株式会社を設立できる人数|会社設立の条件・メリット・デメリットについて解説
法人化で後悔するケースとは?法人化をする必要のないケース・後悔しないための対策について解説
個人事業主で事業が拡大していくと法人化について考える人が多くいます。法人化すると、税金対策や社会的信用力の向上、資金調達のしやすさなどのメリットがあります。しかし、法人化してから後悔してしまう人も少なくありません。
本記事では、法人化を検討している個人事業主の方に向けて個人事業主が法人化して後悔するケースや、後悔しないための対策について解説します。
事業計画書について、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
→ 事業計画書は必須!?記載すべき内容を項目別に解説
目次
法人化で後悔する理由
多くのメリットがある法人化ですが、法人化して後悔するケースもあります。手続きの手間や費用、税金に関することなど多くの事項があります。
ここでは、考えられる理由を10項目あげて解説します。
・期待したよりも節税効果がない
・設立のために予想以上のコストがかかった
・ランニングコストの負担が重い
・資金の使い方の自由度が下がる
・事務作業の負担が増える
・精神的な負担の増加
・経営方針策定の自由度が下がる
・事業で赤字が発生しても税金の支払い義務がある
・登記手続きで追加費用が発生した
・法人を廃業する手続きにも時間と費用などのコストがかかる
期待したよりも節税効果がない
個人事業主が法人化することで得られるメリットの1つに節税効果があります。しかし、期待していたより節税できなかったと、後悔するケースもあることでしょう。たとえば、年間売上が上がっていくと見込んで法人化したものの、予想に反して年間売上が上がらなかったという場合があります。その場合、期待していたほどの節税効果は望めません。
法人化によって節税効果を得られるのは、ある基準以上の利益を確保できた場合のみです。個人事業主の税金の仕組みは「所得税」で、税率は累進課税制度によって決まります。つまり、所得が高くなるほど税率が上がります。一方、法人での税金の仕組みは「法人税」で、非累進課税制度が導入されています。税率は、普通法人、一般社団法人などについては23.2%です。法人税は所得に関係なく税率が変化しません。
設立のために予想以上のコストがかかった
法人化して後悔する理由の1つに、設立のために予想以上のコストがかかったということです。法人化するためには、さまざまなコストがかかります。たとえば、定款の作成にかかる費用や登記費用などに25万円程の費用が必要です。また、税務署にも届出書を提出しなければならないなど、時間的なコストもかかります。
基本的な株式会社を設立するためにかかる費用は、以下の通りです。
・定款認証印紙代(40,000円)
・定款認証手数料(32,000円)
・登録免許税(150,000円)
専門家に会社設立のための代行を依頼した場合には、さらに費用がかかります。また、法人化すると社会保険料や人件費も支払う必要があります。事業が拡大していくとともに、これらの費用は増加し、資金繰りが圧迫される可能性があります。
ランニングコストの負担が重い
ランニングコストの負担が重いことも、法人化して後悔する理由の1つです。法人化すると個人事業主の頃とは異なり、ランニングコストの負担があります。
たとえば、法人化するとインターネット開設は必須です。その際、プロバイダー契約料が法人価格となり、通常よりも高くなる場合があります。
また、毎月のランニングコストとして、オフィスの家賃や光熱費、通信費などの固定費用もあります。従業員への給与の他に福利厚生費などを払い続ける必要もあるでしょう。
資金の使い方の自由度が下がる
法人化すると資金の使い方の自由度が下がります。個人事業主は、事業で稼いだお金を自分で自由に使うことができます。しかし、法人化した場合、事業で稼いだお金は会社の売り上げとしてみなされるため、代表取締役であっても自由に使うことはできません。勝手に事業資金を使用すると、横領などの税務上のトラブルに巻き込まれたりする恐れがあるため注意が必要です。
法人化すると、個人事業主から会社の役員となり、会社から役員報酬を受け取ることになります。会社から支給される役員報酬は、原則として同じ金額の費用が一定期間支払われます。役員報酬の金額が決められ、株主総会の承認を受けると、基本的に1年間変更ができません。
