会社の設立に必要な資本金とは?役割・決め方・出資金と資本準備金との違いを解説

会社の設立に必要な資本金とは?役割・決め方・出資金と資本準備金との違いを解説

企業を立ち上げる際に最も重要な要素の1つが資本金です。

資本金が持つ対外的な役割や、適切な金額の決め方を深く理解することは、今後のビジネスを大きく左右します。

この記事では、資本金の基本的な概念から決定方法、増資の手順に至るまで解説していきます。

資本金とは

資本金とは、会社設立や運営の元手となる資金です。経営者の自己資金や、出資者から集めたお金を資本金に使用します。この資本金は会社の経営体力の指標として扱われ、金融機関が法人口座の開設や融資の際に、審査の基準とします。

会社法第32条によると、会社設立において資本金を準備することが定められています。また、今までは資本金として1,000万円が必要でしたが、2006年に改正された会社法により、1円以上の資本金があれば会社を設立することが可能になりました。

資本金について、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
資本金とは何?資本準備金との違いも解説

これから起業する人にとって会社設立は分からないことが多いのではないでしょうか。

また、起業したばかりの人にとっては事業の立ち上げと同時に様々な手続きを進めなくてはならず大変な思いをしている方も多いことでしょう。

そこで、ミチシルベでは
「会社設立について相談したい・・・」
「会社設立の手続きどうしたらいいかよくわからない・・・」
「税理士や司法書士を紹介してほしい・・・」
といった起業したばかりもしくはこれから起業する方々のお悩みにお応えするべく、会社設立についての無料相談を実施しています。

下記バナーから無料相談をお申し込みできますので、ご自身の会社設立に関するお悩み解消にご活用ください。

資本金の果たす役割

資本金は、単なる会社の運転資金以上の意味を持っています。ここでは、資本金の3つの主な役割を解説します。
・会社の信用度と安定性を表す
・はじめての取引における与信調査の指標となる
・銀行からの借入限度額に影響する

会社の信用度と安定性を表す

資本金の金額が大きいと、人材の雇用や事業拡大のための投資などをするための会社の資金力や返済能力を備えていることを示せます。十分な資本金を準備できれば、借入や利子を支払う能力があると金融機関から判断されるからです。

また、事業をカバーできるに足る資本金があれば、人材の雇用や設備投資も必要十分に行えるため、経営が安定するとみなされ、金融機関や取引先を筆頭に対外的な信頼を得やすくなります

はじめての取引における与信調査の指標となる

資本金額は、はじめて行う取引において与信調査の指標となるほど重要です。

会社の信用状況を調べる与信調査では、「支払いが無事行われるかどうか」「納品が確実に行われるかどうか」が中心に調査されます。

資本金が十分にあると、取引の確実性を裏付け、会社の信用力を向上させられます。ただ、業界によって十分と考えられる資本金の金額が異なるので、競合となる企業や取引先などの資本金を1つのベンチマークにするのもよいでしょう。

銀行からの借入限度額に影響する

資本金は、銀行からの借入限度額にも影響します。

銀行や金融機関からの融資は、一般的に資本金と同じくらいから2倍程度とされており、資本金が一定以上あると十分な融資を受けやすくなります。

先述した中で、1円の資本金から株式会社を設立することができる旨を説明しましたが、これでは資本金が少なすぎるので、金融機関からの融資は期待できません

法人は一般個人よりも大きな資金を扱うので、比例して大きな金額の融資・借入が期待できますが、貸した資金を返済できそうにない会社に融資を行う金融機関はありません。

融資・借入の際に、審査されるポイントとして資本金以外に、「売上の良し悪し」や「掛金」なども含まれますが、それでも資本金が一定水準はあることが前提に置かれます。

事業拡大のために、早期の資金調達を視野に入れている方は、少なくとも100万円以上の資本金を用意し、事前に数年から5年程の財務計画を立てるようにしましょう。

会社の設立に最低限必要な資本金額

前述のように、会社設立に必要な資本金の最低金額は1円です。しかし、金融機関や取引先など対外的な信用を考慮すると、資産管理会社など限定的な目的を持った会社を除いて、1円で会社を設立するのは現実的ではありません。

