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経理職と営業職のすれ違いが起こる理由|両者の間で良い関係を構築するポイントを解説

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

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「経理と営業の中が悪い」という話をお聞きになったことがあるでしょう。あるいは今現在実際に体験しておられる方もいらっしゃるかもしれません。

この記事では、営業と経理の間でトラブルが発生しがちな理由と、営業と経理が良い関係を築くために役立つポイントについて解説します。


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経理と営業ですれ違いが起こる理由

営業職は、会社に利益を生み出す大切な仕事です。一方で経理職は、会社を適正に運営するために不可欠な業務で、法的・社会的な責任も担っています。それぞれ求められる役割が違うにもかかわらず普段の業務で接することも多いため、何かとすれ違いも起こりがちです。主に5つの例を解説します。
・経費精算が間に合わない
・請求書発行はお互いに大変
・モチベーションを感じるポイントが違う
・認識のズレやミスがお互いの業務に影響する
・社内の規則を守らない申請がある

経費精算が間に合わない

経費の精算は、経理にとっても営業にとってもほぼ毎日発生する日次業務の1つですが、その多さゆえにお互いにすれ違いを生み出します。営業側からすると、数が多くなりがちで額もそれほど大きくないのに、細かいルールが多く面倒な手続きに感じられます。営業という会社の利益を左右する重要なミッションに集中したいため、経理には柔軟に対応して欲しいと思うものです。

営業にとって、経費は売上を上げるために不可欠で、必要な経費を削減してしまうと会社の利益も損ないかねません。そのような細かな事情を1つ1つ説明する時間がないため、経理にはとりあえず承認してほしいと考えがちです。

一方、経理側からすると書類・記入事項の不備や期限の遅れはトラブルを生み、申請できない経費があることも理解しておいて欲しいと思っています。多くの企業では、経理職の人員は限られており、何事にも期限が設定されているため厳しくならざるを得ず、嫌われ役になるのが分かっていても法律や会社のルールを破る訳にはいきません。そこで、経費を精算するタイミングや書類の不備に関して対立が生じます。

請求書発行はお互いに大変

請求書を発行する業務も営業と経理の間で対立を生みがちです。成立した取り引きを完結させるために欠かせないプロセスですが、営業と経理のどちらが担当しても業務に負荷がかかります。

営業が請求書を発行する場合、迅速で素早い発行が可能になり入力内容にもミスが発生しづらいためメリットが多いと言えます。取引先との関係を築いているのも営業担当者であり、取引先のルールや好みをよく理解しています。

しかし、営業そのものにエネルギーをできるだけ多く振り分けたい担当者にとって、業務の負荷が増えてしまうのは避けたいものです。会社の利益のために今まで通り営業に集中すれば、請求書発行などの雑務はすべて残業対応しなければならないかもしれません。加えて、営業担当者と取引先だけで業務が完結することになり、第3者のチェックを受けないことで不要な疑いを招く事態も生じ得ます

一方で経理が請求書発行を担当する場合、金額や入金予定を事前に把握できるため入金管理が効率的になり、記帳や領収書の発行といった後処理もスムーズになります。経理担当者が第三者のチェックとして機能することもメリットの1つです。

しかし、バックオフィス的に働く経理担当者が常に請求書に記載するには、正確な情報を営業担当者から取得しなければならなくなります。営業部と連携して働く一手間が必要が生じる他、月末や月初めの経理にとって忙しい時期に請求書発行業務が集中することになり、繁忙期の負荷を高めてしまいます。

モチベーションを感じるポイントが違う

営業職と経理職では当然ながら仕事内容が大きく違うため、モチベーションを感じるポイントも大きく異なります。営業担当者は、営業成績を上げれば自由度や給与が高くなります。売上を上げれば上げるほど個人の成績としてインセンティブやボーナスが追加されるため、これが働く際の大きなモチベーションになります

良い営業成績を上げることは良い立場を得ることにもつながります。営業の世界では、結果さえ出していれば他のことは比較的自由に行えることが多く、商談や契約を手早くまとめてしまえば自由と仕事のやり方に裁量を与えられやすい傾向があります。その分、顧客との細やかなやり取りや達成できていないノルマはストレスとなるため、ちょっとした書類の作り直しや取引先への確認作業などは極力避けたいと思うものです。

