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経理の仕事は将来なくなる?技術の進化でなくなる経理業務と技術に置き換えられない人材について解説
執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)
CFOになるには?キャリアパスも解説
経理/会計/財務/経営企画などの管理部門としてのキャリア
「AIの発展によって無くなる仕事」と言われる仕事として、上位に挙げられることが多いのが経理の仕事です。経理の仕事には規則性があり、正確性が求められる仕事であるため、AIによって置き変わりやすいと考えられています。
しかしどれだけAIが発展しても、すぐに全ての経理業務がAIなどによってなくなってしまうわけではありません。仕事の中にはどれだけAIやDXなどが発展しても残るものもあります。
そのため、これからの経理人材はAIが発展しても残れるようなスキルや経験を身につけていくことが重要です。
本記事では、これから無くなる可能性の高い経理の仕事と、AIが発展しても無くなる可能性が低い経理の仕事について詳しく解説していきます。
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目次
経理の仕事がなくなると言われる理由
経理の仕事が無くなると言われる理由は主に次の3点です。
・AIの発展や自動化ソフトウェアの向上
・DX推進によるペーパーレス化
・電子帳簿保存法の改正
基本的には自動化やペーパーレス化の発展によって、これまでの経理の仕事が効率化していることが「経理業務が無くなる」と言われる理由です。
経理の仕事が無くなると言われる3つの理由について詳しく見ていきます。
AIの発展や自動化ソフトウェアの向上
経理の仕事のうち入出金の記録や帳簿付けは正確性が求められる仕事で、これらの仕事にはパターンがあるので、AIが最も得意とする仕事の1つです。
また、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)というシステムも発展しており、RPAを活用すれば請求書の発行や送付なども自動化できるようになります。
このようにAIやRPAの発達によって、これまで定型化されてきた仕事の多くが効率化できるので、これらの作業の工数は人の手がかからなくなります。
DX推進によるペーパーレス化
政府のDX政策の一環としてペーパーレス化が推進されており、政府も企業のペーパーレス化を強く後押ししています。
領収書も帳簿も電子化されていくので、紙の書類からデータを入力する手間が省け、コマンドを入力するだけでAIやRPAが自動的に入力してくれるようになります。
また、人の手でファイリングする手間や、必要な資料を管理したり探したりする手間がかからなくなるので、経理業務は圧倒的に効率化して、人の手がかからないようになるでしょう。
電子帳簿保存法の改正
電子帳簿保存法の改正によって、2024年以降、メールやクラウドなどで注文書などの書類をやり取りした取引のデータは保存しなければならないようになります。
また、国税関連帳簿や決算関連書類は電子データでの保存義務が生じるので、基本的に経理で使用するあらゆる書類はデータ化されるようになります。
データが電子化されれば、仕事の多くがAIやRPAが代用できるようになるので、経理業務が無くなってしまうのではないかと言われる大きな要因です。
AIやRPAの進歩でなくなる可能性がある経理業務
AIやRPAの進歩によって次のような経理業務は、人間が仕事としてできることが無くなってしまう、と危惧されています。
・伝票の仕訳や入力
・経費精算業務の一部
・請求書の発行や発送業務
・給与計算
・現金出納管理
これらの仕事は比較的規則性があり、単純な業務なのでAIやRPAの進歩によって無くなってしまう可能性が高いのではないかと言われています。
上記5つの経理業務が、どのようにAIやRPAに置き換わっていくのか、詳しく見ていきましょう。
伝票の仕訳や入力
伝票の仕訳や入力はAIが最も得意とする分野です。伝票の仕訳は「適切な勘定科目は何か」ということさえ理解すれば、人間よりAIの方が早く正確に行うことができます。
