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経理部門のキャリアの考え方|経理の代表的なキャリアプラン・経理のキャリアパスについて解説
執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)
CFOになるには?キャリアパスも解説
経理/会計/財務/経営企画などの管理部門としてのキャリア
経理業務に携わっている方で、これからどのようなキャリアプランを形成するか悩んでおられる方も少なくないでしょう。
従来の経理業務においても、会社の規模やステージに応じた様々なキャリアが存在していました。現在は、IFRS(国際会計基準)の導入や単純作業におけるAI化やクラウドサービスの利用など、時代の変化や最新技術の登場によって情報のキャッチアップやスキル・知識の向上などが求められるようになりました。
それに伴って、経理に関わる従業員の中にも高度な知識・スキルを持つ人も増えてきたこともあり、今までよりも幅広いキャリアを考えることができるようになった方もいるでしょう。
本記事では、経理としての代表的なキャリアプランおよび経理のキャリアパス、今後もキャリアの幅を広げていくために役立つ資格や注意すべきポイントをご紹介します。
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目次
経理の代表的なキャリアプラン
それでは、最初に経理業務に携わる方が目指せるキャリアプランをご紹介します。制度として会社がキャリアパスを導入している場合もありますが、個人として描くキャリアプランとしては以下のようなものが代表的です。
ゼネラリスト
経理のゼネラリストとは、経理業務や経営に関する幅広い知識を持つ人材のことです。ゼネラル(一般的)という言葉の通り、場合によっては総務や人事などでもキャリアを積み、経営全体に関わっていくスキルや能力が求められるポジションです。
キャリアとしては、組織の内部において上位を目指し、経理の業務内容をそのまま継続して経験を積むことが主となります。1つの企業に腰を据える王道パターンで、主に以下のような最終的なキャリアプランが考えられます。
CFO
CFOとは「Chief Financial Officer」の頭文字をとったもので、「最高財務責任者」の意味になります。企業において、財政面からの戦略や経営執行を行う責任者を指しています。
CFOは、単なる企業のサイフ係ではなく、目まぐるしく変化するビジネスシーンにおいて世界基準に合わせた会計の透明性を確保し、企業価値の向上を測り、さらには財政面から経営戦略への有効な運用方法を実行する役割を担います。
CFOとなる人材に求められる理想的なキャリアとして、財務や経理の面から企業を成長させた経験や経営者の視点を持って財務・経理に関する部署だけでなく営業やバックオフィスなどを巻き込む腕前が求められます。
近年では、欧米を中心とする投資家や株主の意見が尊重されるようになりました。そのため、国際的な感覚で経営戦略を立てられる人材が必要とされています。外国では、CEO(最高経営責任者)と同様の重要性を持って見られることが多く、CEOへの足がかりとしてCFOで経験を積むなどするキャリアプランも見られます。
様々なジャンルや最新情報に精通している必要があり、経営陣の1人として非常に大きな責任を担う立場です。
経営企画
経営企画とは、経営陣が定めたビジネス戦略を実際の業務において執行していく仕事です。これには、中長期的な経営計画の立案や実行管理をすることも含まれます。
規模が小さい会社やスタートアップ企業においては、社長や役員が経営企画も担当しているケースがあります。実質的に会社の将来を左右するような企画・運営に携わるため、迅速で正しい判断が常に求められるポジションです。
CFOのような企業を背負って表に立つ責任や役割はないものの、自社の財政状況や組織体制なども管理し、競合他社やマーケットにおける自社の立ち位置を理解した分析力や行動力が必要になります。加えて、立案した計画を経営陣に提出し、経営陣の考えと実務をすり合わせる立場にもあります。
ビジネスの国際化が叫ばれて久しくなりますが、海外進出・自社の様々な分野のデジタル化・新規事業の立ち上げなど、持続可能な収益源を見出してゆく判断も求められるでしょう。経営企画部は、財務的な戦略における心臓部としての役割を果たす、非常に重要なポジションです。
大企業への転職
大企業では、中小企業では経験できなかったようなさらに幅広い分野の中から経理業務に携わることが可能です。