しかし経理の場合、正確な書類を可能な限り素早く作成し、事務的な作業を次々と終わらせていくことが評価につながります。人によっては、この仕事で評価されることがモチベーションとなります。書類に不備があればその日のうちに確認・修正を行い、経費精算や記帳も早く終わらせてその他の作業や決算に備えた準備ができれば理想的です。加えて、基本的に結果や営業成績といった要素と無縁であるため、頑張れば頑張るほど年収が上がるということはありません

そのため、いかにミスを少なく効率的に業務を遂行するかというところに重きを置くことになり、営業担当者との価値観の違いが生じます。

認識のズレやミスがお互いの業務に影響する

経費精算や契約書発行の際に、営業担当者が思っていることと経理担当者が思っていることにズレがあり、そのすれ違いがお互いのストレスとなる場合があります

例えば、交通費の精算はその代表的な例でしょう。営業担当者からすれば、毎日必ず精算すればお互いに楽だと分かっているとはいえ、取引先からの急な呼び出しや顧客対応などもあるため、営業活動を優先していると、つい締め切り日にまとめて作成してしまいがちです。そのため、期限間際もしくは間に合わないことになったり、そもそも細かい情報を思い出せないこともあるでしょう。経費精算に関する細かい社内ルールをすべて覚えていないというケースや、上司が営業や出張で捕まらないため承認印を押せないというケースもあります。

しかし、それらは経理担当者にしてみれば、繰り返し伝えているのに間に合わないタイミングで精算したり、情報に不備が多く書類を作成できなかったりなどの余計な手間を増やすものとなります。

社内の規則を守らない申請がある

上記で触れた点でもありますが、一般的に経費精算には多くの社内ルールがあります。無駄な経費を削減し、反対に必要な経費は効率よく支払って利益を最大化するためです。加えて、財務諸表作成時には正確性が求められます。また、財務諸表は経営陣や投資家の理解と信頼を得るためのものでもあります。そのような事情をよく理解しているため、経理担当者は書類の期限や不備に関して厳しくならざるを得ません。

しかし、営業こそが会社の利益に繋がっていると考える営業担当者にとっては、期限にうるさく面倒な手間をいつも要求してくるように感じられることもあります。例えば、移動費や控除に関して差し戻しや承認不可となると、営業担当者にとっては非常に面倒に感じられるでしょう。ほんの数百円の差で差し戻しとなったり、実際に使用した区間の経費であるにも関わらず拒否されたように感じるからです。

しかし経理担当者からすると、以前から運用されている申請ルールを何度も指摘しなければならず、営業担当者が非協力的な態度を取っているように感じたり、言いたくないことを気を遣いながら言わざるを得なかったりと、ストレスを感じながら対応することもあります。

社内規則に含まれる「就業規則」については、こちらの記事もご参照ください。
就業規則の作成について|就業規則の作成手順と記載事項・作成時の注意点も解説

経理と営業で良い関係を構築する

何かとすれ違いの生じやすい経理と営業の関係ですが、以下の5つのポイントを意識することで良い関係構築や関係改善を実現できるでしょう。簡単ではありませんが、時間がかかっても良い関係を構築するのは不可能ではありません。
・お互いの仕事の本質を理解する
・根拠を伝える
・IT化の導入で手間を減らす
・ルールやシステム構築で一貫性を出す
・ヒューマンエラーを想定しておく

お互いの仕事の本質を理解する

ルールや期限以上に、お互いの仕事の本質や中身を理解することは不可欠です。もちろん、コミュニケーションの不足がトラブルの原因ということは至る所で言われています。そして、それを実行するのは決して簡単でないのも事実です。しかし、相手のワークフローやエネルギーを注ぐポイントを理解することは、部門間のスムーズなやり取りには絶対に必要です。

例えば、営業で結果を出せる人は大きい契約や大切な顧客を抱えており、常に忙しくしています。顧客対応や出張も自ずと多くなり、社内にいる時間が短いために経費精算の時間もなかなか取れません。加えて、外での活動量が多ければ多いほど領収書も多くなり、時間の無さと合わさって経理への申請も期限ギリギリになってしまいます。

さらに、売上に貢献する経費は削れません。コスト削減のために削るべき経費もありますが、すべての経費を減らしてしまうと売上が減少しかねません。そのため、優秀な営業担当者ほど「どこでいくらの金額をどのように使うか」をよく考えて営業先を回っています。その努力を理解したフォローを一言だけでも入れながら経費精算を頼めば、単に提出を催促するよりもスムーズなコミュニケーションが期待できます。

