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人事制度とは?人事制度の目的・設計・歴史・新しい人事制度について徹底解説!
執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)
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「組織は戦略に従う」という経営学者アルフレッド・チャンドラーの名言のように、組織である企業が成長するためには戦略が欠かせません。企業が行う主な経営戦略には、企業戦略・事業戦略・機能戦略がありますが、これらの戦略を実現するには「人」の管理が大前提となります。企業が「人」を適切に管理するには、企業に合った人事制度を運用していく必要があります。
そこで、本記事では人事制度そのもの、人事制度の目的・設計・歴史、そして新しい人事制度について解説していきます。
目次
人事制度とは
人事制度とは、企業や組織が雇用する人材の採用から昇進、賃金、福利厚生などの待遇に至るまで、人材に関するすべての方面に関する制度です。人事制度は、組織内での人材の有効活用や組織自体の発展を促進することを目的としています。具体的には、優秀な人材の獲得・育成・定着・生産性の向上・公正な処遇の提供などがあります。
人事制度には、等級制度・評価制度・報酬制度などの領域があります。それぞれについて説明していきます。
人事制度についてはこちらの記事もご参照ください。
⇒人事制度設計コンサルティングとは?選び方・費用相場・おすすめ企業も紹介
等級制度
等級制度は、従業員の職務内容や責任、経験などを考慮して、従業員を級別化する制度です。従業員の能力や職務内容に従って決められた等級に応じて昇給や昇進のチャンスが与えられるため、公平性や透明性が高いことが特徴です。
等級制度についてはこちらの記事もご参照ください。
⇒等級制度とは?3種類の等級制度と作成方法・導入事例について解説
評価制度
評価制度は、従業員の仕事の成果や行動を評価する制度であり、公平性や客観性が求められます。評価基準が不明確だと、正当な評価はできず従業員から不平・不満が生じるでしょう。
評価には、定性的な面と定量的な面があり、例えば成果目標を設定してそれに達成度を評価する方法があります。
評価制度についてはこちらの記事もご参照ください。
⇒評価制度とは?評価制度の目的・種類・制度の導入時に考えるべきポイントを解説
報酬制度
報酬制度は、従業員に支払われる賃金や報酬の形態や額を定める制度であり、等級制度や評価制度と同じく公正性や透明性が重要です。報酬には、固定報酬と変動報酬があります。
固定報酬は、基本給や賞与などの固定的な報酬で、変動報酬は、成果に応じたインセンティブや株式報酬などがあります。
等級制度についてはこちらの記事もご参照ください。
⇒報酬制度とは?役割・種類・制度設計の手順・導入時の注意点・事例について詳しく解説
⇒賃金制度とは?年功給・職能給・成果主義賃金制度について詳しく解説
人事制度の目的
人事制度の目的は、組織内にある人的資源を最大限に活かして、組織の業績向上に貢献することにあります。組織は人事制度を通して、人材を有効活用して組織の目標を達成するための人材管理を実現します。人事制度の目的を具体的に表すと以下のような要素があります。
・正当な報酬の提供
・従業員の選抜と配置
・継続的な能力開発の提供
・評価とフィードバック
・コミュニケーションの促進
・組織文化の形成
・法令の遵守
それぞれについて説明していきます。
正当な報酬の提供
正当な評価と報酬を行うことで、従業員のモチベーションを維持し、離職率を低くすることができます。
正当な報酬は、従業員が会社に対して提供する労働や成果に対して、適切な報酬を提供することを意味します。これは、従業員が自分の役割に応じて正当な報酬を受け取ることができるようにすることで、従業員のモチベーションや組織コミットメントを高めることができます。
正当な報酬は、従業員が持つスキル、知識、経験、貢献度などに基づいて設定されます。報酬には基本給、ボーナス、福利厚生などが含まれます。これらの報酬を適切に設定することで、従業員が企業に貢献する意欲が高まり、生産性が向上することが期待されます。
また、正当な報酬の提供は、会社が適切な人材を確保するためにも重要です。適切な報酬を提供することで、優秀な人材を採用し、長期的な雇用関係を構築することができます。さらに、正当な報酬の提供は、企業の社会的責任にも関連しています。従業員が適切な報酬を受け取ることで、社会的に公正な雇用環境を提供することができます。
従業員の選抜と配置
採用時に適切な人材を選抜し、役割に応じた配置を行うことで、従業員の能力を最大限に引き出し、業務の効率化を図ることができます。従業員の選抜と配置は、企業にとって適切な人材を採用し、適切な職務に配属することで、労働生産性を高め、競争力を維持・向上させることを目的としています。
