COLUMN
コラム
【書き起こし 前編】プロCFOに聞く、ベンチャー資金調達の相談会|投資契約の失敗を回避する秘訣とは?
執筆者:土岐彩花(Ayaka Doki)
『資金調達の手引き』
調達ノウハウを徹底解説
資金調達を進めたい経営者の方の
よくある疑問を解決します!
SOICO株式会社がオンライン開催する「プロCFOに聞く、ベンチャー資金調達の相談会」。第4回となる5月14日(金)15時からは、スポーツクラブ上場を日本で初めて成功させた株式会社One Purpose代表取締役の明石知樹氏、株式会社NextNinja取締役CFOでMBAホルダーの島袋忠氏をお呼びし、資金調達のノウハウや注意点、CFO採用・転職で求められる条件などついてお聞きしました。
※本記事はセミナーの収録内容を書き起こしたものです。
※オフレコの内容は削除しております。
目次
「プロCFOに聞く、ベンチャー資金調達の相談会」とは
IPO経験のある取締役や大手外資系投資銀行出身者、ベンチャーファイナンス経験の豊富な上場企業の執行役員など、一流の「シェアリングCFO」をお呼びし、資金調達時の注意点や体験談などに関して情報共有を行うイベントです。
イベント中は参加者の質問・相談を受け付けており、登壇するCFOからその場で意見やアドバイスを聞くことが可能です。また、希望される方は、相談会後約30分、CFOに個別相談することができます。
<第4回相談会の開催日時>
主催:SOICO株式会社
日時:5/14(金) 15:00〜17:00
URL:https://sharingcfo4.peatix.com/
<登壇者>
明石知樹氏:株式会社One Purpose 代表取締役
島袋忠氏:株式会社NextNinja 取締役CFO
<モデレーター>
土岐彩花:SOICO株式会社 取締役COO
冒頭挨拶
土岐彩花(SOICO株式会社 取締役COO、以下土岐):ベンチャー資金調達の相談会にお申込みいただき、誠にありがとうございます。それではお時間になりましたので始めさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
本日、講義形式ではなく、相談会とさせていただいています。双方向で質問を受け付けながら、回答していきたいと思います。
登壇者紹介
明石知樹氏(株式会社One Purpose 代表取締役)
明石:初めまして。株式会社 One Purpose の明石と申します。
私は大学を卒業してから、りそな銀行に入社して7年間、法人の資金調達、主に融資の営業をやってきました。最後、渋谷支店に勤務していたのですが、スタートアップの企業は銀行から融資を受けにくいとか敷居が高いとか、一方で銀行側も、スタートアップにリスクとって融資ができないというところがありました。「ベンチャー企業、スタートアップ企業の味方になりたい」と思って辞めて独立して、会社を立ち上げたという流れになっております。
一番初めに立ち上げた会社が、株式会社Co-creating partnerという会社です。当時の専務の者と一緒に立ち上げて、①不動産、②建築・内装工事、③財務のコンサルという3つの柱でやっていました。例えば、飲食店のオーナーさんがお店を出したいというときに、物件を探す事業と物件を見つけた後の内装の補助する事業。そして、この2つをやろうと思うと、内装で1000万、2000万はかかってお金の悩みも出てくるので、その資金調達のサポート。このようにワンストップでお店作りのサポートをやっております。去年の年末、専務に事業の代表権を譲って、今の会社を立ち上げております。
財務のコンサル事業の方は、社外CFOとして、10社の財務顧問をさせていただいています。10社を足すと、グループ年商40億ぐらいのCFOとしてやっております。融資の資金調達の窓口をやっていますが、顧問先が増えれば増えるほど連携する金融機関も増えて、約30行とつながりを持っています。
7年間で累計28億ぐらいの資金調達をサポートしてきました。
琉球アスティーダ公式サイトより引用
もう1つ取締役をさせていただいているのが「琉球アスティーダ スポーツクラブ」という会社です。沖縄の会社で卓球の事業を運営する会社ですが、Jリーグ・Bリーグの卓球版のプロリーグ「Tリーグ」が約3年前にできまして、その沖縄のチームの取締役をしております。会社を立ち上げた代表の早川が「このスポーツの業界を新しく変えたい」と、初めから上場を目指してやっていたところ、社外CFOとして入りまして、1から上場の準備をやってきました。
今年の2月、3年目にしてリーグチャンピオンになりまして、翌月にはプロスポーツチームとして日本で初めて上場させていただいたという流れになります。まだ東京では知名度が高くありませんが、東京プロマーケット(TPM)という市場に一番に上場しました。鞍替えを目指して次のステージに向かっている、というところでございます。
