COLUMN
コラム
【書き起こし】第3回 CXOイノベーションフェス|失敗談!失敗を乗り越えて会社を成長させた方法とは?
執筆者:土岐彩花(Ayaka Doki)
主な資金調達手段とメリット・デメリットを解説
調達成功のコツ・ポイントとは?
資本政策シリーズ『資金調達の手引き』
※本記事はセミナーの収録内容を書き起こしたものです。
目次
CXOイノベーションフェスとは
どなたでも参加可能な、大手からスタートアップが大集合する新感覚ビジネスフェスティバルです。総勢100人の出演者の生セッションや交流会など様々なコンテンツが用意されており、オンラインとオフラインのハイブリット開催で次世代の新しい企画として開催されます。
公式サイト:CXO Community 公式サイト
今回の登壇に関して
<開催日時・テーマ>
開催日時:5月28日(金)12:05~12:50 会場A
テーマ:失敗談
<登壇者>
岡田和也氏:株式会社ランディックス 代表取締役
井上貴之氏:株式会社カーセブンディベロプメント 代表取締役
<モデレーター>
土岐彩花:SOICO株式会社 取締役COO
登壇者紹介
井上貴之氏(株式会社カーセブンディベロプメント 代表取締役)
井上:カーセブンの井上と申します。
今、48歳です。明治大学を出た後、三和銀行に就職をし、27歳でカーセブンを立ち上げてやってきました。いくつか業界団体を立ち上げたりとか、そんな形でもやっております。
カーセブン公式サイトより引用
「カーセブン」というブランドで、全国に160店舗ある、車を買ったり売ったりする店舗ネットワークのフランチャイズの本部を経営しています。一方、現場で使う様々なアプリケーションを開発して、我々の直営とかフランチャイズで使うだけでなく、自動車流通業界の競合会社さんにも月額利用料という形でシェアをしています。実はこのシステムの取引先だけでも、今1000社を超えているという状況です。
今期から、自動車流通業界に特化してシステムの受託開発を始めました。
自動車流通業界の会社っていうのは、基本的には日本全国同じ仕事をしています。自動車流通業界に特化すれば、過去に開発経験があるものも多いので、早く安く、かつ我々も利益率が高いというビジネスが展開できます。そういう形でやらせていただいております。
岡田和也氏(株式会社ランディックス 代表取締役)
岡田:ランディックスの社長、岡田です。
僕たちは 一言で言うと、東京のど真ん中の高級住宅地にいて、富裕層ターゲットに住宅をインターネットで販売するようなことをやっています。
ランディックス公式サイトより引用
不動産業界って市場規模が45兆円ぐらいあるというふうに言われていて、30万社を超える不動産会社が日本にあると言われています。コンビニの数が5万8千軒程度と言われているんで、いかに不動産業者が日本全国にいっぱいあるのかということなんですけれど、その不動産会社の90数%が社員10人未満中小零細なんですね。その社長の平均年齢がなんと全ての業界と比べて最高齢の62歳ぐらいになるらしいです。要はどういうことかというと、中小零細が大市場を支えていて、それを経営している社長たちは高齢化が進んでいる。
そんな中に今進んでいるDX化、IT化といったテクノを進めていくことができれば、「この勝負、10年後には勝つに決まっているんじゃないかな」というふうなことを思っています。IT化に舵を切りながらマザーズへの上場を目指して。そのマザーズの上場は一昨年に果たして、さらにこれから成長をしていこうと。こんな会社です。よろしくお願いします。
1.経営者としての失敗は?
