会社設立時に用意する法印鑑|4種類の印鑑の役割と選ぶポイントについて解説
法人口座開設時に必要な書類|注意事項・審査時のポイントについて解説
法人の設立後、取引先や顧客とのやり取りにおいて法人口座の開設は必要となります。法人口座を開設することで、会社は社会的信用を高め、経営状況の把握が容易になり、融資の申請にも大きく寄与するので、会社がビジネスを拡大していく上で、多くのメリットを享受できます。
しかし、法人口座の開設は個人口座の開設と比べ時間がかかり、自社に関する書類を提出し、それをもとにした厳格な審査もあります。
本記事では、法人口座を開設する上で必要な書類・法人口座開設時の注意事項・法人口座を開設する流れ・金融機関の審査ポイントを中心に詳しく解説します。
目次
法人口座とは
法人口座は、法人名義で開設可能な銀行口座を指します。事業を続けていく中で、資金融資を受ける可能性も考えられます。法人と個人では審査や融資額の交渉で差が生じることがあります。
そのため、個人事業主ではなく法人として口座を開設しておく方が、融資交渉で有利な要素の1つになります。
同様に、企業の資金を個人口座で取り扱うと第三者から公私混同していると思われ、企業の信用度に影響が出る可能性があり、また、税務署による脱税の疑いをかけられる可能性も考えられます。
法人口座の開設について、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
→法人口座の開設|メリット・スケジュール・必要書類・申込方法について解説
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法人口座を開設する上で必要な書類
法人口座を開設する上で必要な書類をそれぞれ解説します。
・履歴事項全部証明書(商業登記簿謄本)
・定款
・印鑑証明書
・会社の事業内容や業績が把握できる資料
履歴事項全部証明書(商業登記簿謄本)
履歴事項全部証明書(商業登記簿謄本)は、登記事項証明書、登記簿謄本などと呼ばれることがありますが、この書類の呼ばれ方が違うのは処理方法の違いであり、書類の中で証明されている内容は同じです。
この書類には社名(商号)、本店所在地、役員氏名、法人の目的などが記載されています。書類の取得方法には法務局の窓口で直接受け取る方法とオンラインで取得する方法の2つの方法があります。
商業登記簿謄本は法人口座の開設や補助金・助成金を中心に行政手続きなどの申請によく使用される書類であるため、あらかじめ複数枚まとめて取得しておくと便利です。
定款
定款とは、会社を設立するにあたって定める会社の根本的な原則やルールが明文化されたもので、会社の憲法にあたるものです。
法人口座開設の審査では、主に「事業目的の明確性」が重視されるため、さまざまな事業内容が記載されているのではなく、一貫性があり、どのような事業を行っているかが明確に記されてあることが重要です。
定款について、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
→定款とは?必要な理由・記載すべき項目・変更方法について解説
印鑑証明書
印鑑証明書は全国の各法務局窓口やオンラインを通じて取得することができます。
オンライン上で印鑑証明を取得する場合は、印鑑カード交付申請書を取得し、郵送で法務局に申請書を提出します。印鑑カードの交付後、手数料を支払って印鑑証明書を取得します。
オンライン申請では、ICカードリーダライタが必要になるので、最初にオンライン環境を整えることで、法務局に足を運ぶ手間を省くことができます。
会社の事業内容や業績が把握できる資料
事業の経営実態がわかりにくく不明瞭な場合、法人口座開設の審査が通らない可能性が高まります。
事業内容や実績を審査担当者に明確かつ具体的に伝えるために、会社パンフレット・ホームページ・事業計画書・オフィスの賃貸借契約書・事業の許認可が確認できる書類・建物登記簿抄本などを準備することが重要です。
特にホームページがない場合、審査が難しくなることがあるため、口座開設の前に用意しておくことを強く推奨します。
法人口座開設時の注意事項
法人口座開設時の注意ポイントを説明します。
・事業の詳細を記載する
・適した資本金の金額を定める
・一定の自己資金を要することもある
事業の詳細を記載する
定款に曖昧な表現や幅広い事業内容が含まれていると、口座開設時に審査が通らない可能性が高まります。
具体的に、「あらゆる営利事業」や「全ての営利事業」のような曖昧な事業内容では、法人口座の開設を断られるので業務内容は具体的に記載することがポイントです。
定款には、可能な限り具体的に事業内容を記載し、「前各項に関連する一切の事項」や「前述の各号に付随または関連する全ての項目」という追記を加えることで、事業の範囲をより明確に示すことができます。
同時に、経営実態を審査担当者に理解してもらうために、先述したような会社の事業内容や業績が把握できる資料などを提供して、実態を十分にアピールすることも必要です。
定款に記載する事業目的の書き方について、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
→定款に記載する事業目的の書き方|事業目的の書き方・定める際のポイントについて解説
適した資本金の金額を定める
以前は株式会社の設立に1000万円必要で、これは最低資本金と言われてました。2006年に会社法が改正されたことによって、1円の資本金でも会社を設立することができます。ただし、資本金が少ないと信用力が低いとみなされてしまい、金融機関で口座を開設する審査では極めて不利になります。
