株式会社の仕組みとは?設立するメリットとデメリット・合同会社と有限会社との違いについて解説

株式会社の仕組みとは?設立するメリットとデメリット・合同会社と有限会社との違いについて解説

「株式会社」という言葉は広く知られていますが、その仕組みや他の会社形態との違いについて詳しく説明できる人は多くはいないのではないでしょうか。

株式会社という名称は、われわれが生活するあらゆるシーンで目にします。しかし、組織運営の仕組みや個人事業主と違った利点などを説明できる人は多くないかもしれません。

また、基本中の基本であるからこそ、見落としている株式会社の特徴があるかもしれません。

この記事では、株式会社の仕組みや他の会社形態との違い、メリット・デメリットなどを中心に解説していきます。

そもそも会社設立の流れについてまずは知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
会社設立の具体的な流れ|設立のための手続き・方法やメリット・デメリットについて解説

株式会社の仕組み

株式会社の仕組みについて説明していきます。
・株式を発行して資金調達する会社
・所有と経営の分離
・株式を上場し市場で売買できる
・多額の資金調達が可能

株式を発行して資金調達する会社

株式会社は、株式を発行して資金を調達し、その資金を活用して経営を行う会社の形態のことを言います。

株式を通して金融機関や投資家から調達した資金を活用して、会社は商品やサービスを企業や消費者を含む顧客に提供します。

株式とは、資金提供者に対して発行される証券のことであり、株主と呼ばれる資金提供者は以下の権利を持ちます。

・会社が利益を上げた場合、配当(出資への報酬)を受け取る権利
・株主総会を通じて、会社の経営に参加する権利

端的にまとめると、株式会社は株主に権利を提供することで資金を調達し、事業を展開する仕組みです。株主は資金を提供する代わりに、経営に参加する権利を得ます。

4つの資金調達方法について、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
開業資金はいくら必要?4つの資金調達方法を解説

所有と経営の分離

株式会社は、株主と会社を経営する取締役の役割が分離された会社形態です。この仕組みを「所有と経営の分離」と呼びます。

会社の経営を担う取締役は、株主が集結する「株主総会」で選ばれます。株主と取締役の両方を担うことも可能です。一般的に、小規模な会社では、株主と取締役が同じ人物であることがよくあります。

創業メンバーが出資者として会社を設立し、そのまま経営を担当するケースもよく見られます

株式を上場し市場で売買できる

株式上場とは、株式会社が発行する株式を、証券取引所で公開し、一般の投資家が自由に売買できるようにすることです。

上場するためには、証券取引所に申請を行い、その取引所が定める基準に合格する必要があります。

審査に合格することで株式が取引所に上場され、一般の投資家が取引できるようになります。

株式の上場により、企業は資金調達がしやすくなるだけではなく、企業の知名度や信頼性を上げることにも繋がります。

ただし、上場企業は法律や証券取引所の規則に従って情報開示を行う義務があり、社会的な責任も大きくなります

多額の資金調達が可能

株式会社の中でも、最も多くの資金を調達できるのが上場企業です。

上場企業とは、一般の人々が取引できる「上場株式」を発行している企業のことを言います。

個人事業主と異なり、上場企業は一般投資家が購入可能な株式を発行しています。これにより、資金調達の幅が広がります。

つまり、不特定多数の人が株式を取得できるため、より多くの資金を調達できる仕組みになっています。

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株式会社の中枢を担う役員

株式会社の中枢を担う役員について説明します。
・取締役
・監査役
・会計参与

取締役

取締役は、会社の業務を遂行する方法や方針に関する意思決定を行う役職です。

株式会社では、最低1名以上の取締役が必要であり、取締役会を設置したい場合は3名以上の取締役が必要です。

株主総会は企業の主要な意思決定機関であり、直接的に会社の経営に関わる重要な事項を決定します。

それに対して、取締役会は業務の執行に関する決定機関です。

役員と取締役の違いについて、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
発起人とは?役割と責任・注意点・役員と取締役の違いについて解説

監査役

監査役は、企業内部で財務や経営の監査を担当し、取締役の業務遂行を監査する役員です。

大規模でかつ株式を公開している企業の場合、監査役会や会計監査人の設置が義務付けられています。

監査役会は通常3人以上で構成されます。そのうち半数以上が社外監査役であることが要求されます。

社外監査役は、企業の経営陣や従業員と直接の利害関係を持たない独立した立場の監査役です。

また、会計監査人は最低1人必要です。

一般的に、株式譲渡制限会社や取締役会を設置していない場合、取締役会と会計参与の両方を設置している場合は、監査役を選出する必要はありません。

会計参与

会計参与は、取締役と協力して会社の財務報告書や計算書類を作成する役員のことです。

一般的に、会計参与の設置は任意であり、人数にも制限など決まりはないです。

しかし、非公開会社で取締役会を設置しており、監査役がいない場合、会計参与の設置が義務付けられる場合があります。

会計参与に選ばれるのは、会計や財務のスペシャリストである税理士、税理士法人、公認会計士、または監査法人のいずれかに限定されます。

株式会社と合同会社の比較

合同会社は、2006年5月に施行された会社法によって新たに設けられた会社形態の1つです。

一般的に株式会社では、株主である出資者と経営者が別々の人物である場合もありますが、合同会社では出資者が直接経営に参加し、経営権を持ちます

合同会社では、出資者は一般的に「社員」と呼ばれ、彼らは会社の運営や重要な決定に関与することができます。

合同会社と株式会社の違いについて、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
会社設立にかかる費用|合同会社と株式会社の違い・会社設立後の費用について解説