事務作業の負担が増える
法人化すると事務作業の負担が増加します。個人事業主の時と比べると、事務作業が煩雑になることが現状です。
たとえば、法人化した場合、決算日を自由に決めることが可能です。しかし、所得税などの税金を決算日から2ヶ月以内に申告する必要があり、納付期限も同じ日に設定されています。そのため、決算期のスケジュールが忙しくなる恐れがあります。また、申告書の提出先はそれぞれ異なり別々に作成する必要があるため、負担となることでしょう。
決算報告書や法人税申告書などの書類の作成にも、時間と手間がかかります。定款の変更があった場合には、その都度対応していく必要があるでしょう。そうなると、予想していた以上に事務作業を行う必要があり、法人化を後悔することになります。
精神的な負担の増加
法人化すると、精神的な負担が増加します。個人事業主のときは、自分のペースで事業を進めていくことが可能であり、自由に働くことができます。しかし、法人化をし、事業拡大に沿って従業員を雇用した場合などですと、従業員の生活を守らなくてはならないという精神的な負担が伴います。
たとえば、従業員の生活を守るためには、事業を成功させなければなりません。事業不振が続くと精神的な負担が増加するでしょう。事業を成功させなければならないという責任の重さから、病気を患ってしまう場合もあるため注意が必要です。
経営方針策定の自由度が下がる
経営方針策定の自由度が下がることも、法人化して後悔する理由の1つです。共同経営者とともに法人化する場合や1人で会社を立ち上げたとしても、出資者が存在するケースなどの場合、どちらのケースでも、法人化するために複数人で資金を出し合って会社を立ち上げます。そのような共同経営者たちと事業を運営していくにあたり、経営方針のズレが生じてくる場合があります。
経営方針とは、現状の把握や分析、将来的な事業予測を行い、安定した事業運営を行っていくための中長期的な経営計画といえます。法人化した後、共同経営者や出資者との間で経営方針にズレが生じた場合、意見のすれ違いで問題になる恐れがあります。そうなると、共同経営者や出資者にも発言権があるため、自分だけの意見が通るということはありません。意見が分かれ、解散や分離になることもあるでしょう。
事業で赤字が発生しても税金の支払い義務がある
法人化すると、事業で赤字が発生した場合でも、税金の支払い義務があります。たとえば、個人事業主は売上で赤字が生じた場合、所得税や住民税の支払い義務はありません。しかし、法人化した場合、売上で赤字が発生しても住民税の支払い義務があります。
法人住民税は、「法人税割」と「均等割」の2種類に分けられます。事業で赤字が発生した場合、「法人税割」は生じませんが、「均等割」は会社の規模に応じて課税されます。小規模な会社にとっては負担となることもあるため、法人化する前に十分考慮したいポイントです。
登記手続きで追加費用が発生した
法人化するためには、登記手続きを行う必要があります。登記手続きには費用がかかりますが、その必要な費用以外に追加費用が発生する場合があり、後悔の原因となる恐れがあります。
たとえば、法人登記するには法人登記が可能な物件であることが必要です。個人事業主が在宅ワークをしていて法人化する場合、そのまま自宅で登記するケースがあります。その場合、その自宅物件が法人登記の認められた物件であれば問題ありません。
しかし、賃貸物件のアパートやマンションでは登記が認められていないケースがあります。そうなると、賃貸の契約違反となるため、物件のオーナーと問題になったり、追加費用が発生したりする恐れがあります。
法人登記について、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
→ 法人登記|必要となるケース・事前に行うこと・登記の流れと申請方法について解説
法人を廃業する手続きにも時間と費用などのコストがかかる
法人化すると、資金繰りがうまくいかなくなることや、業績が悪化することがあります。そうなると、経営を持続していくことが難しくなり、廃業したり解散したりする場合があります。法人化するための手続きに手間がかかるように、法人を廃業する手続きにも時間と費用などのコストがかかります。
