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20代で経営企画職を目指すには?求められるスキル・職務を経験するメリットについて解説
執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)
CFOになるには?キャリアパスも解説
経理/会計/財務/経営企画などの管理部門としてのキャリア
企業の中枢に位置するのが経営企画部門です。最近では、20代のうちから経営を経験したいという意欲を持つ人も多くいます。
この記事では、20代で経営企画を目指すメリットや実際に求められるスキル、そして20代のうちに磨いておくと有利になりやすいポイントについて解説します。
企業の財務に関連する活動の責任者であるCFOについては、こちらの記事もご参照ください。
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目次
経営企画の仕事内容
経営企画部門とは、経営陣のサポートや経営陣とともに事業や業績の管理・分析を行う部門やチームのことを指します。経営者の計画を実現させる部署とも言えるでしょう。そのため、対象となる業務は多岐にわたり、会社によって大きく異なることもあります。
経営企画の主要な業務は、経営戦略の立案やそれに付随する会議の準備・運営です。中長期の企業や市場の成長を見据え、自社の経営状況やリソースに応じた戦略を提案します。そのため自社が含まれる市場や周辺環境、事業計画の将来予測などの分析を行い、資料にしてまとめて、会議で自社の経営の意思決定に関する事項をまとめます。
主な議論や最終的な決定は役員会議でなされるため、その会議で取り扱うデータを収集・分析し提出するなどといった、膨大なデスクワークも業務の1つです。会議にも参加し、経験が浅かったとしても経営者や役員から意見を求められることがあります。
そして、策定された経営戦略を元に企業が取り組む事業計画も立案します。事業企画とは異なって、全社的・横断的な事業計画を練り、それを現場に浸透させていきます。事業が計画通りに行かないことも想定し、調整や課題が発生した場合は可能な限り速やかに解決に取り組みます。
事業計画をベースに、各部署に割り当てている事業の業績を管理・分析することも経営企画の業務に含まれます。利益率や生産性を定期的に振り返り、目標達成に向かっているか、あるいは改善策を適用しなければならないかなどを分析します。
自社のすべての関係者であるステークホルダーとの調整も行います。取引先やパートナー企業はもちろんのこと、地域社会や行政機関などとも有効的な関係を築くために、交渉や利害の調整などに取り組みます。その他にも、コーポレートガバナンスやIR対応なども業務に含まれます。
経営企画の業務内容・コーポレートガバナンス・IRについて詳しくはこちらの記事をご参照ください。
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20代で経営企画職を経験するメリット
20代のうちに経営企画職を経験できると、その後のキャリアが広がるだけでなく、俯瞰的な視点からビジネスを分析できる能力が身につきます。20代で経営企画職を経験する主なメリットを2つ解説します。
・経営者目線で考える能力が身につく
・最新のトレンドや変化に敏感になる
経営者目線で考える能力が身につく
経営企画職として職務経験を積む中で、現場の売上目標やその場限りの数値にとらわれず、経営者的な視点からビジネスを考えられるようになります。現場で経験を積むのもとても大切なことですが、20代のうちから経営陣とともに仕事をするという経験も非常に貴重な機会となります。
企業の将来を見据えたり、長期的な視点で市場分析するといった思考に触れるチャンスは、よほど積極的に勉強しない限り現場ではほとんどないでしょう。当事者意識を持って情報と向き合うことが求められるため、自然とそのような物の見方・考え方が身につきます。
経営企画職はビジネスの最前線ともいえるポジションにあり、市場や社会情勢の変化に対して即座に反応する思考を学ぶことで、自分で新たなビジネスモデルを構築する機会に恵まれる可能性もあります。
最新のトレンドや変化に敏感になる
現代のビジネスの世界は、グローバルな競争拡大・AIなど新技術の台頭・サステナビリティへの配慮などにより世界規模かつスピーディーに変化します。経営企画部門では、そういった最先端の情報や刺激に触れ、理解していく機会に恵まれることも多くなります。
