COLUMN
コラム
経理に将来性はないのか?将来なくなる可能性のある経理業務・経理職で活躍するポイントについて解説
執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)
CFOになるには?キャリアパスも解説
経理/会計/財務/経営企画などの管理部門としてのキャリア
経理は企業の資金を管理する重要な役割を担っており、企業にとって欠かせない存在です。しかし、近年のAIの進化により「将来は経理の仕事がなくなる可能性があるのでは」と、疑問に思う方も少なくないでしょう。
そこでこの記事では、経理の将来性について詳しく解説していきます。経理としてこれから活躍するためのポイントやスキルもご紹介するため、経理の仕事の将来性を知りたい方、経理の仕事をさらに極めたい方は、ぜひ参考にしてください。
企業の財務に関連する活動の責任者であるCFOについては、こちらの記事もご参照ください。
⇒CFO(最高財務責任者)とは?定義・意味から役割・仕事内容・なり方・キャリアパスまで徹底解説!
⇒CFOの平均年収はいくら?相場を詳しく解説!
⇒CFOのキャリアパスとは?転職方法・必要なスキル・経験を解説!
⇒CFOになるには?CFOになるためのキャリア・求人状況・評価ポイントについて解説
⇒CFOに役に立つ資格|CFO資格認定・FASS検定・公認会計士について解説
⇒公認会計士からCFOは目指せる?求められる役割とCFOに転職するメリットについて解説
⇒CFOを目指す人のための本|CFOの考え方・実務・キャリアなど網羅的に紹介
目次
経理業務とは
まず、経理について正しく理解しましょう。経理業務は、財務や会計とよく混同されますが、実際にどのような業務でしょうか。ここでは、経理業務を正しく理解するため、以下の2つのポイントに分けて解説します。
・経理の業務内容
・経理の役割
経理の業務内容
経理の業務内容は、大きく分けて3つの区分に分けられます。
・日常業務
・月次業務
・年次業務
日常業務は、現金の出納管理(経費精算)、預金管理、帳簿や伝票の管理、取引先の信用分析などがあります。
月次業務は、月次決算書の作成や予算実績管理、従業員の給与計算や請求または支払いなどの作業です。
年次業務は、経理業務の中で最も重要な「年次の決算業務」が含まれます。年次の決算業務は、日常業務として管理してきた1年間の取引きをまとめて、損益計算書や貸借対照表などの決算書を作成する重要な業務です。作成された決算書は、自社の経営状態や財政状態を表すものであり、株主総会で株主へ公表し承認を求めたり、報告をしたりすることに用いられます。
経理の業務内容について詳しく解説されている以下の記事もご覧ください。
⇒経理部門の仕事とは?主な仕事内容・日次/月次/年次のサイクルについても解説
経理の役割
経理の役割は多岐にわたります。主な経理の役割は企業の状態を金銭で集計し、数値化および可視化することです。
より具体的な経理の役割は、株主への承認願いや税務署への納税をすることなどがあります。株式会社は、通常株主が出資した資金が企業経営の基盤となります。そのため、経理は決算書を株主に公開し、株主の承認を得ることに努めます。また、法人税などを計算し納税する役割も果たします。
また、経理部門は決算書などを作成することにより、経営陣が自社の経営状態や財務状態を正確に把握できるように努めます。このような役割から、経理が企業にとってなくてはならない重要な部門であることがわかります。
経理の役割についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください:
⇒経理部門とは?業務内容と仕事のサイクル・やりがい・待遇について解説
経理に将来性はないのか
AIの進化により「多くの方が経理の仕事がなくなるのでは」と考えています。しかし「経理の仕事がなくなることはない」といえます。
2015年に株式会社野村総合研究所とオックスフォード大学により行われた研究結果によると、2025年から10年間で日本国内の労働人口数の約49%が、AIの進化によるコンピューターに取って代わられる可能性があるとされました。この研究で「経理」の仕事に関してもコメントされており、経理業務の自動化の可能性は99.8%と高い確率です。
2015年の野村総研による研究結果(日本におけるコンピューター化と仕事の未来)については、こちらのリンクからご覧ください。
確かにAIの進化や業務を自動化するためのさまざまなツールが開発されています。しかし、経理の仕事は、単純に企業の資金を管理するだけではありません。経理の役割は、企業の経営陣が最善の経営判断ができるようにサポートすることです。経営判断を支える業務や、企業内の各部門の調整業務などは人の手が必要な業務のため「経理に将来はない」とはいえません。
将来無くなる可能性のある経理業務
経理の仕事で、将来無くなる可能性のある業務の3つをご紹介します。
・仕訳業務
・経費精算
・連結決算
仕訳業務
