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MBOとOKRの違い|相違点と共通点、フレームワークの選び方について解説
執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)
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MBOとOKRは、どちらも目標管理フレームワークですが、それぞれの特徴により、相違点や共通点もあります。かつては、MBOが主たる目標管理フレームワークでしたが、時代とともにMBOには限界を感じる会社が増えた経緯があり、そこで、MBOを踏襲したOKRが発展を遂げて普及しました。
しかし、MBOを運用し成果を得続けている会社もあるため、MBOとOKRは会社によって選択の余地があります。
本記事では、MBOとOKRの違いを詳しく説明し、MBOとOKRのどちらを選ぶべきかにも触れています。
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目次
目標管理フレームワークのMBOとは?
MBOとは、ピータードラッカーが1950年代に提唱した「Management By Objective」の頭文字の3文字をとったもので、日本では「目標による管理」「目標管理」と訳される目標管理フレームワークです。MBOでは、中長期の会社の経営計画から各部門の目標を設定し、従業員のチャレンジする目標へと落とし込みます。
また、MBOは人事評価と混同されることもありますが、人事評価は仕事の結果を測定するツールであり、MBOは単なる人事評価ではなく人材育成も目標としているため、人事評価とは、そもそもの目的が異なります。MBOでは、必ず上司が部下にフィードバックするため、従業員のチャレンジする行動を促進します。
しかし、最近では、高齢化や成果主義、リモートワークの普及などの社会情勢の変化に伴い、従来の目標管理で、上司と部下の関係を中心としたMBOにも限界があるといわれるようになりました。
目標管理フレームワークのOKRとは?
OKRとは、「Object and Key Result」の頭文字の3文字をとったもので、「Object」は「目標」、「Result」は「主要な結果」を意味します。OKRは米国のインテル社で生まれた目標管理のフレームワークで、もともとはMBOをベースに提唱されました。「Object(目標)」と「Result(主要な結果)」が紐づいているのが特徴です。
「Object(目標)」とは、従業員全員が目標とするもので、野心的で定性的な目標を設定します。また、「Result(主要な結果)」は「Object(目標)」に対して3つほど設定し、さらに、それらの「Result(主要な結果)」に対し所属部門などでOKRを設定します。その結果、全社でのOKRは、頂点から末端までが連なるピラミッドの構造になります。
MBOとOKRの違いとは?6つのポイントを解説
そもそも、OKRはMBOを踏襲し生まれた目標管理フレームワークです。どちらも目標管理のフレームワークですが、目的や頻度、特性などが異なります。そこで、MBOとOKRの相違点について以下の6つを解説します。
・目的は何か
・目標の共有範囲
・目標の達成基準
・人事評価の頻度
・目標を見直すサイクル
・定量と定性
目的は何か
MBOの目的は、会社の経営目標から各従業員の目標へと落とし込み、人事評価により従業員の当階級を決定し、昇給や人事異動のデータにすることです。上司による部下の評価が目的のため、目標管理は部下に方向が向いています。そのため、会社全体で同じ目標を管理するには難しい面があります。
一方、OKRの目的は、会社全体の目標から各従業員の目標を設定しているため、会社全体に目標が向いています。従業員がどの方向に向かっているのか明確になっているのが特徴です。そのため、部署が異なっていても、従業員間で協力を得やすくなります。
目標の共有範囲
MBOの目標の共有範囲は、上司と部下となっており、会社の同じ部署内で共有されます。MBOでは、基本的に上司が部下の目標を設定し、目標を達成できているかを定期的に確認しフィードバックすることで人事評価に繋げています。
また、OKRの目標の共有範囲は会社全体となっており、会社の目標に対して部署ごとに取り組むフレームワークです。そのため、MBOの運用は、あくまで上司と従業員間の人事評価にとどまるのに対し、OKRの運用によると、会社全体の従業員を巻き込む人事評価に発展が可能です。
目標の達成基準
MBOの目標は、100%達成することを基準としており、これをルーフショットといいます。MBOでは上司が部下を評価し運用しますが、評価の際、目標に対して従業員の実績がどの程度の成果を出したのかを基準にすることが特徴です。上司は部下を評価した後、部下との面談を行い、意見の聞き取りや今後の取り組みのフィードバックにより人材を育成します。
