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MBO面談とは?面談の手順・注意すべき点・失敗例について解説

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

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MBOを効果的に運用していくにあたり、MBO面談を取り入れていくことが非常に重要です。少人数から50人、100人と従業員の人数が増えることで、開発や営業、業務を行うだけではなく、従業員一人ひとりが成長していくことができるような目標管理と目標管理に関わる面談も必要になります。

スタートアップ企業やベンチャー企業の中には、人事制度が十分に整っておらず、これから組織力を強化していくために自社に合わせた仕組みを構築して、運用していく必要がある企業もあるでしょう。

本記事では、MBO面談の目的や実際の実施方法、更には面談時に注意すべき点や失敗例についてお伝えします。

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MBO面談とは

MBO面談のMBOとは、”Management By Objectives”の頭文字をとった言葉で、日本語で「目標管理制度」と訳されます。MBOによる人事評価では、目標をどの程度達成することができたかどうかが評価のポイントとなります。

そのためMBO面談では、「目標の設定」と「目標の達成度合いの評価」の役割を担い、MBOの円滑な運用とその効果を引き出すために欠かせない重要な要素となります。

MBO面談の目的

MBO面談を実施する目的はいくつかありますが、主に下記の3点を挙げることができます。
・評価結果の共有
・方向性のすり合わせ
・目標達成に向けた取り組みの促進

それぞれについて説明していきます。

評価結果の共有

MBOは人事評価に直接影響するため、部下が評価結果に納得することが重要です。そのため、上司が一方的に評価を伝えるだけでは十分ではありません。そのため、MBO面談の重要な目的の1つに、上司と部下が抱える評価の差を埋めることを挙げることができます。

MBO面談は、目標達成度合いを評価する面談であり、上司は部下の行動プロセスや目標達成の成果を客観的に評価し、評価の根拠を明確に説明します。特に、部下と上司の評価に乖離がある場合は、評価の根拠をしっかりと示すことで、部下が持つ認識との差を埋めることができます

MBO面談を通じて、部下は自分の行動に関する評価の理由を知り、どのような行動をすれば目標を達成できるかについて自分で考えるようになります。また、上司と部下における認識のギャップを埋めることで、上司の評価に対する不満を軽減することもできます

方向性のすり合わせ

MBOでは、従業員が目標を設定しますが、その目標は企業目標や部署ごとの目標をベースに設定されます。しかし、部下のやりたいことと、会社の目指す方向性とは、多少なりともズレがある場合も想定されます。そこで、MBO面談を実施することで、互いの方向性のズレが解消され、企業目標の達成に向けて同じベクトルに向かって進むことができます

しかし、目標を設定するにあたり、部下自身が目標を立てることが重要であり、上司が部下の目標設定を押し付けることは避けなければなりません。上司が目標を押し付けると、モチベーションが下がり、業務や目標達成に対して積極的に取り組むことができなくなります。そのため、部下とコミュニケーションを取り、話し合って目標を設定する必要があります

可能であれば、MBO面談とは別に1on1面談の機会を作り、部下のキャリアプランや目標などを話し合うことも効果的です。日々、部下とコミュニケーションを取る機会を設けることで、お互いの方向性のズレを解消しやすくなり、関係を改善しやすくなります。しかし、方向性を完全に一致させることや、月1ペースの1on1面談を実施することは現実的には難しい場合もあります。そのため、まずは「方向性を擦り合わせる」ことを目指し、できる範囲から始めることがおすすめです。

目標達成に向けた取り組みの促進

MBO面談では、従業員が設定した目標について詳しく話し合い、その目標に向けた具体的なアクションプランを策定することが求められます。このプランには、目標達成に向けた具体的なタスクや責任者、期限などが含まれます。

MBO面談を通じて、従業員は自分が担当する目標に向けた責任を感じ、自ら考えたアクションプランに基づいて積極的に取り組むようになります。また、上司がそのアクションプランに同意し、支援することで、従業員は自信を持って目標に向かって進むことができます

このように、MBO面談は、目標達成に向けた取り組みを促進することで、組織の業績向上につながる効果をもたらします。

目標設定面談の手順

目標設定のMBO面談では、部下(被評価者)が設定した目標を記入した目標設定シートを参照しながら、上司(評価者)と部下が次のような流れで面談を行います。
1.面談の事前準備
2.アイスブレイク
3.部下の決めた目標の共有
4.上司によるフィードバック
5.目標の調整と確定

1.面談の事前準備

面談を行う前に、部下は前回の評価を参考に自ら目標を設定し、MBOシートに記入して評価者である上司と共有すると良いでしょう。その際、目標を設定した理由や背景を明確に説明できるようにすることが望ましいです。

MBOシートについては、こちらの記事もご参照ください。
MBOシートの効果的な書き方:MBOシートに記載する項目と職種ごとの目標設定を解説!

