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フェア・ディスクロージャー・ルールとは?定義や目的をわかりやすく解説
執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)
『資金調達の手引き』
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証券市場における情報の透明性は信頼の基盤となります。この基盤を強化し、公平な情報開示を促進するためのルールが「フェア・ディスクロージャー・ルール」です。
本記事では、このルールの背景から具体的な内容、そして日常業務における留意点に至るまでを詳細に解説します。
金融庁の今後の動向やその影響も視野に入れながら、フェア・ディスクロージャー・ルールの全貌を見ていきましょう。
目次
フェア・ディスクロージャー・ルールとは?
フェア・ディスクロージャー・ルールは、投資家に対する公平な情報開示を目的とするルールです。では、なぜこのようなルールが必要なのでしょうか。
主な理由は、全ての投資家が平等に情報を受け取ることで、証券市場の公平性と透明性を確保するためです。具体的な実例として、ある企業が業績の好転を一部の投資家だけに先行して伝える場合、情報の非対称性が生まれます。この情報の非対称性は、市場の信頼を損なうリスクがあります。
したがって、フェア・ディスクロージャー・ルールは、市場の健全性を保ち、投資家の信頼を維持するための非常に重要な役割を果たしています。
フェア・ディスクロージャー・ルールの背景と目的
市場の健全な機能は、投資家が信頼できる情報を得ることによって支えられています。しかし、これまでの市場では情報の非対称性が問題となっていました。
フェア・ディスクロージャー・ルール導入の経緯と過程
情報の非対称性が生まれた背景には、一部の投資家や関係者だけに有利な情報が伝えられていた事例があります。
これは、一部の人々に利益をもたらす一方で、多くの一般投資家が不利益を被る結果となりました。そのため、市場の公平性を守るためのルールが必要とされました。
結果として、多くの国で情報開示のルールが整備され、日本でもフェア・ディスクロージャー・ルールの導入が進められることとなりました。
フェア・ディスクロージャー・ルール導入の目的とその重要性
フェア・ディスクロージャー・ルールの主な目的は、すべての投資家が平等に重要な情報を受け取ることを保証することです。このルールによって、情報の公平な提供が期待されます。
実際、情報の透明性が高まることで投資家の信頼も増し、市場の健全な発展が期待されます。
フェア・ディスクロージャー・ルールの内容
フェア・ディスクロージャー・ルールは、情報の公平な開示に関する指針を提供します。
本項では、
・具体的にどのような情報が開示されるべきなのか
・誰が情報を提供する責任を持つのか
・企業の情報がどのように公表されるべきか
を明確にしていきます。それでは、各項目について詳しく見ていきましょう。
情報提供者(上場会社等またはその役員等)の責務
上場会社やその役員は、重要な情報を公平に公開する責任があります。
投資家に誤解を与える情報を避けるため、正確かつ迅速な情報開示が求められます。
業務への関連性
情報の公開は、会社の業務や業績に関連するものに限定されます。
例えば、経営の方針や業績予想の変更など、投資家が投資を判断する際に影響を及ぼす情報が該当します。
公表の対象となる重要情報
公表される情報は、市場価格に影響を及ぼす可能性があるものが対象となります。
新製品の開発や大型契約の獲得、組織の再編など、今後の業績予測をするにあたって投資家が知りたい情報が考慮されるべきです。
情報受領者たる取引関係者への情報開示
取引関係者には、投資家と同時に重要情報が開示されます。
公平な取引環境の実現のため、特定の関係者に先行して情報を提供する行為は避ける必要があります。
公表の方法
情報は、速やかに公表されることが期待されます。
通常、公式なプレスリリースや会社のウェブサイトでの公開が基本ですが、緊急時には迅速な情報提供の方法を選択することが重要です。
エンフォースメント
ルール違反が発生した場合、適切な処罰が行われます。
具体的には、罰金や業務停止命令など違反の度合いや状況に応じて厳格な措置が取られることがあります。
ルールの実務上の留意点
フェア・ディスクロージャー・ルールにおける実務上の留意点は、法令の変更や業務実態の変遷に伴い時々刻々と更新されます。
