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経理と総務の違い|それぞれの役割の違い・やりがい・総務の仕事内容・求められるスキルについて解説
執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)
CFOになるには?キャリアパスも解説
経理/会計/財務/経営企画などの管理部門としてのキャリア
間接部門またはバックオフィスと呼ばれる「経理部門」と「総務部門」は、企業の中でも必要不可欠な部門です。企業により、他の部門が経理職と総務職を統轄している場合があります。そのため、それぞれの業務内容の認識に齟齬がある方もいると思われます。
そこで本記事では、経理と総務の違いについて解説します。総務職に求められるスキルや、経理職と総務職のやりがいについてもご紹介するため、経理と総務の違いを知りたい方、経理または総務に転職・異動を考慮している方は、ぜひ参考にしてください。
企業の財務に関連する活動の責任者であるCFOについては、こちらの記事もご参照ください。
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目次
経理と総務の違いとは
経理と総務は、バックオフィスの中で重要な役割を担っています。経理の仕事も総務の仕事も、開発や営業のように直接の売上につながる業務ではありませんが、これらの部門なくして開発や営業も本来の業務に集中することはできません。
また、企業によっては開発・営業とバックオフィスの関係性が悪く、生産性が芳しくない場合もあります。したがって、各業務の違いを理解し、役割を分業するなら企業として適切な体制を整えられます。
経理とは、企業の資金を管理する業務です。会社に出入りする資金の流れを記録し管理します。経理部門があることで、今後の業務計画などを立てることが可能です。経理業務により、企業の金銭面での利益や損失などが一目で分かるようになります。また、経理は従業員の給与や税金、企業資産などの把握や管理も行います。
総務とは、社内の仕事環境を管理する業務です。企業の従業員の働く環境を整えるために働き、各従業員がそれぞれの業務に集中できるようにします。総務が行う管理の中には、PCやコピー機の管理、社内イベントなどの運営に関わる管理などがあります。総務が行う業務には物品を購入することも含まれるため、経理部門と連携することもあるでしょう。
経理も総務も間接部門として、企業全体の利益に大きく貢献することを目的にしています。この点に関して、経理と総務には類似点があるといえます。しかし、経理と総務の役割に関して大きく異なる点は、業務の対象です。経理の仕事が対象にしている事柄は「企業の資金」であるのに対し、総務の対象は「企業の物・人材」です。
総務の役割
総務の役割は経理の役割とは異なります。具体的な総務の役割についてご紹介します。総務職には、大きく分けると以下の役割があります。
・企業運営する上で必要な業務
・経営陣と従業員の架け橋
企業運営する上で必要な業務
総務の役割は多岐にわたります。一般的に、総務は企業における事務業務を総合的に行い、どの部門が管轄している業務か判断できない業務も担当します。
ベンチャー企業やスタートアップ企業などでは、人事部門や労務部門などが存在せず、総務部門がバックオフィスすべての役割を包括するケースが少なくありません。総務が機能することで、他部門は本来の業務に集中できます。そのため、総務は企業運営するうえで必要な業務を行い、企業において重要な役割を担っているといえるでしょう。
経営陣と従業員の架け橋
総務の役割には「経営陣と従業員の架け橋」も含まれます。従業員にとって経営陣は遠い存在です。そのため、企業の多くの従業員にとって経営陣とのコミュニケーションは1つの課題です。
総務は経営陣の意向をくみ取り、その意向を具体的な施策として現場に反映させます。また、現場の意見や要求を経営陣に提出する役割も担っています。企業において総務がうまく機能すれば、経営陣と従業員とのコミュニケーションが円滑になり、経営方針に基づいた業務目標の達成も容易になるでしょう。
総務の仕事内容
総務の役割は、社内の仕事環境を管理することです。しかし、総務の仕事は企業内の各部門だけでなく、時には社外関係者とのやり取りにまで及びます。
企業により総務の果たす仕事内容は異なりますが、ここでは一般的な総務の仕事内容をご紹介します。
・社内環境の整備・管理
・社内安全・衛生管理
・社内イベント企画
