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コラム
ESGコンサル会社とは?役割や依頼先企業の選び方などを解説
執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)
コーポレートガバナンス・コードの基本のキ
~概要と基本原則を解説~
コーポレートガバナンス・コードの「基本的な概要」と「基本原則」にフォーカスして紹介
ここ最近では、ESGコンサルの需要が高まってきています。
ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの頭文字をとった言葉です。財務諸表だけではなく、この3点を抑えて経営を行っていくことで持続的な成長ができる可能性を投資家から評価され、長期的に企業価値が向上していくことが見込まれます。
企業はESG経営を取り入れたいと考えていても、具体的にどうすれば良いか分からないため、専門的な知識を有しているコンサルに助言を求めることが増えています。
しかし、ESGコンサルを選ぶ際には、何を基準にして選んで良いか分からないという企業が多いのではないでしょうか。
この記事では、ESGコンサルの業務内容や選定方法を中心に解説していきます。
ESGについては、こちらの記事もご参照ください。
⇒ESGとは?ESG概要や注目された背景、メリットや課題点まで網羅的に解説!
⇒ESG経営とは?必要性や戦略・メリット・具体例をわかりやすく解説
⇒ESG経営の取り組み事例集!企業ごとの具体例を紹介
目次
ESGコンサルとは
ESGコンサルは、企業や投資家に対して、ESGに関する戦略の提案や運用を行うコンサルティング会社のことを指します。
ESG経営を行うことによって企業価値つまり時価総額の向上を目指すため、企業の資金調達とも結び付きがあります。そのため、ESGコンサルは、ESGの範疇はもちろん、経営戦略レベルからサポートを行うことも少なくありません。
このように、ESGコンサルは、企業の長期的な企業価値向上や事業競争力の最大化のために重要な役割を担っており、大企業から中小企業まで、多様な業種にわたってその需要が高まっています。
ESGコンサルが注目される背景
ESGコンサルが注目されている背景として、企業がESG経営やESG投資を増やしていることが理由としてあります。
2006年に国連が提唱した「責任投資原則(PRI)」において、投資分析や投資の意思決定においてESGへの対応を組み込むといった内容を発表したことから始まり、その後のリーマンショックから始まった世界経済への大きな影響、「持続可能な開発目標(SDGs)」の広がりによってESGは急速に広がっていきました。
結果的に、企業としてもESGを経営に導入することで、投資家からの評価を向上させるような動きになるものの、過去対応した実績や経験もない企業が多いため、ESGコンサル及びそこに所属するESGコンサルタントへのニーズが高まってきているという背景です。
ESGコンサルの主な役割とサポート内容
ESG経営の方針や内容は多様化しているので、ESGコンサルの役割やサポート内容はクライアントごとに異なりますが、いくつかの役割を把握しておくことで、ESGコンサル会社を選定する際に有益となるでしょう。
ESG戦略策定 | クライアントの要望に基づいて、ESG戦略やサステナビリティに関連する方針の策定をサポートします。新たなプロジェクトの計画から、既存のESG関連プロジェクトの管理までを幅広く担います。 |
ESGの実行支援 | ESG戦略の実現には、計画だけでなく実行に移していくことが不可欠です。企業の経営基盤とマネジメント体制の構築が求められるため、内外のリソース活用、組織構造の見直し、社内制度の強化、社内メンバーへのESG意識の浸透など実行サポートまで行うことがあります。 |
統合報告書/サステナビリティレポートの作成 | サステナビリティーレポートとは、企業の持続可能な社会への貢献に関する活動を、世間に公開するために作られる資料です。財務情報と非財務情報が統合されたものを統合報告書と言います。ESGをベースに投資家が投資判断を行うために重要なため、作成のサポートを行います。 |
TCFD等の分析 | G20の要請に基づき金融安定理事会が設置した「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」は、気候変動に対する企業の取り組みやリスクを評価するもので、情報の開示を推奨されています。ESGコンサルは、TCFDに関連した企業活動の評価にも取り組みます。 |
ESGコンサルに依頼するメリット
ESG経営を進めていくためには、乗り越えなければならないハードルがいくつもあります。そのようなESGにおいて、コンサルティング会社に依頼することのメリットをご紹介します。
ESG経営の知識・ノウハウを体系的に理解できる
ESG経営コンサルを活用することで、環境、社会、ガバナンスに関する最新の知識とノウハウを体系的に学ぶことができます。
例えば、持続可能な資源利用やエネルギー効率の向上、社会的責任の実践方法など、具体的な戦略や他社の実績に基づくケーススタディを通じて理解を深めることが可能です。
これにより、企業はESG関連の複雑な課題に対して、どう進めたらいいのかといったような解像度が高まることで、結果的により効果的な施策の計画や実行ができるようになるでしょう。
ESG経営の実現スピードが上がる
ESG経営コンサル会社に発注することで、ESG関連の取り組みを迅速に進めることができます。
専門家の支援により、環境保全や社会貢献活動、ガバナンスの強化などの施策を素早く立案し、実行に移すことが可能になります。たとえば、環境に配慮した製品開発やサプライチェーンの最適化など、具体的なプロジェクトがスムーズに進行し、結果として競争優位性を早期に確立することができます。
