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【取締役の選任】決議方法や手続きを紹介
取締役は、株式会社の運営に欠かせない存在です。会社を設立するにあたっては、取締役の選任方法や任期のルール、必要となる手続きなどを覚えておくことが大切です。この記事では、取締役選任の基本的な知識を解説します。
目次
取締役の選任方法
会社法上、株式会社は必ず取締役を設置しなければなりません。株式会社の取締役は、取締役会設置会社の場合は3名以上、取締役会非設置会社の場合は1名以上と会社法で定められています。取締役会非設置会社であっても、複数の取締役を選任しても問題ありません。
取締役の決定は株主総会による選任が基本ではあるものの、一定の条件をもとに認められる特殊なケースもあります。どのようなケースがあるのか確認しておきましょう。
取締役は株主総会の決議で選任される
取締役は、原則として株主総会の普通決議によって選任されます。株主総会の普通決議とは、議決権の過半数にあたる株主が出席したうえで、その議決権の過半数を得ることで成立する決議のことです。
また、決議の要件は、会社定款によって変えることができます。たとえば、定足数(株主総会に出席する最小限の人数)は、議決権のある株主の1/3以上であれば自由に変更することができます。
株主総会決議で選任された取締役の就任辞退を避けるため、実務上は株主総会の開催前に就任について承諾を得ることが一般的です。
特殊な選任方法も存在する
先述したように、普通決議による議決要件は定款によって変更できます。定款の内容によっては、議決要件だけではなく、取締役の選任方法が通常と異なる場合があります。
特殊な選任方法としては、主に以下の方法があります。
累積投票
普通決議では、出席者の人数ではなく議決権をベースに取締役が選任されます。株式1株につき1議決権となるため、多数の株式を保有する株主の意思が結果を左右してしまいます。
一方、累積投票では、1議決権しかない株主でも、選任する取締役が複数であればその人数分の投票権を得られます。累積投票を定款とすれば少数の株主の議決権を保護し、積極的な経営参加を促すことができます。
種類株主総会における選任
取締役の選任について、種類株式が発行されている会社においては、種類株主総会が開かれます。
種類株主総会とは、取締役を選任する権利をもつ株式を保有する株主のみで構成される株主総会のことです。つまり、種類株主総会で取締役を選任できるのは、特定の株主のみということになります。
ただし、種類株主総会を開催するための株式は、公開会社や委員会設置会社では発行できません。また、取締役を解任するのも種類株主総会での決議が必要です。
補欠取締役
取締役の任期中、役員が職務を続けられなくなったときに備えて選任するのが補欠取締役です。取締役の急な欠員は会社の運営に混乱を生じるため、経営上のリスクを回避するための予防策となります。
補欠取締役の選任方法は、通常の取締役と同様、株主総会による決議です。人物の選定だけではなく、就任前に取り消しとなる場合の規定など、細かな取り決めを行います。また、補欠取締役の効力は、決議後に訪れる株主総会までとなるのが一般的です。
一時取締役
取締役が会社法の定められた人数を欠いた状態になっている場合、会社の利害関係者からの申し立てにより、裁判所が一時的に取締役の選任を行うことがあります。このとき選ばれる人物が「一時取締役」です。
一時取締役は、本来の取締役と全く同じ職務権限と権利義務を持っています。
基本的には申立人の希望する候補者がそのまま選任されますが、状況に応じて中立性を確保するために、裁判所から適任とされた弁護士に決まることもあります。
取締役決議後に必要な手続き
取締役の選任を終えたら、役員としての登記をします。役員登記を行うときは、必要書類の準備と作成、そして期限内の登記申請が必要です。
ここでは、取締役決議のあとに必要となる手続きについて、順番に説明します。
1.就任の承諾
株主総会の決議によって行われるのは、取締役の選任のみです。この段階では取締役を選んだだけで、当人の意志があるかどうかは確定していません。そこで必要なのが、選任された人が取締役となることを承諾する「就任の承諾」と呼ばれる手続きです。
会社は取締役に選ばれた人物が就任の意思があることを証明するため、就任承諾書を作成し、該当者に押印をもらいます。この書類は会社設立に際し、法務局に提出する設立登記申請書への添付が必要です。
ただし、定款に設立時の取締役ならびに代表取締役の記載などがある場合、就任承諾書は不要です。
2.登記申請
取締役の登記申請ではいくつかの書類を準備する必要があります。書類のフォーマットは法務局の公式サイトからダウンロードが可能です。ただし、取締役会設置会社と非設置会社とでは、必要書類が少し異なりますので、注意しましょう。