法人を廃業する手続きには、以下のような手順が必要です。
・解散日から2週間以内に解散のための手続きを行う(法務局で解散の登記と決算人選出の登記を行う)
・異動届出書を税務署と市区町村に提出する
廃業のための手続きが完了するまでにかかる時間は、2ヶ月以上とされています。法人の解散のためにかかる費用も4万1,000円の登録税の他に官報の広告費用として4万円ほどかかります。
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法人化で失敗しないための対策
法人化で失敗しないための対策について解説します。事前に後悔しないために行うべきことを理解しておけば、法人化を成功させることができるでしょう。
法人化で失敗しないための対策は、以下の5つです。
・事前の入念な計画
・自己資金を抑えておく
・運営資金の把握
・法人化後の経営に関する知識を身に着ける
・専門家に相談をする
事前の入念な計画
法人化で失敗しないための対策の1つは、事前の入念な計画です。法人化すると決めたら、しっかりと計画を立てましょう。計画せずに法人化すると、想定外の出費や手間がかかってしまう場合があります。
事前の入念な計画には、業界の動向調査や競合との差別化、長期的な資金計画などさまざまな事柄が含まれます。事業をどのように進めていくかという経営方針も重要な事前計画に含まれます。
また、法人化するための手続きにかかる費用を計算し、ランニングコストがどのくらいかかるかも考慮しておく必要があるでしょう。
自己資金を抑えておく
自己資金を抑えておくことも、法人化で失敗しないための対策の1つです。法人化にはさまざまな手続きが必要であり費用がかかります。しかし、予想外の費用が発生する場合があるため、自己資金をしっかりと抑えておくことは重要です。
自己資金が不十分だと資金繰りが悪くなり、経営が立ち行かなくなる恐れがあります。資金繰りの悪化に対して金融機関から融資を受けるなどして対処することが可能ですが、借りたお金は返済しなければなりません。事前に自己資金を抑えておくことの方が良いでしょう。
運営資金の把握
事前に運営資金を把握しておくことも、法人化で失敗しないための対策の1つです。法人化するために必要な費用はもちろんのこと、法人化した後にかかる運営資金の把握も重要です。
運営資金には、社会保険料や従業員への給与、また法人税などの税金の支払いやオフィスの賃料などが含まれます。運営資金の把握が不十分だと、予想外の費用がかかり、事業が立ち行かなくなります。そうならないためにも、事前に運営に必要な費用を計算し、資金計画を立てることも極めて重要です。
法人化後の経営に関する知識を身に着ける
法人化で失敗しないためには、法人化後の経営に関する知識を身に着けておくことが重要です。法人化後に必要になる知識には、経営や税制、また法律関係の知識が含まれます。そのような知識がないまま法人化してしまうと、法人化で失敗することはもちろん、知らないうちに法律面で違反してしまう恐れがあるため注意が必要です。
会社設立を専門家に依頼するとしても、法人化後の経営に関する知識は重要です。急いで法人化の手続きを進めるのではなく、ある程度の知識を身に着けた後に法人化を進めていくことをおすすめします。
専門家に相談をする
法人化で失敗しないための対策に、専門家に相談することがあります。法人化には、複雑で手間のかかる手続きが必要です。専門家に相談すると当然費用がかかりますが、そのような手続きで失敗しないためのアドバイスや助けを得ることもできるでしょう。
専門家から得ることのできるアドバイスや助けには、法人化のための必要な手続きに関することの他に、法人化するタイミングや、法人化するべきかどうかのアドバイスなどが含まれます。
ある程度の知識を自分で身に着けておくことは重要ですが、高度で複雑な知識が求められる事柄に関しては専門家の知識が必要です。専門家に相談することを前提に、資金を準備しておくことをおすすめします。
法人化する必要のないケース
一定以上の所得に達した場合、個人事業主は法人化しなければならないという考え方が浸透しているかもしれません。しかし、法人化する必要のないケースもあります。
以下のような状況にある個人事業主は、法人化する必要がないでしょう。
・事業を拡大する予定がない
