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人事制度における評価基準の作り方とは?評価基準の種類・目的・必要性・注意点について解説

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

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人生100年時代と言われる昨今、働き方やライフスタイルは多様化しています。フレックスタイムやテレワークのように働く場所や時間が変わったり、従来の年功序列と終身雇用制度から成果主義や能力主義を採用する企業が現れたり、社会は変化しています。

このように社会が変化する中、企業の人事評価も年次だけでなく従業員の成果や能力も考慮した制度設計を検討する必要性もありますが、その評価基準の作成に頭を悩ませている人事担当者も多いのではないでしょうか。

本記事では、評価基準とは何か、評価基準の種類、決め方、作成時の留意点などをご紹介します。

人事評価・評価制度については、こちらの記事もご参照ください。
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評価基準とは何か?

人事評価を行う際の評価基準とは、従業員や部署、チームが目標などを達成した度合いを評価するための基準のことを指します。人事評価は、従業員一人ひとりが自主性を持ち、会社の目標に対して前向きに取り組み、会社の成長に貢献するために重要です。

評価基準が不明確だと、従業員から不満が噴出し、仕事に対するモチベーションや熱意が低下してしまう可能性があります。

では、具体的になぜ評価基準の設定が必要なのでしょうか。次に、評価基準の目的について解説していきます。

評価基準の目的とは?

まず、人事評価制度の必要性を知ることが大切です。人事評価は、経営者だけでなく、従業員にとっても非常に重要な役割を担っています。ここでは、次の2つの観点から人事評価制度の必要性を説明します。
・企業のビジョンを明確にし、従業員と共有
・従業員のモチベーションの向上

企業のビジョンを明確にし、従業員と共有

企業が成長するためには、将来どうありたいかというビジョンが必要です。経営者のビジョンと従業員の方向性や目標が一致していれば、企業の一体感は高まります。従業員は、会社のビジョンを反映した人事評価基準を知ることで、会社が目指す方向性を知ることができます。

人事評価は、会社のビジョンと従業員の考え方を一致させる絶好の機会です。会社のビジョンに沿った人事評価が行われれば、従業員は自分に期待される役割や能力をより意識するようになります。

また、全員が会社の成功に貢献しているという実感を持つことができ、より高いモチベーションを生み出すことができます。

従業員のモチベーションの向上

人事評価は、従業員の仕事ぶりや努力に対する答えとも言えます。そのため、「自分の能力を発揮できたか」「仕事の質は低かったか」などの質問に答えるのが理想です。

人事評価制度が明確で、従業員が納得できる回答であれば、従業員は仕事へのモチベーションを高めることができます。さらに、その評価が昇進や昇給に影響するのであれば、仕事へのモチベーションはさらに高まることが期待できるでしょう。

評価基準の必要性

人事において評価基準は必要なものです。もしも、評価基準がないと上司の主観による評価であったり、従業員自身は自分が日々行う業務のどのような点が評価されているのか、逆に評価されていないのかが分からないまま働くことになります。

ここでは評価基準の必要性について紹介していきます。

従業員が不適切な評価と感じる原因

人事評価制度に対する不満の第1位に「評価基準の不明確さ」を挙げる企業が多いようです。評価基準が不明確だと、評価者の主観に左右されやすく、評価結果に公平性・公正性を感じにくいからです。

このような事態を防ぐためにも人事制度において評価基準は必要と言えるでしょう。

従業員の意外な退職理由

自分の行動や成果がどのように評価され、人事評価における処遇や人事考課における次のステップアップにどう関わってくるのかが見えないと、当然、仕事に対するモチベーションや向上心を維持することは難しくなります。

そうなると、その会社での自分の将来や昇給、キャリアアップやキャリアプランを考えることが難しくなり、結果的に早期離職につながるリスクがあります。特に、給与などの待遇を決める人事評価に納得感がないことは、離職の動機となる待遇への不満に直結するでしょう。

