法人設立ってどうすればできるの?
会社の設立と個人事業主の違い|事業形態・注意点・判断基準について解説
起業する方法として、会社の設立と、個人事業の開業の2つの方法があります。会社を設立する場合と個人事業主とでは、起業するための手続きや税金の仕組みなど様々な違いがあります。起業するにあたって会社を設立するか個人事業主になるかお悩みの方は多いのではないでしょうか。
そこで、本記事では会社設立と個人事業主の違いについて解説します。また、会社設立と個人事業主のどちらを選択するかの判断基準も解説しますので、起業を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
そもそも会社設立の流れについてまずは知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
→ 会社設立の具体的な流れ|設立のための手続き・方法やメリット・デメリットについて解説
目次
会社設立と個人事業主の事業形態
起業する場合の主な事業形態は、以下の2つです。
・法人
・個人事業主
まずは、それぞれの事業形態の特徴をご紹介します。
法人
法人とは、法律の規定によって一定の目的の範囲内で自然人と同じ権利や義務を有することを認められた組織や団体をいいます。法人には様々な種類がありますが、起業という面で「法人」という言葉を用いる場合、一般的に会社のことを指します。
会社には、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社と4つの種類があります。近年の起業傾向としては、株式会社や合同会社が多く、合名会社や合資会社の新規設立数は減少傾向にあります。法務省の調査によると、2020年の合名会社と合資会社の新規設立数は合わせて年間100件に達していないことが分かります。
個人事業主
個人事業主とは、会社設立手続きを行わず、個人で事業を行う人のことです。1人で事業を行うケースもありますが、家族や従業員などと事業を行っている場合が多いです。個人事業主として事業を行う場合、税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」を提出する必要があります。
個人事業主と類似の言葉で「フリーランス」という言葉がありますが、個人事業主とは全く別の意味です。フリーランスとは、独立して仕事を請け負う働き方のことです。フリーランスは働き方を示す言葉で、個人事業主は事業形態の税務上の区分を示す言葉です。フリーランスの人は必ずしも個人事業主として開業しているというわけではありません。
これから起業する人にとって会社設立は分からないことが多いのではないでしょうか。
また、起業したばかりの人にとっては事業の立ち上げと同時に様々な手続きを進めなくてはならず大変な思いをしている方も多いことでしょう。
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会社設立と個人事業主の違い
会社を設立する場合と個人事業主の違いは、主に以下の7つです。
・社会的信用度
・税金の仕組み
・起業時における費用
・責任の範囲
・経費処理可能な範囲
・社会保険の有無
・廃業時の費用
それぞれ以下で解説します。
社会的信用度
個人事業主よりも会社の方が社会的信用度は高くなります。会社を設立する場合、商号、住所、資本金といった情報を登記し、誰もが閲覧可能な状態にする必要があり、また、会社法などの法律に基づいてより厳格に運営する必要があるため、個人事業主よりも社会的な信用度が高いといえるのです。
企業によっては、個人事業主とは取引を行わないところもあります。
会社の方が個人事業主よりも事業や資産の状況を把握しやすいことから銀行からの融資も通りやすくなります。
人材の採用という面でも、社会保険などの従業員側のメリットを提示できることから、会社の方がより優秀な人材を採用しやすいといえます。
そのため、会社を設立した方が事業の幅が広がるといえるでしょう。
税金の仕組み
会社と個人事業主の違いに税金の仕組みがあります。会社と個人事業主の税金の仕組みを比べてみましょう。
たとえば、会社設立の場合、以下の税金がかかります。
・法人税
・法人事業税
・法人住民税
・特別法人事業税
・消費税
個人事業主が支払う税金の項目は、以下の通りです。
・所得税
・消費税
・住民税
・個人事業税
個人事業主の所得税は、所得が高くなるほど税率が上がる累進課税で、5%〜45%の間で7段階に区分されています。しかし、会社の場合、法人の所得に課税される法人税は、資本金が1億円以下で所得が800万円を超える場合の税率は23.2%で、800万円以下ならば税率は15%と税率は一定に設定されています。このことから、所得税と法人税を比較すると会社の方が個人事業主よりも節税効果が高くなることが分かります。
ただし、個人事業主の場合1年間の利益が赤字だった場合所得税と住民税は課税されませんが、会社の場合赤字だったとしても法人住民税のうち均等割の部分を納税する必要があります。
起業時における費用