初めから大企業に就職することが叶わなかったとしても、「経理で経験を積んだ現在では転職先としての可能性が見えてくる」という場合もあるでしょう。勘定科目が大きく異なってしまうこともあるため、今までの経験が活かせるように同じ職種のより大規模の企業を目指すのも1つの方法です。
大企業では、経理の仕事がより細分化されて担当するのが一般的で、より詳細な業務に関して経験を積める機会があります。中小企業で経理業務の全体像を掴んでいれば、大企業における、より専門性の高い業務によって細分化された分野でも経験と知識を増やしていくことができます。
大企業では役職やポジションも幅広くなるため、通常の経理業務からCFOを目指すための選択肢がより多くなるとも言えるでしょう。
スペシャリストとして独立
会計業務を専門的に突き詰めるのがスペシャリストです。経理周辺の資格を取得しながら、最終的には独立開業を目指すキャリアプランです。
公認会計士や税理士、社会保険労務士などの資格が選択肢となり、加えて自分で案件や契約を見つけてくる営業力なども求められます。道のりは簡単ではありませんが、軌道に乗れば個人事業主として自由に仕事のスタイルや会社の方針を設定できるため、独立・開業に向いていると思う方は一度は検討してみたいキャリアプランです。
公認会計士や税理士として事務所を開く以外にも、コンサルタントやアナリストとして活動することもできます。日本ではあまりメジャーな選択肢ではありませんが、コンサルタントやアナリストは、外資系企業においては珍しくない職種です。
外資系企業への転職
米国公認会計士(USCPA)の資格に興味があるならば、外資系企業で経理の経験を積むのも選択肢の1つです。より安定して業務に携わっていくためには英語での実務力が求められますが、世界の最先端のビジネスを経験し、よりグローバルな物の見方を身につけられる非常に貴重な機会となるでしょう。
転職時のアピールポイントを確保するために、転職する前に米国公認会計士(USCPA)などの資格を取得するのが一般的です。
経理のキャリアパス
現在の経理の立場からどのようにキャリアプランを形成すれば良いのでしょうか?ここからは、キャリアプランを考える上での各企業の種類ごとの特徴をご紹介します。
・中小企業
・ベンチャー企業
・大手上場企業
・外資系企業
中小企業
上記でも触れた点ですが、中小企業における経理では担当する分野が幅広くなります。業務の種類が多いため単純な経理業務にとどまらず、給与計算や各取引先への支払いの手続きなど、一企業の財務のあらゆる分野に携わる可能性があります。
経理の立場から、企業におけるお金の流れやリソースの使い方の全体像を見れるのは大きなアドバンテージです。年次決算における一連の業務に携わることができれば、転職においてもその経験は非常に有利になるとされています。
また、キャリアプランを広げて行くことも考えると、簿記1級の資格取得も視野に入ってくるでしょう。「実務経験に十分携わっていれば資格は必要ないのではないか」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、経理・会計の業務内容に対するより正確で深い理解を得るために役立ちます。
簿記1級は大企業で扱うような財務知識も学ぶため、当然ながら単に日々の業務に携わるよりもスキルアップや将来的な選択肢を増やす上で役立ちます。
ベンチャー企業
ベンチャー企業やスタートアップ企業は未知のビジネスの分野や商品の開発に携わるため、チャレンジングな環境で働けます。こちらも中小企業の場合と同じく、経理の担当する分野は、会社の成長に伴って幅広い業務内容となるのが一般的です。
しかし、中小企業とベンチャー企業の経理の業務において違うポイントは、ビジネスの成長に伴って企業内の組織が拡大していく中で、人事や総務の分野に携わったり、上場に向けて準備する業務を経験できるなど、市場価値の高い経験を多く積めるチャンスがある点です。
もし、上場前のベンチャー企業やスタートアップ企業に在籍できれば、組織が大きくなる過程やビジネスの領域が勢いよく広がっていく過程を経験できるでしょう。かなり運が良くないと体験できないとはいえ、証券取引所や監査法人などの各分野の専門家と連携して新しい業務に携わり、ビジネスにおいて多くの人が体験できない未知の刺激を感じられるまたとない機会となります。
社内の体制が整っていないのもベンチャー企業やスタートアップ企業にありがちな状態です。経理のみならず、社内の様々な体制作りに取り組む機会も多くなるでしょう。
大手上場企業
より専門的な分野で働くことになる大手上場企業での経理ですが、将来的には管理部門全体の責任者になったり、経理の知見を活かした企業の中長期的な成長のために経営企画に携わる可能性などもあり、非常に大きな規模で経理から財務全体を扱うポジションを目指せます。