・来客・電話対応
・資産管理・物品管理・社内施設管理
・福利厚生業務
・リスクマネジメント
・人事管理・労務管理
・法務業務
・秘書業務
・行政対応
経理の仕事内容については、以下の記事をご覧ください。
⇒経理部門の仕事とは?主な仕事内容・日次/月次/年次のサイクルについても解説
社内環境の整備・管理
総務の仕事の中には「社内環境の整備・管理」があります。従業員が、本来の業務に集中できるよう社内環境を整えます。
たとえば、PCやコピー機の修理や管理、備品の発注手配から購入、メンテナンスなど幅広い仕事内容です。社内規定の作成や改定、固定資産の管理なども行います。
社内規定・ルールの設定・管理については、以下のリンクの記事をご覧ください。
⇒就業規則の作成について|就業規則の作成手順と記載事項・作成時の注意点も解説
社内安全・衛生管理
総務の仕事内容には「社内安全・衛生管理」もあります。従業員の安全や衛生管理にも気を配り、従業員が安心して働ける環境を整えることも大切な仕事です。
たとえば、従業員の健康診断を行う病院を選択し手配します。また、従業員の時間外労働抑制のための取り組みを組織します。36協定の締結、安全衛生委員会の運営などの業務も総務の仕事です。
社内イベント企画
総務は「社内イベント企画」も行います。たとえば、社員旅行や入社式、忘年会、全社会議などのイベントを企画し運営する必要があります。
参加する従業員を把握し、会場やスケジュール、予算などを調整し管理します。
来客・電話対応
総務の仕事には、社外からの「来客・電話対応」もあります。社外からの来客は、企業によっては各部署が対応することもありますが、総務が行うことがほとんどです。アポイントなしの来客に対しても総務が対応するため、相手に合わせた適切な対応が求められます。
メールやホームページからの問い合わせに対応することも総務の仕事です。また、ホームページの更新やリニューアルなども行います。
資産管理・物品管理・社内施設管理
従業員が本来の仕事に集中できるよう「資産管理・物品管理・社内施設管理」を総務が行います。
たとえば、社内施設の各種修繕を業者に依頼したり、トイレットペーパーの補充や電球交換をしたりします。空調設備の管理や防災設備の管理も重要な業務です。
企業の資産である土地、建物、企業内設備、車などの管理も行います。資産の取得や更新、修繕や廃棄など業務は多岐にわたります。
福利厚生業務
「福利厚生業務」も総務の仕事です。福利厚生制度の導入や運用、見直しなどの管理を行います。
企業により福利厚生制度の内容は異なりますが、一般的に住宅手当や扶養手当、家族手当、交通費援助、社会保険料の負担、育児休暇や介護休暇などがあります。
リスクマネジメント
「リスクマネジメント」も総務の仕事に含まれます。リスクマネジメントの仕事は、インターネット・セキュリティ対策、個人情報保護に関する社内ルールの設定および従業員教育、内部監査への対応などです。また、社内情報や個人情報の漏えいが発生した際の対応も行います。
社内ルールには、経営や業務運営に関わることや経理処理に関することまでさまざまです。ルール(規定)そのものの作成や管理から、法改正に伴う適切な変更を行うことが重要です。そのため、総務には専門的な知識が求められ、計画的な業務が要求されるでしょう。
内部監査・社内規定・ルールの設定・管理については、以下のリンクの記事をご覧ください。
⇒内部監査とは?外部監査の違い・監査プロセスを解説!
⇒就業規則の作成について|就業規則の作成手順と記載事項・作成時の注意点も解説
人事管理・労務管理
企業により「人事管理・労務管理」を総務が行う場合があります。新卒や中途の採用、人材教育などの人材管理も総務の仕事です。企業にとって大切な人材を守ることが求められます。
また、従業員の勤務表の設定や管理、有給休暇の管理なども総務が行う場合があります。入退職者が発生した場合、その従業員の社会保険加入などの手続きも総務業務です。また、給与計算や賞与の計算、年末調整なども総務が行う場合があるため、総務の仕事は多岐にわたります。
法務業務
企業により法務部門が存在することがありますが、ベンチャー企業やスタートアップ企業などでは総務が「法務業務」も行う場合があります。法務業務には、契約書の作成や管理、知的財産権の管理などが含まれます。
取引先やお客様とのトラブルや、コンプライアンス強化のための法的な事柄に対応することもあるでしょう。
法務については、こちらの記事もご参照ください。
⇒IPO準備に法務は必要?上場審査での法務の役割・業務を解説!