土岐:経験者・経営者として何かちょっと失敗してしまったこと、組織やチームビルディング、資本政策そういったところを伺えればと思っております。
岡田:まず1つ、話をしたいと思いますけど、結構よく30・50・100の壁みたいなことって聞いたことないでしょうか。売り上げでいうと30億の壁、50億の壁、または従業員にしても社員・メンバーたちにしても、30人の壁、50人の壁そういうのがあるのかなというふうに思います。我々の会社にしても、最初19人くらいから20人・30人ぐらいにしても、なかなか成長がパッと止まってしまってですね、思うようにうまくいかないということがありました。
「何がうまくいかない理由なのかな」っていう風に思っていたんですけれども、全部私が駄目だったんですね。何が駄目だったっていうと、最初のベンチャー企業あるあるだと思うんですけれども、私が野球でいえば4番ピッチャー、キャプテン、さらには監督までやって、何でもかんでも自分でこなしてたんですね。 人事や経理や総務までに口出して、そしたら下の社員たちが全然育たないということになって、仕事も面白くないから辞めちゃう。そんなようなことをずっと繰り返していました。
そうしたらある時、先輩経営者が「岡田君が全部それ介入していって、部下の成長を妨げているの君じゃないの」ってこういう風に言われたんです。その時「はぁ?」っと思ってですね。「そうか」と。成長しないで会社をストップ、ブレーキ踏んでたのは俺なんだ、ということから組織作って、役割を分担させてそこに任せて。もちろんチェック・管理はするんだけれども、不必要に介入しないゆうようなことをしたときにですね、会社がピンと伸びていったんですね。
毎年社員旅行なんかも年1回やっていたんですけど、誰と誰が同じ部屋に泊まるかとか、飛行機の席が隣同士、「こいつとこいつは仲が悪いからこうじゃない」。そんなことまで口を出していたから最悪ですよね。そんな社長嫌じゃないですか。そういう細かいところに介入しない、そして任せるといった当たり前の話になっちゃったかもしれません。しかしそこもですね、大きな、あるいは小さな失敗かもしれませんけれど、会社が成長するきっかけになったと言っても良い話なんじゃないかなと思って話をさせていただきました。以上です。
井上:こちら皆さんご覧いただきたいのですが、僕が27で銀行を辞めて、会社を創設した時のPL(損益計算書)です。第2期の3億6千万の赤字っていうのは強烈な赤字なんですが、そのときは広告とかシステムだとか。特に広告ですね。これは完全に広告代理店にだまされて、広告をどーんと打ったんですね。まったく効果ゼロでしたけどね。銀行員って振り返ってみると、決算書を分析することはできるんですけれど、ビジネスなんにも分かってないんですよね。
実は第3期目、第4期目ぐらいになってくると、第3期は決算期変更してるんで3か月間だけだったんですけど、そのぐらいになると調達した資金が底をつきはじめる。
当時の現金のポジションが9千万、借金が社債だったんですけど、社債の残高が1億5千万円、毎月キャッシュアウトが1千万円。この第3期、第4期ぐらいに会社の倒産を覚悟しまして、本当にそれこそで言うと毎月毎月社員が辞めていく。当時社員が少なかったんですけれど、バタバタバタバタ人が辞めていく。傑作なのがですね、辞めていく社員さんがいると毎月毎月送別会をやるんですね、会社の金で。本当におまぬけなことをやってましたよ。
そんな状況があって、じゃあなんでこんな状況になったかというと、あとで振り返ると結局自分は銀行員で、取引先のいろんな企業を見ながら、例えば決算書なんかを見ると「この社長でこんなに会社儲かるんだったら、俺が会社経営したら絶対儲かるな」っていう錯覚を起こすんですよね。何回も申し上げますけれども、銀行員って経営全くわかってないんですよ。なのにもかかわらず、自分が中途半端に銀行でそれなりに良い数字を出していたからって、「俺だったらもっといけるわ」っていう錯覚をするんです。
カーセブンいうビジネスを立ち上げたとき、ビジネスモデルをつくり、業界の中のいろんな会社のチェーンのいわゆる条件だとかを調べて、ビジネスモデルを作り、人事制度やインセンティブ制度をつくり、「さあ、用意スタート、ドン」といっても誰も走らない。誰も走らないから、今度そこで、走らない社員を毎日毎日罵る、「お前は馬鹿だな」と。自分は営業の現場に行くと、それなりに数字とってるからですよ。だからなおさら今度は「お前ら本当の馬鹿だな」ってなるんですよ。そうするとみんな辞めていくんですね。