それまでITと縁がなかった職種や企業でも、AIやビッグデータを活用した戦略により新たなビジネスチャンスを見出したり、企業が国際的なビジネスモデルを構築し始める可能性があります。
経営企画部門においてデータ分析や戦略立案に関わる上で、このような最新情報をキャッチすることは必須です。業務に携わっていく過程で、最新のトレンドや変化に敏感になる考え方が身についていきます。
20代の経営企画担当者に求められること
20代で経営企画職を担当する場合、どのような能力やスキルが求められるのでしょうか?一口に経営企画と言っても対応しなければならない業務は様々ですが、それゆえに以下のような能力やスキルが重宝されます。ここでは9つの主要な能力・スキルに絞って解説します。
・論理的思考力
・多面的思考力
・クリエイティブ思考力
・情報収集能力
・資料作成能力
・分析能力
・コミュニケーション力・プレゼンテーション力
・学習意欲・能動性
・プロジェクトマネジメント
論理的思考力
経営企画職は企業の将来を左右する重大な責任を担っているため、データ分析から論理的な決定をしなければなりません。
論理的思考力は、後ほど触れる分析能力と合わせて必要になるもので、分析データから企業価値を向上するための経営戦略を生み出す際に不可欠です。主観的な判断や思いつきで発言・提案するのではなく、統計や業績の数値などの網羅的な情報に基づく論理から最終決定を導き出す必要があります。
そのためには、帰納法や演繹法に基づいた考え方、さらにはミスの低減や目標達成を築くフレームワークを身につけるトレーニングをしておくと良いでしょう。20代のうちから百戦錬磨の経営陣と同じ論理的思考力レベルは期待されないものの、入社時の適性検査などで論理的思考や数字の扱い方に関するスコアが高い場合、経営企画部門への移動が早いうちに推薦される場合もあるようです。
多面的思考力
多面的思考力とは、1つの事実に対して視点を多く持ち、複数の角度から物事を理解することによって事実を捉える能力です。日本国内でもグローバルな市場変化の影響を受ける現代社会では、テレビや新聞で目にする情報をより広い視野から自社のビジネスに関連づける理解力が必要です。
多面的思考は、多様なニーズにビジネスを対応させ、既存のビジネスモデルを調整したり利益性のある新規事業を立ち上げる際にも不可欠です。事業の課題解決は一筋縄では行きません。複雑な問題にぶつかったとしても解決の糸口を探り、事業計画をより具体的で安定したものにするためには、複数の視点から問題を理解する必要があります。
世界情勢が少し変化しただけで、自社にも良い(あるいは悪い)影響が強く及ぶことがも珍しくないため、単なる情報のインプットではなく当事者として関係する物事を正確に把握することが必要です。
クリエイティブ思考力
事業課題の解決や新規事業の立ち上げの際は特に、クリエイティブ思考力の必要性が大きくなります。既存の考え方や同じことの繰り返しでは、新しいビジネスモデルを生み出し事業を安定させることは不可能です。ブレイクスルーのような革新的なアイデアが思い浮かばないとしても、ゼロから何かを創造するようなクリエイティブな考え方を身につける必要があります。
今期のデータを基に来期の予測や戦略を考える場合、上記で取り上げた論理的思考力と合わせてクリエイティビティも求められます。誰も知らない将来の予測に基づいて計画を立てるため、事実に基づいた様々な仮説から戦略を生み出していかなければならないからです。
例えば、Appleの創業者スティーブ・ジョブズは歩きながら会議をしていたことで有名です。「生産性は余白から」と言われるように、才能に左右されがちなクリエイティブ思考力とはいえ、散歩や何気ない時間の思考力を活用して、会社にとって革新的なアイデア・発想力を発揮することが期待されます。
情報収集能力
何度も触れている点ですが、経営企画の業務には最新情報や幅広い分野のデータを扱うものが多く含まれます。経営戦略を立案する際には、市場の急速な変化や潜在的なニーズを敏感に読み取った上で思案しなければなりません。
日常の生活においても、スマホやテレビで見られるニュースから積極的に情報収集し、気になったことや分からないことをすぐに調べる癖を身につけておけば、経営企画の業務においてもその情報を収集能力が活きてくるかもしれません。スピード感が求められる業務の多い経営企画職では、すでに様々な情報をインプットできている方が有利です。
資料作成能力