会社設立と個人事業主とでは起業時にかかる費用に違いがあります。会社設立を行う場合、基本的に1人会社であっても手続きや設立費用がかかります。しかし、個人事業主の場合、「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出するだけで基本的には費用はかかりません。
会社設立における基本的な費用は、以下の通りです。
項目 | 株式会社 | 合同会社 |
定款用収入印紙代 | 40,000円 | 40,000円 |
定款の謄本手数料 | 2,000円(1枚あたり250円) | 2,000円(1枚あたり250円) |
定款認証 | 50,000円 | 不要 |
登録免許税 | 150,000円~ | 60,000円~ |
合計 | 約222,000円 | 約100,000円 |
定款について、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
→ 定款とは?必要な理由・記載すべき項目・変更方法について解説
責任の範囲
会社を設立した場合と個人事業主では、課される責任に違いがあります。
たとえば、会社が倒産した場合、個人事業主は事業上の責任を全て負う(無限責任)一方、会社が負うべき事業上の責任の範囲は有限です(有限責任)。
個人事業主の場合、例えば金融機関からの借入金や取引先への未払い金などを個人で負担することになります。
一方、会社の場合責任の上限が出資金の範囲に限定され、出資額以上の支払い義務はないため、事業を失敗してしまったとしても個人の資産を守ることができます。
経費処理可能な範囲
事業上発生した費用に関しては会社か個人事業主かに関係なく経費になります。会社と個人事業主とでは、経費として処理できる範囲に違いがあり、会社を設立した方が経費として認められる範囲が広く、節税効果が大きいというメリットがあります。
会社の場合、社長だけの一人会社でも役員報酬という形で給与を受け取ることが可能です。役員報酬は、特定の要件を満たせば経費として扱われ、法人税の課税から除外されます。その他、法人では役員退職金、生命保険料、出張時の日当なども経費として計上できます。
一方、個人事業主の場合、自分への給与という概念が存在せず、事業から得られる全収入が課税対象です。青色申告を利用すると配偶者や従業員に給与を支払うことは可能ですが、親族への給与支払いを行うためには税務署への事前通知が求められます。個人事業主は自分自身に対する退職金、生命保険料、出張時の日当などの支出を経費として計上することはできません。
社会保険の有無
会社設立と個人事業主では、社会保険に関した事柄にも違いがあります。会社を設立した場合、社会保険に加入することが義務付けられているのに対し、個人事業主には社会保険の加入義務はありません。
社会保険は、会社負担と個人負担で成り立っています。1人で会社を経営する場合、会社負担と個人負担で賄う費用をすべて自分で負担する必要があります。しかし、役員報酬がない場合や報酬額が社会保険料よりも低い場合、法人であっても社会保険への加入義務はなくなる場合があります。
会社設立の際の社会保険の加入方法について、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
→ 会社設立の際の社会保険の加入方法|事業所・従業員別の加入条件について解説
廃業時の費用
事業を廃業する際の費用も会社を設立した場合と個人事業主で異なります。
会社設立の場合も個人事業主の場合も、廃業した時に廃業の手続きを行う必要があります。その際、個人事業主の場合は廃業届を提出するだけで費用は発生しません。しかし、会社の場合、廃業手続きに以下の費用がかかります。
・登録免許税:41,000円(解散登記:30,000円、清算人登記:9,000円、清算結了登記:2,000円)
・官報公告費用:30,000円〜40,000円
また、廃業手続きを専門家に依頼する場合、さらに70,000円〜100,000円ほどの費用がかかる可能性があります。
会社設立の際の注意点
会社を設立する場合、いくつかのポイントに注意する必要があります。
会社設立の際の注意点は、以下の3つです。
・健康保険と厚生年金保険への加入は義務
・経費の使用法に注意
・税金の変化
健康保険と厚生年金保険への加入は義務
健康保険法第3条および厚生年金保険法第9条によって、会社を設立する場合、健康保険と厚生年金保険への加入は必須と定められています。個人事業主から会社を設立した場合でも、健康保険と厚生年金保険への加入は義務付けられているため、注意が必要です。
しかし、役員報酬がない場合や役員報酬の額が社会保険料よりも低い場合は、社会保険への加入義務は発生しません。これらに該当する場合、国民健康保険と国民年金に加入します。
経費の使用法に注意
会社を設立して法人化すると、経費として扱える幅が広がります。しかし、その経費の使用法については注意が必要です。