例えば、令和3年度(2021年)の政府統計において、資本金額ごとに分けた会社数は以下のようにまとめられています。

資本金額企業数
300万円未満200,501
300~500万円未満578,882
500~1000万円未満253,148
1000~3000万円未満555,646
3000~5000万円未満72,933
5000万~1億円未満52,126
1~3億円未満17,674
3~10億円未満7,337
10~50億円未満3,600
50億円以上2,319
総数1,777,291
出典:総務省統計局整備「経済センサス‐活動調査 令和3年経済センサス‐活動調査 速報集計 企業等に関する集計」より

ここから、「300~500万円未満」と「1000~3000万円未満」の資本金を有する会社が最も多いことが分かります。

資本金額に関わらず会社を設立できるとはいえ、一般的には300万円程度の資本金が1つの目安になっていると言えるでしょう。

会社設立に必要な最低資本金額について、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
株式会社設立に必要な最低資本金額|低い資本金額の注意点・資本金の決め方・税金について解説

会社を設立する際の資本金の決め方

ここまで、会社の設立に必要な資本金について概観し、日本全国にある企業の資本金について統計的なデータから「300〜500万円未満」と「1000〜3000万円未満」のレンジが多いことが分かりました。

ここからは、会社の設立時における適切な資本金額の決め方について、次の5つの要素を中心に解説していきます。
・初期投資と運転資金を目安に決める
・発生する税金を目安に決める
・許認可の要件の金額を目安に決める
・必要な補助金・助成金および融資額を目安に決める
・取引先との関係を考えて決める

初期投資と運転資金を目安に決める

資本金の金額を決める1つの考え方として、事業に必要な初期投資額と、その後の運転資金を目安にするものがあります。この時、初期投資額に3ヶ月から6ヶ月の事業運転資金を資本金を加えることで、万が一、キャッシュアウトをした場合の担保として備えておくことができます。

会社設立や事業立ち上げ直後は、経営状態を安定させて軌道に乗せるまでに時間がかかります。そこで、初期投資と当面の運転資金を資本金として用意しておくことで、少なくとも数ヶ月間は自力で経営できる根拠を示せます。

ただしここで、資本金が貸借対照表に与える影響にも注意を払う必要があります。借入などで資本金を用立てした場合、貸借対照表では負債として計上されます。これによって、会社の自己資本比率が低下し、金融機関の審査に影響する可能性もあります。

発生する税金を目安に決める

資本金額の決め方の中には、金額に応じて発生する税金を考慮する方法もあります。資本金額を調整することで、法人に対して支払い義務が生じる税金を抑えることもできます

法人が支払う税金の中で、資本金の大きさが影響するものについて、次にまとめます。

税金の種類内容
登録免許税(株式会社の場合)資本金 × 0.7%
(資本金2,143万円未満の場合、一律15万円)
消費税資本金1,000万円以上標準税率10%・軽減税率8%(免税特例対象外)
資本金1,000万円以下原則として設立1期目と2期目(条件あり)の消費税の納税義務のは免除
法人税資本金1億円以上所得のすべてに対して税率23.2%
資本金1億円以下税率23.2%(所得800万円超える)
税率15%(所得800万円以下)
法人住民税(※東京都所在かつ従業員50人以下の場合)資本金1,000万円超え年額18万円(均等割)
資本金1,000万円以下年額7万円(均等割)

許認可の要件の金額を目安に決める

行政から事業の許認可を受ける要件の1つに、資本金の金額があります。業種によって求められる金額も異なります。ここでは、業種ごとに最低限度必要な資本金について整理します。

業種最低資本金額
一般建設業500万円以上(※自己資本)
特定建設業2,000万円以上(※会社設立後、すぐに取得する場合4,000万円)
貨物利用運送業300万円以上
有料職業紹介業500万円以上(事業所数に応じる)
一般労働者派遣業2,000万円以上(事業所数に応じる)
第1種旅行業3,000万円

必要な補助金・助成金および融資額を目安に決める

企業の生産性の向上や人材育成・雇用促進を目的とした行政の補助金、助成金を申請する際に、会社の資本金が要件になっていることが多くあります。

実際に、公募している補助金を参考にして、以下業種ごとにまとめた要件とされている補助金額をまとめていきます。

業種要件とされる資本金額常勤の従業員
製造業・建設業・運輸業3億円以下300人以下
卸売業1億円以下100人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
小売業(飲食店含む)5,000万円以下50人以下
ゴム製品製造業3億円以下900人以下
ソフトウェア業・情報処理サービス業3億円以下300人以下
旅館業5,000万円200人以下
その他の業種3億円以下300人以下
参照:IT導入補助金「中小企業等の定義」

