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合同会社が支払う税金の種類|個人事業主・株式会社との節税効果の違いについて解説
合同会社は個人事業主と比較して、節税のメリットを幅広く享受することが可能です。
合同会社は法人格を持つため、個人事業主よりも税制上の優遇措置や経費の取り扱いが異なることがあり、これによって節税の機会が増える場合があります。
この記事では、合同会社と個人事業主の支払う税金の違い、合同会社設立時にかかる税金、合同会社が支払う税金の種類、合同会社の節税効果などを中心に解説していきます。
目次
合同会社と個人事業主の支払う税金の違い
合同会社は、経費として認められる範囲が広く、個人事業主よりも多くの項目が経費に計上できます。
例えば、生命保険や家族への給料など、個人事業主では経費にできないものも合同会社では経費として計上可能です。このため、節税効果が期待できます。
合同会社と個人事業主(青色申告者)の両方が赤字を繰り越せますが、繰り越し期間に違いがあります。個人事業主は3年であるのに対し、合同会社は9年(事業年度開始後は10年)です。
消費税の納税義務は、売上が2年前に1,000万円を超えた場合や前年度上半期の課税売上高と給与支給額がどちらも1,000万円を超えた場合に生じます。
ただし、合同会社を設立した場合(資本金1,000万円未満)、売上が2年前にない場合は2年間、消費税の納税が不要です。
合同会社の事業用の財産は相続税の対象外であり、決算日も自由に設定できるため、柔軟性があります。
合同会社設立時にかかる税金
合同会社と株式会社は、税法上は普通法人と見なされ、納税する税金の種類は同じです。税金の計算方法や税率には違いがなく、合同会社と株式会社の納税方法は同じです。
合同会社と株式会社の設立時にかかる税金における唯一の違いは、登録免許税の計算方法です。
合同会社の登録免許税は、資本金額に0.7%を掛けた金額か6万円のどちらか高い方が適応されます。一方、株式会社では、資本金額に0.7%を掛けた金額か15万円のどちらか高い方が適応されます。
したがって、同じ資本金額で会社の設立を検討する際、合同会社の方が登録免許税の費用を抑えられます。
登録免許税の他に、定款の謄本手数料、定款の認証手数料、定款用の収入印紙代がかかります。以下、株式会社と合同会社の設立にかかる費用を簡単にまとめていきます。
合同会社 | 株式会社 | |
登録免許税 | 資本金額 × 0.7% または 60,000円 (※どちらか高い方) | 資本金額 × 0.7% または 150,000円 (※どちらか高い方) |
定款用の収入印紙代 | 40,000円 (※電子定款の場合、不要) | 40,000円 (※電子定款の場合、不要) |
定款の謄本手数料 | 0円 | 約2,000円 (※1ページあたり250円) |
定款の認証手数料 | 0円 | 資本金100万円未満: 30,000円 |
資本金100万円以上300万円未満: 40,000円 | ||
資本金300万円以上: 50,000円 |
合同会社が支払う税金の種類
合同会社が支払う税金の種類について説明します。
・法人税
・法人住民税
・法人事業税
・特別法人事業税
・消費税
・固定資産税
・業種ごとに必要となる税金
上記税金の一部について、以下簡単にまとめ、それぞれについて解説していきます。
税金の種類 | 内容 | |
法人税 | 資本金1億円以上 | 所得のすべてに対して税率23.2% |
資本金1億円以下 | 税率23.2%(所得800万円超) | |
税率15%(所得800万円以下) | ||
法人住民税 (※東京都所在かつ従業員50人以下の場合) | 資本金1,000万円超 | 年額18万円(均等割) |
資本金1,000万円以下 | 年額7万円(均等割) | |
消費税 | 資本金1,000万円以上 | 標準税率10%・軽減税率8% (免税特例対象外) |
資本金1,000万円以下 | 原則として設立1期目と2期目(条件あり)の消費税の納税義務は免除 |
法人税
法人税は、企業や法人が商品やサービスの提供を通じて利益を得た所得に対して課される国税であり、税率は法人の種類や資本金の額によって異なります。
合同会社の場合、資本金が1億円以下で所得が800万円以下の場合は税率が15%であり、所得が800万円を超えると超過分については23.2%が適用されます。
資本金が1億円を超える場合は、所得金額に関わらず23.2%の税率が適用されます。
法人税額は、課税所得(益金-損金)に税率を乗じ、税額控除を引いたもので計算されます。
益金は売上収入や売却収入、損金は売上原価や販売費、損失費用を指し、法人税法に基づいて税務調整された所得が課税対象となります。
法人住民税
法人住民税は、会社の住所地の都道府県と市町村に対して納める地方税で、生活に密接な行政サービスの費用に充てられます。
法人住民税は、法人税割と均等割からなり、法人税割は法人税の税額に基づき、都道府県税や市町村税が徴収されます。
均等割は所得金額に関わらず、資本金や従業員数に応じて異なり、税率は自治体ごとに設定されます。
法人事業税
法人事業税は、法人の収益にかかる地方税であり、法人が事業を行う際に利用する公共サービスや施設の費用の一部に適用されます。
法人住民税との違いは、課税対象が法人の事業であり、納付先が都道府県のみである点や、業種や従業員数によって税率が区分される点です。
法人事業税の税率は、法人の種類や資本金、所得額によって異なり、都道府県ごとに設定されています。
東京都の普通法人の場合、資本金1億円以下で所得が400万円以下の場合は3.5%、400万円から800万円以下の場合は5.3%、800万円を超える場合は7.0%の税率が適応されます。
特別法人事業税
特別法人事業税は、自治体の財政格差を緩和するために、法人事業税の一部を分離して創設された税金です。