選抜は、企業が求める人材像や適性に基づいて、採用・昇進・異動の際に、適格な人材を選び出すことです。また、配置は、採用・昇進・異動などにおいて、適切な職務に人材を配置することです。人事制度は、選抜と配置の適正化に努めることで、従業員にとっても適材適所で働くことができ、企業にとっても人材の有効活用が実現されます。
このように、人事制度によって選抜と配置が適正化されることで、従業員のモチベーションや生産性が向上し、企業の競争力が向上するという相乗効果が期待されます。
継続的な能力開発の提供
継続的な能力開発プログラムを提供することで、従業員のスキルアップ・キャリアアップを促し、業務の質を向上させることができます。
人事制度によって、従業員の能力開発を支援するための様々な制度が提供されます。例えば、社内研修や外部研修の支援、職務経験の多様化やキャリアパスの設計、専門性の向上に必要な資格取得の支援などがあります。
このように人事制度によって、従業員に対して継続的に能力開発の機会を提供することで、従業員はスキルアップし、より高度な業務に取り組むことができるようになります。また、企業にとっても、能力の高い従業員を育成することで、より高い生産性を実現することができます。また、従業員は、能力開発の機会を与えられることで、自己実現ややりがいを感じることができ、モチベーションや企業へのコミットメントも向上するというメリットがあります。
評価とフィードバック
業務の成果を評価し、フィードバックを行うことで、従業員が業務に対する意欲を持ち、業績向上につながります。また、従業員の能力開発や組織全体の生産性向上につながることを目的としています。
従業員の評価は、業績評価や能力評価、態度評価などの方法によって行われます。評価の基準や方法は、組織のビジョン、ミッション、目標、価値観に合わせて設計される必要があります。また、従業員には評価結果をフィードバックすることが重要であり、強みや改善点を示し、従業員の能力開発やモチベーション向上につながるようにすることが望まれます。
このように、人事制度における評価とフィードバックの目的は、従業員の能力開発と組織全体の生産性向上に貢献することにあります。また、従業員に対して正当な評価を行い、その結果に基づいて報酬やキャリアパスの提供を行うことで、モチベーションやエンゲージメントの向上にもつながります。
人事評価制度についてはこちらの記事もご参照ください。
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コミュニケーションの促進
従業員同士や上司とのコミュニケーションを促進することで、チームワークや職場環境の改善を図ることができます。人事制度は、従業員と企業の間のコミュニケーションを円滑にし、相手の意見や要望を理解することができるようにするために機能しています。
例えば、従業員と管理職との間には、業務上の問題や職場環境に対する意見の相違が生じることがあります。このような場合、人事制度に基づいた正式な面談やフィードバックを通じて、問題や意見を話し合うことができます。また、定期的なアンケート調査や意見箱の設置なども、従業員からの意見を収集するために有効な手段です。
これらの取り組みによって、従業員と企業との間に信頼関係を築き、コミュニケーションの促進が図られます。結果として、従業員のモチベーションおよび生産性の向上や企業の業績の向上につながることが期待されます。
組織文化の形成
人事制度が組織文化の形成に重要な役割を果たします。組織の文化を形成することで、従業員が組織に帰属感を持ち、組織の方針や目的に共感し、業務の目標達成に貢献することができます。
組織文化とは、組織のメンバーが共有する価値観や信念、行動規範などの集合体であり、組織の中での行動や判断に大きな影響を与えます。人事制度が組織文化の形成に影響を与える理由は、以下のような点が考えられます。
まず、人事制度は組織の行動基準を示すものとして、組織文化の一部となります。例えば、業績評価制度が「成果主義」を重視している場合、組織文化にも「成果主義」が浸透することがあります。
また、人事制度が適切に機能している場合、組織メンバーが制度に対して信頼を持ち、制度に基づいて行動するようになります。その結果、組織内での行動の一貫性が高まり、組織文化の形成につながるとされています。
さらに、人事制度が多様性を尊重するように設計されている場合、組織の多様性を認める組織文化を形成することができます。例えば、採用時には多様な人材を積極的に採用する、異なるバックグラウンドを持つメンバーが協力し合う風土を醸成するなどの取り組みが挙げられます。
以上のように、人事制度は組織文化の形成に大きな影響を与えることがあります。組織文化を形成する上で、人事制度がどのような役割を果たすかを十分に考慮し、適切に設計することが重要です。
