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経理職でテレワークが難しい理由|経理にテレワークを導入するポイント・メリット・デメリットについて解説
執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)
CFOになるには?キャリアパスも解説
経理/会計/財務/経営企画などの管理部門としてのキャリア
新型コロナウイルス感染症の影響により、テレワークを検討し導入し始めた企業は少なくありません。しかし、テレワークの普及が進む中、経理業務をテレワークで行うのは難しいと考える経営者や経理責任者の方もいるでしょう。
そこで本記事では、経理業務をテレワーク化することが難しい理由と、経理のテレワーク導入のポイントをご紹介します。経理をテレワークで行うことのメリットとデメリットもお伝えしますので、経理でテレワークを行いたいと思っている方、経理でテレワークを導入したいと思っている経営者や担当者は、ぜひ参考にしてください。
企業の財務に関連する活動の責任者であるCFOについては、こちらの記事もご参照ください。
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目次
テレワークとは
総務省のホームページによるとテレワークとは、ICT(情報通信技術)を利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方のことです。
テレワークは働き方により4つの形態に分けられます。
・在宅勤務(オフィスに出社せず、自宅を仕事場とする働き方)
・モバイルワーク(カフェや新幹線での移動中など時間や場所に捉われない働き方)
・サテライトオフィス勤務(企業のサテライトオフィスなどで業務を行う働き方)
・ワーケーション(オフィスとは異なるリゾート地などの滞在先で休暇を取りながら仕事する働き方)
テレワークを導入すれば、オフィスの家賃や社員の交通費などを大幅に削減することが可能です。また、通勤や人間関係から来るストレスが軽減されることで、従業員の業務効率化を実現することも可能です。
テレワークについては、総務省のホームページ(テレワークの推進)もご覧ください。
経理でテレワークが難しい理由
新型コロナウイルス感染症の影響や近年の働き方改革の影響により、テレワークが日本でも浸透しつつある中、経理部門のテレワーク化は難しいとされています。
日本CFO協会の調査によると、2020年の新型コロナウイルス感染症における緊急事態宣言中の出社状況について、「全く出社しなかった」はわずか6%で、「5割以上が出社」した企業が48%にも上りました。そして、「100%出社して対応した」企業は10%という高い確率です。
日本CFO協会の調査については、こちらからご覧ください。
日本政府から出社の自粛が求められている状況下でも、経理職でテレワークを実施することが難しいということがわかります。経理職でテレワークが難しいとされる原因は何でしょうか。
経理職でテレワークが難しい理由を3つご紹介します。
・紙媒体を要する業務の多さ
・書類にハンコが必要
・セキュリティ対策面での危険性
紙媒体を要する業務の多さ
経理業務には、請求書、経費精算書、納品書の処理など、紙媒体を要する業務が多くあります。たとえば、請求書を発行する場合、営業部門から請求内容をデジタルデータとして受け取ります。しかし、デジタルデータで請求内容を受け取ったとしても、その後の作業は紙媒体での作業となります。担当者が請求書を作成して、上司の承認を表す角印を押印し、封入して郵送する作業です。
また、経理業務にはファイリングもあります。請求書などの紙媒体を社内キャビネットや倉庫などに保管します。そのため、経理担当者は出社して業務に対応する必要があります。
書類にハンコが必要
日本企業において書類にハンコを押すことは、1つの「文化」として色濃く残っています。多くの企業で請求書や見積書などの書類に押印が求められることが現状です。法律上、請求書にハンコは必要ではありません。
しかし、企業の角印などが押印されている方が信頼できるということから、押印することが慣習となっています。そのため、経理の仕事でテレワークを導入することは難しいとされています。
請求書などの書類への押印のほかにも経理業務には、経費精算などの際、各部署の確認印や上司の承認印などを確認して行う作業もあります。
セキュリティ対策面での危険性
経理の業務には、企業の財務情報などの外部に漏らしてはいけない機密情報が多くあります。経理でテレワークを導入するということは、自宅などの仕事場へ、それらの機密情報を持ち込むということです。そのため、セキュリティ対策面での危険性があります。
財務情報などのデータをメールに添付して送信したとしても、パスワードなどの対策がなければ情報が漏えいする恐れがあります。
また、セキュリティ対策として社内ルールを設定したとしても、各従業員のセキュリティ意識による実効性がなければ情報が漏れてしまうことでしょう。このようなセキュリティ対策面での危険性があるため、経理でテレワークを導入することは難しいとされています。
最近では、接続するwi-fiからPCのローカルにある機密情報にアクセスされることもあります。機密情報を保持しているPCを使って仕事をする時は、空港やカフェなどのフリーwi-fiの利用はしないようにしましょう。
