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【経営者向け】女性の社外取締役が重要である理由|近年の状況も解説
2022年4月のプライム市場への移行に向けて、多くの企業で移行要件を満たすための対策をはじめています。
移行対策のひとつとして、新たに改訂されたコーポレートガバナンスに対応するために、女性社外取締役の採用を検討している経営者の方もいるのではないでしょうか。
しかし、一口に女性社外取締役といっても、どのような人材を選任すべきか、迷っている方も多いはずです。
そこで、本記事では、女性社外取締役の重要性や、採用すべき人物像について解説していきます。
プライム市場への移行をスムーズに実施したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
社外取締役の重要性が増加
現在、社外取締役に求められる役割が大きくなっています。なぜ、企業にとって社外取締役の存在は重要なのでしょうか。
ここでは社外取締役の重要性について、会社法改正とコーポレートガバナンス・コードの原則のふたつの観点から見ていきましょう。
会社法の改正
2019年12月に改正法が成立し、2021年3月1日より施行された会社法では、下記の4つの条件をすべて満たす企業は、社外取締役を設置する義務があります。
1. 監査役設置会社である
会社法では監査役会の設置は任意ですが、以下の条件を満たしている企業は監査役会の設置義務があります。
2. 公開会社である
発行する株式のすべてが、株式譲渡に関して企業の承認を必要とする定款の定めがない場合は、公開会社に当てはまります。
3. 大会社である
最終事業年度の貸借対照表上の資本金が5億円以上、もしくは負債総額が200億円以上の企業は、大会社に当てはまります。
4. 有価証券報告書の提出義務がある
一般的に、東京証券取引所や大阪証券取引所に上場している企業には、有価証券報告書の提出義務があります。
会社法の対象企業
会社法はすべての企業が対象です。
そのため、上場企業、非上場企業に関係なく、上記に該当する企業は社外取締役を選任しなければなりません。
社外取締役を設置する時期
社外取締役の設置義務がある企業は、改正会社法の施行後、はじめて終了する事業年度の定時株主総会までは社外取締役の設置義務は適用されません。
これまで社外取締役を設置していなかった企業は、定時株主総会の終結までに社外取締役を選任する必要があります。
社外取締役を設置しなかった場合
もし、社外取締役の設置義務があるにもかかわらず社外取締役を選任しなかった場合、違反者に対して100万円以下の過料が科せられます。違反者となるのは、取締役だけでなくすべての役員が対象となるため、十分に注意しましょう。
コーポレートガバナンス・コードの原則
コーポレートガバナンス・コード(以下、コード)とは、2015年6月1日から東京証券取引所が上場企業に対して適用しているものです。法的拘束力はありませんが、上場企業は従わなければならないガイドラインとなっています。
これまでのコーポレートガバナンス・コード
2018年6月1日に改訂されたコードでは、2人以上の独立社外取締役を選任することが定められました。この規定は会社法よりも厳しい内容ですが、世界的に見るとまだまだ水準は低いといえます。
なぜなら諸外国のコードや上場規則では、取締役会の3分の1以上もしくは過半数の独立社外取締役の選任が求められていることが多いからです。
新たに改訂されるコーポレートガバナンス・コード
しかし2021年6月11日に改訂されたコードでは、2022年4月に予定されている市場再編でプライム市場に上場する企業は、独立社外取締役の割合が取締役会における3分の1以上に引き上げられることになりました。
これは、今後日本を代表する市場となるプライム市場へ海外マネーを取り込むために、ガバナンスの強化が求められているからです。
さらに今回の改訂では、スキルマトリックスの導入やガバナンスを向上するための人材育成といった内容も追加され、これまでよりも高度な水準となっています。
社外取締役に求められる役割
なぜ、改正された会社法やコーポレートガバナンス・コードでは、社外取締役の設置がこれほどまでに求められているのでしょうか。
経営の透明化
社内から昇進してきた取締役と異なり、社外取締役には企業との利害関係がありません。そのため、経営状況の監視役としての役割を期待できます。
たとえば、利害関係をもった役員では、不祥事を発見したときに故意に見逃してしまう恐れがあります。実際に、不祥事を起こした企業には社外取締役がいなかったケースも少なくありません。
社外取締役を設置することで、経営の透明化や不祥事の防止につなげられるでしょう。
取締役会の質の向上
事業戦略に必要なスキルをもった外部の人間が取締役になることで、取締役会全体の質が向上します。また多様な人材が経営に加わることで、既存の枠組みにとらわれない新しい企業の在り方も期待できるでしょう。
さらに、専門家の知見をもった人材を社外取締役として起用することで、適切なリスクマネジメントを行えるようになります。
近年では、不適切な広告表示による企業イメージの失墜や、アウトソーシングによる外注先とのトラブルなど、さまざまなリスクが発生しやすくなっています。