経営企画の業務の大半はデスクワークになるケースが非常に多く見られます。資料作成能力を磨いていれば、自分自身の作業スピードが向上するほか、その資料を使う会議での議論や意思決定がよりスムーズになります。
特に会議のための資料作成ともなれば、関係部署から必要なデータを吸い上げ、それらを資料にまとめていかなければなりません。見やすくまとめられているのはもちろんのこと、不要なデータを省きつつ議論に役立つデータは詳細まで含めているような、ハイレベルな資料作成能力が求められます。
事前に経営陣が知りたい情報や事業内容の特徴を徹底的に調査し、関係するデータを全て洗い出した上で資料を作成していきます。とても地味な作業であるとはいえ、事業に関する英断や大きなプロジェクト成功の裏側は、このような膨大なデスクワークと緻密な資料作成作業にいつも支えられています。
分析能力
必要な数字を羅列するだけでは、いわゆるただの「計算屋・数字屋」になってしまいます。「集めた情報からどのような結論を論理的に導き出せるか」が分析能力の見せ所です。
エクセル表に通常並べただけのものを提出してしまうと、上司が数字の分析だけに時間を取られてしまったり、そもそも多忙な経営陣に見せるには未完成の資料であるとしてやり直しになってしまうこともあるでしょう。
まとめた数値を相手に理解してもらう資料を作らなければならないため、分析能力を駆使して、数字で現場を理解することが必要です。経営企画の業務では、依頼されれば「◯◯年後の業績予測」といった存在しないデータを提出しなければならない場合もあり、分析能力を日々向上させていることはキャリアを築く上でとても重要になるでしょう。
コミュニケーション力・プレゼンテーション力
経営企画部門では、経営陣・取引先・新規事業立ち上げの関係者・行政関係者など様々な立場の人を相手に打ち合わせをする機会が多く、取引先1つを取っても相手を納得させられる内容は異なってきます。
そのため、高いコミュニケーション力やプレゼンテーション力を発揮出来れば相手を納得させたり興味を持ってもらう等、会議や打ち合わせを無駄なく成功裏に終えられるようになるでしょう。
上記で取り上げた情報収集能力や資料作成能力とも関連しており、事前調査・分析を綿密に行った上で必要となるスキルです。経営企画部門は部署を横断して業務やプロジェクトに携わる機会も多いため、普段から関係部署の担当者や経営陣と良好な関係を築くという意味でもコミュニケーション力が求められます。
学習意欲・能動性
20代など若くして経営企画部門に参加することになった場合、初めは会議や上司とのコミュニケーションで耳にする単語さえも知らないものばかり、ということになりがちです。今まで経験がないため、知らない単語があること自体は問題ではありませんが、そこで学習意欲や能動性を発揮できるかどうかが周りのスピードについていく鍵となるでしょう。
恥を恐れず理解できるまで周りに質問したり、自分から経営について学習する姿勢を見せることが大切です。
プロジェクトマネジメント
事業やプロジェクトを管理するのが根本的な業務となるため、それらを効率的にマネジメントするスキルが求められます。
20代で業務に携わる場合、上司や先輩のサポートに回る機会が多いため、データ収集や進捗状況確認などを複数のプロジェクトで同時進行しながら扱う良い機会となるでしょう。各担当者との密な連絡や迅速な対応が必要になります。
20代で経営企画職を目指すために
未経験にはハードルが高く思える経営企画職ですが、20代のうちからその準備を始めることは可能です。身につけるべき要素は多くあるとはいえ、以下の4つの分野で自分の能力を磨き、目標を現実に近づけていきましょう。
・経営戦略の知識を学ぶ
・データ分析力を磨く向上させる
・企画立案・マネジメント経験を積む
・コミュニケーション力を向上させる
経営戦略の知識を学ぶ
先ほども触れたように、経営陣の会議に参加する機会があったとしても知らない用語が飛び交ってい、最初は驚いてしまうかもしれません。会話にすらついていけないという状態を克服するために、自ら進んで経営戦略の知識を学んでおきましょう。会計や財務だけでなく、組織や人事についても当事者視点の理解が求められます。
最新情報のみならず、経営の基礎を勉強し著名な経営者の著書を読むなどして、経営に関する知識や理解力を増やしていきます。同業他社や他業界の人脈ができた際には積極的に話を聞くなどして、自分の知識をアップデートしていく努力も大切です。国家資格の「中小企業診断士」を勉強・取得するなどして、積極的に経営について学ぶ姿勢を見せることも役立つかもしれません。
経営戦略については、こちらの記事もご参照ください。