第三者の目線で客観的に評価・分析してくれる
ESG経営コンサル会社は、第三者の立場から企業のESG取り組みを客観的に評価し、分析することができます。
企業が自身の弱点や改善点を内部だけでは見落としてしまうところを、さまざまなESG経営の支援経験を持っているコンサルが客観的な視点で見ることで、拾い上げる確率が高まります。また、環境や社会といった規模の大きい対象を、より精度高く分析することが可能です。
例えば、環境保護活動の効果測定や社会的影響の評価など、具体的な分析を通じて、企業は自社のESG戦略をより効果的に調整し、改善することが可能になります。これにより、企業は持続可能な経営を実現するための具体的な道筋を描くことができ、長期的な成功につながる戦略を策定することにつながるでしょう。
また、第三者による評価は、投資家やステークホルダーに対しても信頼性の高い情報を提供することになり、企業の透明性と信頼性を高める効果もあります。
ESGコンサル会社やコンサルタントを選ぶ時のポイント
ESGコンサル会社やコンサルタントを選ぶときのポイントについて解説します。
・専門知識・経験
・コストパフォーマンス
・これまでの成果や実績
・お客様の要望に合わせた課題解決の提供
・サポート体制
専門知識・経験
ESGに関する具体的な資格は存在しませんが、環境学や気候学に関する修士号や博士号、MBA、中小企業診断士などの資格を持っているかは選定基準の1つになります。事業会社のサステナビリティプロジェクトを牽引していたり、関連省庁に所属していた経験があると、ESGについて詳しい可能性も高まります。
また、経営層に向けてコンサルを行うことになるので、同様の経験をしているようなコンサルティングファーム出身者かどうかもチェックしてみるのもいいでしょう。
ESGコンサルについては比較的新しい概念で、日々学習することが多いジャンルでもあります。海外の方が事例も多く、英語などの外国語の資料を読むことで知識も増えるため、英語が使えるかどうかは聞いてみるのもいいでしょう。
しかし、それ以上に、担当のコンサルタントの資料作成能力の高さ、ロジカルに受け答えできるか、ヒアリングをして適切な解決策を提案してくれるかなどを確認するのが大切です。
コストパフォーマンス
ESGコンサルタントを選定する際には、コストパフォーマンスを考慮することが重要です。
提供されるコンサルティングサービスとその料金について把握し、ESGのプロジェクトを推進することによるコスト感をコンサル各社で比較してみてください。
また、ESGコンサルといっても、企業の経営戦略や方針などによってサポート内容も異なります。ESG戦略の立案や、統合報告書の作成、ESGリスク評価などさまざまある中で、コンサル企業ごとにどの項目に対応してくれるのかの確認は大切です。
料金を比較しながら、自社の予算や目標と照合することで、最適なESGコンサル会社を選び出しましょう。
これまでの成果や実績
これまでのESGコンサルの実績を聞くことで、高い専門性を持って実際にESGコンサルをしてくれるかを確認することができます。
実績を確認するためには以下のようなポイントを聞くといいでしょう。
・ESGコンサルはいつから行っており、累計何社の支援をしたのか?
・どの業界の、どれくらいの規模感の会社を支援したのか?
・具体的になんという会社のコンサルティングをしたのか?
・ESG戦略〜実行〜報告などの中で、どこからどこまで対応したのか?
秘密保持の観点から、個別具体の企業名は教えてくれない可能性も高いですが、企業の規模感やどんなサポートを行ったのかを知ることは、ミスマッチを避けるためにも大切です。
お客様の要望に合わせた課題解決の提供
企業によってESGに取り組む方向性や、企業としての課題には当然違いがあります。そのため、企業のESG経営の実現に向けて必要な部分を、ESGコンサルとして柔軟に対応してくれるのかは大切な要素となります。
例えば、社内にESG経営に詳しい人材が一切おらず右も左もわからない状態で、戦略だけではなく情報開示の準備や社内のプロジェクト推進までサポートしてほしいにも関わらず、実行支援はできないなどといったことが無いかを確認することが必要です。
また担当してくれるコンサルタントが、自社の要望に合わせて課題解決を提供してくれるかも大切です。
サポート体制
ESGの取り組みは一時的なものではなく、環境・社会・ガバナンスといった規模の大きいものを対象にするので、すぐに成果が出ることは基本的にありえません。
数年単位でESG経営を行っていく必要性があるので、初期の戦略や計画段階だけではなく、その後のサポートも親身になってフォローしてくれるコンサル会社を選ぶことが大切です。
例えば、
・市場の動向に合わせて方針の微修正を行う
・ESG経営を進めるにあたって躓いているポイントにアドバイスを行う
などといったことをサポートしてくれるかは契約前に聞いてみるといいでしょう。
まとめ
本記事では、ESGコンサルタントの業務内容や選定方法を中心にご紹介しました。
本記事が、経営者・役員・ESG経営を推進するご担当者の方の参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ESGに関連して、ガバナンスについてはこちらをご参照ください。
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この記事を書いた人
共同創業者&代表取締役CEO 茅原 淳一(かやはら じゅんいち)
慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。