考えられるリスクを予防し、万が一問題が発生したときに迅速に対応できるように、豊富な専門知識をもつ社外取締役の起用が企業の存続を助けてくれるでしょう。
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女性の社外取締役の設置状況
社外取締役の重要性が増加する中、女性の社外取締役の設置状況はどれくらい進んでいるのでしょうか。
ここでは、日本と諸外国の女性社外取締役の設置状況や女性役員比率などを見ていきましょう。
女性の社外取締役は増えている
コーポレートガバナンスなどのコンサルティングを行っているプロネッドの調査によると、東証一部に上場している2,168社のうち927社が女性社外取締役を選任しています。(2020年7月時点)
女性社外取締役を選任する企業は、2019年からおよそ20%も増加しており、2011年と比べると15倍も増えている計算です。また927社の内、2人以上の女性社外取締役を選任している企業は171社で、2019年から40%近く増加しています。
女性社外取締役をもっとも多く選任している企業はソニー、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三菱自動車工業の3社で、4人の女性社外取締役を選任しています。
このように、女性社外取締役を選任する上場企業は急増していますが、女性役員比率の目標と比べると、まだまだ追いついていないのが現状です。
女性役員比率の目標に対して、大きく未達
2015年に日本政府は、第4次男女共同参画基本計画の中で、2020年までに上場企業の女性役員の割合を10%引き上げるという目標を閣議決定しました。しかし実際には、2020年の女性役員比率は6.2%で、目標達成にはいたっていません。
また諸外国と比べても、日本の女性役員比率は非常に低い状況です。スペンサースチュアートの調査によれば、女性役員比率が30%を超えている企業は、フランスで96.7%、ドイツは90%、イギリスは70.6%、アメリカは43%となっています。
日本で女性役員比率が30%を超えている企業は、日経225社に含まれている企業では2.7%、TOPIX100社では3%と、世界水準には遠く及ばないといえるでしょう。
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女性の社外取締役が重要になる理由
世界水準に比べて女性役員比率が低い日本ですが、女性社外取締役を求める声は年々高まってきています。なぜ企業は、女性社外取締役を求めているのでしょうか。
ここでは、女性の社外取締役が重要とされる理由を見ていきましょう。
理由①役員のスキルマトリックス多様性が経営力を底上げするため
ひとつ目の理由は、役員のもつ多様なスキルや経験によって経営力を底上げするためです。
女性社外取締役を求める企業の中には、自社のダイバーシティ化を図る目的の企業も少なくありません。
なぜなら、女子社員がキャリアアップする仕組みや制度を整えるよりも、女性社外取締役を迎え入れた方が手っ取り早く女性の役員比率を高められるからです。
しかし、自社のダイバーシティ化や女性の役員比率を高めることを目的に女性社外取締役を選任したとしても、事業の発展や継続に良い影響を与えることは少ないでしょう。
女性社外取締役を選任する狙いは、多様なスキルや経験を活かして業績を向上させたり、新事業をスタートさせたりするためです。
もちろん女性だから選任するのではなく、経営戦略に必要な専門性を見極めて、人選することが重要です。
諸外国では早くからこの観点を取り入れ、役員のスキルマトリックスを公開しています。スキルマトリックスとはそれぞれの役員が保有するスキルや専門性を一覧表にしたものです。
役員のスキルマトリックスを作成することで、役員のスキルや専門性の偏りを防ぎ、企業にとって必要な人材を確保できるようになります。
またスキルマトリックスを公開することで、女性だから選任したわけではなく、本人の能力を見込んだ人選であることをアピールできるのです。
日本では三井物産や資生堂などがスキルマトリックスを公開しており、役員の多様性をアピールしています。
理由②機関投資家の多くが女性活躍情報を重視しているため
ふたつ目の理由は、機関投資家の多くが女性活躍情報を重視しているからです。
内閣府の調査によると、7割近くの機関投資家が投資判断や業務において女性活躍情報を活用していることがわかりました。またその理由として「企業の業績に長期的には影響がある情報と考えるため」と回答しています。
出典:ESG投資における女性活躍情報の活用状況に関する調査研究(内閣府)
(https://www.gender.go.jp/policy/mieruka/company/30esg_research.html)
そのほかにも、ゴールドマンサックスは新規株式公開(IPO)の引き受けに際し、上場希望する欧米企業には最低1人の女性取締役やマイノリティーの起用を求めています。
このように、女性社外取締役の選任は事業を継続するうえで重要なものであるといえるでしょう。
しかし社外取締役の女性比率が上がったとしても、社内の女性管理職は増えるとは限りません。なぜなら先ほどもお伝えしたとおり、女性の社外取締役の起用と社内の女性管理職の登用は仕組みがまったく異なるからです。