株式会社と有限会社の比較

株式会社と有限会社の間には、かつて資本金の額や役員の任期などに大きな違いが存在していました。

以前は、株式会社の設立には1,000万円、有限会社の設立には300万円の資本金が必要なため、少額の資本金で会社を設立したい場合は、一般的には有限会社が選択されていました。

また、役員においては、株式会社では2年ごとに役員を変更することが義務付けられていましたが、有限会社では役員に任期が設けられておらず、役員の変更は必要ありませんでした。

2006年に施行された新しい会社法により、株式会社の設立に必要な資本金が1円からでも可能となり、また、株式会社の役員の任期も最大で10年まで延長されました。

そのため、有限会社の利点はほとんど失われました。

加えて、有限会社の新規設立が禁止され、既存の有限会社は株式会社と同じカテゴリーである「特例有限会社」として継続されることになりました。この特例有限会社とは、有限会社の規則の一部を引き継いだものになります。

株式会社と有限会社の違いについて、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
株式会社の仕組みとは?設立するメリットとデメリット・合同会社と有限会社との違いについて解説

株式会社設立のメリット

株式会社を設立するメリットについて説明します。
・社会的な信用が高まる
・大きな額の資金調達が可能
・節税効果が期待できる
・有限責任の適用

社会的な信用が高まる

株式会社を設立することで、社会的な信用力が向上することもメリットの1つです。

株式会社は認知度が高く、遵守しなければならない法律も多いため、一般的に個人事業主と比べて社会的信用度が高い傾向があります。

その結果、株式会社は一般的に金融機関での審査や他事業者との取引において、ネガティブな印象を受けにくく、融資や資金調達、人材の獲得など、様々な場面でメリットがあります

大きな額の資金調達が可能

株式会社は株式を発行することで、幅広い投資家から資金を調達できます。

出資者は配当金や経営に参加することを期待して出資を行います。

また、投資家は出資金以上の責任を負わなくて良い「間接有限責任」のため、余剰なリスクを負わずに投資可能である点もメリットです。

節税効果が期待できる

株式会社を設立する際に節税効果が期待できる点は、大きなメリットの1つです。

法人としての税制では、個人事業主よりも経費として認められる基準が広範です。

例えば、株式会社が事業用不動産を所有する場合、その管理や維持にかかる費用は経費として認められます。これには、家賃、管理費、修繕費、保険料などが含まれます。

個人事業主の場合、自宅を一部事業用不動産として利用する場合でも、その一部しか経費として計上できませんが、株式会社の場合は事業用不動産全体の経費を計上できる可能性があります。

個人事業主は利益が増えると税率も上昇する累進課税に対し、法人は一般的に一定税率が適用されます。そのため、法人の場合、利益が増えるほど節税効果が期待できます

有限責任の適用

個人事業主の場合、事業上の責任はすべて個人事業主が負う義務があります。

経営が悪化した場合、仕入先への未払い金や借入金、税金の滞納など、これらすべてが個人の負債になります。このような責任のことを「無限責任」と呼びます。

法人の場合は、限定された範囲の「有限責任」が適用され、すべての責任を1人の代表者が負うことはなく、法人の責任は、法人自体が負うものであり、代表者個人の責任とは分離されます

株式会社設立のデメリット

株式会社を設立するデメリットについて説明します。
・会社設立費用にかかるコストが大きい
・決算公示の義務が発生する
・役員の任期が決まっている
・収益が赤字の場合でも税金の種類によっては支払いが必要

会社設立費用にかかるコストが大きい

株式会社を設立する場合、定款の作成や認証、登記免許税などの手続きには費用がかかります。

通常、株式会社の設立には25万円程度の費用が必要とされます。一方、合同会社の設立には、より少額の費用は10万円前後で済みます。

決算公示の義務が発生する

株式会社を設立すると、決算公示の義務が発生します。決算公示とは、経営状況や財務情報を公に開示することを言います。

合同会社ではこのような公示の義務は生じませんが、株式会社では定められた決算期ごとに公示の義務があります。

役員の任期が決まっている

株式会社の場合、役員には最長10年の任期があり、一定期間が経過すると株主総会で選出しなおす必要があります。

役員の選出には再度登記が必要であり、その際に登録免許税が発生します

つまり、役員を定期的に選出することで手間と費用がかかる点に留意する必要があります。

収益が赤字の場合でも税金の種類によっては支払いが必要

株式会社は、経営が赤字になっていても支払わなければならない税金があります。この中には、地方税の1つである法人市民税の「均等割分」が含まれます。

均等割分は、会社の規模に応じて変動しますが、最低でも7万円かかります。

まとめ

ここまで、株式会社の仕組みや他の会社形態との違い、メリット・デメリットなどを中心に解説してきました。

本記事が、これから会社設立の準備や会社設立を検討している起業家・個人事業主・独立予定の会社員の方のご参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

著 者

SOICO株式会社
共同創業者&代表取締役CEO
茅原 淳一 (かやはら じゅんいち)

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。

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