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内部監査報告書とは?目的や書き方、流れをわかりやすく解説
執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)
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内部監査報告書によって、企業内の業務が適切に行われているかどうかを確認することが可能です。
内部監査報告書が作成されるまでには、多くの準備が関係しています。
そこで本記事では、内部監査報告書の目的、また内部監査報告書が作成されるまでの流れを解説します。
内部監査報告書を作成する際に注意すべきポイントもご紹介しますので、企業の経営陣や担当者は、ぜひ参考にしてください。
目次
内部監査報告書とは
内部監査とは、企業内の人間(担当者)が財務会計や業務全般について調査することです。
そして、その調査に基づいて制作される報告書が「内部監査報告書」です。
内部監査について直接定義した法令はありませんが、会社法の改正により、大企業では内部統制整備が義務化され、内部監査の設置が必要です。
リスクマネジメントやガバナンスプロセスの観点から企業全体を評価し、報告と助言が行われます。
企業が実施する監査には、以下の3つの監査が存在します。
・内部監査
・監査役監査
・会計監査人監査
この3つの監査を「三様監査」といいます。
内部監査報告書の目的
企業によって内部監査報告書を作成する目的は異なります。
しかし、各企業の内部監査報告書を作成する目的にはいくつかの共通点があります。
以下3つの、内部監査報告書の目的をご紹介します。
・リスクの低下,不祥事の防止
・業務効率化
・経営目標の達成のための改善策考案
リスクの低下,不祥事の防止
内部監査報告書の重要な目的の一つは、リスクの特定と低下、および不祥事の予防です。
報告書では、組織の業務プロセスに潜むリスクを明確にし、これらのリスクがどのように管理されているか、または管理されていないかを評価します。
リスクの評価と管理は、不祥事や運用上の問題を未然に防ぐために不可欠です。
例えば、財務不正や安全上の問題など、組織に重大な影響を及ぼす可能性のあるリスクを特定し、これらを適切に管理するための戦略を提案します。
業務効率化
内部監査報告書は、組織の業務効率化を促進するための重要なツールです。
報告書では、現在の業務プロセスにおける非効率や遅延の原因を特定し、これらを改善するための具体的な提案を行います。
例えば、過剰な手続きの簡素化、時間の浪費を引き起こすプロセスの改善、リソースの最適な配分などが含まれます。
効率的な業務プロセスは、コスト削減、生産性の向上だけでなく、従業員の満足度向上に直結し、組織全体のパフォーマンスを高めることにも繋がります。
経営目標の達成のための改善策考案
内部監査報告書のもう一つの重要な目的は、組織の経営目標達成を支援するための改善策を提案することです。
報告書では、組織が設定した短期および長期の目標に対して、現在の業務プロセスがどの程度寄与しているかを評価します。
そして、目標達成に向けた障害となっている要因を特定し、これを克服するための実行可能な改善策を提案します。
内部監査報告書作成までの流れ
内部監査報告書の作成は、会社によって多少の違いはあるものの、以下の6つの項目に沿って行われます。
基本的な内部監査報告書の流れは、以下の通りです。
1.情報収集
2.内部監査計画の作成
3.内部監査に向けての準備
4.内部監査の実施
5.評価
6.内部監査報告書の作成
1.情報収集
内部監査の第一段階である情報収集は、監査プロセスにおいて非常に重要です。
このフェーズでは、関連するデータや情報が広範囲にわたって収集されます。
これには、
・過去の監査報告書
・現行の運用手順書
・従業員からのフィードバック
・業績データ
・およびその他の関連する文書
が含まれることがあります。
この情報は、監査の範囲と焦点を定める上で不可欠であり、監査員が監査計画を作成する際の基礎となります。
また、関連する情報を事前に把握することで、監査チームはより効果的かつ効率的に作業を進めることができます。
監査基準を明確にするためチェックリストを作成すると良いでしょう。チェックリストは、監査対象となる業種や職種によって異なります。
2.内部監査計画の作成
情報収集の後には「内部監査計画の作成」を行います。
内部監査が実施される必要がある重要な項目や着眼点を明確にし、内部監査の対象範囲を計画します。
計画内容には、以下の点が含まれます。
・監査対象部門
・内部監査委員会
・実施日時とスケジュール
・内部監査の内容
・内部監査の結果
・内部監査員の割り当て
内部監査は公平性が確保されなければならないため、監査対象となる部門から独立した、客観的な判断ができる内部監査委員会が必要です。
効果的な監査計画は、監査の成功に不可欠であり、組織が直面する潜在的なリスクや問題に対処する上でのガイドラインとして機能します。
3.内部監査に向けての準備
内部監査に向けての準備は、この後行われる内部監査の質と効果を決定づける重要なステップです。
このフェーズでは、内部監査チームは必要なツール、資料、および情報を集め、対象部門との事前コミュニケーションを行います。