⇒経営戦略部門とは?業務内容・やりがい・必要なスキル・近年の動向について解説
⇒経営戦略職に役立つ資格|経営企画との違い・必要なスキルについて解説
データ分析力を磨く
数値データを集めて日々分析するのは経営企画の日常的な業務です。現在の経営状態や事業効率を数値から分析し、経営陣に現状の要因とこれから自社が取るべき戦略を説明することが求められます。
「目標達成の課題となっているものは何か」「それがどのように事業の妨げとなっているか」「それらを踏まえてどのような戦略が効果的か」を論理的に説明するには、数値から自分自身でそれだけの情報を読み取れていなければなりません。
もちろん、エクセルをスムーズに扱う、加えてデータ分析ツールを活用するスキルも今のうちから磨いておきましょう。
企画立案・マネジメント経験を積む
個人ではなくチームとして結果を出さなければならないのが経営企画の業務です。個人が達成した数値が評価につながる現場とは違い、企画を実現させたりプロジェクトを動かすことが主要な業務となるため、どうしても人と関わる作業が発生します。各部署との関係構築やメンバーのモチベーション管理など、マネジメントに関わる経験をできるだけ積んでおきましょう。論理的で説得力のあるプレゼンテーションを実施し、能動的に企画やプロジェクトに関わって行く姿勢が必要です。
コミュニケーション力を向上させる
関係者すべてと円滑な人間関係を構築するために、コミュニケーション力を可能な限り向上させておきましょう。いくつか紹介してきたように、経営企画の業務は経営陣と会議で議論を交わすことだけではありません。
経営陣の方針と要求事項を抱える関係部署との調整や、必要なデータを出してもらうために経理部門との繰り返しのやり取り、さらにはステークホルダーとの交渉といった人間関係を扱う業務が多岐にわたります。
取引先を納得させるプレゼンテーションにおいても、円滑なコミュニケーションを土台として成り立っていることがほとんどです。上司やクライアントに訴えかけるのは、スキルというよりもコミュニケーション力という場合が多いものです。日常的な業務や人間関係において意思疎通をスムーズに行うために、普段からトレーニングのつもりでコミュニケーションを意識しましょう。
経理部門については、こちらについてご参照ください。
⇒経理部門とは?業務内容と仕事のサイクル・やりがい・待遇について解説
経営企画職から次へのキャリアパス
経営企画職で経験を積めば、様々なキャリアパスが見えてきます。それまでの経験を活かして、一部上場企業などの大企業への転職を目指す方もいます。経営企画職は定常作業ではないため、対応力を身につけてより大規模な企業でさらなる年収アップやスキルアップを目指せるかもしれません。
現在の会社にとどまるとしても、経営に携わる経験を積み、CFO(最高財務責任者)を目指すというキャリアプランもあります。CEO(最高経営責任者)と違い、企業の財務面から経営戦略を策定していくのがCFOです。CFOを目指すためには、経営や財務のみならず、営業や製造といった現場作業のキャリア・知識も必要です。
CFOについては詳しくは、こちらの記事をご参照ください。
⇒CFO(最高財務責任者)とは?定義・意味から役割・仕事内容・なり方・キャリアパスまで徹底解説!
さらには、経営コンサルタントとして独立を目指す方もいます。自社ではなくクライアント企業の財務状況を理解し、そこの経営陣と共に経営改善を行うスペシャリストです。より多面的な視点と迅速な経営課題の解決能力が求められますが、それらは経営企画職で身につけることが可能なスキルです。
経営企画のキャリアについて詳しくは、こちらの記事をご参照ください。
⇒経営企画のキャリアの考え方|経営企画の業務とキャリアパス・必要なスキルを詳しく解説
まとめ
20代で経営企画職を目指すにはスキルアップや勉強がどうしても必要とはいえ、興味があるならば是非目標に据えたいキャリアです。当事者意識で経営について理解し、経営陣とともに戦略や世の中の変化を見据えられるようになります。
この記事が、20代で経営企画職を目指す方の参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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この記事を書いた人
共同創業者&代表取締役CEO 茅原 淳一(かやはら じゅんいち)
慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。