さっきの岡田さんのところも通ずるところがあると思うんですけれど、やっぱりみんな最初、これやるんですよね。結局、僕ら経営陣っていうのは、PLの数字で経営者として成績表が出るので、会社が潰れかけたとき、「あ、自分が優秀じゃなかったんだ」、「トップの仕事っていったいなんなんだ」と。僕ね、当時ね、よく言われましたよ、働く社員さんに、会社がどっちの方向に向かっているのか分からない。こんなにいろんなことを話して、こんなに明確なことをやってるつもりだったにもかかわらず、やっぱり社員さんに言われてます。
さっき言ったように自分が優秀じゃなかった。つまり社員さんに働いていただいて数字で上がらなければ、会社って絶対黒字にならないんですよ。働いていただくとか数字を作っていただくっていう感覚が僕には全く欠如していましたね。今振り返ると「当たり前だよな」っていう感じですね。
ちなみに我が社、23期目を走っていますが、自己資本率が80%。借入金も0ですし毎年毎年それなりの新事業とさまざな投資をしながら、自己資本比率80%をキープして、3年間ぐらい売り上げが0でも会社が潰れない体質にはなっています。今は振り返ってみたら、30ぐらいの早い段階で失敗経験を積ませてもらってよかったなという風に思います。そんな感じですかね。
2.カーセブンがV字回復した理由とは?
土岐:カーセブンディベロプメントが4期から5期にV字回復したのはなぜだったのでしょうか。
井上:ちょうどこの平成13年8月のお盆に、会社がこれで潰れるという風に理解しました。自分はカーセブンというビジネスをやめて、もう一回サラリーマンをやらないと、社会人として駄目になるなと思ったんですね。
実はそれを思って会社を辞めようと思ったら、ふと後ろを振り返ると、さっき申し上げたように現金が9千万円もあって、社員の人たちが続々と辞めていっていても17名ぐらいの社員さんが残ってくれていたんですよ。17名ですよ。フランチャイズの店舗が60店舗ぐらいあるので、その時に僕は思ったんです。「もう1回、0から会社をつくったと思ってチャレンジをしてみよう」と。それでもし会社が潰れたら、それはやっぱり自分が駄目だったと。退路を断ったっというか腹をくくったんですね。
自分が作ったビジネスモデルのありとあらゆることを見直しをして、そしてあとは社員さんに向けて、ビジネスとしてカーセブンとして普遍的なものであるとか会社がマネージャーの人たちにこういうことを約束するんだとか。「社員の人たちは会社に対してこういうことを約束してほしい」、「マネージャーの人たちは社員さんにこういうことをやってほしい」というビジネスの思いを文章化して、みんなに教育し始めたんですね。
それと、これは今考えると決して正しくはなかったと思いますけれども、社員さんに営業の数字を作ってもらうんだという形で、営業管理をすごい強化しましたね。一番最初のころは箸の上げ下げまで指導して、自分が全部帯同しながら数字を作りましたけど、その本人たちが数字をとれるようになってくると、今度はもう任せるという過程を繰り返しました。やっぱり任せると数字が落ちる。でもそうして手を入れながら、もう1回任せるみたいなことをずっと繰り返して、組織を育ててきたっていう感じですね。
あの頃は本当に、会社に毛布とかを持ちこんで、徹夜組とかめちゃくちゃいましたからね。今、残業っていうのはうちの会社誰もいませんけれど、そのころの方が100倍くらい真面目に仕事していましたね。ただ当時、潰れる潰れないって、持っていた感覚でいうと出口の見えない真っ黒なトンネルを、上なのか、右なのか左なのか、前なのか後ろなのか、下なのか全く分からない中、全速力で走ってましたね。でもあるとき、ふと気づくと出口の光が見えてくる。実はその時の経験から、お盆の時に僕は資料を作っていたんですけれど、自分が作ってきた過去を否定するって結構体力がいるんですよね。その作業をやった半年後から黒転が始まるんです。資産表見たら月次の決算が黒転し始めたんですよ。
うちの経理の人に「これ間違えてるでしょ」と何回も聞いても黒字になってたんです。
さっきの岡田さんの話も続くんですけれど、ありとあらゆることはトップの振る舞いとトップの考え方だけで、そういう経験で上がってきましたね。
土岐:社内の社員の方向性を整えたということでしょうか?
