関税とはどんな税金?種類や計算方法を解説

関税とはどんな税金?種類や計算方法を解説

TPPをはじめ、国際的な貿易の促進のために締結される自由貿易協定(FTA)ですが、これは、加盟国がそれぞれ関税を撤廃、関税率を低くする等して、物の行き来をしやすくするための国際協定です。

昔から自国の産業を守るために作られた関税ですが、国際的な動きが急速に進んでいる昨今では、時代と逆行する存在になりつつあります。
とは言え、日本で言う農業など、自国の産業を守るためには関税は必要です。
新型コロナウイルスの影響で各国の関税に対する制度も変わってくるかもしれません。
今回はそんな関税について解説します。
関税とは何なのか?関税の種類や計算方法についても触れていきますので、貿易業に興味がある方はぜひ参考にしてください。

関税とは?

関税とは、自国に対する海外からの輸入品に対してかけられる税金です。
この関税により、価格競争で有利になりやすい輸入品から自国の生産物を守ることができます。
日本より物価が安い国からの輸入品でも、関税をかけることで、その分価格に上乗せされ、最終的に日本で消費される時の価格が高くなるからです。
日本で言うと家電製品や農産物・畜産物については、海外から安い商品が入ってくると国内の物が消費されなくなり、国内産業が衰退してしまいます。
国内産業が衰退してしまうと、最悪の場合、輸入品に頼らざる負えない形となり、国内自給率が低下してしまいます。
そのような事態にならないよう、関税をかけることで輸入品の価格を調整し、国内商品との均衡をはかるようにしています。

関税は誰が負担する?

関税率を決めるのは輸入国なので、相手国の輸出する側が支払うイメージがある方もいるかもしれませんが、関税は基本的に輸入する側が支払います。
よって、輸入する側も関税を負担する前提で輸入品の価格交渉をします。

関税を支払うタイミング

関税を支払うタイミングは、税関官署に対して輸入申告をする時、つまり通関(つうかん)の時です。
通関業務は代行業者である通関業者に委託することが多いため、一般的にはこの通関業者に対して、関税分の料金を支払います。
国際宅配便を利用する際には、荷物の配達を受けるタイミングでドライバーに関税分と国内消費税分を合わせて納付します。

関税には2種類ある

関税には種類があります。
自国で定めた「国定税率」と、TPPのような自由貿易協定(FTA)、経済連携協定(EPA)を結んだ国同士で定められた「協定税率」があります。
それぞれ、詳しく紹介します。

国定税率

国定税率には、基本税率、暫定税率、特恵税率があります。
〇基本税率:関税の基本となる税率であり、輸入される品目にはすべてに適用されます。
〇暫定税率:基本税率の代わりに暫定的に一時課税される税率のことであり、ガソリン税などが例として挙げられます。
〇特恵税率:発展途上国からの輸入品に対して適用される税率で、通常の税率よりも低い特別税率が適用されます。
特恵税率は主に発展途上国の輸出量の増加と工業化の促進を目的としています。

協定税率

TPPをはじめ、経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)を結んだ国からの輸入品に対して適用される税率です。
貿易の促進を目的とした協定ですので、協定税率は、関税の撤廃、若しくは、通常よりも低い税率が適用されます。

適用される関税率には優先順位がある?

関税には種類がありますが、その中で適用される際の優先順位も決まっています。
基本的には、以下の順番で適用されます。
①特恵税率(国定税率)⇒②協定税率⇒③暫定税率(国定税率)⇒④基本税率(国定税率)
輸入品目や原産国によって、上記の優先順位に沿って税率が決まります。

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特殊関税制度について

通常の貿易取引では前述した関税が適用されますが、別途、割増関税が課されることもあります。
それは「公正さに欠ける貿易取引があった場合」「ある特定の品目において急激に輸入量が増加した場合」「一般的な税率では国内産業の保護が困難である特別な事情が生じた場合」などです。
この制度のことを、特殊関税制度と言います。
特殊関税制度は日本だけではなく、海外でも例外的な事情が起こった際に国内産業を保護するための制度として採用されています。
WTО協定でも条件つきで認められているものです。

不当廉売関税(ダンピング防止税)

健全な市場競争を阻害するような、著しく低価格で取引されることを不当廉売(ダンピング)と言い、これを防止するための関税です。
不当に安く仕入れられている輸入品については、政府によりこの割増関税が課されます。

緊急関税

輸入量が急激に増加した品目に対して、課される割増関税です。
国内の同一商品を生産する事業者を保護するために課されることがあります。

相殺関税

輸出相手国で補助金を受けている商品を輸入する際に、その補助金の範囲内で課される関税です。
補助金を受けている商品に価格競争で負けないよう、国内同一産業を保護する目的で課されることがあります。

報復関税

日本からの輸出品に対して、差別的・不利益な取り扱いをしている国があった場合、報復として、その国からの輸入品に割増関税をかけると言うものです。
現在のアメリカと中国のように政治的対立が起こっている国同士で発生しやすい関税です。

関税の計算方法とは?

関税額の計算方法は、以下の通りです。
〇関税額=「課税対象価格」×「関税率」
課税対象価格とは、商品の代金とは別に輸送量や保険料を含んだ料金となります。
※個人での少量輸入の場合は別途、免税制度や異なる計算方法があります。

まとめ│貿易ビジネスにおいて関税の知識は必須

今回は関税の種類や計算方法について解説しました。
輸入品の販売など、貿易取引を伴うビジネスをする場合は、コスト管理やリスク管理のために関税の知識が必須となります。
海外から輸入する場合には、日本の関税が適用されるため、分かりやすいですが、海外へ輸出をする場合には、輸出する相手国の関税制度に合わせる必要があります。
関税については、WTОなどの国際機関により、国際的に取り決めをされているルールがあります。
貿易ビジネスをする方以外にも、海外からの輸入品が増えている今、関税について理解することは大切です。
日常生活においても関税を理解することで、政治経済のニュースを見る目も変わってきます。
ぜひ今回の内容を参考に、ビジネスや生活に活かして頂きたいと思います。

著 者

SOICO株式会社
共同創業者&代表取締役CEO
茅原 淳一 (かやはら じゅんいち)

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。

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