将来、経理の行う「仕訳業務」は無くなる可能性があります。仕訳業務は、これまで会計ソフトや表計算ツールを用いて行われてきました。しかし、デジタルを利用したシステムによるデータ入力が推進されることで、さらに自動化しやすい状況になっていくことでしょう。
アナログの手入力では、どうしても入力ミスというトラブルが発生する可能性があります。しかし、データの処理をAIに任せることで、経理業務の正確性とスピードは格段に向上することが期待されます。
経費精算
経理の日常業務にある「経費精算」も、将来無くなる可能性があります。
交通費精算について考えてみましょう。会社の従業員に交通費を支払う際、毎回交通費を計算する必要があります。また、今までの経理担当者は、従業員が取った移動手段やルートなどが適切かを確認する必要がありました。しかし、AIの導入で全ての作業を自動化することが可能です。
たとえば、交通系ICカードと連携させることで、自動的にデータを参照できるため、確認の手間が省けます。また、自動で記録されるため、不正利用を防ぎやすいというメリットもあります。
連結決算
AIの導入でデータの自動入力が可能になるため、経理が果たす「連結決算」に関する業務も将来無くなる可能性があります。
連結決算を行っている企業の中には、データを手入力し管理しているところもあります。しかし、入力ミスなどがあると作業が進まないどころかトラブルの原因になってしまうでしょう。これも、AIの導入により連結決算業務も自動化され、迅速かつ正確に作業を行うことが可能になります。
将来も必要な経理業務
AIが導入されたとしても、今後引き続き必要とされる経理業務もいくつかあります。ここでは、以下の5つの業務をご紹介します。
・例外となる対応業務
・専門知識が必要な業務
・分析業務
・念入りな確認作業
・監査法人対応業務
例外となる対応業務
AI導入が行われたとしても、今後引き続き必要とされるであろう経理業務の1つに「例外となる対応業務」があります。経理業務の多くは自動化が可能な業務ですが、人間が判断する必要のある業務もいくつかあります。
たとえば、経理業務には毎月および毎年に行う必要のある「決算業務」です。決算業務において通常と異なる点は、条件や項目です。会計を行う際の基準が異なったり、取引先との確認が必要になったりする場合があります。その際、自動化された業務システムでは対応することが難しいでしょう。人間が各部門の担当者とコミュニケーションを取り、調整を行う必要があります。
専門知識が必要な業務
経理業務の中には、会計や経理データ分析などに関する「専門的な知識が必要な業務」がいくつか存在します。専門的な知識を駆使して企業の経営管理を行うことは、まだ人間にしか行えません。
たとえば、帳簿や仕訳帳に挙げられたデータを分析し、そこから見つかった問題や課題を調整し経営陣に伝達するのは人間です。経理業務において自動化できる単純な作業はAI導入で行い、経理業務において重要な「管理」は人間が行うことで、業務の効率化を図ることが可能です。コミュニケーションが求められる経理業務は、今後も必要とされていくことでしょう。
分析業務
経理業務において「分析業務」は、大きな割合を占めている業務だといえます。経理データの分析と業績予測により企業の経営状況を把握し、経営陣に状況を説明し、改善策を提案することが経理の役割です。
企業の経営状況を正確に把握し改善策を提案するためには、問題点の原因を把握することが求められます。コストや仕入れ状況などが原因の場合、AIによる単純な計算作業で解明することは不可能です。さまざまな状況が関係しているため、経理による専門的な判断が必要でしょう。
念入りな確認作業
AI導入後も必要になるであろう経理業務に「念入りな確認作業」があります。経理業務には、データ入力や照合のような単純な業務が多いですが、最終的な確認や念入りに行う必要がある確認作業においては、人間の介入が必要です。
現在導入されているAIシステムにおいては、いまだ精度が不十分なシステムもあります。重要な判断を要する作業や念入りな確認が必要な作業は、人間の頭脳で行う必要があるでしょう。今後、自然言語処理などより進化したAI技術の導入で、効率化がさらに進んでいくことが期待されます。
監査法人対応業務
経理の仕事には「監査法人対応業務」があります。年次決算における監査官への対応は、AIでは不可能な業務です。外部監査において監査法人とのコミュニケーションが求められるためです。財務諸表や帳簿についての説明が求められたり、追加の資料やデータの提出が求められたりします。
AIにより財務諸表の作成が可能かもしれません。しかし、不一致に対する疑問点や質問に対する回答は、経営陣の意向を理解し、企業全体の財務状況を理解している経理担当者にしか出せません。また、決算業務においては、株主総会での株主が抱く疑問に対応することも必要です。自社が置かれている状況を前提になされる質疑を予測し、適切な回答を提出することはまだAIには難しいでしょう。
監査法人については、こちらの記事もご参照ください。
⇒IPOにおける監査法人の役割とは?監査法人を選ぶポイントも解説!
