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経理は資格がなくても働ける?資格有無の影響と未経験・資格なしで経理職へ転職するポイントを解説
執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)
CFOになるには?キャリアパスも解説
経理/会計/財務/経営企画などの管理部門としてのキャリア
経理職を未経験から目指す場合、資格や経験の面で不安になることもあるかもしれません。興味はあるものの、「専門性の高い職種で実際に働けるだろうか」と思う方もいることでしょう。
この記事では、経理における資格の必要性と転職を成功させるポイントについて解説します。
企業の財務に関連する活動の責任者であるCFOについては、こちらの記事もご参照ください。
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目次
経理は資格がなくても働ける
経理業務において、資格は必ずしも必須というわけではありません。業務に慣れさえすれば誰でも業務を行うことができます。経理の実務では、エクセルや会計ソフトを使用することがほとんどで、自分で複雑な計算を手作業で行うわけではありません。そのため、基本的な作業であれば経理に関連する資格がなくても働くことができます。
特に、PCスキルやコミュニケーションが求められる業務は、経理関連の資格とは実際には無関係です。資格がない場合、データ入力や請求書の発行といった基本的な作業から経験を積む必要があるものの、皆そのような経験を経て経理キャリアをスタートしています。後述するように、資格は転職やキャリアアップにはほぼ必須となりますが、まず経理の経験を積むべく就業を目指すというケースであれば、有資格者ではなくても働くチャンスがあります。
資格なしで経理で働く方法
資格を取得せずに経理で働くには、いくつかポイントがあります。知り合いやツテを利用して入社できるケースもあるかもしれませんが、たとえゼロからの挑戦でもいくつかの方法で可能性を高められます。主に4つのポイントから経理を目指す方法を解説します。
・未経験者応募可能な求人を探す
・実務経験を積む
・後から資格取得を目指す
・中小企業・ベンチャー企業を中心に応募する
・素直さと学ぶ姿勢を見せる
未経験者応募可能な求人を探す
経理業務を募集している求人を見ると、大抵の場合は「簿記2級以上」「実務経験〇年以上」としている案件が多く見られます。資格不問とする求人は数が少ないためハードルが上がるものの、未経験者も応募可能な求人も一定数存在します。欠員補充など即戦力を求める求人でなければ、未経験者も対象とする求人はそれなりに見つけられるでしょう。
あるいは、通常の求人に自分で応募するのではなく、転職エージェントを利用するのも良い方法です。無料で登録できるオンライン就活サービスで、スキルや経験に合致する求人を紹介してくれます。応募先企業との面接練習や交渉仲介を行っているところもあり、未経験者でも適切な自己アピールができるようサポートしてくれます。今までに培ったエクセルスキルや経理の分野で役立つ経験を強調することで、未経験ながら有効な自己アピールとなるでしょう
実務経験を積む
未経験者でも歓迎してくれる企業に出会ったなら、とにかく実務経験を積みましょう。欠員補充や中途採用の求人の内情を調べると、とにかく即戦力を求めるケースがほとんどです。有資格者かどうかよりも、実務経験があるかどうかを重視しているからです。
特に経理の人手不足に悩まされている企業の場合、社員が1人で複数の経理業務を担当している状態が予想されます。決算書作成やマネジメントの経験があれば即戦力とみなされるでしょう。求人によっては、資格を持っていることよりも実務経験の豊富さが重視されることも珍しくありません。経理の世界に入った後は、初めて経験する業務でもとにかく学んで挑戦し、実務経験を出来るだけ積むよう心がけましょう。
後から資格取得を目指す
入社した後から資格を取得する姿勢を見せることは大切です。応募時に資格を勉強中であることを伝えるのも良いでしょう。スキルアップへの姿勢や向上心を見せることで目標を客観的に伝え、業務に取り組む意欲をアピールします。