話題になったのがスポーツチームでの上場と、もう1つがFUNDINNOを通して行った「株式投資型クラウドファンディング」での資金調達。クラウドファンディングをした企業で上場した会社は日本に1社もなく、それを初めに成し遂げたというところで、様々なメディアに取り上げていただきました。
最後に、社外の活動で関わっているのが「パッションリーダーズ」という経営者の会です。東証一部上場企業 株式会社ネクシィーズグループの近藤代表が作った経営者団体です。特別理事で三木谷さんやSBIの北尾さんが入ってくださっています。財務の企業経理や資金計画の公認講師をさせていただいております。
島袋忠氏(株式会社NextNinja 取締役CFO)
島袋:私は株式会社NextNinja というスマートフォンゲームを開発している会社で現役のCFOを担っております。
業界はずっと一貫してIT通信業界。インターネットの黎明期からモバイル、ゲーム、エンターテインメントという業界におります。キャリアは法人営業から事業企画・経営企画に携わるようになり、現在はCFOに至るという感じになります。どっぷり事業畑出身で、かつ事業会社でどっぷり浸かっているという感じになります。
NextNinja公式サイトより引用
現任の会社は成長軌道に乗っていて、資金調達だけではなく、組織設計や採用活動も行っています。資金調達そのものは、デットとエクイティそれぞれの経験がありますが、それ以外にも、管理部門のマネジメントに関わるところでも構いませんので、お答えできるところはどしどしお答えしていきたいなと思っております。
1.「社外CFO」という仕事を選んだ経緯は?
土岐:まず、社外CFOのような様々な会社をファイナンスの面からサポートする仕事を選ばれた経緯、実際仕事をしてみてどうかについて伺えればと思います。
明石:銀行時代に、スタートアップの方が銀行になかなか相手をしてもらえないところを見てきました。それが一つの動機です。
日本で起業家がもっと増えないと、日本経済は良くなっていかないと思います。
「新しい産業や会社が、もっともっとチャレンジできる土俵」を作っていきたいというビジョンがあります。私ができるのは財務やお金周りのことが強いので、起業家に頼ってもらえるナンバー2のような存在としてもっともっと活躍したいという思いで、働き方を広げていっています。今、銀行員の方などをヘッドハンティングして一緒にやりませんか、みたいなこともやっています。
島袋:資金調達はシリーズAの段階でも当然必要です。先ほど土岐さんからも、「資金調達の失敗で事業が立ち行かなくなってしまった企業をよく見かけたので、そういった起業家を助けたい」というSOICOを創業した思いを語っていただきましたが、その問題点は非常にあると思っています。
経営者の方が一人で事業と財務の両面を担うのはかなり大変です。シェアリングCFOはそのニーズに合った、課題解決に合ったサービスであると思っています。
シェアリングCFOとは?
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2.東京プロマーケット上場を目指した理由・メリットは?
土岐:ご質問が届きました。明石さんに2つご質問があります。
まず1つ目は、スポーツチームの企業を上場させるにあたって、プロマーケットを経由するメリットは何か。プロマーケット経由の有無にかかわらず、マザーズ上場の工数は変わらずかかってくるものという認識です。市場変更を予定しているのであれば、直接マザーズを目指した方が不要な工数を減らせるといった観点はなかったのでしょうか。
明石:社長の考え方になるんですが、プロマーケットを目指した理由は「1番目にスポーツクラブで上場する」というのを達成したかったからです。他にも上場を目指している会社はありましたが、どこよりも早く上がることが、メディアに取り上げてもらうという意味でもインパクトがあると考えていました。
自分たちで見つけてこないと実際成り立たないところなので、資金調達メリットはないんですが、地方であればあるほど、私は東京プロマーケットはこれから意味があるなと思っています。銀行からも上場会社という見られ方に変わります。そして沖縄で言うと、上場企業は10社ぐらいしかなく、その中の1社になっていると信用力は大きく変わっていきます。
営業面でも採用面でもプラスになっているのを感じています。はじめにプロマーケットで上がって、最低限、IRなど上場企業がしないといけないことをちょっとずつ実践していきながら、次のマーケットに向かっていくというのはアリなのかなと思っています。
3.クラウドファンディングで資金調達する長所・短所は?
