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公認会計士からCFOは目指せる?求められる役割とCFOに転職するメリットについて解説

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

CFOになるには?キャリアパスも解説

経理/会計/財務/経営企画などの管理部門としてのキャリア

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上場を目指すスタートアップ企業やベンチャー企業が、上場やM&AのためにCFOを新規で募集することは珍しくありません。

しかし、CFOの募集要件には「公認会計士資格」などの条件がついていることもあります。

上場の手続きは非常に煩雑で専門性が高いので、公認会計士が持つ知識やスキルが役に立つことは間違いありません。

この記事では公認会計士がCFOとして求められる理由やベンチャーやスタートアップで具体的にどんな仕事や役割を期待されているのかを解説します。

CFOとして転職を検討されている公認会計士の方や公認会計士の資格取得を検討している方はぜひ最後までご覧ください。


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CFOに資格が必要か

CFOになるために資格は必ずしも必要ありません。そして、会社内部からCFOへ昇進した人は公認会計士などの難関資格を持っていないケースがほとんどです。

では、なぜCFOの募集には公認会計士などの資格保有者が求められることが多いのでしょうか?

ベンチャー企業やスタートアップ企業においては、「これから企業風土を醸成していき」「これから上場を目指す」というケースがほとんどです。

会社には企業文化や専門的なスキルが蓄積されていないので、一定以上のスキルや経験や知識がある人のベンチマークとして「公認会計士資格保有者」が、CFOの募集要件になっているケースが多いというだけです。

そのためベンチャー企業やスタートアップ企業にとって必要な知識や経験があれば、必ずしも公認会計士取得者でなくてもCFOとして採用される可能性があります

投資銀行勤務経験者やMBAホルダーなどであれば公認会計士資格がなくてもベンチャー・スタートアップ企業に採用されることもあります。

ただし公認会計士資格を持っていた方が、客観的に専門性や経験やスキルがあると判断されるので、CFOとして採用されやすいことは間違いありません。

公認会計士がベンチャーのCFOに選ばれる理由

公認会計士がベンチャー企業やスタートアップ企業のCFOに選ばれることが多い理由は、主に次の3つです。
・財務や経理について知識が必要だから
・経営管理に関する知識が必要だから
・IPOやM&Aを実施する機会が多いから

CFOの仕事は財務や経理などの企業の資金に関することから、経営管理まで多岐に渡ります。そして、ベンチャーやスタートアップにとってはIPOやM&Aは企業を大きくするための非常に重要な手段です。

公認会計士はこれら全てにおいて知識と経験を持っているため、CFOとして求められることが多いと言えます。公認会計士がベンチャーのCFOに求められる3つの理由について詳しく解説していきます。

財務や経理について知識が必要だから

CFOは財務と経理の2つの知識が必要です。財務とは主に予算を立てることです。「どの部門にいくらの予算を充てるのか」ということを、過去の実績を参照し、経営目標の実現に向けて計画を立てていきます。

経理とは売上や支出の処理です。「何にいくら使ったのか」を集計し、損益を計算して会社の実績を把握し、翌年の予算へと活用します。

CFOは将来出ていくお金と過去に使ったお金の両方に責任を持たなければなりません。公認会計士であれば、会計処理だけでなく経営分析までできるので、CFOの仕事に必要な知識を有していると考えられます。

経理・財務については、次の記事もご参照ください。
経理部門とは?業務内容と仕事のサイクル・やりがい・待遇について解説
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経営管理に関する知識が必要だから

CFOの仕事には経営管理も含まれます。経営管理とは策定した予算通りに会社が運営されているのかをモニタリングすることです。

経営管理の内容は、生産管理・販売管理・購買管理・人事管理といった組織を効率よく経営していくために必要な要素が含まれます。経営管理の知識を前提として、企業の経営に欠かせない「ヒト・モノ・カネ」に関する管理および調整する能力が求められます。

公認会計士は監査法人における監査の経験などから会社の経営管理や監査などにも幅広い知識を持っています。財務や経理だけでなく、経営管理まで任せられる人材として公認会計士は重宝されます。

経理・財務の仕事については、次の記事もご参照ください。
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財務部門の仕事とは?主な仕事内容・役に立つ資格・キャリアパスについて解説

IPOやM&Aを実施する機会が多いから

公認会計士がベンチャー企業やスタートアップ企業のCFOとして招かれる機会が多い理由として最も重要なのがIPOやM&Aを実施するためです。

ベンチャー企業やスタートアップ企業の大きな目標の1つが上場です。IPOによって上場するためには非常に複雑な手続きを長期間かけて実施しなければなりませんが、専門的な知識と経験を持たない従業員や経営者がIPOの準備を行うことは極めて難しいです。

また、他社との合併で大きくなることを標榜する企業にとってはM&Aに関する実務がわかる人材が必要です。そこでIPOやM&Aの実務に精通した人材をCFOとして企業へ迎え入れる必要があるのです。