経理のテレワーク導入のためのポイント
経理でテレワークが難しいことは事実ですが、導入することができないわけではありません。経理でテレワークを導入するためのポイントをいくつかご紹介します。
経理でテレワークを導入するためのポイントは、以下の5つです。
・デジタル化の推進
・社内での徹底したセキュリティ対策
・クラウドツールの導入
・コミュニケーションツールの導入
・経理代行業務を専門にしている企業に依頼
デジタル化の推進
経理でテレワークを導入するためのポイントの1つは「デジタル化の推進」です。請求書や経費精算書などをデジタル処理できれば、テレワークが可能です。
たとえば、会計ソフトを経理業務に導入すればデジタル処理が可能となります。会計ソフトには大きくわけて「クラウド型」と「インストール型」の2つの種類があります。クラウド型は、銀行口座やクレジットカードの情報を入力し自動反映が可能です。インストール型は、PCに会計ソフトをダウンロードし、手動で通帳や伝票をもとに会計ソフトに入力します。
インストール型は、特定のPCでしか会計ソフトが使えないというデメリットがある一方、クラウド型は、インターネット環境とアクセス権限さえあれば、どのPCでも使用できることが特徴です。クラウド型を使用することで、テレワーク導入を促進できるでしょう。
社内での徹底したセキュリティ対策
経理業務でテレワークを導入するためには、セキュリティ対策を徹底することが重要です。社内でのセキュリティ対策が徹底されていなければ、社内の機密情報が漏えいするという危険があります。
テレワーク導入のために、セキュリティシステムの導入やVPNの導入、またPC管理ソフトをインストールするなどの対策が可能です。セキュリティ対策はPCだけでなく、紙媒体を印刷するためのプリンターにも必要です。印刷した紙媒体に含まれている社内情報がプリンターから漏えいする危険もあります。印刷情報がプリンターから削除されているかを確認する必要もあるでしょう。
テレワークをどのように行うかを社内ルールによって管理することもセキュリティ対策の1つとなります。ルールをしっかりとマニュアル化して社内に浸透させることが重要です。
クラウドツールの導入
経理でテレワークを導入するためのポイントに「クラウドツールの導入」があります。クラウドツールを導入すれば、経費の申請や承認がすべてツール上で行うことが可能になり、テレワーク対応が可能です。
経費精算は紙媒体で処理されることが一般的です。交通費や交際費などの経費を申請書などに記入し、紙の領収書などを添付して経理担当者などに提出します。もし提出した経費申請書に誤りがあった場合、経理担当者は経費を使用した従業員に修正してもらい、再度上司の承認をもらうことが必要になります。経費の申請や承認がクラウド上ですべて完結できれば、テレワーク導入が可能になるでしょう。
コミュニケーションツールの導入
「コミュニケーションツールの導入」も、経理でテレワークを導入するためのポイントの1つです。テキスト形式での会話や、書類や画像などを添付できるチャットなどのコミュニケーションツールなどが利用可能です。また、オンライン会議ツールなどのコミュニケーションツールを導入すれば、相手の顔を見ながら対応できます。
たとえば、定例会議などをオンライン会議でも行えるようにすれば、従業員は自宅からでも参加できます。また、業務スケジュールや業務進行状況をコミュニケーションツールで共有できれば、テレワークでも経理業務を管理することは可能でしょう。
経理代行業務を専門にしている企業に依頼
経理業務を代行してくれる専門業者に依頼することも可能です。会計処理や伝票作成などの業務を、経理業務のプロフェッショナルに依頼できます。紙媒体で送られてくる領収書などの情報を経理代行業務会社に送付すると、情報の入力や照合、また仕訳などを行ってくれます。
経理業務を外部委託すれば、企業においてのコア業務に専念することができるだけでなく、業務フローの改善や効率化にもつながります。経理代行業務を専門にしている企業に依頼することは、企業における業務品質を向上し、従業員のテレワーク化を促進する助けとなるでしょう。
経理テレワークのメリット
経理でテレワークを導入することにはいくつかのメリットがあります。テレワークを導入することのメリットを理解しておくことは、テレワーク導入をスムーズに行うための助けとなります。
経理でテレワークを導入するメリットを2つご紹介します。
・ペーパーレスの推進
・大幅な業務効率化
ペーパーレスの推進
「ペーパーレスの促進」は、経理でテレワークを導入するメリットの1つです。
たとえば、クラウド型の会計ソフトは銀行情報やクレジットカード情報を入力することで、現金や予算、また経費などを自動取り込み計算することが可能です。また、経理業務に必要な帳票などの業務はクラウド型の会計ソフトが作成することも可能です。経理のテレワーク導入においてのクラウド会計ソフトの利用は、ペーパーレスを促進するために必要なツールと言えるでしょう。
大幅な業務効率化
経理業務をテレワーク化すれば、大幅な業務を簡素化でき、業務効率化につながります。
たとえば、デジタルツールを利用することで、領収書などをスキャンすることが可能です。スキャンしたファイルをメールなどに添付して送信すれば、業務効率化につながります。また、スキャンした領収書などが添付された申請書は、上司に送って確認してもらうことで経費精算がスムーズに運びます。