秘書業務
企業により秘書役員を雇用している場合がありますが、総務が「秘書業務」を行う場合もあります。秘書業務には、経営陣のスケジュール管理、出張手配、顧客などへのアポイント取得などの業務があります。
秘書業務には、電話対応や来客対応などが含まれるため、顧客との円滑なコミュニケーションを図るためのスキルが求められるでしょう。
行政対応
総務は「行政対応」も行います。行政対応業務には、国や地方公共団体への書類の作成や提出が含まれます。事業に関係する許認可や届出を目的とした行政書類の提出や、1年や5年といったある期間まで契約書などを正確に保管し管理する必要があるでしょう。
行政対応には税務申告も含まれます。税務申告を外部の企業に依頼する場合、税理士とのやり取りが発生します。そのため、総務には法律知識や、社内全体の業務を把握している必要があります。
総務に求められるスキルとは
総務職には幅広い業務が含まれるため、総務にはある一定のスキルが求められます。ここでは、総務に求められる以下4つのスキルについてご紹介します。
・高い事務処理能力
・コミュニケーション力
・PCスキル
・業務管理・スケジュール管理能力
高い事務処理能力
「高い事務処理能力」は、さまざまな業務をこなす総務に必要なスキルの1つです。
事務処理能力には、仕事の優先順位を見定めることが含まれます。限られた業務日程の中で多くの業務をこなし、スピードと正確性が兼ね備えられた事務処理能力は、総務に求められているスキルです。
コミュニケーション力
「コミュニケーション力」も総務に求められているスキルの1つです。総務業務には、他部署や経営陣、顧客や取引先との円滑なコミュニケーションも求められています。
コミュニケーション力には、相手の話を聞いて相手の要求や主張を把握することが含まれます。相手に自分の意思や要求をわかりやすく伝えたり、周囲の人たちと良好な関係を築いたりする必要があるでしょう。
PCスキル
総務の仕事には書類作成などが含まれます。そのため、書類の作成や業務スケジュールを管理するための「PCスキル」は重要です。
文章作成ソフトや表計算ソフト、パワーポイントなどのOfficeソフトを使いこなせると、総務の仕事をスムーズに行えます。
業務管理・スケジュール管理能力
総務の仕事は多岐にわたるため、マルチタスクで業務を遂行する場面もあります。時間がかかる作業や時々しか発生しない作業であったり、その業務内容はさまざまであるため、総務には「業務管理・スケジュール管理能力」が必要です。
PCスキルや高い事務処理能力があったとしても業務管理やスケジュール管理ができないなら、与えられた仕事を期限内に完了できません。そのため、総務職には業務管理能力、スケジュール管理能力が求められています。
経理職と総務職のやりがい
経理職と総務職には、それぞれのやりがいが存在します。それぞれの仕事のやりがいを理解することで、仕事に携わる姿勢も変わっていくことでしょう。
経理職と総務職のやりがいをそれぞれご紹介します。
経理職のやりがい
経理職は主に企業のお金を扱う仕事です。そのため、経理職のやりがいは、企業経営に直接貢献できることです。経理が日々管理している会社のお金が、そのまま経営に影響するため、自ら会社の売上や利益に貢献しているという実感を得られます。
経理職で業務の習熟度が上がると企業の資産状況を分析し、専門的な立場からアドバイスすることも可能です。そうすれば、企業の成長に貢献し、やりがいを実感できるでしょう。
総務職のやりがい
総務職のやりがいは、従業員の円滑な業務に貢献しているという実感です。総務が企業に機能していることで、各部署の従業員は本来の仕事に集中して取り組むことが可能です。総務は、会社の成長だけでなく、従業員の仕事へのやりがいにも貢献していることから、重要な部門であることがわかります。
総務のさまざまな業務をこなしていくうちに、総務職に必要なスキルや幅広い知識を習得できることも、総務職のやりがいにつながります。
まとめ
この記事では、経理と総務の違いについて徹底解説しました。
経理も総務も間接部門として、企業全体の利益に貢献することを目的にしていますが、その役割に大きな違いがあります。それぞれの役割を理解し、自分の得意としている分野への異動や転職を考慮することが重要です。
この記事が「経理と総務の違いを理解したい」「経理に必要なスキルややりがいを知りたい」と思っている方の参考となれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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この記事を書いた人
共同創業者&代表取締役CEO 茅原 淳一(かやはら じゅんいち)
慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。