土岐:2つ目の質問は、マザーズなどへの上場に際して、クラウドファンディングは不透明なバリュエーションによる資金調達の側面および、上場前に不特定多数の株主に株式を分散させてしまうなどのデメリットがあるものと存じます。クラウドファンディングを活用するプロコン(長所と短所)をご教授いただけると幸いです。
明石:今回の場合、FUNDINNOさんでバリュエーションの面を第三者からきちんと評価してもらっています。
上場までの過程で、問題のない範囲でバリュエーションをつけてやったんですが、この不特定多数のところ、審査上「かなり大変だった」というのが正直なところです。なぜかというと、東証も初めてだったのでどうしたら良いのかわからない。特に、私たちも会ったことがない株主が入ったりするので、「それって本当に大丈夫なの?」というところもあったんです。FUNDINNOさん自身が投資家に対して定期的に反社チェックをする仕組みがあって、そこをちゃんと東証に説明したのと、「我々ももちろん反社チェックやってますよ」っていうところで説明を繰り返して、やっとOKもらったという形ですね。
今後は東証でも実績ができたので、事例として広がってくるのかなと思っております。
活用するメリットのところで言うと、私たちはスポーツチームなので応援してくださるファンが増えるとプラスになります。個人でスポンサーになる、もしくは試合があったときにグッズを買ってくれるなど、副次的な売り上げの要素にもなります。また、私たちのことを知ってくれる機会にもなるので、そういった意味ではクラウドファンディングの活用はアリなのかなと思います。だから業種によってはB to Cはよく合うという風に言ってますね。
土岐:こういった質問はよく我々も受けていたので、その成功事例が出たというのはすごく大きなインパクトなのかなと思っておりますし、お話が伺えて私もすごく勉強になります。
4.資金調達で注意すべきポイントと失敗談を教えて下さい
土岐:お2人がこれまでサポートされた会社やご自身がいらっしゃった会社の中で、資金調達の失敗事例やこういったものは気を付けたほうが良い・避けたほうが良いなどを伺えればと思っております。
島袋:2点お話いたします。1点目は、お金は引っ張るときに引っ張るというよくあるお話です。
例えば今の会社の場合、開発資金として融資を受けたり、投資をしていただいたりするのが多いんですが、基本的には計画通りにいかないです。ちょうど成長軌道に乗っているところですが、会社をスタートして、あるいは事業を立ち上げて、ピンチは3回くらいは来るんですよね。1回調達しただけでは足りなくなります。そこの余力は少し視野に入れても良いんじゃないかなというのはあります。2回目のエクイティなりデットなりを調達するとき、雨が降っているときは傘を貸してくれないということもあるので、そこの部分をちょっと念頭に入れておくという感じですかね。
2点目は、エクイティの株式シェアですね。
先ほど申し上げた通り、必要なとき、計画していた通りに調達ができれば良いですが、なかなかそうはいきません。「赤字経営です」、「エクイティは出してくれるところがありました」というとき、絶対、シェアが削られてしまうので、それが後々にきいてくる。よくある資本政策の話なんですが、そこは本当にしっかりと、やった後にじゃあ次どうしようかと。例えば、もともと計画していた上場までのエクイティストーリーがあったとき、経営者のシェアがこれくらいなら安定、株主がこれくらいなら安定と想定していたのが計画狂いましたよね。じゃあどうしていきますか、ということは常に念頭に入れておいたほうが良いと思います。エクイティの資本政策を失敗すると本当に取り返しが大変になります。絶対にきかないとは言いませんが、大変になるということは念頭に。私も入れていることです。
明石:財務で関わっていた会社さんで、私がまだ始めたてぐらいのときだったのですが、その会社もベンチャーでまだ創業3年目ぐらいの建築業の会社でした。
非常に成長のスピードが速かったのですが、損益の管理ができていなくて、蓋を開けてみたら赤字体質が続いていた。社長といろいろ話して「この社長は最後までやり切ってくれる」と信じて、つながりのある金融機関を紹介して融資してもらいました。しかしその後、なかなか赤字体質から抜け出せず、融資したお金も他の投資に流れたりとかして。そのコントロールまで入り込まずに、銀行の融資担当の窓口みたいなところだけやっていたので、赤字がどんどん広がっていきました。結局、融資の返済のお金っていうのがなかなか苦しくなって、リスケになってしまいました。金融機関からしたら、営業担当の成績に”バッテン”がついてしまうので、申し訳ないことをしたなというのがありましたね。
そこで学んだのは、「それって今、本当に融資必要なんですか」ということです。赤字体質の企業に対して融資するときは、まず今の状態で努力して黒字化できるような目途がある程度たっているのか、もしくは、とりあえず延命措置のような形で資金がほしいのか、把握しておかなければならないと学びました。
5.VCと比較して、事業会社から投資を受けるのはどれくらいハードルが高いですか?
