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経営企画職に役に立つ資格|資格が有利に働く場面・おすすめの資格について解説
執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)
CFOになるには?キャリアパスも解説
経理/会計/財務/経営企画などの管理部門としてのキャリア
将来的に企業の経営参謀であるCFOなどのキャリアとして考えられる経営企画は、企業の根幹をなす重要な役職の1つです。転職難易度が高い役職ですが、特に未経験の方にとっては狭き門となっています。そのため、経営企画職で役立つ資格を取得しようと考えておられる方も少なくありません。
そこで本記事では、経営企画職で役立つ資格をご紹介します。経営企画職の仕事内容、また経営企画から次のキャリアについても解説します。経営企画への転職を考えている方、将来のCFOやCEOをキャリアとして考えている方は必見です。ぜひ、参考にしてください。
企業の財務に関連する活動の責任者であるCFOについては、こちらの記事もご参照ください。
⇒CFO(最高財務責任者)とは?定義・意味から役割・仕事内容・なり方・キャリアパスまで徹底解説!
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目次
経営企画に資格は必要か
経営企画職に就くにあたって、必ずしも資格は必要ではありません。しかし、経営企画職の仕事内容は多岐にわたります。そのため、経営に関わる知識やスキルを取得しておくことに越したことはないでしょう。
経営計画の立案、経営管理、ステークホルダーとの調整、新規事業企画、コーポレートガバナンス、IR対応などに役立つ資格を取得しておくとよいでしょう。資格取得は、目的に応じて行うことが重要です。事前に、何のために資格を取得するのかを考慮し吟味した上で、計画的に資格取得に取り組むことをおすすめします。
経営企画部門・コーポレートガバナンスコードについてはこちらの記事もご参照ください。
⇒【2021年改訂】コーポレートガバナンス・コードの実務対応と開示事例
経営企画の仕事内容
将来的にCFOなどのキャリアとして考えられる可能性が高い経営企画は、企業にとって重要なポストであると言えます。経営企画の仕事内容についていくつか見てみましょう。
経営企画の仕事に「経営計画の立案」があります。経営計画の立案という仕事では、さまざまな情報を収集します。たとえば、自社の経営状況や人的リソースのような内部環境の情報、また競合他社や市場についての外部環境での情報です。経営企画は、それらの情報を収集し分析します。分析後に、中長期計画や新規事業計画の立案です。このような仕事内容のため、経営企画で仕事を行うには、経営についての専門知識やスキルを身につけておくことは重要でしょう。
また、経営企画の仕事に「経営管理」の仕事もあります。立案された計画を効果的に実行できるように必要な調整を行うことが「経営管理」の仕事です。調整には、必要な人材を限られた予算内で確保することがあります。また、新規事業に取り組む際は、リスクやコストを算出し抑えていくことが大切です。
このように経営企画の幅広い業務に対応していくには、経営についての専門知識やスキルが求められます。そのため、事前に必要な、経営の専門知識やスキルを高められる資格を取得しておくことは、経営企画職を実行していく上で役立つでしょう。
CFOのキャリア・経営企画の仕事について詳しく解説された、以下の記事をご覧ください
⇒CFO転職の方法とは?CFO転職のメリットやキャリアパスも徹底解説!
⇒経営企画部門とは?業務内容・部門の重要性・求められるスキル・能力について徹底解説
経営企画職に役立つ資格
幅広い経営企画の仕事に対応していく上で役立つ資格をご紹介いたします。以下、10種類の資格を解説しますのでご覧ください。
・FP&A(経営企画スキル検定)
・MBA(経営学修士)
・中小企業診断士
・公認会計士
・税理士
・ビジネス会計検定
・日商簿記検定
・USCPA(米国公認会計士)
・TOEIC・TOEFL
・情報処理技能検定士
FP&A(経営企画スキル検定)
経営企画に役立つ資格に「FP&A(経営企画スキル検定)」があります。FP&Aとは、「Corporate Financial Planning & Analysis」の略語で、業務管理および財務計画の立案などを行う職種のことです。
経営企画スキル検定は、世界の先進企業においてその価値が認められているAFP(日本FP協会認定普通資格)の実施、認定のFP&Aプログラムを、日本企業の事情に合わせて範囲と難易度を調整し、日本版のFP&A検定として開発された資格です。
試験結果は、合否ではなく800点の総合点から5段階のレベルでスキル評価され、検定を開発した日本CFO協会FP&A運営委員会が行ったスコアと経営企画・経営管理業務スキルとの相互関係で検証されます。
試験は、全国にある試験センターでコンピューターでの受験となり、結果は試験後、試験会場にて手渡されます。受験料は一般で11,000円、日本CFO協会法人会員で8,800円です。(※どちらも税込み)
MBA(経営学修士)
MBA(経営学修士)も経営企画に役立つ資格の1つです。MBAとは、「Master of Business Administration」の略語で、経営学修士という経営学や経営管理の専門家の称号です。資格を取得するには、2年ほど経営大学院に通い、修士課程を修了する必要があります。