資本金の使い方

基本的に、資本金は何に使っても構いません。事業を運営するためであれば何に使用しても問題なく、いつでも自由に引き出すことが可能です

資本金は、事業のための使用が前提のお金であり、登記した金額から減っていくことも当然あります。

しかし、個人の用途に使用したり無計画に使用したりすることは言わずもがな避けるべきです。

資本金を増資する方法

さらなる資本金が必要になった場合、増資によって資本金を増やすことが可能です。増資によって資本金を増やすことは、会社の信用力強化にも繋がります

増資によって資本金を増やすことは、良いことばかりではなく注意点として、資本金額の変更に登録免許税が発生することと、資本金が増えたことで会社経営に関わる各税金が増えることが挙げられます。

増資には3つの方法があります。それぞれを分かりやすく解説します。
・公募増資
・株主割当増資
・第三者割当増資

公募増資

公募増資とは、会社が新しい株式を市場に公開して、一般の投資家から資金を調達する方法です。

公募増資では、既存株主に新株予約権を付与せず、一般公募によって新株を発行します。公募増資は、大量の資金を短期間で調達するのに適しており、特に大企業や成長が見込まれるスタートアップ企業が利用するという特徴もあります。

しかし、新株の発行によって株主の希薄化や、1株あたりの株価低下が起こる可能性が非常に高く、既存株主の反感を買ってしまう恐れがあります。

また、公募増資は、株式市場の状況や会社の評価に結果が大きく影響されるため、市場の反応を慎重に見極める必要があります。

株主割当増資

株主割当増資は、新たな株式を既存の株主に優先的に割り当てる方法です。

株主割当増資では、新株予約権を既存株主に提供します。株主割当増資は、既存株主の権益を保護しつつ資本を増強するのが特徴です。この方法は、株主からの出資であるため返済の必要がありませんが、増資に株主が応じてくれない場合があります。

第三者割当増資

第三者割当増資は、新しい株式を特定の第三者に割り当てる方法です。

第三者割当増資では、特定の投資家や親会社といったビジネスパートナーなど、企業が資本関係を強化したい特定の第三者に対して新株を発行します。この性質から第三者割当増資は、新たなビジネスチャンスを開拓する場合に利用されることが多い手法です。

第三者割当増資は、市場に左右されずにある程度自由な株価で取引できるのも特徴の1つとなっています。

資本金・出資金・資本準備金の違い

資本金とよく似た言葉に、「出資金」「資本準備金」があります。一見すると、すべて資本金として捉えることができるように見えますが、その概念や意味には、もちろん違いがあります。ここでは、それぞれの定義と役割について整理します。

定義役割
資本金会社を運営するための基本的な資金会社設立時や株式発行時に払い込まれた金額で、財務諸表に記載され公開される
出資金出資者が出資した資金・会社が出資者から受け取った資本金は、出資者側から見ると出資金となる
・出資金がすべて資本金として計上されるわけではない
資本準備金手持ちの資本金や受け取った出資金のうち、資本金として計上しない資金・2分の1を超えない範囲で設定できる
・主に、財務状態の改善や将来の投資のための予備的な資源として保持される・会社の事業運営など通常用途のために自由に使うことはできない

まとめ

ここまで、会社設立のための資本金について解説してきました。

資本金は、会社の安定した経営だけでなく、銀行からの融資限度額にも影響を与える非常に重要な要素です。資本金の適切な設定は、会社の信用度を高め、良好な取引関係を築くための第一歩です。

この記事が、これから会社設立の準備や会社設立を検討している起業家・個人事業主・独立予定の会社員の方のお役に立てば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

著 者

SOICO株式会社
共同創業者&代表取締役CEO
茅原 淳一 (かやはら じゅんいち)

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。

この記事のキーワード

キーワードがありません。

この記事と同じキーワードの記事

まだ記事がありません。

キーワードから探す

資料請求

資料請求

カンタン1分登録で、気になる資料を無料でお取り寄せ

お問い合わせ

そんなお悩みをお持ちの方は、まずはお問い合わせください!