具体的な勉強内容を伝えるなら、資格を有しているかどうか以外の面にも注目してもらえるかもしれません。向上心や努力が信頼に繋がることも多く、たとえ資格を有していなくても自分の取り組みを積極的に伝えましょう。明確な目標を知ってもらうことで、第三者にやる気をアピールする効果が期待できます。
中小企業・ベンチャー企業を中心に応募する
経理の業務はどのような企業でもある程度共通しています。しかし、中小企業やベンチャー企業に応募する方が採用される確率は高くなると言えます。
中小企業やベンチャー企業の場合、人手不足解消や組織構築を目指して人員を募集するケースが多く見られます。担当する業務も比較的難易度が低く、一般的なレベルの経理業務ができれば十分とする求人も珍しくありません。資格や実務経験で不利に感じたり、応募できる求人が限られている場合は、中小企業やベンチャー企業の求人を狙うのも効果的な方法です。
また、大企業の場合は経理業務の膨大さゆえに細分化されており、より小規模な企業の経理業務よりも専門性が高くなる傾向にあるからです。加えて、上場企業であれば財務諸表の作成や会計管理もさらに複雑になり、実務経験もそれだけ高度なものが求められます。その結果、資格に加えて、経験の面でも高い要求水準を乗り越えて応募に挑まなければなりません。
素直さと学ぶ姿勢を見せる
素直さと意欲的に学ぶ姿勢は、ある意味で経理を目指す人に最も必要な要素かもしれません。資格や知識よりも実務経験が重視されがちな経理の世界で、飲み込みが早く要領の良い学び方ができるのは大きな武器となります。
無資格や実務経験が乏しいという場合、最初は相当苦労するかもしれません。分からない単語が飛び交い、仕訳や読み方すらついていけないのも当然です。しかし、分からないところはしっかりと質問し、忘れないようにメモを取って何事も素直に学んでいく姿勢は、教える側にとっても仕事のやりがいにつながります。意欲的に取り組む姿は信頼を勝ち得るのに有利になるでしょう。
前述のように、未経験でも転職は戦略次第で内定率を上げられます。現場が求める人物像に合いさえすれば、未経験でも人柄やポテンシャルを見て採用することも決して珍しいことではありません。
公認会計士や税理士のように何千時間も勉強して資格を取る必要はありません。一定の知識は求められるとはいえ、最初は苦労することも前提に勉強し続けるなら、徐々に知識や経験が増えていき、複雑な業務もこなせるようになります。そのレベルまで達すると、自分で幅広く業務に挑戦するスキルが身についているため、作業を楽しめる余裕も持てるようになるでしょう。
未経験者に高度な知識は求められない
誰しも、最初は未経験から仕事を始めます。多くの企業において採用する側も先輩社員達も、未経験者に高度な知識や業務経験は求めていません。
まずは定常作業の一部を任せてもらったり、退社予定の人から業務内容をそっくり引き継ぐなどのケースになるでしょう。一部を任せてもらう方がハードルは低いですが、「とにかく意欲的で素直に学ぶ姿勢があればなんとかなる」という体験談も、経理の世界では珍しくありません。
経理の場合、簿記の勉強よりも実務から学べることの方が多いと言っても過言ではありません。最初は経費清算や入金処理などから覚えていき、会計ソフトや社内システムを利用してデータを取り込んでいきます。簿記資格で学ぶような、仕訳を手作業で起こすような業務はほとんどありません。手作業よりもソフトを使用する方が圧倒的に効率が良く、数値の間違いや異常を確認すれば、あとは自動でデータが出来上がっていきます。
月次の業務となる請求書の発行や支払い処理も、数を重ねればだんだんと慣れていきます。上場企業では決算業務の労力が段違いとはいえ、経理業務では一度覚えると応用の効く知識も多く、最初の1年目の経験をしっかりと土台にすれば、あとはルーティーンワークがほとんどです。分からないことはそのままにせず、先輩や上司に必ず確認してエラーを防ぎ、とにかく経験を積んで座学も怠らない努力を続けましょう。未経験であれば、謙虚に挑戦し続ける姿勢が良いアピールポイントになります。
出世を目指すなら資格は必要