公認会計士はIPOやM&Aの実務にも幅広い知識を持っていることが一般的ですので、将来的な上場を目指して公認会計士をCFOとして募集している企業は多数存在します。

IPOおよびM&Aについては、次の記事もご参照ください。
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公認​​会計士がベンチャー・スタートアップ企業のCFOで求められる3つの役割

公認会計士がベンチャー企業やスタートアップ企業から求められる具体的な役割は主に次の3つです。
・資金調達
・財務戦略の立案・実行
・IPOの準備・M&A

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

資金調達

CFOの役割の1つが資金調達です。ベンチャー企業やスタートアップ企業は銀行借入よりも、投資家から直接大きな金額を調達するケースが多々あります。具体的には新株を発行したり、私募債を発行するケースです。銀行などの金融機関からの借入であれば、一般の従業員でも問題なく資金調達できます。

しかし、新株発行や、私募債発行には専門的な知識とスキルが必要になるので公認会計士の方が向いています。新株や私募債発行による資金調達を行うことは公認会計士の資格を持つCFOとしての重要な仕事です。

資金調達については、次の記事もご参照ください。
ベンチャー・スタートアップの資金調達方法とは?投資ラウンド別・調達事例を含めて徹底解説!
資金調達の手段・方法には何がある?それぞれのメリット・デメリットも徹底解説!
【新株予約権とは?】種類・メリット・デメリットについて解説

財務戦略の立案・実行

財務戦略を立案して実行することもCFOとしての重要な仕事です。財務戦略とは、経営目標を達成するために必要な資金を調達することや、会社の資金や財産を運用したり、他の経営目標達成のために投資を行うことです。

「どこから資金調達をすれば、どの程度のコストがあるのか、経営への影響はどのくらいか」とか「どこへいくら投資をすると、どの程度の利益が期待できるのか」ということを考えなければ適切な財務戦略を策定することはできません。

資金調達、資産運用、経営戦略、これら全てに精通していないと適切な財務戦略を策定して実行することはできないので、こちらも公認会計士がCFOとして行う重要な仕事になります。

経営戦略については、次の記事もご参照ください。
経営戦略部門とは?業務内容・やりがい・必要なスキル・近年の動向について解説

IPOの準備・M&A

IPOに向けた準備や、M&Aを実施する場合の相手との交渉や社内の調整なども公認会計士がCFOとして行う仕事の1つです。特にIPOは準備が非常に大変です。

ビジョンやビジネスモデルを策定し、資本政策の立案、社内に上場準備のためのさまざまな部署を設け、主幹事証券会社の選定と交渉まで行う必要があります

上場準備には少なくとも3年程度の時間がかかるので、長い時間をかけて、確実に企業が上場できるように漏れなく準備を行います。

上場を目指すためにCFOを募集するベンチャー企業やスタートアップ企業も多く、IPO準備がCFOとして最も重要な仕事になるケースもあります。

IPOに向けた準備・資本政策・主幹事証券会社の選定については、次の記事もご参照ください。
IPOの準備スケジュール|直前前々期から申請期まで解説
IPOに向けた成功する資本政策|上場後の資金調達の仕組みも解説
IPOにおける主幹事証券会社の選び方|主幹事選択の事例と証券会社について解説

公認会計士がベンチャー・スタートアップ企業のCFOへ転職するメリット

公認会計士がベンチャーやスタートアップのCFOとして転職することには主に4つのメリットがあります。
・人材としての市場価値が高まる
・上場達成などやりがいのある場面が多い
・高年収・ストックオプションの獲得
・経営者としての成長

報酬面だけでなく、キャリア面でのメリットが大きいでしょう。公認会計士がCFOとして転職する5つのメリットを詳しく解説していきます。

人材としての市場価値が高まる

CFOとしての職務経験があるということは、将来的に別の会社へ転職する際の大きなプラスになります。

同じように上場を目指すベンチャー企業やスタートアップ企業のCFOとして勤務できる可能性がありますし、経営者候補として採用される可能性もあります。また、上場企業の財務部長・経理部長やCFOなどのポジションが期待できます。

企業の資金を統括する最も経営に近いポジションであるCFOという経験や、一通りIPO準備をしたという経験は人材としての価値を大きく高めます。労働市場にCFO経験者は多くないので、これから上場を目指していくスタートアップ企業などで引く手数多となるでしょう。

財務部長については、こちらの記事もご参照ください。
財務部長の仕事とは?仕事の内容・待遇・求められるスキルや能力について解説
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上場達成などやりがいのある場面が多い

企業の上場準備には時間がかかりますし、手続きも非常に煩雑で、調整しなければならない事柄は多くあります

中小企業やベンチャー企業・スタートアップ企業から上場を達成するということは、公認会計士として監査法人などで働くこととは別のやりがいがあるでしょう。

社内でCFOをトップとして作ったチームで上場を達成した時の満足感ややりがいは計り知れません。そして、上場によって企業はより大きく成長していくでしょう。

企業人として、他では代え難いやりがいを感じることができるのも公認会計士がCFOとして働くことのメリットだと言えます。

高年収・ストックオプションの獲得

CFOへ転職すれば多くの場合で監査法人などで働くよりも高い年収が期待できます。すでに上場している企業や資金調達をして、これから上場を目指すスタートアップ企業などは年収や待遇面では申し分ないでしょう。