井上:最近やりはじめたんですが、半年に1回、期初にキックオフミーティングをやって、1年間の会社の重点項目っていうのを決めていくんですよ。その部門に関してはこういうことをやっていく、この部分に関してこういうことをやっていくんだっていうことを決めて、そしてそれを「教育して浸透させるための仕事」がトップの仕事だと。デイリーマネジメントはトップの仕事じゃないので、その仕事に僕がすごい力を注ぐようにしました。
今はコロナでこの朝礼やっていないんですけれど、朝礼は毎日、大分類の5項目を唱和するんですよ。あとはうちは9月決算なので、10月の初旬と4月の初旬にキックオフミーティングをやって、会社の方針を僕が徹底的に説明するっていうのを始めました。
前回は4月の頭にやりましたけれど、僕は3時間半ぐらいしゃべってます。3時間半ぐらい僕がフルパワーでしゃべって、それをみんなに聞いてもらう。あとはいくつかあるんですけども、いずれにしても「会社の方向性を決めること」と「その刷り込みをすること」にすごい時間と体力を割くっていう。人事制度もリンクするので、そういう形で組織づくりをしましたね。
3.資本政策の失敗談を教えて下さい
土岐:お金周りや資本政策で、もし失敗談があれば伺えればと思っております。
岡田:上場を目指すにあたって、私たちは幸い、そんなにキャッシュに困っている状態ではなかったんですけども、そんな中で、私のメンバーといえるような先輩たちが口を揃えて「不必要に出資をしてもらう必要はないのではないか」という意見がすごく多かったですね。ですから私は、今現時点では良かったと思っているんですけど、資本政策の中で大きく失敗しちゃったとか何かトラブルが起きたとかは幸いなことになかったですね。
しばしば、多く出資をしてもらう、何億円調達したっていうニュースでおめでとうという話を聞きますけども、後々うまくいけば良いけどね、みたいなことを思いながら見ていることも結構あります。
井上:岡田さんの話との関連で、僕も最近、日経産業新聞のベンチャーの欄とかで、どこどこの会社が何億調達、何兆調達とかを見て、「この人、オーナーとしてのシェアどうするのだろうな」とか思ったりするんですよね。だけど話を聞いてみたら、そういう具合で言うと、49%のシェアと3%のシェアは一緒だと。「俺のことクビにできるんだったらクビにしてみろ、とか思ってます」とかいう回答が来ると、なるほどなと思ったりもします。企業経営って、山があればやっぱり谷もやっぱり出てくるし、その時にシェアが結構大事なんじゃないかなと僕は思ったりするんですけどね、岡田さんの話聞いても。最近も思います。
ちなみに僕は、カーセブンという会社を立ち上げる時、6社でジョイントベンチャーとして立ち上げて各会社の持分が均一でした。その中で少しずつ僕のシェアを持ちながらも、結局自分のシェアは33%を切った中でビジネスを展開しています。
6社、あと1社加えて、この7社の車屋さんが集まって作ったビジネスなんですが、7社のうち現段階ビジネスパートナーとして残っている会社は2社だけです。あとは全部離れていきました。総合商社で超大手の総合商社も株主に名前が入っていますし、ベンチャーキャピタルの株主も入っていますけれども、既存株主の方の会社の業績が悪化しているとですね、何が起きるかっていうと株の投げ売りがきます。
