COLUMN
コラム
信託型ストックオプションのデメリットとは?
執筆者:土岐彩花(Ayaka Doki)
『資本政策の手引き』
企業価値を高めるための戦略について
徹底解説します!
※本記事は2023年5月29日に開催された国税庁及び経済産業省による、信託型ストックオプションの税制及び適格ストックオプションの税制に関する説明会で共有された内容に関して考慮されていない内容となっております。あらかじめご了承下さい。
信託型ストックオプションは、近年開発された新たな形のインセンティブ制度です。従来のストックオプションとは異なり、
①付与先・配分先を実績に基づいて後から決められる
②発行時の行使価額の条件を保存できる
③税金が安く、有償SOの譲渡課税だけで済む
などの様々なメリットがあります。
今回はそんな信託型ストックオプションに、どのようなデメリットがあるのか、またそれに対して弊社がどのようなサポートを提供しているかについて解説していきます。
信託型ストックオプションについて更に詳しく知りたい方は、以下の記事も合わせてご覧ください。
⇒【経営者向け】話題の「信託型ストックオプション」を徹底解説
また、そもそもストックオプションの概要について先に理解を深めたい方は、以下の記事で詳しく解説しておりますのでご覧ください。
⇒【経営者必読】ストックオプション制度を徹底解説!仕組み・種類・メリット/デメリットを完全体系化!
有償ストックオプションについて更に詳しく知りたい方は、以下の記事も合わせてご覧ください。
⇒【有償ストックオプションとは?】メリット・デメリットや発行価額と行使価額の違いを簡単に解説!
信託型ストックオプション固有のデメリットとは?
信託型ストックオプションのデメリットには、信託型ストックオプション固有のものと、従来のストックオプションと共通のものがあります。ここでは、信託型ストックオプション固有のデメリットのみを扱います。
信託型ストックオプションのデメリットには、次の6点があります。
1.外部の専門家へのアドバイザリー費用が高い
2.委託者に金銭負担が生じる
3.専用のポイントプログラムの設計・運用が必要になる
4.スキームを詳しく知らないステークホルダーへの説明コストがかかる
5.上場審査や監査においてレビュー対応が発生することがある
6.信託会社に対して手数料が発生する(信託会社を利用した場合のみ)
以下、信託型ストックオプションのデメリットについてそれぞれ説明していきます。
1.外部の専門家へのアドバイザリー費用が高い
信託型ストックオプションの導入には法律・税務上の要件を満たす必要があり、外部の専門家からの助言が欠かせません。
その一方で、信託型ストックオプションのコンサルティングを行うことができる会社はまだ数が少ないため、コンサルティングフィーも高い水準となっています。
また、コンサルティングフィー以外にも、発行企業の株価算定や、ストックオプションの公正価値の算定は基本的には第三者の評価機関に依頼する必要があります。
そのため、導入に際してはアドバイザリー費用として多くのコストがかかります。
多くの場合アドバイザリー費用は一括前払いであるため、資金が不足しやすいスタートアップ企業では導入が難しくなってしまいます。
一方で、信託型ストックオプションは従来のストックオプションとは違い、多くの場合発行が一回で済みます。
このため、複数回に分けて通常のストックオプションを発行する場合に比べ、トータルコストでは信託型ストックオプションを導入した方が安くなることがある、というメリットもあります。
今後多くのストックオプションを発行することになるスタートアップでは、このメリットを最大限享受することができます。
しかしながら、通常の料金体系ではスタートアップが信託型ストックオプションを導入することが難しいため、弊社ではスタートアップを応援するための専用の料金プランをご用意することで対応しています。詳しい料金体系などについては、お気軽にお問い合わせください。
ストックオプションコンサルティングについて更に詳しく知りたい方は、以下の記事も合わせてご覧ください。
⇒【経営者向け!】ストックオプションのコンサルティングとは?依頼すべき理由や気になる相場を徹底解説!
