入する準備

内装工事が終了した後は、次の段階として、クリニックで使用する医療機器を選び、開業日までに機材などの導入準備を進めます。

医療機器の選定や手配には時間がかかることがありますので、早めに計画を立てておくことが重要です。

また、納期が開業日に間に合うかどうかを確認しながら、内装工事と並行して進めることで、スムーズに開業準備ができます。

事前に段取りを行うことで、開業に向けたスケジュール管理がより効果的に行えます。

税理士や会計士など独立開業に関わる専門家

事業で利益が出ると、納税の義務が発生します。

医療法人の会計には専門的な知識が必要なため、医療関係の税務の専門家である税理士や公認会計士を選定し、サポートを受けることが重要です。

さらに、従業員を雇用する場合は、労務関係の専門家である社会保険労務士に相談することがおすすめです。

税理士の必要性について、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
会社設立時における税理士の必要性とは?メリットや注意事項・選定のポイントについて解説

従業員の採用と教育

ある程度規模の大きなクリニックを開業する場合、受付業務や診療を支援するスタッフを雇う必要があります。

求人募集はハローワークや求人サイトを活用して行い、必要な人員を確保します。

クリニックでの経験者向けの専門求人サイトを利用すれば、高いスキルを持つスタッフを採用できる可能性が高まります。

ホームページ作成など広報・宣伝

開業のタイミングでは、新規の患者を獲得するために、ホームページを含む広告宣伝に注力することが極めて重要です。

内装工事が完了し、医療機器の導入が終了し、開業日が近づいた段階で、ホームページを作成し、新聞広告・折り込みチラシに加えて、クリニックの近隣のマンションなどの集合住宅や一戸建てへのビラまきなど、とにかくクリニックの開業日を広く認知してもらうことが必要です。

ホームページには、患者が簡単に診療日を予約できるように、ネット予約の機能を設けることも効果的です

診療所開設届・開業届など行政等に提出

クリニックを開業する際には、まず保健所に「診療所開設届」を提出する必要があります。その後、各地方の厚生局に「保険医療機関指定申請書」を提出します。

個人で事業を開始する場合は、所轄の税務署に「開業届」を提出する必要があります。

一方、法人を設立する場合は、「法人設立届」を所轄の税務署や都道府県、市町村に提出する必要があります。

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クリニックを開業する上で大事なポイント

クリニックを開業する上で大事なポイントについて説明します。
・ターゲット選定
・周辺のクリニックの調査
・扱う医療機器にかかるコストに人件費も念頭に置く
・開業コンサルタントへの相談

ターゲット選定

クリニックを開業する際には、地域の特性や住民のニーズに応じて適切な標榜科や専門外来を選定し、アピールポイントを明確にすることが重要です。

地域に根ざしたクリニックでは、内科を中心とした診療を提供することが効果的であり、患者が利用しやすいサービスを提供することでクリニックの強みや専門性を強調することが大切です。

周辺のクリニックの調査

開業するエリアを比較検討する際には、既存のクリニックも調査することも重要です。

その地域で評判の良いクリニックの情報を分析し、その地域の需要と自身のクリニックのコンセプトが合致するかを調査することで、開業する場所をより適切に決定することができます

同じ分野の競合他社が周辺に多く存在する場合、開業時から競争が激しくなる可能性があります。

開業前に周辺調査を行うことで、開業候補エリアの需要と供給のバランスや収益性を事前に把握することができます。

扱う医療機器にかかるコストに人件費も念頭に置く

医療機器の導入は、高い出費となりますので、機器のコストと利用価値を比較し、必要性を十分に検討することも重要です。

例えば、MRIは高額な機器であり、設置には広いスペースが必要であると同時に、専門の技術者や医師が必要とされるため、慎重な検討が必要です。

開業コンサルタントへの相談

開業手続きを進めるには、医療法や建築基準法、消防法などの法令を遵守しなければなりません。

また、開業後の安定した経営を続けるためには、経営知識も必要です。

これらの不安を解消するためには、開業コンサルタントに準備を任せるという方法もあります。

開業コンサルタントにはクリニック開業に特化したコンサルタントもいるため、安心して開業に取り組むことができます。

相談する専門家の特徴

相談する専門家の特徴について説明します。
・税理士
・社会保険労務士
・経営コンサルタント

税理士

クリニックの開業サポートには、税理士や公認会計士などの専門家も提供しています。

主に保険関係の手続きや資金管理に関するアドバイスを行うことがあります。

クリニックの安定した運営を確保するためには、経費と業務のバランスを考慮することが大切です。

経営者が担当すべき業務は、給与計算や経費の管理など幅広くあります。

開業サポートを依頼することで、手間のかかる経理や税務の分野を専門家に任せることができ、安心感が得られます。

社会保険労務士

クリニックを開業する際には、人事・労務に関する専門知識が求められます。

社会保険労務士は、スタッフの雇用保険や社会保険手続き、給与計算などの業務を代行し、法律の改正にも迅速に対応します。

また、職場内のトラブルを予防するために、就業規則の作成や環境整備も支援します。

クリニックの経営に集中したい場合や働きやすい環境を提供したい場合には、積極的に人事・労務に関する相談を行うことも重要です。

経営コンサルタント

クリニックを開業するには、経営判断や法務・労務の配慮が不可欠です。

そのため、専門家のサポートが重要です。

コンサルタントは開業計画の立案から開業後のサポートまで幅広く対応し、迷った際のアドバイスも提供します。

彼らに任せることで手間を省き、確実な判断を行うことができます。

まとめ

ここまで、クリニックを開業する際に準備すべきことや開業前に知っておきたい大事なポイントを中心に解説してきました。

本記事が、これからクリニックの開業を検討している医師の方々にとってご参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

著 者

SOICO株式会社
共同創業者&代表取締役CEO
茅原 淳一 (かやはら じゅんいち)

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。

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