経理の業務も決して楽ではありません。エラーが許されず、数値を1つ間違えるだけで大問題に発展しかねない重大な責任を担っています。そのプレッシャーが理解されずに余計な仕事を増やされれば、親切に対応するのは難しく感じるものです。人間関係をマネジメントできる営業担当者ほど、修正ありきで柔軟に対応する態度で問題を未然に解決しています。つまり、経理担当者から修正が入ってもすぐに対応し、今後同じケースが発生した場合の対策方法も共有します。

営業担当者も経理担当者も人間です。自分の苦労が理解されれば心を開こうと思うものです。ちょっとした理解ある言葉で心を掴む言動を重ねれば、お互いへの理解が深まり、良い関係構築への足並みを合わせられるでしょう。

根拠を伝える

なぜその作業が必要か、なぜ申請が通らないのかを十分に説明することも経理と営業の間で良い関係を構築するのに非常に重要なステップです。経費の面倒な申請処理も通らない申請も、会社にルールが設置されているのには理由があります。

無駄な経費を絞らなければ、やがては経営を圧迫し会社存続の危機に関わりかねないからです。しかし、一律に経費を絞ると営業に支障が出るため、詳細なルールを設けることで必要なものとそうでないものを管理しています。しかし、経理業務に対して表面的な理解しかなければそのようなルールが手間に感じられるでしょう。

例えば、「タクシーは会食先の最寄り駅までのみ」「手土産代は会社名・名前・人数まで記載」となっていると、営業側からすると「融通が効かない」と思うのも不思議ではありません。社内ルールが細かいと覚えるのは大変ですが、会社一丸となって事業を続けていくためには必要なことです。この理解を共有することで、面倒な一手間も必要な手続きであるという認識を持ってもらえるでしょう。

IT化の導入で手間を減らす

IT化の導入によって、営業担当者にとっても経理担当者にとってもかなりの手間を減らすことが可能です。経費精算のクラウドサービスが多数提供されているため、それらを導入することによって手作業での手続きや精算のためだけに帰社する必要がなくなります

例えば交通費精算をする場面を考えてみましょう。交通系ICカードを連携させることで、利用履歴を自動的に読み込み精算してくれます。インターネット環境さえあればどこでも申請や承認することが可能で、忙しい上司からの承認も端末で簡単に依頼できます。上司も営業担当者として動いている中で、このようなシステムを利用すると承認フローを大幅に簡略化できるでしょう。

事前に登録した定期区間を参照し、自動的に控除してくれるシステムもあります。自分がどの日時にどこへ訪問して交通費がいくらかかったのかを後から思い出す必要もなく、営業担当者にとって非常に便利です。

経理担当者にとっても作業の大幅な簡略化が期待できます。ICカードの利用履歴を使って区間や金額が自動登録されるため、運賃の再調査・再計算の必要がなくなります。自動で仕分けされたデータを会計ソフトに合わせた形式で出力するサービスもあり、データを転送するだけで作業が完結します。交通費のルートが適切かどうか、あるいは運賃が高いか安いかを自動的に判断する機能もあり、不適切であれば入力時に警告することで余計なチェックや差し戻し作業を避けられます。

経理業務のDX化については、こちらの記事もご参照ください。
経理業務のDX化とは?経理業務にDX化が必要な理由・メリット・ツール・DX推進のポイントについて解説

ルールやシステム構築で一貫性を出す

運用ルールを作成したり、上記のような一貫したシステムを導入することで経理と営業のお互いのすれ違いや面倒な手間を省けます。見積もりや受注した契約の例で考えてみると、ワークフローが一貫していないことで営業と経理の間で情報共有がうまくいかない場合があります。

例えば、見積もりや受注の詳細は担当者である営業が握っていますが、経理に共有されるのが遅くなることで請求漏れや突発的な対応が発生してしまいます。営業担当者からすると、契約を取ってくることが営業の仕事であるため、その後の業務にまで意識が回らないこともあるかもしれません。そこで一貫性のあるワークフローを共有することで、契約受注後の業務への理解を深め、個人の判断による情報漏れを防ぐ効果が期待できます。ルールがあまりに多いと運用していくのは難しくなりますが、各部署の責任者の協力を仰ぎながらルールを適用していくと無用なトラブルの予防になるでしょう。