出世やキャリアアップを目指すなら、資格は大きな意味を持ちます。以下、2つの観点から資格の重要性について解説します。
・簿記を取ると良い理由
・特に転職時には不利になることも
簿記を取ると良い理由
前述のように、簿記の資格がなくても定常作業には問題ないのが経理職ですが、簿記の知識がなければ業務を理解するのに時間がかかってしまいます。出世を目指さないのであればそれでも問題ありませんが、社内評価を上げるには実績がどうしても必要です。その場合、簿記を勉強して専門用語の理解を増やし、可能な限り早く業務をマスターしていくべきです。
加えて、簿記の知識がなければエラーやイレギュラーな業務に対応できないことも多々発生するため、いつまで経っても対応可能な作業が基本的な作業やルーティーンワークに止まってしまいます。実務経験が重視されるとはいえ、その経験が幅の狭いものでは出世も期待できません。最低でも簿記3級を取得して、基礎的な理解と応用力を身につける必要があります。
特に転職時には不利になることも
1度目は資格不要の求人を見つけられたとしても、転職時に再度同じような求人を見つけることは難しいかもしれません。資格必須の求人に比べると、資格不要の求人は数がどうしても少ない傾向にあります。簿記を必須とする求人の方が圧倒的に多く、転職も含めて経理としてのキャリアを考えるのであれば、資格の取得は必須となるでしょう。
実際の業務では、資格の知識よりも実務経験を通して学ぶことが多いのも事実ですが、転職時には自分の実績を客観的に証明する必要があります。資格がなければキャリアを正当に評価してもらうことが難しい場合があり、実務経験をアピールしても「その業務にしか対応できない」という印象を与えてしまうこともあります。
「簿記3級と実務経験◯年」のように実績をアピールするか、少なくとも「資格取得に向けて勉強中」といった明確な意欲・知識量を伝える必要があります。
経理に向いている人の特徴
勉強好きで向上心のある人は、資格がなくても経理向きであると言えます。経理の業務は、たとえ経験・資格があったとしても継続的に知識を身につけることが求められます。会計基準や法改正によって計算や仕訳方法が変わることも珍しくなく、特に法改正は毎年のように行われます。常に新しい知識を学び、意欲的に自己のレベルを高めようとする姿勢は大いに役立つでしょう。
加えて、PC作業やデータ処理のスキルが高いことも経理に向いている特徴です。手作業の仕訳よりも、エクセルや会計ソフトを使用する作業が業務のほぼすべてを占めているため、それらのスキルに長けている人は有能な人材として期待されます。エクセルは使えば使うほど熟達できるため、簿記の勉強もさることながら実務で使用するPCスキルを伸ばす人も経理で活躍できるでしょう。
他にも、経理に向いている人の特徴には以下のようなものが挙げられます。
・正確な仕事を追求できる
・立てた計画を進めていける
・納期や決算期に責任感を持っている
・数字好き・苦手意識がない
・細かいことを気にしない
・コミュニケーション力がある
・チームワークを重視している
・口が硬い
・1人でも仕事のペースを作れる
経理向きの人の特徴についてさらに詳しくは、以下の記事もご覧ください。
⇒経理に向いている人・向いていない人とは?特徴と自分自身の見極め方を解説
未経験・資格なしで経理職への転職に成功するポイント
実際に未経験・資格なしでも経理への転職を成功させるポイントは、「経理への理解を深めるよう努力し、志望動機を明確にすること」です。以下、詳しく解説します。
・経理職の業務内容を把握する
・経理職への志望動機を明確にする
・応募予定の業界・企業を志望する理由を明確にする
経理職の業務内容を把握する
経理職は、企業の資金の管理全般を扱う仕事です。帳簿の作成や決算業務などが代表的で、普段はデスクワークがほとんどすべての作業となる職種です。経理の概要だけでも理解していれば、転職時にも熱量を持って自己アピールできるでしょう。
例えば、同じ経理でも建設業では「建設業経理」という特殊な会計処理を扱います。これは建設業が完成品を販売するのではなく、受注してから工事するという業務の複雑さによるためです。