2.アイスブレイク

面談の初めにお互いがリラックスし、コミュニケーションを円滑にすることができるよう、雑談(アイスブレイク)を挟みましょう。アイスブレイクを行うことで、上司と部下の関係性がより良いものとなり、目標達成に向けて協力しやすくなるメリットもあります

また、近年はコンプライアンスも厳しくなっているので過度なアイスブレイクは「ハラスメント」と捉えられる可能性も考えられます。日常の世間話や最近のテレビドラマの話題など身近な話などをすると良いでしょう

3.部下の決めた目標の共有

部下が設定した目標やその理由や根拠を上司に共有します。目標設定の理由が曖昧な場合は、上司から部下にヒアリングしていくことでより明らかにしていきます

4.上司によるフィードバック

上司が部下にフィードバックをする場合は、目標自体に対して行うのではなく、目標設定の方法に対してアドバイスをすることが重要です。例えば、部下の目標が企業の目標、戦略、ミッションと合致しているか、また評価のために明確な数値、行動、状態が記載されているかを確認することが大切です。

これにより、双方が納得できる目標を設定することができます。

5.目標の調整と確定

部下は、上司からのフィードバックを参考に目標を調整していきます。必要に応じて再度MBO面談を行い、双方が納得できる目標を設定するようにしましょう。また、目標を立てることができない部下に対して、上司が積極的にフォローすることも大切です。

評価面談の手順

次に評価面談では、設定した目標をどの程度達成することができたか評価するため、下記の流れで面談を行います。
1.面談の事前準備
2.アイスブレイク
3.部下の自己評価の確認と共有
4.上司の評価の確認と共有
5.評価の確定と課題の共有

1.面談の事前準備

部下はMBO面談の前に自己評価を行い、目標設定シートに記入し、上司と共有することが望ましいです。評価面談では、最初に部下が各目標に対する自己評価を話し、その後上司と共有し、上司に伝えたいことを事前に考えておくことが重要です。

2.アイスブレイク

目標設定の面談と同様に、何気ない会話からスタートし、面談というプレッシャーを感じさせないように配慮しましょう。開始直後に評価をすると部下の緊張が増し、萎縮してしまうこともあります。

3.部下の自己評価の確認と共有

上司が先に自分の考えを伝えると、部下は自分の考えを言いづらくなるため、まずは部下の自己評価を聞くことが重要です。部下が話している間、上司は注意深く傾聴するようにします。

ただし、部下が話している間、上司は適宜相槌や返答を行い、部下が話しやすい雰囲気を作り出すことが大切です。

4.上司の評価の確認と共有

上司は、部下の自己評価を聞いた後に評価を伝えるようにしましょう。その上で、まずは部下の良い点や褒めるべき点から伝え、部下が受け入れやすい雰囲気を作り出すことが重要です。

次に、マイナスな評価については、部下の自己評価と一致しているマイナス評価から伝えましょう

最後に、自己評価と異なるマイナス評価について伝える際には、客観的な事実や数値などの根拠を示し、部下が納得できるように説明することが大切です。

5.評価の確定と課題の共有

部下が納得したうえで、上司からの評価を承認し確定させます。もし部下が評価に十分納得できていない場合は、その理由を丁寧に聴き、客観的に自分が下した評価に間違いがないか再度検討します。

面談で重要なことは、部下が評価結果や面談で浮かび上がった課題について明らかにし、今後それをクリアするために何が必要か共に考え、上司から助言を受けながら話し合うことです。

また、必要に応じて改めて面談を設定して、急がず時間をかけて行うようにしましょう。

MBO面談で注意すべき点

MBO面談を行う上で、注意すべきポイントを5つ挙げますので、それぞれ確認したうえで効果的に面談を進めていきましょう。
・話しやすい雰囲気をつくる
・他者との比較をしない
・否定的なことばかり言わない
・客観的なフィードバックを行う
・従業員の言葉に傾聴する