OKRでは、目標が野心的であるため達成基準を70%程度とし、これをムーンショットといいます。ムーンショットでは100%の達成を目標としていません。OKRは、あくまで目標を達成するプロセスを重視しており、目標にどれくらい挑戦できたか、などの取り組み具合が大切な要素になります。
人事評価の頻度
MBOの人事評価は、部門やプロジェクトなど対象や目的によって異なりますが、1年、6ヶ月、四半期などの頻度で行います。通常は会社の中期計画を上司が理解したうえで人事評価を行うため、ある程度の期間を設け、その期間での部下の成果を評価することに特徴があります。
例えば、賞与の支給を給与規程に規定している際、それぞれの賞与の評価となる期間を記載していることが一般的で、この場合はMBOによる人事評価をもとに人事評価を行います。
OKRを人事評価と連動する際の頻度は、通常四半期ごとに行います。さらに、会社によっては、毎週、毎月など、さらに短い期間で人事評価を行うことも状況によっては可能です。このように、OKRはMBOより短期間で運用できるため、即効性のある人事評価といえるでしょう。
目標を見直すサイクル
MBOの目標は、1年単位で見直します。MBOでは、人事評価を行いフィードバックを対象者に実施した後、次の年度の目標を設定するため、1年サイクルになるのが一般的です。1年内では、設定した目標への進捗状況を毎月上司と部下で確認し合い、1年が終わった時点で人事評価を実施します。
OKRの目標は、四半期単位で見直します。OKRでは、四半期ごとに進捗具合を確認し、目標の修正が必要であれば、次の四半期目標を修正します。目標を見直し新たな目標の運用を開始しますが、週、月単位などで進捗を確認し四半期を迎えた時点で、問題点などないかを確認し、新たな四半期の目標を設定します。
定量と定性
MBOは定量に特化した人事評価のフレームワークです。MBOによる人事評価は、数値化された目標の達成度によりなされ、その達成度はKPIにより行われるのが特徴です。
ここで、KPIとは、「Key Performance Indicators」の3文字の頭文字をとったもので、重要業績評価指標ともよばれます。KPIによって、会社の業績などを定量的に測定し分析することが可能になります。
OKRは、定性的な「Object(目標)」に定量的な「Result(主要な結果)」が紐づいており、定性を実現するためには定量が必要、という概念で構成されています。そのため、定性と定量のどちらも兼ね備えた目標管理といえます。
OKRとMBOの共通点
OKRはMBOを基礎とし発展した経緯があり、どちらも目標管理のフレームワークです。そのため、両者には以下のような共通点があります。
・目標管理と人事評価の紐付け
・管理する上司と管理される部下のコミュニケーション
・MBO遂行能力の研鑽
目標管理と人事評価の紐付け
OKRとMBOはどちらも、人事評価の目標設定に重きを置いています。会社の目標を明らかにし、各部署や従業員に定量できる目標を設定するのが特徴です。
MBOは定量的な人事評価に特化した目標管理フレームワークですが、OKRも定性的かつ定量的であるため、MBOと同じく目標管理と人事評価が紐づいています。
なお、OKRでの目標管理は人事評価との紐づけは密ではなく、緩く繋がっているのが特徴です。OKRもMBOも定量的な測定が必要であることが共通点です。
管理する上司と管理される部下のコミュニケーション
OKRとMBOは、どちらも目標管理において、上司と部下のコミュニケーションが重要な要素になります。上司は部下に必要なアドバイスを施し、部下はそのアドバイスを上司と共有し、齟齬のない状態にしておくことが大切です。
OKRでは、会社全体で同じ目標を設定しますが、上司の責任の中で動くのではなく、あくまで自己責任で目標に取り組みます。上司は部下に対し、仕事の向かうべき方向を示し、コミュニケーションを密にする必要があります。
MBOでは、上司が設定した目標に対し部下の取り組みがどの程度の達成度にあるか、コミュニケーションをとりながら確認しフィードバックします。そのため、定期的に人事評価に伴う面談を実施し、上司と部下のコミュニケーションにより目標管理を行うのが特徴です。
MBO遂行能力の研鑽
MBO、OKRともにマネジメントスキルが求められます。OKRはMBOを基礎としているため、MBO遂行能力を高めておくと会社の目標達成に繋がり、仕事の効率化や業績アップを可能とすることでしょう。
MBO遂行能力を高めるには、まずは、基本をきちんと理解し、人事評価の目的の設定や運用などの方法を押さえることが大切です。また、MBOはPDCAにより継続し修正を加えていく必要があるため、積み上げを重ねるうちにスキルも同時に研鑽されます。
MBO、OKRともに、実務と並行して評価者の教育研修を繰り返すことが大切です。
MBOとOKRはどちらを選ぶ?
