定款に記載する事業目的の書き方|事業目的の書き方・定める際のポイントについて解説

定款に記載する事業目的の書き方|事業目的の書き方・定める際のポイントについて解説

会社を新たに設立した際に必要な手続きや申請すべき書類は数多くありますが、定款の作成および申請もその1つに当たります。

定款に記載すべき事項については会社法で決められており、その1つとして事業目的があります。事業目的は、会社が何をしたいのか、を表した項目であり、会社を運営していくにあたって非常に重要な役割を持ちます。

本記事では、定款で記載すべき事業目的のポイントや注意すべき事項を解説していきます。

定款とは

定款とは、会社を運営していくにあたってのルールや規則、つまり、会社の憲法にあたるものとなります。会社を設立するにあたり、定款を作成することが必要不可欠であり、定款において記載すべき項目は、会社法によって定められています。定款の作成は煩雑な作業となるため、早めに準備・作成しておくようにしましょう。

定款に記載すべき項目「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」については、こちらの記事もご参照ください。

定款について、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
定款とは?必要な理由・記載すべき項目・変更方法について解説

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事業目的とは

事業目的は、定款の絶対的記載事項にて必ず定めなければならない項目にあたります。該当の企業がどのような事業を運営していくのかを示し、内容が明瞭かつ合法のものでなければ認められることはなく、定款として効力を発揮しません

また、会社は原則として定款で定められた範囲の中でしか事業運営をすることができないので、定款において事業目的を記載するにあたり、十分に検討し明確にするようにしましょう。

ここで、事業目的を適切に決めるにあたって注意すべきポイント「適法性」「営利性」「明確性」の3つをそれぞれ詳しく解説していきます。

適法性

適法性とは、事業目的が法律に違反していないかどうか、という観点を意味します。具体的には、定款に記載された目的が犯罪行為や公序良俗に反している場合は、会社が行う事業として認められません。

そのほか、特定の事業においては、目的として記載するにあたって条件がある場合があります。例えば、医者や会計士業、弁護士業や司法書士業・行政書士などの士業を中心に特定の資格を持った者のみができる事業については、その資格を保持した者以外が目的とすることはできません。

営利性

営利性とは、事業目的による収益性が見込まれるか、を意味します。株式会社において利益の追求をしていくことが目的でなければならないことから、事業において利益を確保していくことができない見込みである場合は、事業目的として設定できません。

したがって、ボランティア活動や非営利活動のような収益性がないものは設定できませんが、公益性の高い活動であったとしても収益性が認められれば、定款の目的として設定することができます。

明確性

明確性とは、事業目的のわかりやすさを意味します。定款で設定する事業目的は、一般的に第三者が読んでも十分に理解できるものでなければなりません。つまり、ある特定の分野における専門的な用語や新たに流行している言葉・造語、抽象的な外来語などで記載されている場合は、明確性が十分であるとみなされず、認可されない場合があります。

そのため、必ず目的を記載するにあたって、事前に辞書や辞典でその語句を確認するようにしましょう。また、外来語においてもカッコ書きで意味を表記することで、認められるケースもあります。

事業目的の記載方法

事業目的の記載方法については、決まった書き方はないため自由に記載することができますが、行政の許認可が必要となる事業については、決まった文言が記載されていない場合、認可されないケースがあります。ここでは、いくつかの具体的な事業を例にあげて、記載すべき内容を解説していきます。
・飲食店
・建設業
・宅地建物取引業
・リサイクルショップ

飲食店

飲食店を経営するためには、保健所からの営業認可が必要となってきます。目的を記載するに当たっては、飲食店の営業、コンビニエンスストアの営業、などの文言がよく使われます。

加えて、より詳細な内容を記載するように求められる場合もありますので、必ず事前に確認しておくようにしましょう。

建設業

建設業を経営していくにあたり、請負代金が500万円以上となる工事(但し、建築一式工事の場合は、1,500万円以上)を請け負うためには、都道府県知事や国土交通大臣からの認可が必要です。

また、建設業と一言で言っても多くの種類に分けられることから、新規で申請をする際に定款の目的に含まれないと判断された場合は、目的の変更を求められる場合があります。そのため、実際に行う工事の業種について明確に記載しておくようにしましょう。

宅地建物取引業

宅地建物取引業では、宅地建物取引業法に基づいて都道府県知事や国土交通大臣の認可が必要となります。不動産業と混在しがちですが、不動産賃貸業や不動産売買業とは区別されるものですので、適切に整理して目的を記載するようにしましょう。

リサイクルショップ

リサイクルショップを営業するにあたり、古物商の認可が必要となってきます。これは警察に届け出た上で公安委員会から認可されるもので、中古品の買取販売、貴金属製品の買取においても必要となってきますので、必ず確認するようにしましょう。