同じく、上場企業では経理業務がより専門的で深く掘り下げたものとなるため、自身のイメージと実際の業務が異なるかもしれません。そのため、事前に調査して経理の業務内容をある程度理解し、予備知識を備えて転職に挑戦する方が成功しやすいでしょう。
経理の業務には、他にも以下のようなものがあります。
・売上の記録と管理
・仕入の処理と記録
・売掛金管理
・給与の支払いと記録
・保険料支払いと記録
・従業員の経費の精算と記録
・資産購入や売却時の処理と記録
経理の仕事内容について詳しくは、こちらの記事もご参照ください。
⇒経理部門の仕事とは?主な仕事内容・日次/月次/年次のサイクルについても解説
経理職への志望動機を明確にする
経理職を目指す動機がより明確なものであれば、それだけ相手に訴えかけるものになるのは言うまでもありません。「数字を比較分析するのが好き」「性格がバックオフィスに向いている」など簡単なものでも構わないでしょう。
何か1つでも「経理職に適性がある」と思ってもらえるポイントを準備しておきましょう。コストや利益に対する意識を持って行動することも、応募時に自己アピールできるポイントとなります。数字で論理的に考える能力は、経理職への適正として重要な部分です。そのようなエピソードを洗い出し、しっかりと自己アピールに活用しましょう。
応募予定の業界・企業を志望する理由を明確にする
経理職に限った話ではありませんが、その企業に応募する理由が明確であればあるほど選考で訴えかけるものです。誰しも、経理の経験を積めるならどこでもいいと思うものですが、転職を成功させるためには志望理由を明確にしておきましょう。
企業理念や経営方針を徹底的に調べ、自分が共感し、魅力を感じるポイントを探しましょう。経理はバックオフィスとして働くため、商品やサービスと直接関わるわけではありません。その企業で「採用後にどのような働き方をしたいか」を言葉にすることで、志望動機を形にしていけるでしょう。
自分の理想と合う職場であればあるほど、志望理由や働きたいという意欲は自然と湧いてきます。無理がない、自然で魅力的な志望理由を伝えるためにも、その企業の魅力や自分との共通点を挙げておくことが必要です。
経理職の志望動機・転職については、こちらの記事もご参照ください。
⇒経理職の志望動機作成のポイント|経験者・未経験者ごとの例文NG例について解説
⇒経理は転職しやすい?経理職の転職事情・転職しやすい理由を解説
経理職で役立つ資格
経理職に役立つ代表的な資格は、日商簿記です。経理関連で最も有名な資格で、財務諸表を読むために必要な知識を全般的に学べます。特に1級では大企業の会計方法も範囲に含まれ、キャリアアップの際に役立つ資格です。日商簿記3級を応募資格にしている求人は非常に多く、転職時の選択肢を増やすと言う意味でも非常に役立ちます。
FP(ファイナンシャルプランナー)は、株式などの金融商品を扱う知識や、所得税や法人税など税金関連の理解が役に立つ資格です。中小企業の資金計画を読み解きアドバイスする視点で学ぶため、経理の実務や経営的な視点での分析にも有効的な資格です。他にも、給料計算実務能力検定やFASS検定など、経理関連でより知識を深められる資格がいくつかあります。
経理職で役に立つ資格については、こちらの記事もご参照ください。
⇒経理職に役に立つ資格|資格が有利に働く場面とおすすめの資格について解説
⇒FASS検定とは?試験の概要や対策方法・メリットについて解説
まとめ
ここまで解説してきたように、経理の業務そのものに資格は必須ではありません。転職やキャリアアップを見据えるなら資格は必要になってきますが、キャリアをスタートさせるにはまずは挑戦してみましょう。最初の苦労を必要な経験とみなして意欲的に学び続けるなら、やがて1人前の経理担当者になれるでしょう。
この記事が、経理を未経験から目指す方の参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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この記事を書いた人
共同創業者&代表取締役CEO 茅原 淳一(かやはら じゅんいち)
慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。