女性社員を管理職にとして育成するためには、育児休暇や時短勤務など多様な働き方を採用し、業務態度以外の評価制度を設けるなど、さまざまな制度改革が必要になります。そのため、必然的に男性管理職が多くなってしまうのが現状です。
また女性社外取締役側も、企業に関する知識や情報が足りず、思うようにスキルを活かせないケースもあるでしょう。
企業を成長させるためには、女性社外取締役の起用と女性管理職を育成する土壌づくりをセットで考える必要があるのです。
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女性社外取締役の主な経歴
女性社外取締役として選任される人たちは、どのような経歴をもつ方が多いのでしょうか。
社外取締役に選任される方は、主に弁護士や大学教授といった人たちが多いようです。そのほかには、政府機関や金融機関出身の方も多くいます。
弁護士や大学教授が選ばれる理由は、専門知識に優れているからです。
弁護士の場合、企業イメージやブランドを守ったり、不祥事や売上減少、株価の下落などのリスクに備えたりすることができます。大学教授なら、専門知識を活かして企業が開発する商品やサービスの品質向上に向けたサポートをしてくれるでしょう。
しかし、専門性の高い人材を選任する際は、ビジネスに関する知識をもった人材を選任する必要があります。
のちほど詳しく解説しますが、ビジネスに関する視点が抜けていると、専門知識をビジネスに応用することができないからです。
ちなみに、上場企業の役員経験者が社外取締役として起用される機会は弁護士の4割以下となっており、ここでも生え抜きの女性役員が少ないことがわかります。
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女性社外取締役はこんな方を採用すべき
では、女性社外取締役を採用する際に、経歴や肩書き以外にどのような視点で人材を見極めると良いのでしょうか。
豊富な経営知識がある方
ひとつ目は、豊富な経営知識があることです。
なぜなら、万が一経営がうまくいかなくなったときに、元経営者や元役員などの経営経験のある人の意見やアドバイスが非常に参考になるからです。
株主や社員、取引先を守るための決断力や社員をまとめる統率力をもった人材は、どの企業においても重宝されるでしょう。
海外の事業やマーケティング経験が豊富な方
2つ目は、海外での事業経験やマーケティング経験が豊富な方です。
海外で事業を進めるためには、ビジネスにおける常識や法律の違いを理解し、時差や物理的な距離などを考慮する必要があります。海外で事業経験がある人を社外取締役として選任すれば、海外事業をスムーズに進められるでしょう。
マーケティング分野に強い方から知識・ノウハウを得られれば、新規顧客の獲得や受注数の増加を見込むことができ、事業拡大にプラスになることでしょう。
客観的な意見が言える方
3つ目は、客観的な意見が言える方です。
経営陣の考え方ややり方に問題がある場合、社外取締役は客観的な視点から的確なアドバイスをすることを求められます。
たとえば、新しいやり方を取り入れず、古いやり方にこだわった保守的な企業には、設備投資や新事業の立ち上げを助言します。
一時的に支出が増加したとしても、将来的に売上が増加したり、新たな従業員を採用することで社会貢献につながるなど、さまざまな方面でプラスの影響を期待できるでしょう。
また、採算が見込めないにもかかわらず事業拡大を進めている企業には、投資規模を縮小するなどのアドバイスも必要です。
このように、企業のおかれている状況を俯瞰し、企業継続のために最適なアドバイスができる人こそ、社外取締役にふさわしい人材といえるでしょう。
また、社内から昇進してきた役員には考えつかない斬新なアイディアや意見を提案できるのも社外取締役の魅力です。これまでになかった知識や情報を取り入れることで、企業としての新たな可能性を発見できる機会になるでしょう。
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まとめ
今回は、女性社外取締役の重要性や採用すべき人材について解説してきました。会社法やコーポレートガバナンス・コードの改正により、社外取締役を求める企業は今後ますます増加していきます。
それにともない、女性社外取締役の重要性も増加していく見込みです。女性社外取締役を選任することで、経営力の底上げや企業の信頼性向上が期待できるからです。
しかし、女性だからという理由で社外取締役を選任しても、思うような効果を得ることは難しいでしょう。事業継続のためにどのような人材が必要なのかを明確にし、自社にマッチした人材を採用することが重要です。
そのためには、肩書きや経歴だけを重視するのではなく、豊富な経営知識があるか、経営陣に対して客観的な意見を言えるかを見極めると良いでしょう。
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最後までお読みいただきありがとうございます。
この記事を書いた人
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。ベンチャー企業から上場企業まで、年間1000社近くの資本政策や組織運営の相談に乗る。特にストックオプションを始めとする株式報酬制度の導入支援を専門とする。