伝票の数字の内容をAIが読み取り、適切に仕訳を行い、帳簿に正確に入力すると言った作業は、今後はAIが代用する可能性が高くなるでしょう。
経費精算業務の一部
経費精算業務の一部はAIやRPAに置き換わる可能性が高いでしょう。たとえば、交通費の精算などは社員の交通系ICカードと連携させることで、交通費対象区間に該当する部分だけの交通費を自動的に計算して、決まった日に社員に振り込むということは非常に簡単です。
クレジットカードによる経費支払いも同じように自動化できる可能性があります。経費精算業務の一部に新しい技術やシステムを利用した自動計算、自動振込が導入されることで、より効率的な業務が可能となります。
請求書の発行や発送業務
請求書の発行や発送は、システムを導入することによって自動化することもできますし、アウトソーシング(業務委託)することもできます。
さらに請求書の受け取りについても、日付、金額、支払期日などを読み取って、自動で処理するサービスもあるので、経理担当が金額や期日を確認して、取引先ごとに入金や支払管理をする手間はかからなくなります。
経理の業務委託については、こちらの記事もご参照ください。
⇒経理業務の業務委託とは?委託できる仕事内容・向いている人・メリット・デメリットを解説
給与計算
給与計算もAIやRPAが最も得意とする分野です。AIやRPAと会社の勤怠システムと連動させれば、基本給に残業代や手当などを加味して総支給額を計算し、そこから税金や社会保険料などを控除して、支払額を計算することは非常に簡単です。
給与計算は経理業務の中でも最も煩雑な業務の1つですが、今後は人間の手で行うことはAIやRPAが計算した金額が正しいかどうかを確認するだけになるので、給与計算にかかる工数は大幅に効率化することになるでしょう。
現金出納管理
現金出納管理とは、預金や現金の流れを把握して、帳簿残高と現金残高が合っているかを確認する業務です。
AIやRPAなどが請求書の受け取りや支払いを自動的に行い、経理の精算を交通系ICカードやクレジットカードと連携させて自動で行うことによって、現金出納管理もAIやRPAに任せることができます。
これからは、現金で取引先へ支払いをしたり、従業員へ経費を支払うことが無くなるので、現金出納管理そのものが無くなっていくとともに、不正を防ぐことにも寄与するでしょう。
AIやRPAでは置き換えられない経理の仕事
AIやRPAがいくら発展しても、次の5つの経理業務はすぐに置き換わることは不可能だと言われています。
・税務関連の対応
・イレギュラーな経理業務への対応
・帳簿や決算書類の最終的な確認作業
・財務分析・経理データの分析
・経理システムのメンテナンスや管理業務
専門性が高く、規則性がないこれらの仕事は、今後AIやRPAが発展しても生き残っていくことができるでしょう。
AIやRPAでは置き換えることができない5つの経理業務について詳しく解説していきます。
税務関連の対応
税務関連の法律は、ほぼ毎年変更があります。これらの変更点については先に人間が把握していなければAIを使いこなすことはできません。
もちろん、経理システムも法律改正のたびにアップデートが行われますが、先に人間が改正点を把握していなければ、どこがどのように変わったのかを理解することさえ困難です。
毎年、刻一刻と変化する税務関連の知識を吸収し、AIやRPAを正しく運用していくことはこれからの経理人材の重要な仕事です。
イレギュラーな経理業務への対応
イレギュラーの経理業務への対応も人間の仕事になるでしょう。
たとえば、定例化されていない経費の支払いをシステムで行うことは不可能です。「出張先で急に宿泊することになり、宿泊代を従業員が現金で支払った」というような場合には、クレジットカードと連携した経費処理しかできないAIやRPAでは経費を支払うことはできません。
今後、基本的に社内で作成する書類や帳簿などは電子データとして保存する必要があります。たとえば、高齢の創業者が「データを紙に印刷して見たい」という場合にも人間の手で印刷して書類をまとめる作業が必要です。
このように、会社の経理業務の全てが、AIやRPAで定型化された作業の中に収まるわけではありません。
イレギュラーな場面というのは、必ず毎日発生しますので、このような場面では人間の手が必要になります。