定款に記載する事業目的の書き方について、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
定款に記載する事業目的の書き方|事業目的の書き方・定める際のポイントについて解説

事業目的を記載するにあたっての注意点

これまでご紹介してきたポイントや押さえておくべき機関からの許認可を得た上で、実際に文言を記載するにあたり、以下の3つの注意点をご紹介します。
・関連事業および内容の記載方法
・将来的に行う事業目的も記載
・事業目的の数

関連事業および内容の記載方法

1つ目は、関連事業および内容の記載方法についてです。定款の事業目的を記載するにあたり、実施する業種やその内容を全て網羅し、正確に記載することは容易ではありません。

そこで、過不足なく十分な内容とするために、前各号に附帯又は関連する一切の事業、として記載しておくことで記載された事業目的の内容に柔軟性を持たせることができ、関連した事業を行うことができます。

将来的に行う事業目的も記載

2つ目は、将来的に行うことを予定している事業目的についても記載しておくことです。定款の中で、記載できる事業目的の数については、特段の制約がないことから、直近で実施する事業だけでなく今後拡大していく予定の事業についても記載しておくようにしましょう。

なお、定款に記載したことにより、必ず実施しなければならないわけではありませんので、今後の事業成長も見据えて記載しておくと良いでしょう。

事業目的の数

3つ目は、事業目的の数についてです。将来的に行う事業目的も記載しておくべきという点について説明しましたが、あまりにも多くの事業目的を掲げた場合、その企業が何をしたいのか第三者からの目で見たときにわかりにくく、事業を行う上で関わりを持つ銀行や取引際の企業から不信感を持たれてしまう場合があります。

そのため、目的の数は10個程度を目安とし起業後10年までに実施する予定の目的を記載するにとどめるようにしましょう。

事業目的の変更方法

定款作成後に記載した事業目的を変更するためには、ただ単に定款の文言を直すのではなく、決められた手順を踏んで変更する必要があります。ここでは、それぞれの段階で行う手続きについて解説していきます。
・株主総会の決議
・変更登記

株主総会の決議

まず、定款の内容を変更するためには、株主総会の決議が必要です。定款の変更は、特別決議に該当し、決議されるためには、総議決権の過半数を有する株主が出席した上で、議決権3分の2以上の株主が賛成する必要があり、決議後初めて定款の変更を行うことができます

なお、必ず決議内容を記載した議事録を保管しておくようにしましょう。

変更登記

定款の目的を変更したのちに、法務局での登記手続きが必要となります。なお、変更の必要が生じてから2週間以内に手続きを行う必要があり、登録免許税として3万円の費用が発生します。

また、登記するにあたって、変更箇所だけでなく、変更前も含め全ての目的に関する部分を登記する必要がありますので、注意しましょう。

この他、定款を変更した際には、税務署への届出などが必要となってくる場合もありますので、必ず確認するようにしましょう。

事業目的以外の事業運営におけるリスク

定款に記載されている事業目的以外の事業を行った場合、特段の罰則はありません。しかし、定款の事業目的は誰でも閲覧することができることから、定款に記載されていない事業を行うことでいくつかのリスクが生じます

ここでは、それぞれのリスクについて解説していきますので、事業目的を記載するにあたって、必ず確認するようにしましょう。
・取引先・金融機関の信用に関するリスク
・特定の業種における許認可のリスク

取引先・金融機関の信用に関するリスク

定款に記載された事業目的以外の事業を運営することで、取引先や金融機関からの信用に影響しうるリスクが生じます。

企業と取引を行う際または金融機関から融資を受ける際に、取引先の企業や金融機関が判断する材料として確認する事項として事業目的があります。そのため、企業の経営実態と定款の内容に相違があった場合、企業に対する不信感を与えかねないことから、取引や融資の継続に影響が生じうることもあるので、注意するようにしましょう。

特定の業種における許認可のリスク

事業目的以外の業種を行っていた場合、特定の業種によっては許認可に影響が生じる場合があります。上記で解説した通り、飲食や建設業などにおいては許認可の申請が必要となり、申請するためには定款の提出が求められます。

このように、特定の業種では事業運営ができないケースもありますので、必ず事前に確認するようにしましょう。

まとめ

本記事では、定款で記載すべき事項や、事業目的を記載するにあたってのポイント・注意点などについてご紹介しました。定款は、会社の運営に関する根本となるルールにあたり、誤った内容の事業目的を記載すると、事業運営に様々な影響が生じうるリスクがあります。

本記事で解説したポイントや記載方法、注意点を参考にして、定款に定める事業目的を正確に記載するようにしましょう。

本記事が、これから起業を目指す方や個人事業主から法人成りを検討している方の参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

著 者

SOICO株式会社
共同創業者&代表取締役CEO
茅原 淳一 (かやはら じゅんいち)

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。

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