我々は経営して台所事情が苦しいわけですよ。「この株を引き取れ」って、これが苦しい。だからオーバーキャピタル。僕はもともと銀行員だったので、銀行全く信頼していません。銀行は本当に自分の都合と論理だけで金を貸してくるんで、だから資本で調達したんです。ところが資本で調達をすると、会社がうまくいかないときには、投げ売りしてくるんです。これは苦労しましたよ、この株を引き受けてくれる会社を探すの。だって会社ボロボロなんですもん。
次に、今度は会社の業績が良くなってきたら何が起きるかっていうと、乗っ取り。株主がうちの非常勤取締役で入ってきているので、実際に取締役会で僕は勧誘されかけましたね。僕はそういう経験をしているので、オーバーキャピタルもよくないし、銀行の借り入れに頼るのもやっぱりよくないし。そしてあとビジネスって何が起きるかわからないので、ありとあらゆる可能性を想定した体制というか、ものは考えていたりとか僕は良いと思うんですよね。というのは、いろんなベンチャーキャピタルとかいろんな投資家がめちゃめちゃいるんで、多分、資本での調達は簡単だと思うんですよ、比較的。
だって彼らからしてみたら、自分の手柄じゃないところでの投資なので、このお金ってうまくいかなくなったときは大変ですよ。みんなストーリーとして数年以内にすぐ上場、IPOかけてくるんで、それ世の中、そんな簡単にいかないですよ。うまくいっている会社のやつだけ見たらそういう会社もありますよ。そうじゃない可能性のことも考えながら、「会社潰して違う会社作るんだ」っていうんだったら別ですけれど、僕は20何年間このビジネスやってきて、自分のが良いか悪いか別にして、やっぱり自分の人生そのものですからね。全力、全精力、全身全霊をかけながらビジネスをやるわけじゃないですか。そんな簡単に「じゃあ次の会社やればいいや」っていかないし、資本に関しては後戻りできないんで、岡田さんのおっしゃる通りだと思いますよ。
4.事業を進める上での失敗は?
岡田:私にはメンターが何人かいるみたいな話があったんですけど、代表的なところで焼肉の牛角を創業した西山さんにはもう20年近くかわいがってもらっています。西山さんから上場前に出資をいただいて、ずっと応援してもらってですね、何か困ったことがあるといつも相談しています。
さっきもちょっと話したんですけど、我々の社員がちょうど30人ぐらい、3人採用したら3人辞めて、5人採用したら1年で2人辞めて、また3人とか4人とか。そんなことを繰り返したら、1億の利益、それから2億、3億、5億、順調に行った時に売上が頭打ちになったんです。
西山さんのところに行ったらですね、みんな僕のこと岡ちゃんって呼ぶんですけれど、「岡ちゃんのところの企業理念は?」っていう風に聞かれたんですよ。さっき井上さんが会社の方向性っていう話をされていましたけど、岡ちゃんのところの企業理念なんなんだよって言われたときに、「売上100億ぐらいにしたいですけど」って、そんなようなこと答えたかもしれないです。そしたら「馬鹿、それは企業理念じゃねえんだ」とというふうに怒られまして、まず「自分たちの価値がどういうことなのか」、「何をお客様に提供したいのか」、「自分たちの存在価値は何なのか」、「その具体的な目標ビジョンはどういうことなのか」と。こういうことを明確にして、さっき井上さん言っていたように、働く仲間たちに共有をして一緒に走っていかないと成長しないんだなと、本当に強く思ったんですね。