納税義務のある法人が対象であり、合同会社も含まれます。この税金は国税ですが、法人事業税と併せて申告・納付されます。
特別法人事業税の税額は、法人事業税の税率を基に算出されます。税率は法人の種類により差異があり、資本金1億円以下の普通法人などは税率が37%となります。
消費税
消費税は、商品やサービスの売買取引において課される税金です。消費者が負担した消費税を、事業者が納付します。
標準税率は10%ですが、特定条件下では軽減税率が適用され、税率は8%となります。
新たに会社を設立する際には、資本金が1,000万円以下の場合、原則として設立2期目まで消費税が免除されます。
ただし、2023年10月に導入されたインボイス制度に伴い、適格請求書発行事業者の登録を受ける場合は、課税事業者と見なされるため、設立2期以内でも免除されませんので注意が必要です。
固定資産税
固定資産税は、個人や会社が所有する土地、建物、有価償却資産などに課される地方税です。
税率は全国一律で1.4%であり、固定資産税評価額に対して課税されます。
固定資産税評価額は土地と建物で計算方法が異なり、それぞれの評価額は土地の場合は路線価に地積を掛けたもの、建物の場合は再建築費評点、経年減点補正率、床面積、評点1点当たりの価額を掛け合わせたものです。
ただし、固定資産税の計算は非常に複雑であり、市区町村ごとに異なることもあります。
業種ごとに必要となる税金
上記に挙げた税金の種類以外にも、業種や事業内容に応じて以下のような税金が存在します。
・輸入消費税
・特別消費税
・決済機関報酬税
・不動産取得税
・屋外広告税
・著作権使用料
・放送事業税
・保険料税
これらの税金を事業において把握しておくことで、納税漏れや税務罰金のリスクを軽減することも会社経営を進めていく上で、頭に入れておきましょう。
個人事業主と比べた際の合同会社の節税効果
個人事業主と比べた際の合同会社の節税効果について解説します。
・所得税と法人税に対する課税率
・給与所得・役員報酬への控除適用
・赤字繰越ができる年数
所得税と法人税に対する課税率
個人事業主の所得税は、所得が増加するにつれて段階的に増加する累進課税を導入しており、税率は5%から45%の間で7段階に分かれています。
課税対象となる所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円〜194万9,000円 | 5% | 0円 |
195万円〜329万9,000円 | 10% | 9万7,500円 |
330万円〜694万9,000円 | 20% | 42万7,500円 |
695万円〜899万9,000円 | 23% | 63万6,000円 |
900万円〜1,799万9,000円 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円〜3,999万9,000円 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円〜 | 45% | 479万6,000円 |
例えば、課税される所得が899万9,000円までの場合の税率は23%であり、900万円を超える場合の税率は33%です。
一方、合同会社の法人税は、資本金1億円以下の法人で課税される所得が800万円以下の場合は15%、800万円を超える場合は23.2%です。
課税対象となる所得金額 | 税率 | |
年800万円以下の部分 | 15% | |
年800万円超えの部分 | 23.2% |
したがって、課税される所得が900万円以上の場合、合同会社の方が節税効果が高いと言えます。
給与所得・役員報酬への控除適用
合同会社の場合、代表社員や業務執行社員が受け取る役員報酬は給与所得として扱われます。
この給与所得には給与所得控除が適用されます。給与所得控除に加えて、所得控除も適用されるので課税対象となる所得がより小さくなります。
そのため、個人事業主と同じ所得金額であっても、合同会社の場合は給与所得控除と所得控除が適用されるため、役員報酬に対する税額が軽減されます。
赤字繰越ができる年数
個人事業主の場合、赤字の際は、赤字金額を3年間繰り越して、将来発生する黒字と相殺することで未来の所得を削り、課税対象となる所得金額を軽減することができます。
合同会社の場合、この赤字を最大10年間、繰り越すことができます。製造業など黒字化するまでに時間がかかる事業の収益をシミュレーションをする際に、一概に赤字を悪だと考えずに、課税対象となる所得を削る税金対策となるものだと捉えることで、より実現可能の高い、経営計画を立てることもできるようになるでしょう。
事業の赤字の繰り越しにおいて、合同会社の方が、個人事業主の3年よりも7年多い、10年間できることも節税効果のある施策として捉えておきましょう。
株式会社と合同会社の節税効果の違い
合同会社と株式会社の間には設立後の節税面において大きな違いはなく、どちらも一般法人の範疇に含まれます。
税金の種類や税率、経理項目、控除の利用、消費税の納税義務、赤字繰越の期間など、ほとんどの節税面でのメリットが共通しています。
また、合同会社では決算情報の公開や役員の更新・変更に伴う費用が発生しない点が挙げられます。これにより、毎年数万円の節約が可能となります。
そのため、会社設立後の節税面を重視する場合、合同会社と株式会社のどちらを選択しても、個人事業主よりも大幅な節税が期待できます。
まとめ
ここまで、合同会社と個人事業主の支払う税金の違い、合同会社設立時にかかる税金、合同会社が支払う税金の種類、合同会社の節税効果などを中心に解説してきました。
本記事が、これから会社設立を検討している方々にとってご参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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