MBA取得の過程で、多くの分野での幅広い知識の獲得が可能です。また、高度な議論法や意思決定するための訓練を得られるMBAは、経営企画職において役立つ資格であると言えます。経営企画職では、ロジックツリーやロジカルシンキングが当然のように使われますが、MBAでロジカルシンキングを体得していれば経営企画職にスムーズに移行できるでしょう。
MBA資格を取得しておけば経営企画職において大きなメリットとなりますが、取得までの期間や費用が大きなデメリットともなりかねません。たとえば、大学院によってはMBA取得の準備期間が1年以上とされ、その後2年ほど大学院生活が必要な場合があります。また、費用においても500万円〜2,000万円ほどかかるため、MBA取得を望む方は事前にスケジュールを調整する必要があるでしょう。
中小企業診断士
「中小企業診断士」という資格も経営企画で役立つ資格です。中小企業診断士とは、企業の経営課題に対する診断や助言を行う専門家のことです。国家資格の1つであり、取得するには、各分野での幅広い知識を学ぶ必要があります。
中小企業診断士の資格取得で得られる豊富な知識によって、さまざまな視点で企業の課題に対応できるようになります。そのため、MBA同様、経営企画職に役立つ資格と言えます。経営企画職では資料閲覧からなる課題調査などが行われますが、中小企業診断士は、企業においての課題を発見することにも長けているため、経営企画に役立つでしょう。
受験費用は3万円ほどで、資格取得まで必要な総費用は約30万円です。MBAと比べると取得費用を安く抑えられるため、経営企画を目指すためにまず中小企業診断士の資格を取得する方が多くいます。
公認会計士
経営企画職を考慮しているならば、「公認会計士」の資格も役立つ資格の1つです。公認会計士は、会計や監査において専門的なスキルを発揮します。公認会計士の資格を取得するには、実務経験、実務補修といった経験を積むことと、実務において即戦力となれるほどの高度な会計知識が必要です。
経営企画職は、予算の作成や実績との比較などを行います。その際、高度な貸借対照表や損益計算書、そしてキャッシュフロー計算書などの知識が必要でしょう。また、資金調達や投資検討の際は、ファイナンスの知識も求められます。そのため、公認会計士の資格は、経営企画に役立つ資格であると言えます。
公認会計士の資格取得までにかかる期間は、MBAよりもさらに長期で、資格試験準備までに2年ほどかかります。また試験合格後は、2年以上の実務経験が必要であり、3年以上の実務補修を積む必要もあります。全体的に資格取得までにかかる期間は、5年ほどです。
税理士
「税理士」の資格も経営企画において役立ち、税務や会計において専門的なスキルを発揮します。税理士が行う仕事は、税務申告、会計業務、そして税務会計をもとに行われるコンサルティングを通して、企業全般をサポートすることです。そのため、税理士の資格は、経営企画職において重要な役割を果たします。
税理士の資格を取得するには、試験に合格した後、2年の実務経験が必要です。受験資格も定められています。税理士の資格を受験するには、法律学または経済学に属する科目を含め62単位以上取得した大学3年生以上、また日商簿記1級または全経簿記上級の合格者とされています。
ビジネス会計検定
経営企画職において重要なスキルの1つは、財務諸表を作成する実務力よりも分析する能力です。そのため、「ビジネス会計検定」は経営企画職に役立つでしょう。ビジネス会計検定で得られるスキルは、作成された財務諸表を分析する能力です。AIが発展した近年においても、ビジネス会計検定で得られる財務諸表を分析する能力は価値が高いと言えます。
ビジネス会計検定には1級と2級、そして3級があります。1級は取得までの難易度が高いため、まずは2級取得がおすすめです。3級は、基本財務諸表としての貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書に記載されている項目と計算構造について学習します。2級で学ぶことは、有価証券報告書の連結財務諸表に記載されている項目と計算構造などです。3級での学習内容に加えて、さらに多くの分析指標も学びます。1級で必要な内容は、会計情報での総合的な知識として、投資関連の各種ディスクロージャーや財務諸表と計算書類の総合的な理解です。
級数 | 内容 |
---|---|
3級 | ・基本財務諸表(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書)に記載されている項目と計算構造 |
2級 | ・有価証券報告書の連結財務諸表に記載されている項目と計算構造 |
1級 | ・会計情報での総合的な知識として、投資関連の各種ディスクロージャーや財務諸表と計算書類の総合的な理解 |
日商簿記検定
「日商簿記検定」では、高度な会計知識を獲得することが可能です。経営企画の仕事では、会計知識が必要です。たとえば、経営企画は、経営計画や予算の立案、また事業収益性分析や資産管理なども行います。その際、日商簿記検定によって取得した知識は大いに役立ちます。
日商簿記検定は、2級と3級が年に3回、1級は年に2回試験が開催されています。そのため、学習計画も立てやすいことが特徴です。また、最も取得費用がかかる1級でも7,850円と安めであることから、資格取得に取り組む方が多くいます。
2級