取締役会設置会社で必要な書類
- ・株主総会議事録:取締役の選任について記載
- ・株主リスト:会社実印を押印
- ・取締役会議事録:取締役の選任について記載し、代表取締役は会社実印、役員は認印を押印
- ・就任承諾書
取締役会非設置会社で必要な書類
- ・変更登記申請書:会社実印を押印
- ・株主総会議事録:取締役の選任について記載し、代表取締役は会社実印を押印
- ・株主リスト:会社実印を押印
- ・互選書:代表取締役は実印、取締役は認印を押印
- ・就任承諾書
いずれの場合も、代理人に申請を依頼する場合は委任状が必要です。書類を用意し、登録免許税1万円を納付するための収入印紙を貼れば準備完了です。
ただし、定款の内容によってはさらに必要書類が増える可能性もあるので、事前に専門家や法務局へ問い合わせておくと良いでしょう。
また、2015年の商業登記規則の改正により、取締役を変更する際の登記申請では本人確認書類の添付が義務づけられています。
3.就任登記
取締役の登記申請は、会社の住所地を管轄する法務局へ申請しなければなりません。窓口持参と郵送のいずれの方法でもかまいませんが、取締役就任から2週間以内に行うことが定められています。
もし2週間を超えてしまった場合、「登記倦怠」とみなされ、上限100万円の過料(制裁金)を支払わなければならない可能性が生じます。罰則ではありませんが、不要な出費となるため期限を守って申請するようにしてください。
取締役選任の際の注意点
取締役を選任するときには、方法や申請だけではなく、ほかにもいくつかの注意点があります。
取締役欠格事由の抵触
取締役は誰を選任しても良いわけではなく、会社法に欠格事由が設けられています。欠格事由に抵触していれば、株主総会の決議があっても、取締役として就任することはできません。以下、欠格事由を具体的に解説します。
1.法人
法人はほかの会社の株主になることはできても、取締役になることはできません。「人」であることが条件です。
2.成年被後見人及び被保佐人
民法では、青年後見人は家庭裁判所による判断で、精神上の障害などで判断能力を欠く人、成年被保佐人は精神上の障害などで判断能力が著しく不十分である人とされています。
これらに加え、外国の法令上、同様に取り扱われている人についても、取締役の職務全うが困難だとされます。
3.会社に関する法律に違反し、刑の執行等が終わってから2年を経過していない者
会社法や金融商品取引法、民事再生法、破産法、会社更生法、一般社団法人および一般財団法人に関する法律など、会社運営に関わる法律にまつわる違反を犯し、罰則を受けた人は、その執行を終えて(あるいは執行を受けなくなって)2年を経過していなくては取締役になれません。
4.上記3以外の法律に違反し、禁固以上の刑に処せられた者
上述した会社運営にまつわる法律の違反において、禁固刑以上の重い処罰を課されると欠格事由に抵触します。
ただし、禁固刑や懲役刑を受けても執行猶予が付いた場合は該当せず、また恩赦などにより執行を免除された場合には取締役への就任が可能です。
取締役の任期
株式会社の取締役は、原則として2年任期となっています。任期が到来すると取締役は退任となりますが、重任(再任)の手続きや定款などにより任期を伸ばすことは可能です(取締役会非設定会社の場合は最長10年)。
しかし近年は、取締役会設置会社において取締役の任期を1年と定める会社が増えています。これは、取締役会が剰余金の配当を決定できる条件のひとつに「取締役の任期が1年を超えないこと」が決められているためです。
原則として配当を決定するのは株主総会ですが、上記に加えて会計人の設置など、いくつかの条件を満たせば取締役会が配当を決められます。
いずれにせよ、取締役を続けるには再度、選任されなければなりません。
任期が長いと選任や申請にかかる時間やお金を省けますが、退任のタイミングの見極めが難しくなります。短いと選任にかかる負担は大きいものの、社内の活性化に役立ちます。
会社の目指す目的に合わせて、適度な任期を定めることが大切です。
まとめ
取締役の選任には、株主総会での普通決議のほかにも、会社の定款や状況に応じた方法があります。申請に必要な書類や期限をしっかり守り、良いスタートを切れるように事前の準備をしっかり行うようにしましょう。
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この記事を書いた人
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。ベンチャー企業から上場企業まで、年間1000社近くの資本政策や組織運営の相談に乗る。特にストックオプションを始めとする株式報酬制度の導入支援を専門とする。