その時に教えてもらった4つのことがあって、実はこの4つのことを継続していったら上場できたって言っても過言ではない。聞いてみたら、なんだそういうことかよみたいに思われちゃうかもしれませんけれど、その1つがまず企業理念。企業理念をしっかり掲げて、働くスタッフみんなでしっかり共有すること。そしてビジョンを明確にすること。そして評価・称賛の仕組みをしっかりと作ること。そして労働環境をしっかり整えること。とにかくこの4つだけを磨き上げろということを教わったんですね。
まずは企業理念。これをしっかりと掲げて、会議体で1週間に1回とか、例えば全体にやりたいことがあれば、それをとにかく繰り返し繰り返しずっと言い続ける。そこから急激に、会社が伸びていったようなことがあります。
井上:ちなみに参考に、今年、カーセブンフィロソフィっていうのを作ってみました。
僕が経営者として日頃社員さんと会話をするときによく言うんですけど、1万円札には色がついていると。同じお金を稼ぐにも、正しいことをやって稼いだ1万円札と無理矢理お客さんに何かをひっかけて稼いだ1万円札は絶対、色が違う。だから正しいことをやった1万円札をカーセブンは取りに行くんだっていうことを含めて、僕が彼らとコミュニケーションをしている物事の考え方とかを、例えばこの「正々堂々と生きる」というフィロソフィに。先ほど言ったように、自動車業界のインフラもやっているので、これをアップデートし続けることを我々の信念として。あと価値基準、どういう価値基準で物事を考えていくのかっていうフィロソフィを今回まとめました。
岡田さんがおっしゃってた企業理念とかビジョンとかっていうことですよね。この部分で言うと「もっと早くやればよかったな」って思います。結局企業って、トップがどういう人格であるとか品格であるとか、どういうお金のかけ方をするのかということを具現化している場で、所詮はトップなので、自分自身の言葉をまとめることに対して、僕はきっと自信がなかったんでしょうね。今回作ろうって言って作って、新入社員さんの若手研修、1年生と2年生と3年生は9月に、2泊3日の合宿をやるんですけども、その時に徹底して毎年毎年やっていこうということでこれを作りました。今ちょうど岡田さんがそういう話をされていたんで、そのことをちょっとご紹介しました。
僕の会社の組織の失敗談で言うと、最近やっぱり女性営業マンが優秀だよねと。うちはフランチャイズの法人営業もするし、直営店での車の売買をする営業マンもあるんですが、女性の営業職ってやっぱ数字つくるよねというので、あるときから若手の女性社員をダーって増やしていったんですね。職場は明るくなるし、男性の営業と女性の営業ってやっぱり違うんですよね。女性の営業って粘り強くて数字作るんですよ。
それはそれでいざ活性化してきたなと思って、良かったと見ていたら、やっぱり案の定セクハラ。もう信じられないセクハラをやるんですよ。酔っぱらって抱き着いたとか、自分の浮気の話を自慢するとかですね。僕はあるセクハラ事件でですね、経営者仲間にそれはやばいと言われたんですけれど、どうしてもあれだと言って、辞める辞めないって文句を言っている社員さんのお父さんに謝罪しに行きました、自宅まで行って。大変でしたよ。そんなことやって、もちろん社内でも処分して。すごく自分自身に反省したのが、そういうところに一部の若手の男性社員が、若手じゃない人もいるんですが、ちょっと反映されちゃったのかなという思いもあるんですけどね。そんなのもありましたね。
5.職場からハラスメントをなくすには?