帳簿や決算書類の最終的な確認作業
AIやRPAが作成した帳簿や決算書類が正しいものかどうかの確認作業も人間が行わなければなりません。AIやRPAはあくまでも規則性に則って、処理を行っているだけです。
そのため、場合によっては導き出した数字が間違っているというような可能性もあります。
たとえば「特定の取引先だけには、毎月10%割り引いて請求書を出していた」というような会社に対して、AIやRPAに任せた状態では、割引前に金額のまま請求書を送付してしまい、取引先との関係を悪化させてしまうかもしれません。
単純作業には強いAIやRPAですが、全てを任せることができるまでには至っていないので、最後の確認は人間が責任を持って行う必要があります。
財務分析・経理データの分析
財務データや経理データを分析するのも人間の仕事です。AIやRPAは作成した帳簿や決算書類から「売上や利益の昨年比」「粗利益率や営業利益率」などの分析データを作成することもできます。
しかし、AIにはこれらのデータを読み取って、さらなる経営改善には何をすべきなのかの分析や経営戦略の策定を行うことはできません。
AIやRPAができることは、データの処理や集計までですので、そのデータを活用するには人間の視点と知見が必要になります。
経理システムのメンテナンスや管理業務
システムそのものをメンテナンスしたり、管理するのも人間の仕事です。
システムが適切に運用されているのかについては、日々モニタリングをする必要がありますし、法律や社内のルールや規定が変わった場合には、その変更に基づいてシステムを更新するのも人間です。
システム自体がシステムのメンテナンスや管理を行うことはできないので、今後AIやRPAが発展していけばいくほど、システムのメンテナンスや管理を行う人材は必要不可欠になります。
AIやRPAが代用できない経理人材に必要なスキル
今後AIやRPAが発展して言っても、代用されない経理人材になるためには、次のようなスキルを身につけておくことが重要です。
・経理に関するAIやRPAに精通する
・作成された帳簿や決算書類を読み取る能力を身につける
・税務や法律の知識を身に付ける
・ITのリテラシーを高める
・財務や会計の知識を習得する
AIやRPAを使用する側になるとともに、AIやRPAには代用しにくい法律や税務や、財務や会計まで幅広い知識を身につけることが重要です。
AIやRPAに代用できない人材に必要な5つのスキルについて詳しく見ていきましょう。
経理に関するAIやRPAに精通する
経理に関するAIやRPAの知識に精通することは非常に重要です。これからの経理業務の多くの部分はAIやRPAに任せることができる部分は増えていきます。
しかし、AIやRPAにシステムのメンテナンスや管理を任せることはできないので、今後の経理業務には、AIやRPAを管理してメンテナンスするという仕事はむしろ増えていくと考えられます。
AIやRPAに精通して「法律や社内の規定に則って適切に運用されているか」を確認できる人材になりましょう。
作成された帳簿や決算書類を読み取る能力を身につける
AIやRPAが作成した帳簿や決算書類を読み取れるようになることも、今後の経理人材にとっては非常に重要です。
経理業務に従事する人の中には「ルール通りに帳簿や決算書類を作っているが、これが具体的にどのように経営に活用されるのかは分からない」という方もいるでしょう。
今後は帳簿や決算書類の作成はAIやRPAが行い、人間は作成されたデータを読み取って経営に活用する側になります。
そのため帳簿や決算書を読み取る能力は、これからの経理人材には必須ですので、経営指標から会社の状況を読み取って、よりよい経営状態になるためには何が必要なのかを把握できるようになりましょう。
税務や法律の知識を身に付ける
税務や法律の知識を身につけて、法律に則ってAIやRPAを適切に運用していくことも経理人材に必要な能力です。
AIやRPAは法律や社内規定に則って速く適切に作業をしていくことは得意ですが、その前提条件となる法律については人間が把握していなければ、正確な処理をAIやRPAに任せることはできません。
今後の経理人材は、会計や財務についての基本的には法律のルールを把握しておくのと同時に、法改正による変更点などについてもタイムリーに把握しておく必要があります。