日商簿記検定2級で得られる基本的な会計知識は、実務で役立ちます。経営企画で必要最低限の会計知識といえるでしょう。
経営企画の仕事にはステークホルダーへの対応も含まれています。日商簿記2級は、企業と企業外部との取引の計算や記録を行うスキルを学びます。このことは、ステークホルダーに対して公開するための財務諸表を作成することに役立つでしょう。
日商簿記2級は経理の資格です。しかし、公認会計士や税理士の資格とは異なります。日商簿記2級の資格から、経理全般の知識を取得でき、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を作成するスキルを獲得できるでしょう。
1級
日商簿記1級は2級よりも難易度が高くなりますが、経営企画職には重要な資格となるためおすすめです。経営企画の仕事では、会計知識が必要になる場面は多くあります。日商簿記1級の資格を取得していれば、経営管理や経営分析を行うためのスキルを十分有していると判断され、採用担当者へのアピールともなります。
日商簿記1級を獲得できれば、大規模企業の経理実務が理解でき、経営企画職においても不安なく業務をこなしていけることでしょう。
USCPA(米国公認会計士)
USCPAとは、「U.S. Certified Public Accountant」の略語で、米国公認会計士のことです。国際ビジネスの最高峰に位置づけられる会計のプロフェッショナルであり、その仕事内容は多岐にわたります。
近年のグローバル化により、経営企画職でもM&Aなどにおいて英語力が求められる場面があります。その際、会計知識と英語力の両方を併せ持った「USCPA」の資格が役立ちます。USCPAは、日本の公認会計士同様、会計やファイナンスの知識はもちろん、経営企画職での業務を英語で実行できるスキルの証明ともなります。
TOEIC・TOEFL
「TOEIC・TOEFL」の資格も経営企画職に役立つ資格の1つです。近年のグローバル化により経営企画職においても英語でのやり取りが必要な場面が多々あります。たとえば、M&Aの投資検討先が外国企業の場合があるでしょう。その際、英語での契約書の相談を持ち掛けられたり、資金の調達先が海外投資家だったりする場合は、英語力が必要です。TOEIC・TOEFLの資格を取得し、高い英語力を備えていれば、経営企画部での業務に大いに役立ちます。
具体的には、TOEICで800点以上、TOEFLでiBTで70点〜90点ほどの英語力があれば、経営企画のさまざまな仕事分野で役立つ英語力を発揮することが可能です。
情報処理技能検定士
「情報処理技能検定士」も、経営企画の仕事において役立つ資格として挙げられます。経営企画職において、予算策定、予実管理、経営会議資料作成、着地見込み作成、各種データ分析といった業務は、主にエクセルのような表計算ソフトを利用して行われます。そのため、経営企画職に就くために、高いエクセルスキルを身につけておくことは重要です。
情報処理技能検定士の資格を取得できれば、体系だってエクセルや数式の基本構造を把握でき、経営企画の実務で必要なデータ処理のための発想力が身につきます。経営企画職に就く前に資格を取得しておくことで、少しでも情報処理への耐久性を獲得しておきましょう。
経営企画から次のキャリアを考える
経営企画の仕事は、企業の経営を左右するような重要な職種であるため、企業内の将来の幹部候補と期待される人材が配属されることが多いです。経営企画から次のキャリアを考えた場合、マネジメント職への昇格や、役員など企業の経営層へのステップアップなどがあります。
経営企画職に携わった経験を活かして、コンサルタントファームへ転職したり、経営コンサルタントとして独立するというキャリアもあります。
また、近年はベンチャー企業やスタートアップ企業の経営参謀をキャリアとして選ぶ人も現れるようになりました。具体的には、CFOやCOOなど財務責任者や社内のオペレーション構築の責任者となる経営企画職の方もいます。
CFO・経営企画のキャリアについては次の記事もご参照ください。
⇒経営企画のキャリアの考え方|経営企画の業務とキャリアパス・必要なスキルを詳しく解説
⇒CEO・COO・CFO・CTOの役割の違いは?導入が進む欧米型経営体制『CXO』について徹底解説!
⇒CFO転職の方法とは?CFO転職のメリットやキャリアパスも徹底解説!
まとめ
本記事では、経営企画職で役立つ資格をいくつかご紹介しました。
ここで取り上げられた資格は、取得の難易度や期間などの要素の違いはありますが、どれも経営企画職に役立つ資格です。公認会計士などの、直接経営面に関わる専門知識を有した資格から、TOEIC・TOEFLや情報処理技能検定士などの英語や表計算などのスキルを身につける資格まで、さまざまな方面から経営企画職に役立ちます。
このような資格を取得しておくことは、自分の価値をさらに引き出せることの他に、心理的な面での安定感につながるといったメリットもあります。
本記事が、今後のキャリアを考えている方や社内のキャリアに関わるポジションの方のご参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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この記事を書いた人
共同創業者&代表取締役CEO 茅原 淳一(かやはら じゅんいち)
慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。