経理テレワークのデメリット
経理のテレワーク導入に関してのデメリットもいくつか存在します。ここでは、以下の2つのデメリットをご紹介します。
経理におけるテレワーク導入のデメリットは、以下の通りです。
・社内情報の漏えいの危険性
・クラウドツールへの依存
社内情報の漏えいの危険性
経理業務をテレワークで行うことは、社内情報を自社のオフィス外に持ち出すということです。経理は社内機密情報も扱うため、情報漏えいが懸念されます。
しかし、テレワークなどの自宅業務に関わらず、安全なネットワークを利用することでセキュリティ対策を行うことは可能です。たとえば、VPN(仮想プライベートネットワーク)があります。VPNを利用することで、自社専用のネットワークを持つことができ、ネットワークのセキュリティ対策が可能です。また、社内ルールや就業規則を作成し実行することで、社内情報漏えいを未然に回避することも可能でしょう。
就業規則については、こちらの記事もご参照ください。
⇒就業規則の作成について|就業規則の作成手順と記載事項・作成時の注意点も解説
クラウドツールへの依存
経理でテレワークを導入することのデメリットは「クラウドツールに依存」する可能性があるということです。テレワークにおいてクラウドツールの利用は業務効率化をもたらします。しかし、クラウドサービスを利用するための料金やサーバースペックに依存してしまう恐れがあります。
経理業務を行うにあたって、スペックに依存せざる負えないほどの処理はそれほどありません。また、重要なデータをバックアップしておくことでリスクを回避することが可能です。
経理におけるテレワーク導入事例
業務効率化を図るためにも、テレワーク導入は重要です。しかし、業務効率化を図りながら生産性を落とさないことも、テレワークを導入するうえで重要です。
ここでは、経理業務のテレワーク導入において2つの事例をご紹介します。
・請求書関連の事例
・経費精算の事例
請求書関連の事例
経理業務のテレワーク化には、業務のデジタル化が伴います。請求書関連のテレワークには、請求書の発行と請求書の受領に関する2つの業務のデジタル化が関係しています。
従来の紙媒体での請求書関連業務においては、請求書を出力し、角印を押印して取引先に郵送します。しかし、請求書をPDFなどのファイルにデジタル化することで、取引先と電子データによるやり取りが可能です。
電子データによる請求書の発行は、取引先の事前の了承が必要ですが、了承をもらえれば電子データによるメールでのやり取りが実現します。取引先が書類に押印を求めてくる場合は、電子印鑑サービスを利用できます。
受領業務においても取引先の了承を得れば、メールなどで受領することが可能なため、テレワークでも支払いのための事務処理を行うことは可能です。ファイリング作業も、出社した際にまとめて行うことで問題ありません。ファイルをPDFなどのデータで保管したい場合は、電子帳簿保存法の適用を受ければ電子データで保存することが可能であり、保存場所の問題もありません。
経費精算の事例
従来の経費精算業務も、紙の領収書を利用用途を確認しながら手動で入力するというものでした。経費精算業務をデジタル化するには、経費で発生した領収書を電子データとして保存し、また手続きすることで可能です。
電子帳簿保存法の適用により、経費として発生した領収書もデジタル化して保存することが可能であり、紙媒体での業務がなくなります。電子帳簿保存法に対応した会計システムを利用することで、テレワークでも経理業務を効果的に遂行することが可能です。インターネットにアクセスするだけでシステムにログインできるため、PCにデータを保存する必要はありません。そのため、セキュリティ面でも安全であると言えるでしょう。
経費精算の多い従業員に対しては、法人カードやプリベイトカードなどによる決算方法の導入も考慮できます。また、キャッシュレス決済した明細を、自動で会計システムに取り込むサービスもあります。キャッシュレス決済とクラウド会計システムを自動で連携させることで、紙媒体での業務を削減できます。そうなると、経理におけるテレワーク導入もしやすくなるでしょう。
まとめ
この記事では、経理業務をテレワーク化することが難しい理由と、経理のテレワーク導入のポイントをご紹介してきました。
経理業務をテレワーク化することが難しい理由の1つに、紙媒体を要する業務が多いことがあります。しかし、経理業務をデジタル化することでテレワークに対応可能です。デジタルツールの導入により、単純に社外で経理業務が行えるだけでなく、経理が抱える課題の解決や業務効率化を促進することも可能です。
経理のテレワークを実践することで、業務フローの見直しやデジタルツール導入を行うきっかけとし、テレワーク実現と業務改善を同時に行っていきましょう。
この記事が、経理業務でテレワークを行いたい人、経理部門でテレワーク導入を考慮している経理担当者の参考となれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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この記事を書いた人
共同創業者&代表取締役CEO 茅原 淳一(かやはら じゅんいち)
慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。