話しやすい雰囲気をつくる

会話をスムーズに進めるため、話しやすい雰囲気をつくることが重要です。部下が緊張するのを和らげ、積極的な対話を行っていくためには、業務以外のトピックも取り上げると良いでしょう。例えば、健康や家族、職場の人間関係、または部下が抱える悩みなどを探り出して、話しやすい環境を作ることが効果的になります。

また、面談前に部下を褒めるポイントを用意しておくことも大切です。最近あった部下の優れた業績や目標達成への積極的な努力など、褒めるべき点をピックアップして、面談で積極的に認めることができます。

他者との比較をしない

社員の能力や目標は個人によって異なるため、他の社員と比較することは避けるべきです。他の人と比較することで、多くの人が上司に反感を持ったり、自信を喪失したりする可能性があります。上司は、部下一人ひとりと直接向き合い、フィードバックを提供するようにしましょう。

否定的なことばかり言わない

部下の目標達成率が低かったとしても、否定的な表現ばかりを使うのは避けましょう。否定的な表現は、部下のモチベーションを下げ、生産性に悪影響を与える可能性があります。代わりに、改善点や課題を指摘しつつ、達成できた部分については肯定的に評価することが重要です。

客観的なフィードバックを行う

部下が納得できる評価をするために、上司の主観的な推測に基づく話や感情的な話はせず、客観的事実や行動に基づいて面談を進めていきましょう

主観的なフィードバックおよび感情的なフィードバックを行うと、部下は納得感を感じずに「自分を感情の吐け口にしているのではないか」と疑念を抱いてしまうかもしれません。

部下の今後の成長などを見越して「あるべき姿」に向けて、客観的な事実と本人の行動を根拠としながら効果的なフィードバックを行いましょう

従業員の言葉に傾聴する

MBO面談において、上司は部下に話を促し、傾聴する姿勢を取ることが重要です。部下の態度や表情、仕草を注意深く観察し、部下の心情を読み取ることが肝心です。

そして、相手の話に共感し、相づちを打ちながら聞くことで、話しやすい雰囲気を作ることができます。途中で意見や反論を挟むのではなく、まずは部下の話を最後まで聞き、最後に必要なアドバイスを行うことが大切です。

MBO面談の失敗例

最後にMBO面談の失敗例を確認しておきます。
・上司からの一方的な面談
・雑談のみの面談

上司からの一方的な面談

面談において、上司があらかじめ用意した答えを無理に引き出すような一方的なやり方は、部下の能力を引き出すことができず、失敗例の一つとして挙げることができます。

また、建前だけの話を聞いて終わる面談も本来の目的から外れてしまいます。本音を引き出すことが重要であり、部下自身の言葉を引き出すアプローチを行う必要があります。特に会話や自己主張が得意ではない部下の場合は、丁寧に部下本人から引き出していくことが大切です。

部下が自発的に考え、アイデアや反省点を述べることは、本人の成長につながる重要なポイントとなります。目標管理においては、上司が部下の言葉で考えを引き出し、部下に成長の機会を提供していくことが求められます。

雑談のみの面談

面談時に、部下の緊張を和らげるために、プライベートな話や雑談をすることがありますが、その際に本来の目的を忘れてしまうと目標の設定や評価を適切に行えなくなる場合があります。目標管理の面談では、部下の成長や育成、業務プロセスの改善を促すために、目標の設定と評価を行います

プライベートな話や雑談をする場合でも、面談の目的を忘れずに、話が逸れ過ぎないように注意が必要です。面談では、部下が主役であり、部下の本音や意見を聞き出し、部下の成長につながるアドバイスをすることが重要です。

まとめ

ここでは、MBO面談の目的や実施方法など、実際に運用していくポイントについてお伝えしました。MBO面談を行う最大の目的は、部下が自主的に目標を設定し、納得感をもって目標達成に向けて行動に移していくことです

注意点を確認したうえで、効果的にMBO面談を運用し、社員一人ひとりの成長と生産性の向上に繋げていきましょう。

本記事が、ベンチャー・スタートアップ企業の経営者・人事担当者の方のご参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。