たとえば、福利厚生費や会議費、交際費、法定福利費などの勘定科目は、経費として認められるための条件が厳しいです。1人会社を経営している場合、食事代や旅行費は福利厚生費としては認められにくい可能性があります。しかし、取引先が関係している場合であれば交際費や会議費として経費に含めることが認められる場合があります。会社を設立した場合、経費の処理方法について事前に理解しておくことが重要です。
税金の変化
会社を設立した場合、役員報酬をバランスよく設定する必要があります。役員報酬の金額で支払う必要のある税金が変化するからです。
会社を設立した場合、1人会社であっても、自分自身への役員報酬を支払う必要があります。役員報酬を高く設定すると社長個人の所得税も高くなります。逆に役員報酬を低く設定すると、法人税が高くなります。そのため、役員報酬の設定はバランスよく、適切な金額を定めることが重要です。
会社設立か個人事業主かの判断基準
起業を考えている人の中には、会社を設立するか個人事業主になるか悩んでいる人も多いことでしょう。
以下で会社を設立するか個人事業主になるかの判断基準として4つのポイントをご紹介します。
・事業のビジョン
・年間所得・売上がどのくらいか
・資金調達の方法を基準に決める
・創業初期から従業員を雇用するかどうかの判断
事業のビジョン
事業のビジョンによって、会社を設立するか個人事業主になるか、選択肢が変わります。将来的に見て、さらなる利益の拡大や事業体制の規模の拡大を狙っていくのであれば、会社の設立をおすすめします。
会社を設立した方が、事業が成長し利益が大きくなった場合に税制面でメリットがあります。また、上述の通り資金調達もしやすいため、事業拡大を目指すのであれば会社を設立した方がいいといえます。
年間所得・売上がどのくらいか
会社を設立するか個人事業主になるかの判断基準には、年間所得や売上がどのくらいになるかも関係してきます。
たとえば、個人事業主としてスタートした場合、年間所得がどのくらいになったかで会社を設立するかどうかを判断できます。個人の所得税よりも法人税の方が有利になる基準は、おおよそ700万円〜800万円です。個人事業主の年間所得が700万円〜800万円の場合、所得税率は23%です。会社を設立した法人であれば15%となり、会社設立の方が税率が低くなります。
個人事業主の場合、累進課税制度が適用されるため、所得が上がれば上がるほど税率が高くなります。一方、会社を設立して法人化すると、比例課税制度が適用され、法人税は例外を除いて所得の金額に関わらず一律の税率が適用されます。そのため、年間所得が700万円を超えたところで個人事業主は会社設立を検討すると良いでしょう。
また、年間売上が1,000万円を超えると、消費税を収めなければならないことを覚えておきましょう。消費税は、2年前の年間売上が基準となり、1,000万円を超えると発生する税金です。つまり、個人事業主として年間売上が1,000万円超えた2年後から消費税の納税義務が発生することになります。このタイミングで会社を設立すれば、2年後から発生する消費税の納税義務を回避することができ、節税につながります。会社を設立した年が開業1年目としてカウントされ、2年前の年間売上が存在しないことになるからです。
資金調達の方法を基準に決める
事業が拡大していく傾向にある場合、会社を設立して法人化することはメリットとなります。会社を設立することで社会的信用が高まるため、金融機関からの借入や外部からの出費といった資金調達の面で有利です。会社を設立して法人化すれば、法人のみが活用できる補助金や助成金などもあります。
個人事業主では資金調達の方法に限界があるため、事業を拡大したいのであれば会社設立がおすすめです。
創業初期から従業員を雇用するかどうかの判断
会社を設立するか個人事業主になるかの判断には、創業初期から従業員を雇用するかどうかも関係してきます。会社を設立して家族以外の従業員を雇う場合、社長自身の役員報酬も経費にすることが可能です。しかし、個人事業主の場合は注意が必要です。
個人事業主で家族が従業員として在籍する場合、青色申告にして青色専従者に家族の成員を従業員として登録することが可能です。そして、家族の成員への給与を経費にできます。しかし、個人事業主自身への給与を経費とすることはできません。
会社を設立した場合、毎月同額の役員報酬は経費とみなされ給与とすることが可能です。しかし、会社設立後3か月以内の金額決定が必要になります。
個人事業主が法人化するメリットとデメリットについて、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
→ 個人事業主が法人化するメリットとデメリット|法人化するタイミングや注意点も解説
まとめ
この記事では、会社設立と個人事業主の違いについて解説してきました。
会社を設立して法人化することと個人事業主の間には大きな違いがあるため、会社を設立するか個人事業主になるかを検討する際、その違いについて十分理解することが必要です。
この記事が、起業を検討している方のお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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