土岐:続いて資金調達に関する質問です。これから投資家回りを始めようとしているのですが、事業会社から投資を受ける際のハードルはVCと比べてどのくらい高いものなんでしょうか、あるいはそういう話でもないんでしょうか。
島袋:ハードルというより、見るべき視点が違うと思います。
一般的に、VCさんの場合は、その想定した範囲のリターンがどのくらいになるかというところを見ます。一方で事業会社さんは、純投資というよりかは「自社の事業にシナジーがあった」、ないしは「今後のシーズ要素(商品の持つ価値や強み)として可能性があるのかどうか」というところを見ます。
あとはお金の話全般に言えるのかもしれないんですけれど、特にシード・アーリーの会社さんに投資をするということであれば、経営陣、ボードメンバーをしっかりと見てこの人たちがちゃんと事業を回せれるのかどうか、経営していけるのかどうかを重点的に見ます。
そういう意味での違いはありますが、今、全体的には投資先がなかなかないというような、要はお金が余っている状態なので、割と出資を受けるハードルそのものはそんなに高くはないんじゃないかなという実感はあります。
明石:琉球アスティーダでも、クリスティアーノ・ロナウドをCMに使ったシックスパッドをやっているMTGベンチャーズさんから出資を受けました。事業会社の方はやはりシナジーを求めて出資してくださったというのが大きいですね。事業会社ならではの独自のネットワークでいろんな方紹介していただきました。結構、起業家の気持ちを分かってくださるVCではあるんですが、MTGのCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)みたいな形なので、事業会社とVCではどっちがハードルが高いかというのは、「どっちが高いっていうのはないのかな」と思っています。相性の方がどらちかというと大きいのかなと思っています。
6.投資契約で注意すべき条項・入れるべき条項はありますか?
土岐:巷に流通しているJ-KISSの雛形ですと、投資家に有利な建付けになっていることもあると聞いたことがあるのですが、VCなどから資金調達をする際に気を付けておくべき条項、これが入っていたら強いというものでは、どのようなものがありますでしょうか。
島袋:J-KISSの雛形は見たことはありますが、優先株とか、いわゆる清算時の情報とか転換比率等についてはしっかりとチェックをされた方が良いと思います。
投資契約のチェックをするのは、ご自身でやらずに弁護士を通した方が絶対良いと思います。多少費用がかかると思いますが、ベンチャー向けの経営の弁護士さんで、顧問料月5万ぐらいから受けてくださる方はいらっしゃいます。
特に最近ですと、日本の投資家さんだけでなくて海外の投資家さんもお金の出し手としていらっしゃると思います。そうすると投資契約書も当然英語になってくると思うので、ぜひ専門家にお願いされた方が良いと思います。
明石:ここは島袋さんと一緒です。買戻し請求など、知り合いの会社でもここで相当揉めるところを見てきたんで、気を付けた方が良いのかなと思いますね。
島袋:投資を受けるときに、お金が入って舞い上がっちゃうところもあって、ワーストシナリオを描けないんですよね。そこを冷静に見極めてくださる方、もちろんシェアリングCFOもそうなのかもしれないんですが、ちゃんとリスク判断をしてくれる弁護士の先生には、絶対にお願いした方が良いと思います。後で後悔しないですね。
パネルディスカッションは残り7題。
後編に続く▶文字起こし 後編はこちら
シェアリングCFOとは?
詳しくはこちら▶【導入コスト0でCFO業務をプロに依頼】シェアリングCFO
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この記事を書いた人
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。