しかし、資金調達を考えているベンチャー企業や資本力が不十分なスタートアップ企業では、CFO人材の待遇というには不十分な年収しか用意できない場合もあるでしょう。

この待遇のギャップを解決する手法の1つに「ストックオプション」があります。IPO前に、予め決めた価格で株式を取得できる権利であるストックオプションを付与された役員・従業員は、将来企業の株価が上昇した時に、権利を行使することで莫大なキャピタルゲインを得ることができます。

このように、公認会計士がCFOとしてベンチャー企業やスタートアップ企業で働くことは、年収のアップとストックオプションによって上場前の株式を取得できるという金銭的なメリットもあります。

ストックオプションについては、こちらの記事もご参照ください。
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経営者としての成長

CFOは経営に非常に近いため、働きながら経営者としての視点を学ぶことができます。公認会計士は財務や会計のプロではあるものの、経営者としての視点やスキルを持っている人は多くありません

しかし、CFOとして働くことによって、他の公認会計士は持ち合わせていない経営者としてのスキルを身につけていくことが期待できます。

公認会計士として経営者の視点やスキルを持っている人材は非常に少ないので、転職市場で重宝され、より高いポジションや好条件で転職できるでしょう。

公認会計士出身のCFO

公認会計士は財務や経理、監査について一定のスキルを持っており、監査法人で上場企業の監査経験がある人は、上場についてのスキルやポイントを理解していると判断されるので、CFOとして採用されやすいと言えます。

しかし、次のような人は公認会計士の資格を持っていてもCFOとして採用されることは難しいでしょう。

・試験合格後すぐで実務経験が乏しい
・監査のスキルはあるが資金調達や上場準備経験全般がない
・監査の指摘のみの経験があり、指摘を受けて対応した経験がない

このような人は、いくら公認会計士の資格を持っていても実務経験がないのでCFOとしての現場対応ができないと判断されて採用が難しくなることもあります。

CFOとして企業への参画を検討しているのであれば、公認会計士としての資格に加えて、企業の財務部門での勤務や、コンサルティングファームでの経験、投資銀行での勤務経験などが重要です。

公認会計士としての専門知識と、経営に近い位置で現場対応ができる経験がCFOには求められると理解しておきましょう。

CFOの年収

CFOの年収は大手企業や中小企業など企業の規模や業種によって異なります。公認会計士がCFOとして転職すれば大幅な年収増が期待できますが、それがどの程度なのか、世界30ヵ国に拠点を持つ人材紹介会社のロバート・ウォルターズの日本法人がまとめた「給与調査 2019 日本」をもとに解説していきます。

また、CFOの年収についてはこちらの記事もご参照ください。
CFOの平均年収はいくら?相場を詳しく解説!

大手企業

大手企業のCFOの平均年収は2,500万〜5,000万円となっています。大手企業のCFOということは上場企業のNo.2レベルのポジションですので、非常に高い年収を期待することができます。

なお、監査法人勤務の公認会計士の平均年収はマイナビによると、スタッフ職で最低500万円程度、シニアが600万円から、マネージャーなら800万円〜1,000万円となっています。

そのためCFOとして大手企業に勤務すれば監査法人金むの公認会計士の倍以上の年収を得ることが期待できます。

中小企業

中小企業のCFOの平均年収は東京の企業の場合は1,500万〜2,500万円、大阪の企業では1,800万〜2,600万円となっています。

大手企業よりも平均年収は劣るものの、監査法人に勤務するよりは年収アップが期待できます。また、このような中小企業で経験を積むことによって大手企業のCFOへのステップアップも期待できるでしょう。

まとめ

公認会計士は経理、財務、経営管理、上場準備などの知識を豊富に持っていると解されているのでCFOへ転職できる可能性が高いと言えます。

特にベンチャー企業やスタートアップ企業は将来的に上場を希望している企業が多く、上場準備のために公認会計士をCFOとして迎えたいと考えているところも多いでしょう。

CFOへ転職できれば監査法人で働くよりも高額な年収を期待できますし、人材としての価値も高まり、将来的には年収5,000万円クラスの大手企業のCFOへ転職できる可能性があります。

ただし、公認会計士の資格さえ保有していれば誰でもCFOとして働けるわけではありません。

経営や監査の場で実務経験を積み、CFOとして現場判断ができる人間が求められます。

CFOとして働きたい公認会計士の方は、まずはコンサルタントや投資銀行などの現場での経験を蓄積していきましょう。

また、管理部門の職種としてキャリアアップしたい方、さらにCFOとして経営参画も視野にいれている方は、プロの専門家に相談するのが一番です。

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この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。