会社が社会的な信用を得る一般的な目安として、100万円以上の資本金が必要だとされています。初めての起業では300万円あれば、安心して口座の開設ができると考えてよいでしょう。
また、金融機関によっては口座開設に必要な最低限の資本金額が定められている場合があります。そのため、各金融機関の具体的な資本金の要件を事前に確認し、十分な準備をして口座開設手続きに臨むことが重要です。
会社の設立に必要な資本金について、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
→会社の設立に必要な資本金とは?役割・決め方・出資金と資本準備金との違いを解説
一定の自己資金を要することもある
法人口座の開設において、100万円以上の資本金があると良い旨は先ほど説明しましたが、これが自己資金であるかどうかも判断基準の1つと言われています。
資本金の中で自己資金が占める割合が多ければ、それだけ創業時のキャッシュが豊富であることや事業規模がある程度あることを示し、既存顧客との取引量が多い可能性があります。
法人口座の維持には金融機関側にも管理コストなどが発生するので、顧客や取引先との一定の取引量が求められます。改めて、法人口座の開設において資本金が100万円以上あり、その中で自己資金が占める割合がある程度の要件を満たしていることも審査に影響を与えることを認識しておきましょう。
法人口座を開設する流れ
法人口座を開設する流れを説明します。
・法人口座を開設する金融機関の選定
・審査に必要な書類の準備
・金融機関での書類審査
・面談
・法人口座の開設
法人口座を開設する金融機関の選定
法人口座を開設可能な金融機関には、メガバンク、地方銀行、信用金庫、ゆうちょ銀行、ネット銀行があります。金融機関によって、審査の基準や提供するサービスの特徴が異なるため、自社のニーズに合った金融機関を選択することが重要です。
また、メインで利用する法人口座とサブ(補助的に)利用する口座を使い分ける方法もあります。たとえば、信用力の高いメガバンクをメイン銀行にして取引先の入金用に利用し、振込手数料が安いネット銀行をサブ銀行にして出金用に利用するといった方策が考えられます。
審査に必要な書類の準備
法人口座の開設には、法人の履歴事項全部証明書や印鑑登録証明書、申込者の身分証明書などの提出が必要です。金融機関によって、必要書類が異なるので申請前に必ず公式ホームページで確認しましょう。
ネット銀行以外で法人口座を開設する場合は、法人向けインターネットバンキングも同時に開設しておくと、経理業務の効率化に繋がります。
金融機関のWebサイトで必要書類を事前に確認し、漏れなく用意しておくことが重要です。
金融機関での書類審査
提出された書類で、金融機関で審査が行われます。この審査では、書類過不足の確認だけでなく、会社の事業内容や株主情報の確認も行います。
ここで株主の確認がある主な目的として、法人口座が犯罪に利用される危険性を排除することにあります。
普通のインターネット企業が、反社会的勢力のフロント企業として資金のやり取りに使われることがごく稀にあるとも聞きます。また、犯罪で得た資金を商取引を装ってマネーロンダリングする組織も存在します。
このような違法行為に加担することが無いように、新規に法人口座が開設される際に、金融機関は厳しく書類審査を行い、簡単には審査を通過させないようにしています。
面談
書類審査だけでは実態が分からないこともあるので、メガバンクなどは法人口座の開設において提出された書類を元に面談をします。
これは、銀行の支店に出向いての直接の面談もありますが、最近ではWEBでの面談にも対応しています。この面談では、法人口座の開設の目的やこれからどのように事業を広げていくのかについて説明を求められます。
事業計画書などを用意して、詳細を説明できるように社内でリハーサルなどをするのも良いでしょう。
法人口座の開設
金融機関の審査基準を満たし通過した場合、会社名義で利用できる法人口座を開設できます。
法人口座開設の手続きは、受付から口座が実際に開設されるまでの所要日数が金融機関ごとに異なり、一般的に2週間から3週間程度のかかりますが、中には1ヶ月以上かかることもあります。
金融機関の審査ポイント
法人口座の開設における金融機関の審査基準は非公開であり、各金融機関が独自の内部規定に基づいて審査を行っています。このような基準が厳しい審査に通るためには、事前に審査対策を行うことが重要です。
簡潔にまとめると、以下の項目について注意を払う必要があります。
チェックポイント | 概要 |
資本金 | 100万円以上の資本金があり、可能な限り自己資金であること |
固定電話 | 携帯電話ではなく、固定電話の番号が存在すること |
レンタルオフィス | レンタルオフィスやバーチャルオフィスではなく、経営実態のある事務所を会社の本店所在地としていること(※レンタルオフィスの場合、適切な説明を付記・説明) |
公式ホームページ | 企業の概要や製品・サービスがわかるホームページを作成していること |
顧客との過去の取引履歴 | 会社の顧客や取引先とのやりとりに関する書類や領収書を審査時に提出すること |
事業目的の明確性 | 定款・履歴事項全部証明書に記される事業目的が、わかりやすいものであり、かつ、目的が多岐にわたらないこと |
まとめ
ここまで、法人口座を開設する上で必要な書類・法人口座開設時の注意事項・法人口座を開設する流れ・金融機関の審査ポイントを中心に解説してきました。
本記事が、これから法人口座を開設予定の起業家・個人事業主・独立予定の会社員の方のご参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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