ITのリテラシーを高める
ITのリテラシーを高めて、AIやRPAを運用できる側の人間になることも、これからの経理人材にとっては必要不可欠なスキルです。
ITリテラシーは次の3つでできていると言われています。
情報基礎リテラシー | 情報を正しく扱う能力 |
コンピュータリテラシー | PC・スマホ・タブレットなどのIT機器を正しく操作する能力 |
ネットワークリテラシー | ネットワークの仕組みやセキュリティについての理解 |
今後、AIやRPAの導入が社内で進んで行けばいくほど、ITリテラシーは必要不可欠なスキルになるため、導入後に「何が行われているか分からない」「どのように操作していいか分からない」ということがないように、ITリテラシーは十分に身につけておきましょう。
財務や会計の知識を習得する
財務や会計の知識を習得して、AIやRPAが作成した決算データや帳簿データを読み取れるようになれば、今後も経理人材として生き残れる可能性は高くなります。
これまでの経理業務は、帳簿や決算書類を作成することが主な仕事でした。今後は、帳簿や決算書類の作成そのものの業務の多くはAIやRPAに任せることができます。
しかし、作成したデータを読み取って経営分析や経営改善を行うことまではAIやRPAにはできません。
そのため、財務や会計の知識を身につけ、AIやRPAが作成したデータを読み取り、そこから示唆を抽出できるようになることで、今後の経理職として必要な人材になることができるでしょう。
これからの経理人材の選択肢
AIやRPAの発展によって、これまでと同じように経理が仕事をできる保証は全くありません。むしろ、今後は大きく仕事の内容が変わっていくでしょう。
これからの経理人材には次のいずれかの選択を検討すべきかもしれません。
・経理システムを管理やコントロールができる人材になる
・財務部門などへ異動する
それぞれ、具体的にどのような仕事をするようになるのか、詳しく解説していきます。
経理システムを管理やコントロールができる人材になる
経理部門の仕事内容の変化に合わせて、新しい時代の経理業務に対応できる人材になる方法です。
具体的には、AIやRPAの知識やITリテラシーを身につけて、AIやRPAなどをオペレーションし、経理システムが正常に稼働できているかモニタリングする仕事です。
経理システムの管理やコントロールは、AIやRPAが進展していくほど、需要の高まる仕事ですので、経理部署でも必要不可欠な人材になれるでしょう。
システムのコントロールや管理には、一定以上の経理の知識や実務経験も必要になるので、これまで培った仕事のスキルを活かすこともできます。
財務部門などへ異動する
経理部門から、財務などの部門へ移動する方法もあります。経理処理はAIやRPAが機械的に行うことが可能ですが、財務部門で行う税務会計や税務処理などは人の手でないと遂行できない業務がまだまだ多数存在します。
これまで培った経理の知識も十分に活かすこともできるので、経理から一歩進んで、財務部門への異動や転職を検討することも有効な方法です。
財務部門については、こちらの記事もご参照ください。
⇒財務部門とは?業務内容・仕事のやりがい・必要なスキルについて徹底解説
⇒財務部門の仕事とは?主な仕事内容・役に立つ資格・キャリアパスについて解説
まとめ
経理の仕事はAIやRPAに置き換えられるものも多いので、確かに既存の業務がなくなっていく可能性が高いと言えます。
しかし、その分、AIやRPAを管理・コントロールする仕事は増えますし、税務や財務分析やイレギュラーな対応はAIやRPAで代用できるものではありません。
つまり経理業務は今後なくなる仕事と、残る仕事と、新技術に付随して生じる新しい仕事に分かれます。
どのような仕事が残り、必要とされる人材とは何かをよく見極め、今後も経理業務で必要とされるよう、スキルアップをしていきましょう。
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この記事を書いた人
共同創業者&代表取締役CEO 茅原 淳一(かやはら じゅんいち)
慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。