法令の遵守
法令に適合した人事制度を設計し、適切な労働環境を整備することで、労働法規を遵守することができます。
企業には、労働関係法令や人権に関する法令、健康・安全に関する法令など、多くの法令が適用されます。人事制度は、これらの法令に基づいて運用される必要があります。
例えば、労働基準法では、労働時間の制限や賃金の支払いなど、従業員の最低限の権利が定められています。また、企業には労働安全衛生法や消費者安全法など、多くの法令があります。人事制度は、これらの法令に基づいて、従業員の権利を守り、社員の健康や安全を守り、製品やサービスの品質を維持することが必要です。
人事制度が法令を遵守することで、企業は社会的責任を果たし、信頼を得ることができます。一方で、法令違反があれば、企業イメージの悪化や、法的な責任を負うことになります。そのため、企業は法令遵守の観点からも、人事制度を適切に設計し、運用しなければなりません。
就業規則については次の記事もご参照ください。
⇒就業規則の作成について|就業規則の作成手順と記載事項・作成時の注意点も解説
人事制度の設計
人事制度の設計には、人事制度の目的を明確にすることや組織の戦略や文化に合わせた設計を行うことが重要です。また、設計にあたっては、従業員の参加や意見を取り入れること、改善のためのフィードバックの機会を設けることが大切です。人事制度の設計の際には、法律や規制も遵守する必要があります。
人事制度の設計については、こちらの記事もご参照ください。
⇒人事制度と設計時の注意点|人事制度の種類と構築の流れについて解説
人事制度の歴史
人事制度の歴史は非常に古く、紀元前の中国やエジプト、ローマなどの古代文明でも人材の採用や配置についてのルールが存在していました。現代の人事制度が始まったのは、産業革命後の19世紀の欧米諸国です。
日本においても、近代的な人事制度が整備されたのは、戦前の大正・昭和時代に入ってからです。大正時代には官僚制度が整備され、昭和初期には企業内の人事制度も整備され始めました。
戦後の日本では、アメリカの占領下に置かれ、民主主義や市場経済の導入が進められました。これに伴い、人事制度にも多くの変革が起こりました。1950年代には、賃金の個人成績評価に基づく賃金形態への移行が進み、1960年代には、企業内教育制度の整備や昇進の基準化が進められました。
1970年代には、高度経済成長期に伴う人材不足から、採用・育成・登用の制度が整備され、バブル経済で歴史的な好景気だった1980年代には、ボーナスや退職金制度などの報酬制度が整備されました。
1990年代には、グローバル化やIT革命の進展に伴い、海外人材の採用や多様な働き方の受け入れが進められました。2000年代以降は、人材の多様性やワークライフバランスの重視、働き方改革などが注目されています。
新しい人事制度
近年、社会情勢、組織の変化や労働市場の変化に対応するために、従来の人事制度に代わる新しい人事制度が検討されています。新しい人事制度が検討・導入・運用されている背景として、次のような考え方が影響しています。
・フレックスタイム制度やテレワーク制度の導入
・ワーク・ライフ・バランスの重視
・働き方改革の推進
・キャリアアップ支援の充実
・多様性の尊重
これらの考え方の背景にある社会の変化に対応するために、企業は自らの人事制度を見直し、改善を進めていくことが求められています。ただし、人事制度を変更する際には、社員や関係者とのコミュニケーションを密に行い、説明を十分にすることが大切です。
また、最新の人事制度として次のようなものがあります。
・ノーレイティング
・360度評価
・バリュー評価
・ピアボーナス
・リアルタイムフィードバック
・OKR
・コンピテンシー評価
・チェックイン(Check-in)
・パフォーマンス・デベロップメント
新しい人事制度については次の記事もご参照ください。
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⇒ノーレイティングとは?メリット・デメリット・評価制度を成功させるポイントを解説
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
本記事では、人事制度全体について検討しているベンチャー企業・スタートアップ企業の経営者やマネージャーに向けて人事制度の目的・設計・歴史、新しい人事制度について解説してきました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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この記事を書いた人
共同創業者&代表取締役CEO 茅原 淳一(かやはら じゅんいち)
慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。