MBO、OKRには共通点や相違点などがあるため、実際に導入する際はどちらを選ぶか迷うことも多いでしょう。
会社にあった人事評価制度を導入すると、ひいては人材育成、さらに会社の発展に繋がりますが、MBOとOKRの選択を誤ると会社に混乱を招き、従業員に悪影響を及ぼします。
そこで、MBOとOKRについての運用について解説します。
・MBOの運用しやすい会社
・OKRの運用しやすい会社
・MBOとOKRは併用もできる
MBOの運用しやすい会社
MBOは上司が部下の目標を設定し進捗を管理し評価する制度のため、会社の部署や役職が階層ごとに分かれている会社がMBOの運用しやすい会社となります。事業計画も整備され周知出来ている会社では、評価のサイクルを定型業務として組み入れることが可能なため、管理の行き届いている会社にMBOは向いています。
また、会社の目標がはっきりしており、従業員に目標認識の齟齬がなく、共有できている場合はMBO導入後の運用も可能です。
さらに、評価の対象となる従業員の部署間で、上司と部下のコミュニケーションが十分に取れていることも、MBOの運用しやすくなる要件になります。
OKRの運用しやすい会社
OKRは、目標設定のサイクルが短くなるため、スピード感と柔軟性などのある会社が、OKRの運用しやすい会社になります。縦に階層のある大規模なピラミッドというより、横にフラットな組織を特徴とする会社に向いています。
また、OKRは全社で同じ目標を設定するため、目標の重要性に理解のある組織風土と従業員の理解などが揃った会社の場合、運用による利益を得ることが可能です。
さらに、目標を修正する際、OKRは全員参加という特性のため、学習や向上心について躊躇することのない会社の風土が必要になります。
MBOとOKRは併用もできる
MBOとOKRには、共通点と相違点があり、どちらか片方だけで運用すればよいとも限りません。双方の特徴を取り入れ併用することで、効果的な人事評価を運用することも可能です。
MBOは上司と部下の評価体制を持っていますが、OKRの特徴を生かし、会社全体の目標とも紐づけできます。さらに、異なる部署がどのようなMBOによる目標を持っているのか、OKRにより可視化し全従業員で共有することもできるでしょう。そうすれば、他部署の従業員とも協力体制を築けるため、会社全体の目標達成に繋がります。
MBOとOKRを併用する際は、会社によって状況が異なるため、柔軟性を持たせ、会社にあった方法で併用することをおすすめします。
まとめ
本記事では、MBOとOKRの手法と相違点、そして、運用に向く会社などを詳しく解説しました。MBOは日本の会社では一般的には目標管理フレームワークで、人事評価といえばMBOをイメージすることが多いでしょう。一方、OKRは米国のシリコンバレーのベンチャー企業で考案され、大きな成果を収めたため、日本の会社でも導入が進んでいます。
これから、MBO、OKRのいずれかの導入を検討している場合、目標管理フレームワークは、今までとは異なる社会情勢にも合わせる必要があります。会社の規模や特性に合わせ、バランスよくMBOとOKRを組み合わせて運用できるため、導入の際は相違点や共通点を確認しておくとよいでしょう。
本記事が、ベンチャー・スタートアップ企業の経営者・人事担当者の方のご参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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この記事を書いた人
共同創業者&代表取締役CEO 茅原 淳一(かやはら じゅんいち)
慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。