土岐:失敗談っていうテーマではあるんですが、やはり今、セクハラやパワハラは何でもハラスメントになってしまうみたいな時代なのかなと思っています。
セクハラなどがいったん横行してしまったところからそれをなくすような文化にされた工夫、解決策みたいなところで、もしアドバイスがあればいただければと思いますが。
井上:外部の有識者の方々を入れてやるんですけど、1つ言えるのは、労働のパワハラの1つにいわゆる残業の強要、サービス残業の強要、休日出勤の強要。特に店舗を経営していると、サービス残業が出ちゃうっていう文化を持っていたんです。
そこの歳がいっている責任者、この責任者の思考回路を変えるのは大変でしたよ。「社長、業績が落ちますよ」とか「赤字になってもいいんですか」っていうふうに脅してくるんですよ。ちなみにこれ、当時は担当が現場を仕切るんですけど、僕は銀行員をやってきたんで、車を売ったことがなければ買ったこともないんです。
でも、スーパーパワハラの職場を作ってる百戦錬磨のマネージャーが僕を脅してくる。最初はこの脅しに屈してました。
しかしある時、社員さんに「あなたたちのお子さんが起きている間に家に帰ってもらう。休日出勤を一切やらない職場を作る。そのために人事制度改革だとか、システムの投資だとかやるから協力してほしい」と言われたんですね。結局、部門のトップの考え方を変えなくちゃいけない。これはもうトップが、膝詰めで劇的に話を送ると。「どんな状況になろうが、結果あんたは責任とらないんだ。責任とるのは俺なんだ。俺が言った通りやってくれ」っていうふうに腹くくって彼に言ったことですね。
結局彼は、人事異動しないで職場環境変えることができました。そういうことで言うと、今、うちの直営店はほぼ残業ないです。休日出勤なんかは絶対ないです、という職場に変えました。
ちなみに人事制度で言うと、そのときにいろいろシステム開発をやったのが、今のシステムの事業のエースなんですよ。いろんなアプリを作って、それを競合会社にバンバン売り始めて収入を得て、今、実は結構な収入になってるんですけどね。それがきっかけでした。残業に関しては、残業時間を全て人事が計測して、サービス残業禁止にして全額払うというふうにやるんですね。そうすると、今度はPL系の影響が出てくるので、部門長は嫌がるですけどね。完全にそれを実施したのと、次のタイミングで残業時間が多い人の評価を下げ、残業時間の少ない人の評価を上げるっていうことにした。そしたらぴっきり残業減りました。業績落ちたかっていうと、落ちませんでした。
そしたら今度、評価が悪い人間でも実績がある人間でも、残業が少なかったら評価が上がるっていうのはおかしいって言い始めて、「そりゃそうだな」って思いました。評価が上がるのは残業時間が少ない人だけなんですよ。そのうちそうすると、会社のカルチャーが残業しないカルチャーになって、そうするとやっぱり彼らが言ってくるんですよ。「残業しなかったら評価が上がるってもうやめません?だってもう誰も残業してないですよ」って言ってきて、とうとうその仕組みもなくなりました。
6.銀行が「晴れの日に傘を貸して雨の日は貸そうとしない」って本当ですか?
土岐:視聴者の方から、これまでの話に関連した質問が来ています。
『銀行が「晴れの時は傘を貸そうとして、雨の時は貸そうとしない」って本当ですか?』というご質問いただいております。お答えしづらいかもしれませんが、差し支えない範囲で伺えればと思います。
井上:本当です。銀行は、例えば情だとか経営者のいわゆる業界で立派だっていうのはほぼないですね。昔はあったかもしれないですけど、今は絶対ない。これはやっぱり銀行が資金を市場から調達をしていて、一般の預金者の方々とかのお金を預かって運用をしているということを考えたときに、返ってこない投資先にお金は貸しません。貸しちゃいけないんですよ。間接金融の限界値がここにあるんですね。以上です。
参加者へのメッセージ
岡田:ビジネスはめちゃめちゃ面白いですよ。
面白くなるも苦しくなるも、やっぱり社長次第ということなんだと思います。何か一緒にやれるようなことがあったら気軽にお声がけいただいたら嬉しいです。
井上:カーセブン、今、新しいシステムのチャレンジをどんどんやってます。
例えばRPAからAI、ブロックチェーンとか、様々な取り組みをシステムでやっています。
「ちょっとまだ世の中に知られていないけど、実はこんな面白い技術あるんだ」ということ、実は結構眠ってるんですよ。僕ら知らないんですよ。なので是非、今日いろいろたくさん視聴していただいている方いらっしゃるので、そういう方があればぜひ紹介いただきたいと思います。よろしくお願いします。
おわりに
土岐:ざっくばらんに貴重な失敗体験を語っていただきました、お2人に画面の向こうから大きな拍手をいただければと思います。本日は誠にありがとうございました。
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最後までお読みいただきありがとうございます。
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この記事を書いた人
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。