2.委託者に金銭負担が生じる
信託型ストックオプションの発行時には、基本的には経営者、もしくは株主の方が信託の委託者になる必要があります。
委託者は信託契約を締結し、その際に金銭を信託財産として払い込みます。
ここで信託した金銭は、受託者が発行会社の発行するストックオプションを引き受ける際の原資や、法人課税信託における法人税の支払い等に使用されます。そのため、委託者は受託者に対し、
発行会社のストックオプションの発行価額 × 信託するストックオプションの個数 + 法人税等
と同額以上の金銭を信託しなければなりません。これは委託者の個人資産からの拠出となるため、それが委託者が十分に支払える額を超えてしまうと発行が難しくなります。
このような問題に対応するには、信託するストックオプションの個数を減らすか、ストックオプションの発行価額を抑えるという選択肢があります。
弊社では、ストックオプションの発行価額を抑える手法について、業績条件などの権利行使条件をストックオプションに付与することで、合理的な範囲においてストックオプションの発行価額を抑えるサポートを提供しています。
これにより委託者の金銭負担を減らし、より手軽に信託型ストックオプションの発行が行えるようになります。
具体的にどの程度発行価額を抑えられるかについては会社によって大きく異なりますので、弊社では発行価額の無料試算を行っています。
無料試算のお申し込みについてはお気軽にお問い合わせください。
3.専用のポイントプログラムの設計・運用が必要になる
信託型ストックオプションのスキームでは、ストックオプションが保管される信託が、税法上の「法人課税信託」(法人税法第2条29号の2)として課税を受けるために、税法上の「受益者(みなし受益者を含む)が存しない信託」に該当するように設計されます。
この「受益者等が存しない信託」に該当するためには、法令の要件を満たすよう最終的なストックオプションの配賦を決めていかなければなりません。
一般的な方法としては、予め定められた客観的に判断できるガイドラインに従って、人事評価などに基づき各役員・従業員等に対して実際のストックオプション(正確には信託受益権)と交換できるポイントを付与するという方法が採られます。
したがって、信託型ストックオプションの発行においては、このポイント付与におけるガイドラインの作成や、人事評価の設計、運用などを適切に行う必要があります。
弊社では、数多くのポイントプログラムの設計・運用実績があり、各社の人事評価制度やストックオプションの付与の考え方とリンクした設計を行うことができます。
また、まだ人事評価制度が整っていない場合は、人事評価制度まで含めて設計のサポートを行っています。
弊社はポイントプログラムの設計・運用及び新株予約権の管理簿の作成までをサポートする唯一の企業です。
信託満了時にポイントをストックオプションに転換するまで、ポイントプログラムの運用を末長く支援させていただきます。
4.スキームを詳しく知らないステークホルダーへの説明コストがかかる
信託型ストックオプションは、近年開発されたばかりのスキームです。そのため、このスキームについて認識していない投資家や従業員などの関係者への説明コストがかかります。
信託型ストックオプションは高度な知識を有する専門家が開発し、数多くの上場実績もある適法スキームですが、未だにそのような認識が広がっていないのが現状です。
導入に当たっては、当該スキームを知らない方への説得に説明コストが生じ、適切な説明ができなかった場合は誤解を生んでしまう可能性もあります。
弊社では、信託型ストックオプションの導入に関して関係者から懸念があった際には、状況に応じて関係者の方へのご説明をさせていただくことができます。
また、従業員に対しては信託型ストックオプションの説明資料を配布させていただいております。
5.上場審査や監査においてレビュー対応が発生することがある
現状、信託型ストックオプションの導入自体が上場審査において影響をもたらすことはありません。信託型ストックオプションを採用しながらも上場をしている企業は多くあります。しかしながら、上場審査では企業の上場に関わる幅広い質問事項が問われ、その中でストックオプションの運用方針などについてレビュー対応等を求められる場合があります。
弊社では、提携先の法律事務所と共同でレビュー対応をさせていただくことが可能です。
上場審査について更に詳しく知りたい方は、以下の記事も合わせてご覧ください。
⇒上場審査とは?審査基準・審査の流れ・審査通過のポイントを徹底解説!
内部監査・外部監査について更に詳しく知りたい方は、以下の記事も合わせてご覧ください。
⇒【経営者・役員向け】内部監査とは?外部監査の違い・監査プロセスを解説!
⇒外部監査とは?内部監査との違い・外部監査の目的・監査プロセスを解説!
信託型ストックオプションと上場に関連した詳細は以下の記事もご参照ください。
⇒【経営者向け】信託型ストックオプションだと上場できない?導入事例から読み解く組織の課題と解決策
6.信託会社に対して手数料が発生する(信託会社を利用した場合のみ)
弊社では基本的にはご案内しておりませんが、信託型ストックオプションは信託会社を利用しても発行することができます。
この場合、毎年の信託財産の計算書の作成などを行う必要はありませんが、信託会社に対して高額の手数料が発生します。
まとめ
以上のように、信託型ストックオプションにはいくつかの固有なデメリットが存在します。しかし、解決可能なデメリットも多く、弊社では様々なサポートを提供しております。
また、信託型ストックオプションにはこれらのデメリットを上回るような様々なメリットがあるのも事実です。
信託型ストックオプションのメリットについてより詳しく知りたい方は、【経営者向け】話題の「信託型ストックオプション」を徹底解説 こちらの記事をご覧いただくか、こちらから弊社で毎月開催しているセミナーにお申し込み下さい。
また、記事の内容や、導入についてご質問・ご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
最後までお読みいただきありがとうございます!
また、ストックオプションのご導入を検討をするには、プロの専門家に聞くのが一番です。
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そんなお悩みを抱える経営者の方に、要望をしっかりヒアリングさせていただき、
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この記事を書いた人
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。