経理で活躍するポイント
AIによる経理業務の自動化時代が到来する中で、経理で活躍するためには、人間にしかできないより高度なスキルが求められます。
ここでは、経理で活躍するポイントを3つご紹介します。
・会計知識を広げる
・分析力を磨く
・ITスキルを向上させる
会計知識を広げる
経理で活躍するためのポイントの1つに「会計知識を広げる」ことがあります。
経理業務には、専門的な会計知識が必要です。たとえば、決算業務において会計の知識が必要ですし、確定申告や税務申告を行う際には税法に関する知識が求められます。具体的な資格には日商簿記検定のほか、税理士や会計士などの国家資格などがあります。海外で活躍の場を広げたい場合、国際会計検定(BATIC)や米国公認会計士(USCPA)を取得しましょう。
会計知識に関わりがある経理に役に立つ資格については、こちらの記事もご参照ください。
⇒経理職に役に立つ資格|資格が有利に働く場面とおすすめの資格について解説
分析力を磨く
経理で活躍するためのポイントに「分析力を磨く」ことがあります。経理業務は、経営戦略における将来予測を行う分析力が求められます。
たとえば、決算書から企業の経営状況を把握するには分析力が必要です。企業の経営状況を客観的に把握し解決策を見いだしていかなくてはなりません。自社の経営状況だけでなく、取引先の経営状況を把握するにも分析力が必要になります。さらに、企業の経営戦略について仮説を立て検証するにも分析力が重要です。
経営戦略については、こちらの記事もご参照ください。
⇒経営戦略部門とは?業務内容・やりがい・必要なスキル・近年の動向について解説
ITスキルを向上させる
「ITスキルを向上させる」ことも、経理で活躍するポイントです。
ITスキルには情報を正しく取り扱うためのスキル、PCやスマートフォン、タブレットなどのIT機器に関すること、ネットワークの仕組みやセキュリティ対策に関する知識なども、ITスキルに含まれます。今後のAI導入が経理でも行われていくことを考えると、ITスキルの向上は必須といえます。
経理とITスキルについては、こちらの記事もご参照ください。
⇒経理業務のDX化とは?経理業務にDX化が必要な理由・メリット・ツール・DX推進のポイントについて解説
まとめ
この記事では、経理の将来性について解説してきました。
近年のAI導入やIT化が進む中、将来の経理業務自動化が予測されます。しかし、経理業務は専門性が高い職種の1つであり、担当者には専門知識や高いスキルが求められます。そのため、将来も必要とされるであろう経理業務が多い現状もあります。この記事でご紹介した経理で活躍するためのポイントを抑え、スキルアップを図っていきましょう。
この記事が、経理で活躍することを願っている方の参考となれば幸いです。
最後までお読みくださり、本当にありがとうございました。
また、管理部門の職種としてキャリアアップしたい方、さらにCFOとして経営参画も視野にいれている方は、プロの専門家に相談するのが一番です。
そこでSOICOでは、管理部門やCFOのキャリアについて詳しいプロによる、個別の無料相談会を実施しております。
・経理、会計、財務、経営企画、CFOなど、管理部門に詳しい転職のプロへキャリアを相談したい
・CFOとして自分が活躍できる具体的な企業/業種業界/役割/企業フェーズはどういったものか知りたい
・市場には出回っていないハイクラス求人を紹介してほしい
そんなお悩みを抱える方に、要望をしっかりヒアリングさせていただき、
適切な情報をお伝えさせていただきます。
ぜひ下のカレンダーから相談会の予約をしてみてくださいね!
この記事を書いた人
共同創業者&代表取締役CEO 茅原 淳一(かやはら じゅんいち)
慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。