内部監査チームはまた、関連する規準やポリシー、手順書をレビューし、監査プロセス中に評価するべき重要なポイントを特定します。
さらに、内部監査チームのメンバーは、特定の監査対象領域に関する追加のトレーニングを受けることもあります。
徹底した準備は、監査プロセスの効率性と効果性を高めるために不可欠であり、監査対象部門の協力を得るための重要な基盤を築きます。
4.内部監査の実施
内部監査報告書の作成の流れにおいて、次に行う事柄は「内部監査の実施」です。
内部監査は「予備調査」と「本調査」に分けて行われることが多いです。
予備調査は本調査の約2ヶ月前に実施され、内部監査の対象となる部門に必要なデータや書類などを求める通達がなされます。
本調査は、監査計画に沿って行われます。事前に用意されたチェックシートをもとに、監査対象に対しての質問や記録のチェックを行います。
監査基準を満たしていない項目がある場合、内部監査報告書に内容をまとめます。
改善できる可能性があるならば、内部監査対象部門の責任者と対話を行い、問題解決の促進が可能です。
5.評価
内部監査の実施後、収集されたデータと情報は詳細に評価されます。
この評価プロセスでは、監査対象のコンプライアンス状況、システムの有効性、リスクマネジメントの適切性等が検討され、組織の目標達成に向けた改善策も提案されます。
評価では、特定された問題点やリスクの根本原因を分析し、組織が直面する課題に対処するための実用的な推奨事項を提供します。
評価の結果は、今後の経営と品質マネジメントシステムの改善に直接的な影響を与えるため、このフェーズは特に重要です。
6.内部監査報告書の作成
評価プロセスの完了後、内部監査報告書が作成されます。
この報告書には、監査の範囲、観察された事実、評価結果、発見された問題点、そして推奨される改善策が含まれます。
また、内部監査報告書には、不適合事項などの監査結果だけでなく、内部監査で発見することができたポジティブな点についても報告します。
報告書は、経営陣や関連するステークホルダーに提出され、組織の透明性と品質マネジメントシステムの改善に寄与します。
報告書は、組織が直面する課題に対処し、継続的な改善を図るための基礎となり、将来の監査計画の策定やリスク管理戦略の改善にも役立ちます。
内部監査報告書を作成する際に注意すべきポイント
内部監査報告書を作成する際に注意すべきポイントについてご紹介します。
ポイントは、以下の3つです。
・事実から第三者にも伝わりやすい具体的な内容にまとめる
・業務プロセスに準拠しているかを中心にまとめる
・問題点の指摘に終始せず、良かった点についてもまとめる
事実から第三者にも伝わりやすい具体的な内容にまとめる
報告書は、事実が記載されていて第三者にも伝わりやすい具体的な内容にまとめることが必要です。
実際に確認された問題点をまとめ、論理的な評価や分析を報告書に含めます。問題を指摘する場合、報告が抽象的であったり感情的であったりするケースがあります。そうなると、第三者へ伝わりにくい内容となる恐れがあるため注意が必要です。
報告は、できるだけ具体的に行うことが望ましいです。私的な感情や考え、またある特定の個人に向けた指摘事項は避けましょう。
業務プロセスに準拠しているかを中心にまとめる
内部監査報告書の作成の目的は、問題のある部門の責任者の責任を問うことではなく、企業の組織としての改善を促すことです。
組織として定められた業務プロセスに準拠して業務が行われているかどうかをまとめましょう。
もし業務プロセスに沿って行われていない場合、業務プロセスに従って指摘、改善がなされるべきです。
内部監査報告書の作成は組織内で行われるものであり、内部監査が修了した後も、従業員や役員同士の人間関係は続きます。
ある特定の個人の責任を問うような内容にまとめてしまうと、そこに遺恨を残してしまうことになりかねないため、注意が必要です。
問題点の指摘に終始せず、良かった点についてもまとめる
内部監査報告書にまとめられる内容は、問題点の指摘だけに限られているわけではありません。
良かった点についてもまとめましょう。
問題点だけの指摘ではなく、良かった点についても指摘することで、今後の業務改善につながるというメリットがあります。
まとめ
この記事では、内部監査報告書の目的、また内部監査報告書が作成されるまでの流れ、また内部監査報告書を作成する際に注意するべきポイントを解説してきました。
内部監査報告書を作成する目的は、各企業または業種によってさまざまです。
そのため、企業によっては内部監査報告書の作成が複雑になってしまう恐れがあります。
しかし、企業が定めた業務プロセスに準拠しているかどうかを確認し、それに沿って実施することにより、スムーズに内部監査報告書を作成することが可能です。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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この記事を書いた人
共同創業者&代表取締役CEO 茅原 淳一(かやはら じゅんいち)
慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。