最初は日常経理を担当するのが通常ですが、経験やスキルが評価されれば、年次決算業務や監査法人への対応、さらには連結決算業務や決算開示資料作成などといった、中小企業では経験できない業務に参加できます。
そのようなポジションでは、当然ながら景気の先行きや世の中の動向を見据えたマクロ的な判断が求められますが、会社の中枢部に近づくにつれて舵取りをする立場での物の見方が身に付くでしょう。社内で上層部を目指すキャリアプランになるため、1つの企業で腰を据えて働くタイプの方に向いていると言えます。
外資系企業
外資系企業でも、業務内容は日本企業の経理職と基本的には同じです。しかし、本国での連結決算に向けて日本法人の決算内容を伝えるなど、日本以外の業務のやり方や知識を身につける必要があります。
外資系企業では、ある拠点の経理業務を他国のシェアードサービス会社に集約させるといったケースも一般的で、日本とは違ってよりグローバルな経理業務に特化した専門的なスキルが求められます。
しかし、メリットとして同じ職務内容やレベルだとしても、より高い年収が見込めるケースも少なくありません。強力な実力主義の社会で評価されるため、成果を上げるほどに給与に反映されるのも外資系企業の魅力の1つです。
経理でキャリアを積むのに有効な資格
経理においてキャリアを積むために有効な資格をご紹介します。現在の経理業務に必要ではないとしても、業務に慣れていて時間を確保しやすい今だからこそ取得を目指せる資格があるかもしれません。
日商簿記検定 | ・日本商工会議所が実施する検定試験です。1〜3級まであり、国家資格ではないものの、経理職や一般事務職においては非常に有利とされる資格です。 ・2級:財務諸表を読む力が身につき、自社や他企業の経営状態を把握できます。 ・1級:大企業の簿記となり、財務諸表規則や企業会計に関する法律を理解して、経営管理や経営分析ができるスキルを身につけます。 |
公認会計士 | ・会計監査の最高峰に位置する資格が公認会計士です。企業が公開する財務情報を検証し、株式市場においてその情報の正しさを保証する立場にあります。 ・あらゆる会計の専門家として企業の経営状態を深く理解し、グローバルな活躍やアドバイザーとして複数の企業と携わるなど、可能性の幅広さがポイントです。 |
税理士 | ・税金の専門家として活躍するのが税理士です。様々な場面で発生する税金に精通していて、法人でも個人でも必要となる申告手続きや税金の計算・アドバイスが主な業務となります。 ・代理として確定申告や税務調査の立ち会いを行ったり、あらゆる税務書類の作成も行います。 ・大企業の監査や上場準備などを行う公認会計士と違い、中小企業における税務や会計代行などを中心に携わるのが税理士です。 |
USCPA (米国公認会計士) |
・米国各州が認定する公認会計士資格がUSCPA(米国公認会計士)です。米国の資格でありながら世界的な認知度が非常に高いのが特徴です。 ・会計のプロのみならず、英語で実務に携われるレベルにあることを証明できる資格です。 ・資格取得者は、海外の子会社や投資先の経営分析においても英文財務諸表を読み取り、分析することが期待され、ニーズが増大する分野で働けるメリットがあります。 ・試験の難易度は日本の公認会計士試験より低いとされ、資格取得後に実務経験を積む前提で運用されているのも特徴の1つです。 |
IFRS (国際会計基準) |
・企業活動に不可欠な決算書を使用する際の国際的な基準が、このIFRS(国際会計基準)です。 ・USCPA(米国公認会計士)と違い、日本語で受験が可能です。 ・IFRS導入済みの日本企業や、海外子会社などで転職に有利になるほか、多くの大企業がIFRSを採用しているため、国内での大企業へ転職を考えている場合にも有利になる資格です。 |
給与計算実務能力検定 | ・給与計算業務が行える知識や実務能力を証明するのがこの資格です。 ・給与計算業務のエキスパートとして認定され、社会保険やもろもろの税金に関する幅広くて正確な知識を有していることを証明します。 |
所得税法能力検定 | ・所得税法能力検定は、所得税の基となる源泉徴収や確定申告に関する知識、税務署への提出書類作成などの実務を行う能力を有していることを証明します。 ・受験を通して、所得税の基本的な仕組みや各種所得の計算方法、さらには医療費や社会保険料控除などについても学べます。 |