・提供するサービスの質を落とす懸念がある
・経営方針に干渉されることなく事業を進めたい
・事業の成長が期待できない
・法人の事業内容・目的によって社会的信用度を必要としない
・事務作業の煩雑化を避けたい
事業を拡大する予定がない
事業を拡大する予定がない場合、法人化する必要はないといえるでしょう。現在の事業規模に満足しており、更なる事業拡大の予定がない場合、法人化しても大きなメリットはありません。
法人化の目的には、社会的信用度の向上や資金調達の幅を広げることも含まれます。しかし、事業の拡大の予定がなければ、このような法人化に伴うメリットは意味がありません。したがって、現状の事業規模で満足している個人事業主の方は、無理して法人化する必要はないといえるでしょう。
提供するサービスの質を落とす懸念がある
法人化すると事務作業の負担が増加することがあります。法人化することで、決算日を自由に設定することが可能ですが、決算期のスケジュールが忙しくなる恐れがあります。そうなると、本業である事業に集中できず、提供するサービスの質を落とすことになりかねません。
自分自身でサービスや商品を提供したい事業主は、サービスの質を落としてまで法人化するよりも、個人事業主として事業を進めていく方が効果的でしょう。
経営方針に干渉されることなく事業を進めたい
自分が代表取締役となり、役員や従業員と共に事業を行って行くことは効果的です。1人で事業を行うよりも、複数人で事業を進めていくことには益があります。
しかし、役員や従業員と共に事業を行っていくということは、自分が持っている経営方針について干渉されることも意味しています。自分が持つ経営方針に干渉されることなく事業を進めたい場合は法人化する必要はないでしょう。
経営方針について干渉されると、精神的な負担を抱える可能性があります。そうなると、ストレスを抱えて事業を進めていくことになり、法人化することのメリットは弱くなります。
事業の成長が期待できない
事業の成長が期待できない場合、法人化するメリットはあまりないでしょう。個人事業主での所得が高い場合、法人化すれば節税効果を期待できます。しかし、売上がそれ程高くなく事業の成長が期待できない場合は、個人事業主の方が、税負担が軽くて済みます。
すでに記述したように、法人における税金の仕組みには、法人住民税の「均等割」があります。この仕組みは、赤字が生じた場合にも納税しなければならないというものでした。
将来的に業績が下がる見込みがある場合や、事業の成長が期待できない場合は、法人化することで費用負担が増加する恐れがあります。
法人の事業内容・目的によって社会的信用度を必要としない
法人化するメリットの1つに社会的信用度の向上があります。しかし、法人の事業内容や目的によっては、社会的信用度を必要としないものがあります。その場合、法人化する必要はないでしょう。
社会的信用度が高いと、問題なく取引が成立する可能性が高くなります。仕入先や取引先によっては、法人でなければ契約しないところがあります。しかし、個人事業主として問題なく取引先と事業を進めることができているならば、それ以上の信用度を求める必要はないといえます。
事務作業の煩雑化を避けたい
事務作業の煩雑化を避けたい場合、法人化する必要はないでしょう。法人化すると、個人事業主の頃と比べて事務作業が多くなります。決算期のスケジュールは特に忙しくなります。法人化によって得られるさまざまなメリットと、法人化によって増加するであろう事務作業による負担を比べたうえで、法人化を考えましょう。
法人化することで事務作業が煩雑になることは避けられません。事務作業の煩雑化を避けたい場合は、法人化するよりも個人事業主として事業を行っていく方が効果的です。
まとめ
この記事では、個人事業主が法人化して後悔するケースや、後悔しないための対策をご紹介してきました。現在、自身が個人事業主で法人化するにあたって迷っているなら、専門家に相談することをおすすめします。
本記事が、これから会社設立の準備や会社設立を検討している起業家・個人事業主・独立予定の会社員の方のご参考になれば幸いです。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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