そこで実務者に求められるのは、常に最新の情報をキャッチし、その内容を正確に適用する能力です。
平成30年4月施行の内容と実務上の留意点
平成30年4月に施行された改正は、企業の情報開示の透明性を高めることを目的としています。
不適切な情報の取り扱いは、企業の評価低下や法的リスクを招くため、企業の情報管理体制の強化を促すことを図りました。
例えば、未公開情報が不適切に流出した場合、企業の株価に大きな影響を及ぼすことが考えられます。したがって、実務上は平成30年の改正内容を十分に理解し、適切な情報管理を実施することが求められます。
情報管理体制の強化
情報管理は、企業の持続的な成長と信頼性の確保に直結するテーマであるため、管理体制の強化は非常に重要です。
企業が適切な情報管理を行わない場合、内部情報の流出リスクが高まり、企業評価ひいては価値が低下する可能性があります。
そのため一部の企業では、情報管理体制を強化するための研修やツールの導入を進め、内部情報の流出を防ぐことで信頼性の維持に努めています。
会合と株主総会
企業の会合や株主総会は、株主や投資家、取引先各社への情報開示の場としての役割を持っており、この場での情報開示は企業の透明性を高める要素となります。
多くの企業では、株主総会内で質疑応答の時間を設け、参加者の開示情報に関する疑問を解消しています。
守秘義務・売買等禁止義務
企業の情報は、取り扱いを誤ると情報漏洩やインサイダー取引などの大きなリスクを起こす可能性があります。
そのため守秘義務や売買等の禁止義務は、企業価値の減少を防ぐ目的で情報の適切な取り扱いを保証するために非常に重要な要素です。
過去には、未公開情報を元にした不正取引が発覚し、企業の評価が大きく低下したケースがあります。従って、これらの義務を厳格に守ることで企業の信頼性を維持することができます。
金融庁の今後予想される動向
近年の経済環境の変化とともに、金融庁の役割も多様化してきました。その中で、金融庁の今後の動向についての予想を述べます。
金融庁は、フィンテックの普及に合わせて金融のデジタル化をさらに推進するでしょう。この背景には、経済のデジタルトランスフォーメーションが進む中、金融業界も変革の波に乗る必要があるためです。
すでに多くの銀行がオンラインバンキングを導入したり、デジタル通貨に対応し始めており、金融庁は規制の見直しや新たな指針の提供を進める可能性が高いです。
また金融庁は、サステナビリティや環境問題への取り組みを重視する動きを強化するとも想定されます。世界規模で環境問題やSDGsへの取り組みが進む中、金融業界もその方向性を強く意識する時代になっているためです。
現にESG投資が増える中、多くの企業がサステナビリティ報告書を公開しています。ここで金融庁は、このような企業のサステナビリティを意識する動きをサポートし、金融業界が環境や社会への貢献を強化するための施策を推進するでしょう。
さらに金融庁は、金融市場のグローバル化や国際的なルールの調和が求められる中、国際的な連携を強化すると想定されます。
実際。G20やFATFなど国際的な金融会議での取り組みが活発になっており、金融庁も国際的な協力体制の構築や情報共有を進める動きを強化するでしょう。
上記予想の元、今後の金融庁はこれまで以上に時代変化に合わせた様々な施策を展開するため、金融業界の企業群は柔軟な対応と先取りの戦略が求められる時代に突入しています。
まとめ
以上の通り、今後の金融庁は、デジタルトランスフォーメーションの進行とともに金融のデジタル化を推進することが予想されます。
また、世界的に問題意識が持たれるサステナビリティや環境問題に対する取り組みも注目ポイントとなり、まさに金融業界は変革の波にさらされている状況といえます。
よって金融業界に位置する企業群は、デジタル化を受けて変化が激しい金融業界の変遷を捉え、変化後を見据えた先取りの戦略が求められるでしょう。
この記事が皆様のお役に立てれば幸いです。最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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この記事を書いた人
共同創業者&代表取締役CEO 茅原 淳一(かやはら じゅんいち)
慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。