ルールを設定するだけでは、それを守るかどうかに対する社員の意識次第になってしまいます。そこで、1つのシステムを共有し、営業と経理が随時確認できるようなツールを導入します。例えば、営業が登録した受注内容を経理もすぐに確認できるようにしたり、請求処理に回しても良いものを分かりやすく一覧で見たりできるようなシステムが理想的です。情報共有を人手によって行う必要がなく、システムによって共有することで手間やミスを減らせます

ヒューマンエラーを想定しておく

営業も経理も人間である以上、ミスをゼロにすることができません。現実的に、ヒューマンエラーをお互いにカバーしなければ良い関係を築くことはできないでしょう。それぞれ評価の違った職種の間で仕事の成果を自慢しあうような関係になると、何かトラブルが発生した時に簡単に険悪な雰囲気になってしまいます。

お互いの業務内容を勉強できれば理想的ですが、日々の業務をこなしながらそのような時間を確保することは難しいものです。そこで、少しずつ勉強するつもりで備忘録のようなメモを作成し、同じミスや指摘の繰り返しを防ぐようにしている人もいます。

営業担当者であれば、今回の修正点を把握するために一度マニュアル確認や経理担当者とのコミュニケーションを図ったり、その内容を記載したメモをつけて領収書をデスクに差し戻してもらうよう頼んだりするなどの工夫が見られます。経理担当者であれば、営業担当者の忙しさを把握してフォローしたり、忘れがちなミスに対するリマインドを優しく入れることで、スムーズなやり取りに貢献できるでしょう。

営業から経理に転職するメリットは多い

営業はインセンティブや自由度が魅力的ですが、経理にも働く上で様々なメリットがあります。数字を扱うのが好きな方であれば、以下のような理由から経理への転職を考えてみるのも良いかもしれません。
・数字を見て経営への理解が深まる
・資格を取得すればアピールになる
・営業時代とは違うになかった分野での自由度が上がる

数字を見て経営への理解が深まる

経理というのは、会社内の金銭の動きを把握できる立場にあります。会計知識やエクセルスキルが高まることで、同じ会社内の業務でも数字面から組織・事業について理解を深められます。

自社の財務を圧迫している経費や投資効率の良い事業の把握など経理部門だからアクセスできる情報から自社の状況を理解することができます。

営業ではどうしても成績に目が行きがちですが、経理を担当することで経営者目線で利益や経費を捉えられるようになるでしょう。

資格を取得すればアピールになる

経理の世界には、知名度と実用性を誇る簿記という資格があります。簿記を取得し実務経験を積むことで、良い自己アピールや周囲の評価獲得につながります。営業の世界では、売上や契約数が評価されます。売上の大きい取引先の担当者や、効率よく契約を取ってくる敏腕営業マンにはどうしても敵わないかもしれません。

しかし、簿記の世界で絶対的な存在となるのはあくまで法律です。簿記の知識や担当できる業務内容、さらにエクセルや会計ソフトのスキルを向上させることで、年功序列を覆すことも可能です。最初のうちは分からないことだらけで苦労するのは避けられませんが、知識と経験が身につくにつれて自分のペースで仕事ができるようになります。自分でコントロールできる範囲が広くなり、成績やノルマに縛られない働き方ができます。

営業時代とは違う自由度が上がる

営業には営業の自由さがあります。結果さえ出せば後は自由に行動できるのが営業のメリットです。しかし、それは逆に言えば、結果を出さなければ肩身の狭い思いをする環境であるとも言えます。取引先とのやり取りや新規開拓は常に人との関わりであり、気を使う場面も多々あります。

しかし経理の場合、顧客への急な対応や呼び出しが発生することはほとんどありません。相手主体ではなく自分主体で仕事を進められるため、対人関係においての自由度ははるかに高くなります。もちろん、この記事で取り上げてきたような社内の人間関係に振り回されることはあるものの、経理と営業の間で常に戦争が勃発しているような会社はここまで多くはありません。大抵の人は経理が頼んだ通りルール通りに対応してくれるため、車内においても人間関係で悩むということは比較的少ないのが特徴です

加えて、月末・月初めや年末年始のような決算やその他手続きが増える時期は忙しくなりますが、それらの繁忙期に備えて事前に準備を進められるのも経理の業務の良いところです。

まとめ

営業と経理は、大きく異なる立場ゆえにトラブルを抱えがちですが、お互いに工夫する余地はかなりの程度残されています。それぞれの業務内容への理解を深め、対応力を高めることで無用な摩擦を避けていきたいものです。

この記事が、営業もしくは経理いずれの立場の方にとってもスムーズな業務実現の参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。