評価基準の種類

最初に少し触れましたが、人事における評価基準は就業年数の長さや業務における成果、目に見える成果で評価しにくい場合には職務や役割で評価するものなどがあります。

ここでは以下の評価基準の種類について解説していきます。
・年功評価
・能力評価
・職務評価
・役割評価

年功評価

年功評価とは、古くから多くの日本企業で採用されてきた評価方法である「年功序列制度」のことです。

年齢や勤続年数が主な評価基準となり、終身雇用制が敷かれてきた日本では、従業員と企業の双方にとって安心できる制度として機能してきました。年功序列の評価の場合、企業にとっては従業員数の管理や確保がしやすく、従業員にとっては将来設計がしやすく、安定した収入を得ることができるでしょう。

しかし、働き方をはじめとするライフスタイルの多様化が進む今日、この安心・安定の仕組みが問われ、年功序列を採用しない、あるいは唯一の評価基準としての比重を下げる企業が増えてきています。

また、業種によっては、創造性や完成までの時間などを考慮し、スキルやキャリアなどの評価基準を重視する企業も増えてきています

能力評価

能力評価とは、仕事をする上で重要視されることの多いスキルや知識、ノウハウなどを評価するものです。

一般的には、必要な資格やスキルアップにつながる資質を持っているかどうかを評価しますが、協調性や理解力、企画・提案力、交渉力など、一見すると可視化しにくい能力も評価対象となるケースもあります

従業員のスキルや能力を数値化する指標であるため、従業員評価だけでなく、人事異動を含めた人材活用や、従業員と職場のミスマッチを防ぐためにも有効です。また、環境の柔軟な変化が求められる職場や、集団で仕事を計画・実行することが多い職場にも適した評価方法と言えます。

職務評価

職務評価は、より現場での評価が望まれる場合に採用されることの多い手法です。異なる部門を個別に評価する場合に導入しやすく、マニュアル化しやすいという利点があります。

一方、デメリットとしては、数値化やマニュアル化が容易でない項目の評価が難しいということが挙げられます。労働者のモラル、従業員エンゲージメント、生産性などの問題は、職務評価システムで正確に測定することが難しい傾向にあります。

また、職務評価システムは、特定の基準に合わせて作られることが多く、どの基準で評価するかは組織に委ねられているため、パフォーマンスの関連する側面を見逃す可能性があります。

役割評価

職務や業務内容だけでなく、役職以外にも必要に応じて対応する役割が出てくることが多く、その役割を評価するために用いられる手法が「役割評価」です。

役割評価という軸は、職位評価とは別の軸で評価する方法として用いられ、職場の管理職として評価されるケースもありますが、仕事の特性や難易度、責任の度合いを評価するために用いられる傾向があります。

評価基準の作り方

小規模なベンチャー企業の規模の拡大で事業部が増えることで人事制度を見直したり、スタートアップ企業の人員増加に伴って人事評価制度を導入する必要性が出てきたりなど人事評価作成のための基準を考えなければならない方もいるでしょう。

ここからは評価基準を作るにはどのようにしたらいいのかについて解説していきます。

役割・業務について整理して洗い出す

まずは、職務を特定することです。ここで重要なことは、一度業務を細分化し、職務として特定することです。そして、評価項目として作成する項目を厳選し、選定することがポイントです。会社の方針や理念、業績などを反映した項目を選定しなければ、評価制度が有効に活用されない可能性があります。

また、日常の行動を評価する項目が多くなりがちなため、この選定が適切に行われないと、従業員の評価が曖昧になることも少なくありません。各部門や職種の職務を明確にすることは、適切な評価基準を確立するために重要な項目です。

役割の難易度を決める

次に、役割の難易度を決定します。最も一般的な方法は、従業員を大きく3つに分けることです。企業によって異なりますが、一般従業員の「一般等級」、主任や係長などの中間管理職の「リーダー等級」、課長や部長などの管理職で監督する立場の「管理等級」の3つに分けることが一般的です。

企業によっては、さらに管理職等級を2つに分け、それぞれのカテゴリーを定義し、評価項目を設定しています。

これに加えて、従業員に業績を向上させるインセンティブを与えるために、等級がどのように上下するかも決めておく必要があるでしょう

インセンティブについては次の記事もご参照ください。
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等級数を設定する