法人税法能力検定 | ・法人税関連書類を作成するために必要な知識を問うのが法人税法検定です。合格率は比較的高く、法人税に関する税務処理や正確な書類作成を行うのに役立ちます。 ・簿記試験より知名度は低いものの、計算方法などにおいて実務に役立つより専門的な知識が得られます。 |
消費税法検定試験 | ・消費税法検定試験は、会計処理時の消費税の取り扱いや税務署への書類作成など応用的な税務処理に関する計算能力を問う試験です。 ・税理士試験の科目のうち、実務に大きく関連する消費税法により特化した知識が身につきます。 |
経理でキャリアを目指す際の注意点
以上のようなプランや資格は、経理のキャリアを形成していく上で役立ってくれることでしょう。しかし、経理の業務ではキャリアアップを目指す上で独特のハードルがあります。
最後に、経理でキャリアアップを目指す際に想定しておくべきポイントをご紹介します。
・経験・スキルが評価されにくい
・幅広い知識が求められる
・必須の実務経験
・ゼネラリストかスペシャリストか
経験・スキルが評価されにくい
一般的な傾向として、経理における経験やスキルは他職種や経営陣から評価されにくい傾向にあります。あくまで「サイフの管理係」であり、売上や利益の向上に直結する業務からは遠い位置にあるからです。
経理の業務においてはスペシャリストであったとしても、営業や売り上げにおいてアピールポイントにはなりにくいところがあります。
加えて、どのような分野だとしても正確な経理業務を行うには大変な注意力が求められますが、周りから業務を正確に行って当たり前という認識も持たれているため、経理業務における今までの経験や正確さを生み出すスキルにはスポットライトが当たりにくい傾向にあるのも事実です。
最近では、経理の単純な業務はAIやクラウドサービスに任せる企業も多くなっているため、IT分野の理解や応用力なども見据えておく必要もあります。
幅広い知識が求められる
「数字の計算ができれば経理の業務は同じことの繰り返し」と思えるかもしれませんが、前述のAIやクラウドサービスの台頭やビジネスシーンの国際化に合わせて幅広い知識が求められるようになりました。
実際に、テクノロジーの進化や新しいサービスの出現によって、インターネット上で納税や税務上の手続き、税金に関する行政書類の取得などができるようになりました。
加えて、日本国内においても税法や会社法の改正など、今までの業務を大きく変えるような変化や法改正は今後も可能性があります。自身の業務のみならず、IT化に伴う実務的な変化に対応できるようになることで、会社を支えていくことが求められます。そのためにも、幅広い最新の情報を取り入れることが不可欠になってくるでしょう。
必須の実務経験
経理で身につけた経験やスキルをもとに転職活動をしようと思う場合、どの企業においても実務経験が必須となります。当然ながら、今までと全く同じ作業内容だけを想定するわけにもいかないため、現在の職務内容で経験できる実務を経験しておく必要があるでしょう。
1つの企業だけでも、書類作成や税金の計算、監査法人への対応などありとあらゆる職務内容が存在するのが経理という仕事です。自分の武器と言えるまでに業務内容に十分精通して経験を積んでおけば、転職時に大きくアピールできるはずです。
ゼネラリストかスペシャリストか
ゼネラリストを目指すのか、スペシャリストを目指すのかによってキャリアプランは大きく変わってきます。スペシャリストを目指して独立開業を視野に入れると、税理士や公認会計士などの資格取得を考えなければなりません。
特に、合格率が低く、平均的な勉強時間が3500時間にも上ると言われる公認会計士を目指すとなると、将来的なキャリアをはっきりと見据えている必要があります。
ゼネラリストとして、1つの企業に長く携わっていくのも決して悪い選択肢ではありません。キャリアの可能性だけではなく、ご自身に向いているかどうかを主眼において選択すべきことでもあるため、実際の業務や責任を想定しながら進路を考えていきましょう。
まとめ
この記事では、経理としての代表的なキャリアプランおよび経理のキャリアパス、今後もキャリアの幅を広げていくために役立つ資格や注意すべきポイントについて解説してきました。
本記事が、今後のキャリアを考えている方や社内のキャリアに関わるポジションの方のご参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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この記事を書いた人
共同創業者&代表取締役CEO 茅原 淳一(かやはら じゅんいち)
慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。