役割の難易度が決まったら、それぞれの等級(グレード)にどのような仕事が求められているかを記した言語・マニュアルを作成します。その際、各グレードの目標や仕事内容を作成し、マニュアル化することで、伝わりやすく、理解しやすいものにすることも有効です。

その言葉とマニュアルがあれば、スタッフ全員が自分の職種とその中で求められる仕事を明確に理解できるようになります。また、会社に対する貢献度や達成すべき目標も測りやすくなります。

等級ごとに求められる・期待される役割を設定する

評価基準を作成したら、評価内容をわかりやすく数値化する必要があります。各等級に求められる職務レベルが数値化され、評価できれば、公正な判断が可能となるでしょう

また、業績評価、能力評価、情意評価の各項目について、部署や職務ごとに分け、その配分を決める必要があります。職務によって評価のレベルは異なるので、公正な評価を行うために、これらの基準の選択と適用を促進するのは管理者次第です。

選択した評価基準によって、データはパフォーマンスの数値的なランキングから、労働者の態度に関する定性的な観察まで、さまざまなものがあります。これらの結果は、既存のシステムの中で重み付けされ、複合的なスコアを作成する必要があります。

業務プロセスや行動に関する評価基準も考える

人事評価担当者は、従業員の売上や目標の達成度など、数値化できるパフォーマンスに注目しがちです。しかし、そうした業績評価だけでは、数値化しにくい業務に従事している従業員の不満につながりかねません。

また、勤続年数が長い従業員は業務への理解が深いため業績が上がりやすいとすると、勤続年数が短い従業員は評価されにくく、従業員のキャリアによって不公平感が生じる可能性もあります。

さらに、目先の業績に結びつかなくても、将来の成功を目指す従業員も存在します。したがって、人事評価担当者は、従業員のパフォーマンスを評価する際に、忠誠心、態度、新しいスキルを開発する意欲など、より幅広い基準を考慮することが公平性を高めるために重要です

このような従業員の特性を認識することで、組織の長期的な目標に向かって努力する動機付けとなり、組織の競争優位に貢献することができます。

作成した評価基準の導入と運用に向けた環境を整える

作成した評価基準を導入するとともに運用に向けた環境を整えるようにしましょう。

評価基準は実際に人事において活用されることで活かされるので、決めてしまったら終わりではなく、実際の業務に落とし込めるところまで環境を整えることが重要です。そうすることで、会社の中での評価基準が定まっていき、少しづつ従業員の不安要素を取り除くことができるでしょう。

評価基準を作る際に注意すべき点

評価基準を曖昧に作ってしまうと、うまく機能せず、場合によっては従業員や職場の不満につながることもあります。ここでは、改めて留意すべきポイントをまとめてみました。
・客観的に評価できるように心がける
・数字を具体的にする
・結果だけでなく努力の過程も考慮する
・評価基準は一律で設ける
・評価を仕組み化する

他にも注意すべき点はありますが、上記の点を意識しながら評価基準を作れば、会社や従業員からポジティブに捉えられる評価基準を作ることができます。

また、人事評価があまりにも現実離れしていると、人事評価だけが独り歩きする事態にもなりかねません。適切な評価制度を導入し、会社、職場、従業員にとって有益な評価基準を作りましょう

まとめ

評価基準は、明確にすることで、企業だけでなく、従業員や職場環境の改善につながる重要な指標です。

また、根底にある企業文化を含め、企業のイメージや組織にも大きな影響を与えることがあります。評価基準は大企業が先行しているため、ベンチャー企業やスタートアップ企業を中心に中小企業ではまだ導入していないところも多いようです。

評価基準を新たに設定する場合も、改善の際に評価基準に取り組む場合も、企業の発展や職場環境の改善など、評価基準に求められる内容に違いはありません。新しい評価基準を導入する際に忘れてはならないのは、公正でオープン、かつ客観的に従業員を評価できることを目標にした実践を促す評価基準であることです。

本記事が、ベンチャー企業やスタートアップ企業の人事担当者・経営者の方の参考になれば幸いです。


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この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。